第5章:食事


    5.2.外食編(2)レストランの利用方法

    24th.Oct.96

      次に英語に不安を抱えながらどうやってレストランに入って食事をするかという方法を考えてみましょう。日本にはないシステムもありますし、店に入ってから勘定を払って出るところまでを、一通り眺めてみましょう。

      BYO(Bring Your Own)

      殆どのレストランには「BYO」という表示が示されていますが、これは、『お酒の持ち込み可』という意味です。日本ではレストランにお酒を持ち込むことは禁止、ないし持込料を取られますが、オーストラリアでは酒は客が自分で持ってくるのがむしろ一般的です。どうしてそうなっているのかというと、その昔飲食店での酒類販売許可が厳しく(最近は緩和されつつあるようですが)、酒を提供できないレストランが多かったので、結局酒は客は持ってくるしかないので、この方法が広まったと言われています。


      これに対してレストラン側が酒類を提供している場合は、Licensed(ライセンスあり)という表示がなされます。しかし、ライセンスのある店でも大体平行してBYOを兼ねています(そうやって便利にしておかないと結局客が逃げるのでしょう)。ごく希に持込禁止にしている店もあるようですが、大抵は大丈夫です。持込料を取られることもありますがそれほど高くもないです(もっとも最近は世知辛くなってきて、新たに持込料を取り出したところもあります)。

      レストランの周囲を探せば、町中であればどこでも酒屋(ボトルショップ/リカーショップ)がありますので、自分で好きな酒を購入されてから行かれると良いでしょう。

      店に入り、テーブルの上に酒を置けば、ウエイターがやってきて、ワインならコルクを抜いて注いでくれます。心得たもので、特に何も聞かずに手際良くやってくれます。

      ただし、ワインを2本以上持っていったときや、ワインとビールなどを取り混ぜて持っていったときは、『両方とも同時に開栓しますか』『最初に1本だけ回栓して、あとの一本は冷蔵庫に冷やしておきましょうか?』などと聞いてくれることもあります。このとき、大体両方ないし片方のボトルを指さしたり手で持って運ぼうとしながら尋ねますので意味はわかると思います。
      両方開けて欲しいときは、特にこれという言い方もありませんが、両方/both、一緒に/together、全部一緒に/altogetherなどの単語を強調しておけば通じるでしょう「両方ともお願いします/(We'll have) both(/together)、Pleaseなど」。
      先に一本だけ開けたいときは、開けたいボトルを指差して、「これだけ/just this one、Please」「今のところは/for now」などと言っておけば良いでしょう。また最初の一本を飲み終えて、あとの一本を持ってきて貰うときには、空になったボトルを指さして「もう一本お願いします/Another one,please」と言えば通じます。「とにかく最短距離で通じる」ためのエッセンスとしては、@空になったボトルを指さす(これでワインに関する依頼だというテーマが通じる−これだけで全部通じてしまうこともある)、Aアナザと発音する(さらに欲しいのだなと通じる)ことでしょう。

        ちなみに“another”は便利な単語で、「もう一つの、別の、次の」という意味で、お代わりをするときのキーワードになります。勿論“Could you bring us the wine which I handed you before?”(さきほど渡したワインをもってきてください)など様々な表現があるのでしょうが、慣れてないとこんな長い文章が現場でいきなりスラスラ出てくるものではないですし、こんな複雑な文をいきなり言われたら向こうも戸惑うでしょう。難しいことを言おうとして「えーと」で考え込んでしまうくらいならば、ボトルを指差して「次、お願いね」で基本的な情報としては必要十分(日本の居酒屋でも空のビールビンを持ち上げて示しながら「すみませーん!」と叫べば通じるわけですい)。前述のところと重複しますが、要は全体のシステムが分かっていれば、そのシステムに乗っかって最小限の会話で済むということです。

      こちらのレストランは、客が入る前から全てのテーブルにグラスや食器、ナイフ、ナプキン等が配膳されていて、グラスは通常ワイングラスになってますので、もしビールを持ち込んだ場合、『ビール用のグラスをお持ちしましょうか?』と聞いてくることもあります(このときも大抵グラスを持ちながら聞きますのでわかるでしょう)。

