A:
APLACのHPを立ち上げて以来、一貫してこの系統の質問が多いです。でも、僕もよく分からんのですね。オーストラリアのビザの規定というのは猫の目のように変わっていき、調べて分かったような気がした頃にはもう変わってしまっているという。それでも、知ってる範囲で頑張ってお答えしたいと思います。
さて、「生活」「移住」と言っても色々なパターンがあるでしょうが、ここでは「オーストラリア現地で生計を立てながら住む」ということで話を進めたいと思います。生計を考えないのならば(現地で働くことを考えない)、別に観光ビザでやっていて、更新の度に日本に帰国したり海外旅行したりすれば足りる話でもあります。法的にも実際的にもネックになるのは、「現地で適法に働く」という点です。
簡単に整理すると、移住プロセスが完了するには、
(1)いかにして日本から離れるか(→意思決定、退職、親族関係、年金その他の公的処理)
(2)いかにしてオーストラリアに適法に滞在するか(VISAの問題)
(3)いかにしてオーストラリアで生計を立てるか(就職の問題)
という、大きな3本柱があるように思います。
(1)については、各自それぞれにダンドリをたてて戴くとして、一般に問題なのは(2)と(3)でしょう。
もっとも、個人的には、一連の過程で一番大変だったのは(1)でした。特に仕事関係で、数十件もの継続案件を抱えながら徐々に整理し、引き継ぎうる状態にもっていくのに、やっぱり1〜2年くらい掛かりました(最初は絶対無理!と思ったくらい)。(3)については、これ未だにクリアできてないので(わはは。APLaCなんか止めて就職しよかな=10年経ってもまだ同じことを書いているのが哀しい(-.-))、困ったもんなのですが、あまり精神的にはこたえてないですね。どうかすると日本で生計立てるほうが大変なんじゃないかな。まあ、おいおい述べます。
第一の関門 : VISA(ビザ)
まずビザです。ビザというのは入国許可証のことで、その国に入る入場券みたいなものです。
ただし、誰にでもくれるわけではなく、ビザ発給には様々な条件があります。ビザの原理を簡単に要約すれば、
原則としてその国に利益をもたらす人にしかビザは与えられない
ということです。
利益の度合が明確で直接的なほど簡単にくれます。観光ビザのように「お客さん」の場合は、現地に金を落としていくだけの福の神のような存在ですので、「いらっしゃいませ」と非常に簡単にくれるわけです(ETASという形で簡略化されてます)。同じように、留学などの学生ビザについても、授業料というお金を落としてくれるわけですから比較的簡単ですね。なお、オーストラリアの場合、海外からの留学生というのがドル箱になっており、盛んに広報活動を展開しています。
逆に「来ないで欲しい」と言われているのは、その国に不利益をもたらす人達です。
どこの国でも同じですが、端的には地元民の職や公的秩序を乱す不法移民であり、不法就労者。西ヨーロッパ諸国なんか年がら年中この問題で紛糾してますが、ドドドと低賃金の外国人労働者がやってくるので現地の人間は職に就けないから問題だというわけです。さらに、時折センセーショナルに書き立てられるのが、「福祉狙いの偽装家族」のようなパターンで、一人に永住権を与えてしまえば、その人間を頼って親類縁者(と称する者)が大挙して押しかけ、彼らにも永住権は与えられますし(ファミリー・リユニオンなど)、永住権保持者には失業保険その他の公的扶助が与えられますので(これが結構手厚い)、「福祉金をタカりに来てる」「入管過ぎたら失業保険事務所に直行」などという表現で言われてたりします(多分にオーバーだし、下品な報道なのだが)。しかも、オーストラリアの場合、デ・ファクト(籍は入れてないけど事実上の婚姻関係)というカテゴリーがあったりするから、永住権/市民権保持者が配偶者として名前だけ貸すビジネスやらその手続を請け負う業者やらがいます。
これは極端な例ですが、オーストラリアから見れば、「オーストラリアで働きたい」という人は、潜在的に上記の危険があるわけです。つまり、現地の職を奪うという問題と公的扶助のタダ乗り問題。だから、「ダメ」というのが基本的な姿勢です。で、本来ダメなんだけど、一定の範囲で「限定解除」しましょうとなっているわけで、ここでの話は、いかにしてその限定解除項目をクリアするかという話になっていきます。
