| 余談ですが、オーストラリア人は、階級社会である母国イギリスと違って平等意識が強く、結果的に日本人の総中流意識と似通っているとも言われます。そして、「みんな同じ」といいながら、細かいところで「格」をつけてしまうあたりも日本人に何となく似てるように思います。 2年ほど前、新聞でシドニー各地域の人気ランキングが載ってましたが、このランキングがなんと全500位まであってかなり細かい。また必ずしも人気上位をすべて東北部が独占しているわけでもなく、交通の便が良いとか風景が美しいとか様々なポイントで順位が入り乱れているようです。それほどシリアスな調査でもなく面白半分に受け取られているようですが、外国人の目から見るとなかなかに興味深いものです。 |
| ○ 北 部 郊 外 ○ |
| シドニーは世界各国の移民がいて、チャイナタウンほどではないにせよ、それぞれの民族が多く集まってる町があるのですが、日本人の場合は海外赴任はあっても「移民」してくる人が少ないため、「日本人の町」というのは特にないようです。それでも「昔ボンダイ、いまノース」と言われるように、一応の傾向はあるようで、東部のボンダイ地域か、ノース方面に多く住んでいるようです。 |
ノースの構造は、@.ノースシドニー駅からチャッツウッドを経由して北に延びる電車の沿線一帯、A.ノースシドニー駅付近から東海岸のマンリーに向けて東西に走るミリタリーロード(Military Road)の街道沿いショッピングエリア(ニュートラル・ベイ(Nutral Bay)からモスマン(Mosman)付近)に大別することができるでしょう。
ノース方面の最大のビジネスエリアはノースシドニー駅周辺で、郊外というよりは「副都心」という感じで、ビルが立ち並んでいるビジネスエリアでもあります。また日本企業の進出先でもあり、お馴染みのマークも見かけるでしょう。第二のビジネスエリアはチャッツウッド(Chatswood)になるでしょう。遠くから臨むと、密集するCBDの高層ビル群のやや北にビルがまとまって見えるところがノースシドニーで、さらにその北方に見えるビル群がチャッツウッドになります(段々規模が小さくなるのでわかりやすい)。
ノースシドニーから電車に乗り、チャッツウッドを通り過ぎて電車に乗っていると、シドニー郊外の北のジャンクションであるホーンスビー(Hornsby)に出ます。このあたりになると、さらに北に広大に広がるクーリンガイ国立公園の入口になります。この電車にほぼ平行して走っている主要な街道をパシフィックハィウエイ(Pacific Highway)といいます。
ノース方面に行くには、ハーバーブリッジを渡るか(電車、バス、車、徒歩なんでも渡れる)、サーキュラーキーからフェリーに乗るかです。海岸リゾートとして有名なマンリー(Manly)や、海を隔ててオペラハウスを臨む立地がユニークなタロンガ動物園(Taronga Zoo)もノースに位置し、フェリーを利用すると便利です。
| 自動車でハーバーブリッジを渡る場合、ノンストップの高速道路状態になっており、橋を渡り終わってから行先に応じて車線が3〜5方面にバーッと分岐していきます。そのため事前に車線変更を終えて準備しておく必要があるのですが、これは道に慣れないうちはかなり難しい(しかも知らない地名の英語の標識なので、全部読み切れないでしょう)。出口を間違ってもそれほど大事に至りませんので(降りてから5分ほど迂回すれば取り返せる)無理しないように。 またノースからシティに向かうときも、シティ西側行き、東側行き、トンネルと道が分岐していきます。バス専用レーンなどもあってややこしい上に、標識も必ずしも親切とは言い難い。そこを100キロ近い高速で車線変更するのですから、慣れてないとよく間違えます。無理しないように。 なお、中央分離帯がなく、通勤時間帯に合わせてのセンターライン可変方式になってますので注意。ハーバーブリッジを渡るのは有料(2ドル)なのですが、これはノースからCBDに向かう場合に課せられ、逆にノースに向かう場合はタダです(詳しくは、後に交通機関の章で述べます)。 |
| ○ 東 部 郊 外 ○ |
3.1.1で述べたとおり、ウィリアム・ストリートを東に進むとキングス・クロス(通称クロス)に出ます。ここは郊外というよりはまだ都心の一部なのでしょうが、一種独特の地域です。キングスクロスから北側に隣接するPotts Point(ポッツポイント)やElizabeth Bay(エリザベスベイ)にかけては、シドニー有数の高級住宅地であり、著名な高級レストランや洒落た店も多く、またホテル(日航ホテルもある)や土産物屋が立ち並ぶ一大観光拠点でもあるのですが、他方では、ディスコ、パブだけでなく、売春宿、さらにはドラッグ(麻薬)が半ば公然と流通している繁華街でもあります。活気があるというか、玉石混交というか。
キングスクロスは「南半球最大の繁華街」などと謳われてることもありますが、町全体はそんなに広くなく、パッと見た目にはどうってことのないただの商店街に映ります。しかし夜も更けるにしたがって一種独特の雰囲気になっていきます。普通に歩いて外食したり土産物を買ったりしている分には、時折変な日本語で話し掛けてくる客引がうるさい程度ですが、妙なところに入り込んで、麻薬なんぞに手を出しているとあとが恐いです(やりすぎでよく死人が出てますし、注射器の使い回しをするのでエイズになる危険も大きい)。昨年(95年)あたりから、地廻りの暴力組織と地元の警察との積年の癒着関係が問題になり、徹底的な真相解明が行われています。良きにつけ悪しきにつけ何かと有名な町ですが、シドニー在住のオーストラリア人の中でも、それが魅力的という人もいれば50年住んでて1回しか行ったことがない人もいます。オーストラリアにはこの手の「夜の町」が他に全くといってよいほど無いので、その分退屈になった人には刺激になるでしょう。