      数の表示の英会話
      全ての想定問答集を作ることは不可能ですが、『グラスは幾つ?』と聞かれたとき『二つ』など数字で答えますが、この数字が曲者で、指で同時に示しておくと良いでしょう(二つだったらジャンケンのチョキのように)。なんでこんなことまでイチイチ言うかというと、理由その1:周囲がざわついていて普通に喋ってたら聞き取りにくいこと(だから頑張って長くて複雑な文章を喋っても半分は聞こえてないので、キメの単語だけ大声で言うのが最も効率的)。
      理由その2は、数字の発音が意外と難しいことです。すなわちtwoが「ツー」になったり(「トゥー」)、threeで舌を歯に挟まなかったり、R音が不十分だったり、sixが「シックス」(「スイックス」)、four、five、sevenのFやVで下唇を噛まなかったりなど、案外と通じないものです。数字は、他でもホテルのルームナンバー、人数を告げるときなど至るところで出てきますので、練習しておいて損はないでしょう。よく笑話にありますが、駅でチケットを買うとき、toとtwo、forとfourとを誤解されたりしますので、正確な発音とともに、常に指で数を示す癖をつけておけば間違いは少ないでしょう。

      最後に、BYOといっても、何も必ず酒を持ち込まなければならない義理はなく、“water、please”で水を貰ってもいいですし、酒とともに水を貰うことも当然できます(辛めの料理のときは水もあったほうが楽)。waterは、アメリカ英語では「ワラ」に近く発音したりしますが、オーストラリアではイギリス系統の英語ですので、ちゃんと「ウォーター」と言います。

      店に入る
      店に入ります。喫茶店の場合は大体適当に座ればよいようですが、レストランの場合は最初にウエイターが応対して、席まで案内してくれるのが通例です。レストランの入り口で最初に聞かれるのは、日本と同じく「人数」です。2人でしたら“Two people”と告げます。当地では2人以上の人数は日常「ピープル」と言い(「ピーポー」と発音した方が通じやすい)、person(パーソン)は1人のときだけ使うようです。パーソンでも別に間違ってるわけではないのでしょうが、「Two persons」と言って中々通じなかった経験もあります。

        店が忙しいときは中々応対してくれないときもありますが、そのうち必ず気づいて聞いてきてくれます。ちなみに、オーダーを聞きにくるのもゆっくりしていて、忘れられているんじゃないかと不安になったりしますが、逆に現地では「日本人はどうしてあんなにセッカチなんだ?」と言われているという話を聞きますので、我々が日本式のサービスに慣れて過ぎているのだということでしょう。食事はゆっくり楽しむものと、のんびり構えていて下さい。

      人数と同時に、“(Did)You,booked?”(予約してありますか?)、“(Do)You,smoke?”(煙草は吸いますか?)と尋ねられることもあります。


      メニューの解読

      さて、テーブルについて、メニューを受け取ります(選んでる最中にBYOの酒を注いでくれる)。ここからが問題です。全部英語で書いてあります。全部英語どころか、タイ語やベトナム語などその国の言葉で書かれていて、英語はその下に補助説明のように書かれていたりします。『これはあかん!』と投げ出さないで下さい。どうせ全文翻訳されたところで、知らない料理ばかりなのです。もともとが日本料理のように完璧に予想なんか出来ませんし、折角やってきて知ってるものばかり食べていたら勿体ないでしょう。大雑把に分かればいいのです。そして、そのために多少のコツを覚えればよいのです。


      まず、メニューをざっと見て全体の構成を把握します(何やら試験対策のようですが)。どこの国の料理でも、ここでは世界の誰がみても分かりやすいようなルールによって書かれている場合が殆どです。

      つまり、「前菜+サイドデイッシュ(スープなど)」→「メインディッシュ」→「主食系(パン/ライスなど)」→「デザート/飲み物」という構成になっているのが殆どです。 順番はともかくも、大体の「食事の構成」としては、「メインのおかず」+「パンやライスなどの主食」を基本にしつつ、「補助的なおかず(前菜など)」「食後のデザート」がお好みで加わるわけです。そして、各集団は段落別に書かれているので容易に判別できます。

      したがって、決める段取りとしては、『まず○○から始めて、サラダは○○で…』と頭から順番に決めてく方法もありますが、組み立てとしては、最初にメインの皿を『鶏肉のカレー系統にしようかな、シーフードがいいかな』と決め、それに『もう一品、サラダも貰おうかな、前菜は食べきれないかな、ライスは欲しいな』と決めていった方が簡単でしょう。オーストラリアの一人分はかなり量があるので、一人一皿づつ、前菜から順番に全部頼んでいたらとても食べきれません。