限定解除項目(各種ビザのカテゴリー)は、上にあげたリスクがないことをどう証明するかによって決まってくるのでしょう。
以下、ビザの種類に敷衍していくらか述べますが、最初に気をつけていただきたいのが、永住権を含めて、
ビザの原理原則を知ること、です。原理原則論は、即戦力やリアルタイムの情報ではないのでまどろっこしい思いを持たれるかもしれません。しかし、原理原則を理解している方が結局は役に立ちます。数学でも、出来ないヤツ(僕ですけど)に限って公式をベタ覚えしようとするけど、本当に出来るヤツはその場で原理から公式を導き出せます。「なんでそうなるか?」を知ってる人間は間違えない。ビザでも同じ事です。リアルタイムのポイント計算がどうのというのは、数あるサイトで幾らでもできますが、そこで仮に結論が出たとしても、ビザの規定なんかしょっちゅう変わってるから、明日もその計算でいける保証なんか何処にもないです。とりわけ永住権は思い立ってから現実にゲットするまで、早い人でも数ヶ月、平均すれば数年がかりのプロジェクトになります。ゆえに、今日現在しか通用しない情報を断片的に得ることは、一見実戦的に見えつつ、ぜーんぜん実戦的ではないです。原理を知っていれば、応用も自由自在にきくし、また予想もかなり的確に立てられます。こっちの方がずっと実戦的です。
ということで、「なぜこういう条件だと永住権をくれるのか?」「なぜこうも規定がコロコロ変わるのか?」という原理部分に力点を置いて書きます。そして次章以降では、「永住権や移住など、あなたが幸福になるための数ある手段のうちの一つに過ぎない」という大局的視点を書きます。永住権ゲット=成功なんてほど人生はシンプルな○×ゲームではないです。事実、苦労して永住権を取ったはいいけど、結局日本に帰る人もまた沢山いるのです。そして又、帰国したら失敗かというと、そういうものでもないんですね。永住権という「はじめに手段ありき」という発想からスタートすると、容易に「手段の目的化」という落とし穴にはまりがちです。「五目並べだと思いこんでいたら、実は囲碁だった」というゲームの本質の誤解は、やっぱりツライですから。
★技術独立永住権(Skilled Independent Visa) とポイントテスト
永住権の種類は、事業関連、雇用主指名、スポンサー付技術独立、州スポンサー付、地方都市、配偶者、親族呼び寄せ、、などなど、様々な種類があり、また時とともに目まぐるしく変わります。
しかし、数ある永住権の中でも、雇用者や自治体などスポンサーがなく、呼び寄せてもらう親族もおらず、お土産にもっていく事業などもなく、純粋に独立独歩、裸一貫で勝ち取る王道の永住権がこの技術独立永住権(Skilled Independent Visa)です。
「若くて、英語もできて、職にも困らないだけの技能を身に付けている者」であることが証明されれば、オーストラリアにそれほど迷惑はかけないだろうし、起業して現地の人間を採用してくれるかもしれないから、まあ良いでしょうということで与えられるカテゴリーです。5年毎に更新手続きするだけで、あとは「勝手にやんなはれ」でうるさく干渉されず、誰の顔色を窺わなく済みますので、取れるものなら取りたいビザです。
しかし、それだけに取るのは難しい。@年令点、A英語点、B職業点の3つの観点から点数をはじきだし、総合○点以上なら合格というポイントテスト方式になってますが、総合ボーダーラインや各種の配点が猫の目のように変わるわ、この世に無数にある職業をいかにランク付けするかの職業点配点がブラックボックスになっているわで、「これなら大丈夫」という判定は専門の業者さんでもないと中々予想がつかないです。一応目安となる職業リストもありますけど。