さて、3.1.1.で紹介したオックスフォードストリートを歩くとパディントン(Paddington)と呼ばれる地域になります。この付近はどんなガイドブックにも紹介されていますが、特徴は3点あって、@テラスハウスが有名な「お洒落な芸術家の町」、Aマディグラという祭典で有名な、シドニーの同性愛者達の町、B週末にはパディントンマーケットというフリーマーケットが開かれる、などでしょう。ちなみに、@Bの特徴はグリーブ(Glebe)にも見られますし、Aについては近時ニュータウン(Newtown)に移行しているという話も聞きます(いずれも次項で述べます)。また、都心南部のサリーヒルズも同じような系統で人気があるようです。
「山の手東部」の総本山といえば、郵便番号2027〜2028区域、つまりエッジクリフ(Edgecliff)などからダブルベイ(Double Bay)周辺と言われています。
| ○ 西 部 郊 外 ○ |
キングスクロス、カブラマッタと並ぶ三大(不人気?)地域の残りの一つがレッドファーン(Redfern)です。ここは西部といっても、セントラル駅から一つ目の都心そのもの地区で、セントラル駅と同じく全ての列車が必ず停車する一大ジャンクションなのですが、しかし人気がない。なぜかというと、アボリジニーの人々が比較的多く住み、仕事もせずにアルコール依存になった人々が徘徊しているという地域だというイメージがあるからです。
といってもこれもイメージ先行らしく、数年前の統計によればこのレッドファーンのアボリジニーの人口は僅か1.1%に過ぎないそうですし(Sydney Morning Herald,28th February. 1990、Rathi Hardjono著“White Tribe of Asia”P27より)、実際に歩いていて不都合にあったことはないです。特にそう言われなければ特に気づかないでしょうし、その類の風景なら、中央部のアリススプリングスやケアンズの町中の方がよく見受けられます。なおレッドファーンは皮革製品(靴など)の工場直売の店が多いので買物客も多いです。
ただし、レッドファーンの中でもEveleigh Streetという通りやその周辺の通称the Blockと言われる地域は、確かに雰囲気も異様ですし、この一角に関しては無闇に足を踏み入れない方がいいでしょう(駅の上の陸橋状の道路の北側=都心方面の一角)。カブラマッタにせよ、レッドファーンにせよ、日中はともかく、必要もないのにわざわざ夜に出掛けていくのは控えた方が無難でしょう。治安関係については後述の治安の項目を参照のこと。
以上が「悪名高い」西部郊外の二地域ですが、この類のイメージ先行話を聞く度に『なんだかなあ』と思います。個人的にはシドニーの「東対西」は社会的、経済的、人種的、あらゆる点から興味の尽きない宝石箱のように思うのですが、「生活体験マニュアルノート」という本稿の性格上この程度にしておきます。別途書きます。
次に、下町西部の「良い面、面白い面」ですが、西部方面は国際都市シドニーを本当の意味で代表する地域とも言われます。大戦後、イタリア、ギリシャ、東欧諸国、パレスチナ難民、ベトナム難民にはじまる最近のアジア系移民の流れがありますが、移民してきた人々は、当初、言葉の苦労もあり、高所得など望むべくもない。したがって生活費の安い地域に寄り添って住むことになり、結果として西部地域は民族ゴチャ混ぜ状態になります。
地元のガイドブック(Untourist Sydney)によりますと、西部地域のことを「ビザなしで行ける世界旅行」と形容し、各地域に比較的(あくまで比較的。密集しているわけではない)集まっている各民族の分布を紹介しています。面白いので引用します。
| Cabramatta | カンボジア系、ラオス系、ベトナム系 |
| Marrickville | ギリシア系、ベトナム系 |
| Leichhardt、Haberfield | イタリア系(シドニーの「リトル・イタリア」) |
| Campsie | 韓国、朝鮮系 |
| CabramattaからFairfield | ラオス系(仏教の寺院) |
| Bankstown | ラトビア、リトアニア系 |
| Lakemba | レバノン系、エジプト系(シドニーのムスリム(回教徒)の中心地) |
| Rockdale | マケドニア系 |
| Pendle Hill | マルタ系 |
| Auburn | トルコ系 |
| BankstownからCabramatta | ベトナム系 |
| ○ 南 部 郊 外 ○ |
南部ですが、都心から南に下るとすぐにシドニー空港と海(ボタニー湾)になってしまうので、独自に「南部」を取り上げて語られることは少ないように思います。ちなみにシドニー空港の正式名称はキングスフォード・スミス空港といい、地元では通称マスコット(空港のある地名)とも言われます。
南東部には、NSW大学や競馬場のあるランドウィック(Randwick)が比較的有名な地域でしょうか。
南西部は、ボタニー湾の入り江のサザーランド(Sutherland)付近でシドニー名物の牡蠣の養殖場が点在してます。その南側にはロイヤル国立公園があります。南西方面の比較的大きな町としてはキャンベルタウン(Canmbeltown)があります。戯画的に誇張して言えば、「富と虚飾の北・東部」「ワイルドな下町西部」に比べて、南部は特に形容すべき決まり文句もなく、「海辺の郊外住宅地」ということで、シドニーで一番のんびりしている地域かもしれません。
★このように郊外東西南北を見てみましたが、実際には、ある程度こちらの生活や風景に慣れてからでないと、それほどクッキリと違いが見えるものでも無いでしょう。
僕も来た当初はどこを見ても「単なるオーストラリアの風景」にしか映らず、「どこが違うの?」と思いました。現在でも(典型的な風景ならまだしも)そこらへんの通りの写真を一枚見せられて「西部か東部か当てろ」と言われたら全然判別つかないでしょう。