      このような全体の構成を踏まえるならば、コツとしては「まずメインに何を食べるか決める」「適当に散らして(離れて書いてるものを)頼む」ということになるでしょうか。同じ個所にあるものばかりを頼むと、その昔ブルースリーの映画でありましたが、わけもわからず注文してスープばかりを5皿も食べる羽目に陥ったりします。


      さて、各料理の内容ですが、およそ料理というものは基本的には2つの構成要素で成り立っています。一つは「食材」で、メインディッシュの項では、食材ごとに「肉料理」「魚料理」などとセクションが分かれている場合が多いです。各セクションのタイトルに「Beef(牛肉)」「Chicken(鶏肉)」「Lamb(羊)」「Pork(豚肉)」「Seafood(魚介類)」「Vegetables(野菜)」などと書かれているわけです。キチンと区分されてなくても、食材ごとに固まっています。

      もう一つの構成要素は「調理方法」です。調理の仕方も細かく数えていけば数百千数の方法があるのでしょうが、大別すれば人間の思い付く調理方法など数種類しかありません。すなわち、「Stirfried(炒めてある)」「Curry(カレー状になっている)」「Deepfried(揚げてある)」「Grilled(グリルで焼いてある)」などです。

      結局、各メニューはいずれも「どんな食材を、どういう方法で調理してあるか」に因数分解できるわけで、焦らずそれを見極めていけば、それほど難しくはありません。例えば、タイ料理のメニューとして「Beef」のセクションに、「Nour Pad Num Mun Hoy」という料理がありますが、これだけなら完全にお手上げですが、続いて英語の説明があります。「Stirfried in oyster sauce with broccoli」と書いてあります。よく見ていくと、英語といっても単語を並べてwithで連結してあるだけなのが分かります。単語を単純に前からつなげていけば「牛肉料理+炒める+オイスターソース+ブロッコリー」で、「牛肉とブロッコリーを牡蠣ソースで炒めたもの」ということが簡単に判明するわけです。


        余談ですが、日本人は、意外と食べ物に関しては「好き嫌いのない」民族で、世界中の料理を日常の生活に取り入れていると思います。「日本料理じゃないとダメ」と言ってる人でもスパゲティやカレーは食べてるわけです。これは当たり前のようでいて、世界的にみると珍らしい部類に属するようにも思います。したがって知らない間にかなりの食材や料理の名前を覚えていますので、英語といっても半分は「ああ、あれか」と見当がつくでしょう。また、一般に英語で料理の内容を説明してありますので(そうしないと他の民族にはわからない)、皆目見当もつかないということは比較的少ないでしょう。

        勿論、完璧と言うわけではありませんが、全部分かったところで本当にどんな料理でどんな味なのかは、幾ら説明されても実際に食べてみるまで分からないのです。例えば”Grilled skewered chicken pieces(串に差したチキンをグリルで焼いた一品)”と説明されると、豪快なバーベキュー風のものを想像するかもしれませんが、何のことはない、これは日本料理店での「焼鳥」の英文説明です。他にも「ライスの上に生魚をあしらったもの」=「ちらし寿司」など、「そう言われれば確かにそうだ」ということで、メニューや説明が完璧に解読できたとしてもそこには自ずと限界があるわけです。結局新しい物に触れるということはそういうことなのだ、そこが醍醐味なのだと割り切って、楽しんで下さい。


        ただし、料理の固有名詞までは説明してくれていない場合もありますので注意。例えば「スパゲッティ」「ピザ」などの場合、「スパゲッティとは何か」とまでは説明してくれてません。当たり前のようですが、これが「タコス」になると日本人でも知ってる人と知らない人とに別れるでしょう(ましてや「タコス」とは言わず「Taco」と書いてあるだけ)。これはその料理がどの程度世界的に著名であるかに比例するようで、日本料理でも『寿司は説明抜きで「スシ」と書いても皆知ってるだろうが、天婦羅は説明が必要かな?』という微妙な判断になっていきます。一般に西欧人が多いのでアジア料理については細かに説明してくれてますが、イタリア料理あたりになってくると固有名詞がそのままバンバン飛び出してきて説明なしという場合が多いようです。例えば、パスタの仲間で、ペンネ、フェットチーネ、トッテリーニ、ラビオリーニなどは解説抜きの場合が多いですが、パスタの項目に書いてありますので大雑把に「スパゲッティの仲間」と考えておけばそれで済みますが。「皆知ってるものとして説明しない」という意味では、地元のありふれたオーストラリア料理が最も難解ということにもなります。巻末付録に基本的な食事用単語とメニューの実例を載せてみましたので、暇があったら挑戦してみて下さい(かなり手強いと思いますが)。