ただ大筋の傾向として言えるのは、(1)学歴に制限はないものの実際には高卒より上の資格がないとダメ、(2)実際に職務経験がないとダメ、(3)18歳から44歳までの年齢にあり、(4)職業点の採点は、役職名ではなく具体的に何をやってきたかという実戦スキルが重視される、(5)唯一短時間の努力で向上できるのが英語点でIELTSテストで6.0以上は欲しい(出来れば7点が欲しい)、などです。ただこれも色々細かな「ボーナスポイント」やらの修正があります(後述)。
2003年9月時点のボーダーラインは115点でした。95年取得の僕らのときの100点時代に比べたらかなり厳しくなってます(もっとも一旦115点だったのが110点まで下がり、また115点にあがった)。前回更新時の2006年3月時点ではなんと120点まであがっています(2010年3月現在でも同じ120点)。オーストラリアは移民先として世界的に人気が高いので、ボーダーを上げてもそれでもそれをクリアする人材は世界中に沢山いるということです。
僕もこれまで、十数人、あるいは何十人という永住権取得者 or 希望者の方とお話ししてきましたが、やっぱりそれなりに皆さん苦労されています。若くて+十分スキルがあって(しかもオーストラリアで評価されて)+英語力バッチリという”三冠王”も、いないことはないですけど、少ないです。なんせスキルを身に付けるまでに若くなくなってしまうし、スキルを身につけている間は忙しくて英語を勉強しているヒマがなかったりします。かといって、留学して英語をやってるうちに、スキル点が無くなってしまうとか(例えば過去18ヶ月中12ヶ月その職業に従事していること、などという条件もあったりしますから)、あちらを立てればこちらが立たずというのが基本的な状況だと思います。
猫の目のように変わる規定
そしてまた、これらの条件は、時の政策判断でコロコロ変わります。これはもう本当に「いい加減にしろ」と言いたくなるくらい変わります。
例えば、これまでオーストラリアはバブル景気で調子がよく、人手不足、特に熟練労働者不足が叫ばれているので技術移住については門戸を広げていました。また、オーストラリアの輸出産業の柱になるのは大学などの教育産業です。前連邦政府の大学への補助金カット政策(各大学は自分の甲斐性で稼ぎなさい政策)により、各大学とも留学生だのみになってきており、この大学経営を支援するために、2年以上ビジネス学校や大学に通った場合永住権が取れるという新卒者永住権も作られています。
この新卒者永住権は、最終的には技術独立移住永住になるのですが、そのための難関条件である「実務経験」が、オーストラリアの学校に通うことで補助 or 代替されるものです。例えば、2年間オーストラリアの学校(これも条件があるが)に通えば、18か月暫定的にオーストラリアに滞在して仕事をすることが出来、この期間に必要とされる実務経験を積む。あるいは、申請する職業に関連する学校のコースに2年間通い、卒業後すぐに申請すれば実務経験が免除されるというものです。それだけではなく、オーストラリアが必要としている職業リスト
(MODL=Migration Occupations in Demand List)に載っていた場合、15点のボーナス点を獲得することが出来ました。
このルートが、ここ数年間皆に愛用されていたオーストラリア永住への近道であり、「調理師や美容師の学校にいって永住権を取る」というルートでした。実際には、実務経験免除そのものよりも、MODLのボーナス点15点というのが非常にデカかったわけです。どだい120点というボーダーが超人的なので、かなり出来る人でも「あと5点足りない」で涙を飲んでたところ、一気に15点ボーナスというのは途方もないわけです。ただし、これも楽ではなく職業関連の学校に通学した後、査定機関
TRA(Trade Recognition Australia)に技術査定を受けるのですが、そのためには「900時間の実務経験」が要求されたりします。しかし、MODL点を使えば学歴が無くとも、年齢が高くても、永住権ゲットの道が開かれていました。
前回の更新の時、「しかし、これも景気が変わったり、政権が変わったりしたらどうなるかわかりません。あくまで一過性の政策であるということを頭に入れておいてください」と書きましたが、やはり懸念したとおり、2010年2月、このMODL制度そのものが全廃になってしまいました。で、どうなるの?というと、新職業リストが4月頃に発表になるそうです。独立移住永住権申請の基礎構造そのものは変わりませんが、これまでのような巨大な抜け道は無くなったということです。
しかしながら、この種のビザ規定の改廃は決して珍しいことではありません。
このMODLの前にも、オーストラリアの大学に1年以上通ったらスキル点免除という特典を作っていたのですが、2003年からいきなり1年が2年に引き伸ばされてます。これは、他人事ながら「ひどいことするな」と思いましたね。二階に登って梯子を外されるようなものですからね。実際、そういう目にあった知人も何人も知ってます。さらに、会計士やIT関連が持てはやされたと思ったら、そうでもなくなったり。これも僕の知人ですが、日本で臨床医をやっていたけど、オーストラリア滞在時には医師過剰だということで、医者の職業点はなんとゼロ、もう端的に「来るな」ということです。仕方なしに大学で会計学をやってましたが、やはり途中で馬鹿馬鹿しくなって帰国してしまいました。ところが2010年になったら、医師が足りないということで、医師だったら優遇的に永住権が取れるようになってます。
ここまで180度手の平を返されると、ほんと馬鹿馬鹿しくなりますが、しかし、見方を変えればそれだけ時の政府が経済動向にビビッドに反応しているということでもあります。今回のMODL廃止についても、MODL制度そのものがオーストラリア社会で多大な批判を浴びてました。僕らがそうするように、世界中の人がオーストラリア通学や資格取得を「永住権のため」と割り切ってやっており、実際にこういう制度を設けたけど優秀なシェフが増えたかというとそうでもなく、永住権を取得した大半の者が別の仕事をしているのが実情だったりします(ネパール人がやり玉にあがってましたね)。さらに、「実務経験900時間」をアコギな雇用者から逆手に取られ、無給ないしは時給200円とかの奴隷状態で働かされている実態などもオーストラリア現地の新聞でセンセーショナルに書かれたりしていました。
ただ、これによってオーストラリアの教育産業、とくにビジネス学校が儲かっていたのは事実でして、実際同じビジネス学校でも永住権につながるコースは倍くらい高かったですもんね。今回のMODLの改廃は時代の趨勢とはいえ、業界には打撃でしょう。特に、昨年あたりから、それまで急増していたインド人学生がオーストラリアで不快な目にあったということで、インド内部での政府やマスコミの反オーストラリア熱は高まっており、インド人学生の減少が懸念されてますから、学校業界はダブルパンチでしょう。ということは、語学学校でもビジネス学校と併設しているところは大丈夫かなと、対岸の火事だったのがこっちに燃え移ってきたりします。風が吹けば桶屋が儲かる式にどこでどんな影響があるのか分かりません。
永住権獲得に燃えて通学していた人にとっては、またしてもハシゴを外されたわけで、「相変わらずヒドいわ」と思ったりもするのですが、でも、よく考えてみたら別にヒドいことではないのですね。オーストラリア政府はあくまでオーストラリア人のための存在しているわけで、別に蛇頭でもなんでもないんだから、入国希望者のニーズに即して動かねばならない義理はないです。その時々のオーストラリアの国情に合わせて政策決定していくだけのことであり、永住を希望する者がそれに合わせていかねばならないのは原則でしょう。そしてそれはいつの時代においてもそうだったのですから。
今後の動向ですが、新しい職業リストが発表されるまで何とも言えませんが、永住権を一切打ち切るわけでも何でもなく、むしろ近道が無くなった分、王道の独立移住が膨らむかもしれません。難しくなってるとはいえ、まだまだ頑張れば手の届く範囲にあるとは思います。
オーストラリアの人口は急増しており、その増加率はインドや中国すらをも越えると言われます。現在420万人のシドニー人口も、あと25年で600万人になると予想されています。ということは人口過剰になり、近い将来「もう要らん」という日がくるんじゃないかという気もしますし、アメリカのように純粋に抽選ということになるかもしれません。今から10年以上前を振り返れば、「あの頃は楽だったんだよね〜」とか言ってますけど、今から10年後には又現在を振り返って、同じ事を言ってるだろうという気がします。