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      オーダーの仕方として(「オーダー」で通じます)、無理して料理の名前を読まなくても、ウエイターが横にやってきて一緒にメニューを見ますので、指差していけば足ります。またメニューに料理の番号が打ってある場合が多いので番号で告げるのもいいです。「〜を下さい」と注文する言い方は、“This one、please”でいいわけですが、“I'll have this one”などとも言います。

      「Share(シェア)」
      シェアという重宝する方法があります。宿泊の章で紹介した「シェアメイト」の「シェア」であり、日本語になってる「市場のシェア」の「シェア」ですが、『共有する』という意味で、これが食卓で使われると、『一つのお皿を数人で共有する→中華料理や鍋料理のように皆で箸をつついて食べる状態』という意味になります。シェアをすると何が便利かというと、誰が何を食べると決めてしまわずに少しづつ味見が出来ることですし、2人で3皿と量の調節がきくことです。最初に“We will share”と言えば、向こうも心得た物で、誰がなにということなしにテーブルの真ん中に料理を運んでくれますし、適宜取り皿を持ってきてくれるときもあります(一般にアジア料理の場合は、何も言わなくてもシェアが前提になってるときが多いです)。


      また、オーストラリアの1皿は、日本の感覚でいうと1.5倍から2倍、ときとして3倍近く量があったりしますので食べきれないときが往々にして生じるでしょう。残しても構いませんが、包んで持ち帰ることもできます。『意地汚いと笑われないかしら』と取り越し苦労をされる方もいますが、それは日本の感覚で、こちらでは誰も笑いません。強いて言えば『この料理は大変素晴らしいのだが、不幸なことにお腹が一杯になってしまった。このまま料理を捨てるのは忍びないので、この続きは自宅に帰って楽しみたいのだが』といったところでしょうか。お店に対する賞賛にこそなれ、意地汚いと笑われることはないでしょう。持ち帰りの頼みかたは、“(CanI)take it away、please?”で通じます(「テイクアウエイ」がキーワード)。なお、「ドギーバッグ」という表現も英語にはありまして、これは「うちの犬用に持って帰る(私が食べるのではない)」という意味ですので、やはり「意地汚い」云々のくだらない見栄は英語圏でもあるのか?と興味深いところですが、実際には誰も本当に犬が食べるとは思っておらず(「ドギーバック」と言ってもちゃんとナプキンをつけてくれたりする)、単なる慣用句でしょう。ウエイターが皿を一旦持ち帰って、プラスティックの容器に詰めて持ってきてくれます。なお、BYOで飲み残したワインなども「(CanIhave)コルク?」と言えば、回栓したときのコルクを持ってきてくれますので、栓をして家に持って帰ればいいです。

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      最後にお金の払い方は、ヤムチャと全く同じで、席に着いたまま「チェック、プリーズ」と言えば、請求書を乗せたトレイを持ってきてくれます。もっと簡単な方法は、空に向ってペンでサインするジェスチャーをすれば「勘定」という意味ですから、それでも事が足ります。


        なお、次項以降で述べるテイクアウェイ(持ち帰り)を主としてやっている店や、低廉な店(一人5〜10ドル程度済むような)店の場合は、レジまで行って支払う場合が多いようです。これは他の客の様子を見ていれば分かるでしょう。この場合日本のように伝票を持って行くシステムになっていないのですが(レジの周囲に伝票がある)、レジの人も誰がどの伝票か心得てますので戸惑うこともないでしょう。わからなそうだったら自分の座ってた席を指差せば通じるでしょう。


      チップですが、オーストラリアでは基本的には(半強制的な)チップはありません。払うかどうか、幾ら払うかはあなたの意思ひとつです。「皆はどうしてるのか?」と「横並び意識」で気になるところですが、その「皆」がバラバラですので何とも言えません。一般に通常は払わず、よほど高級店に行くとちょっと払う程度かなという感じですが、先日も新聞でレストランのチップの話題がでたとき、「素晴らしかったら料金の50%を払うことにしている」「自分なりに基準を設けて払う額を決めてる」という人もいれば、「そういうくだらない慣習のないのがオーストラリアのいいところだ」という人もいれば、「チップがウエイター達の副収入になってるとしたら、結果的に彼らの労働条件(正規の給与)を劣悪にするのに手を貸すことになる」から主義として絶対に払わない人など、一概に言えないようです。


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