プロの助力の必要性
永住権取得というのは、水上スキーをやりながら水上の標的を射撃するようなもので、自分も揺れてるし、マトも揺れているという、かなり流動性が激しいものです。それだけにリアルタイムの情報、それも徹底的に正確な情報を確保しておいて下さい。出来れば将来予測も欲しいです。原理原則という全体像を把握した次は精密なデテールです。大きな戦略(発想)、緻密な戦術(実行)。大きな戦略眼が必要なのは、ゴールまでの道筋で事情変更があっても柔軟機敏に対処できる「ふくらみ」のあるプランが立てられるからです。そして実行にあたっては、ミリ単位に精密な設計図が必要です。
具体的には、専門のプロの方にしっかり査定してもらうべきでしょう。
リアルタイムのビザ情報は、
オーストラリア大使館や
移民局のホームページが総本店です。しかし前者は概括的すぎるのと、後者はあまりに膨大で、クリック&リンク迷宮に入り込み、結局なんのこちゃか結論がよう分からんことになりがちです。この種の情報というのは、パソコンと同じで、サードパーティの方が親切で分かりやすいです。だから、ビザ代行業者さんに聞いたほうが良いよと。実際、業者さんのホームページの方が親切で分かりやすいです。シドニーにも日本人がやっている業者さんがいくつかありますので、ご覧になったらいいと思います。老舗では
NBCA、
スタッフサービスあたりがあげられるでしょう。
ビザの専門業者さんは、どこでも無料相談などをやっいてますが、出来ればキチンと自分達のプロフィールなどの詳細なデーターをまとめて、料金を払って査定してもらうべきです。料金といってもそう大したことないでしょうから(査定だけだったら1−2万円くらいじゃないかな)、投資する価値はあると思いますよ。大体、永住権が取れそうかどうかの査定で何が難しいかというと、何百とある業種/職種の中から、自分の場合はスキル点何点なのかの判定であり、またその時々のオーストラリアで高度に求められている職種に該当するかの判断です。これは職業別電話帳のように細かく、見てて頭が痛くなりますし、素人が読んで理解して当てはめられるものではないです。また猫の目のように変わります。移民局に登録している専門の業者さんの場合、移民局主宰のセミナーが年に何度かありますし、また「近い将来こう変わるよ」という事前告知もなされますから情報が早いです。また、経験豊富な実務家ならではのカンみたいなものもあるでしょう(この点はあんまりうるさく言われないけど、ここは厳しく審査されるという=税務署の審査と同じ)。
それに無料相談でやれるのは限界がありますし、どうしても概括的な話になります。一家で移られて、現地の学校にいったり、ビザのためのまた別の学校や大学にいったりしながら、最後の最後で、「あなたの場合は例外にひっかかるからダメよ」と言われてしまったら、それまでの費用と労力が無駄になります。おそらく数千万単位の損害になるかもしれません。僕の知人も一家四人でやってきて永住権を取るために頑張っておられた方がいましたが、これまでに2000万くらい遣ったと言ってました。最高に調べて、努力していてもなかなか取れない永住権です。また、案外ひょこっと取れてしまうのも永住権です。出来ることは全てやるというくらいの意気込みで考えておかれるといいでしょう。
ということで、インターネットサーフィンをして、僕らのような素人がチョロチョロ書いてる情報を断片的に集めて、それだけで一生にかかわる決断をされるのだけはお止めになった方がいいと思います。ありったけの全知全能を尽くして完璧を期してください。そのなかでもグランドデザインは設計図そのものですから、いい加減な噂や希望的観測で作らないように。
それに、これは弁護士としての僕の経験でもあるのですが、向こうもプロですから、プロというのは1円でも貰ったら「絶対に嘘は言えない」という凄いプレッシャーがかかるのですよ。分からんところは調べなければならないし。これが無料だったら「さあ、いろいろなケースがありますからねー」で誤魔化せるんですよ。そんな一般論的なアドバイスを幾ら聞いても意味ないです。やっぱり自分の具体的事情に合わせて、可能な限り正確な答が欲しいし、そのプレッシャーをかけるためにも、積極的に払った方がいいです。結局は得ですって。
また、余裕があれば、複数の業者さんに聞いてみたらいいです。ビザの見通しはそんなに数学的にビシッと出てくるものではなく、曖昧なグレー
領域があります。移民局の担当者がそこをどう判断するか?という「見通し」です。この見通しが楽天的な人と、悲観的な人がいて、それが回答に微妙に影響するのですね。ですので、客観的に把握するためにも、何件かに聞いてみるのは意味のあることだと思います。立体的にも理解できますし。
あと、多少なりとも払って一回そうやって見てもらったら、正規のクライアントになりますし、顧客名簿に載ります。だから、あとで追加でものを聞くときに便利ですよ。ちょっとした学生ビザのことでも「わからんから、聞いちゃえ」ってやりやすいんです。「いつもお世話になってます、田村ですけど」で話が通じるので楽ですし、向こうも粗略に扱えないでしょうし、またデーターもあるので正確に答えてくれるでしょう。
★雇用者指名永住権
ワーキングビザのようでありながら永住権であるというわかりにくいカテゴリー。まず特定の雇用者に雇われるという意味ではワーキングビザに似てるのですが、雇用者が「この人でないとダメ!」「他に代替のきかない人材である」と主張立証するパターンです。ワーキングビザが「不法就労じゃないよ」という程度の消極的な立証であるのに対し、こちらは「代え難い有能な人物」という積極的な立証という点で違います。この積極的な立証が、インディペントの職業点立証の代わりになるようなものなのでしょう、「そこまで有能な人材だったら居ていいよ」ということで、永住権が与えられるのでしょう。
永住権ですから、指名してくれた雇用主から首になっても退去する必要はありませんし、2年なんたらという期間制限もないです。そこまで見込んで指名してくれた雇用者がクビといえば、その時点で失効しちゃう方が道理が通ってるようにも見えるのですが、そうならないのは、それが有能性の一般立証だからでしょう。一人の雇用者をそこまで言わせるほどに有能ならば他の会社にも容易に就職できるだろうということ。実際、単に指名しただけでは足りず、雇用主は一定期間、公の場で求人広告を出す必要があり、「公に募集したけど、やっぱり、これが出来る人材はオーストラリアの労働市場にはいませんでした」という事実立証もしなきゃならないわけです。逆にいえば、雇用者としてはアレコレやらなならんことがあって、面倒臭いビザでもあります。
★その他の永住権の種類
その他永住権の取り方としては、地方スポンサービザというのがあり、言わば独立移住の補欠入学みたいなものです。オーストラリアの中でも比較的地方で、人口を増やしたいエリアに2年以上住み、ちゃんと仕事もしていたら、永住権申請を認めるという、オーストラリアの過疎化対策として認められているビザです。これにもいろいろ制約はあり、オーストラリアの学校に通うか、一定の職業経験があるかどうか、年齢、そして当然ながら英語点、さらに各自治体にスポンサー申請をしなければなりません。
ご自分で事業を経営されてる方は、事業者移住ビザもあります。ただしこれは一種の「企業誘致」のようなもので、個人資産数千万とか年商1億とかかなりハードルは高いです。
以上は経済系の永住権(経済的利益をオーストラリアにもたらすという観点から認められる)ですが、それとは全く関係なく、人道系の永住権もあります。端的なのは、「家族がバラバラに暮すのは可哀想」ということから、家族の誰かがオーストラリアで永住権を取ったこと、あるいはオーストラリア永住権保持者と親族関係になること(国際結婚など)による家族移住というパターンですね。
このように永住権の種類は山ほどあり、それらが細かく規定され、且つ年がら年中改正されているので、僕もよく分かりません。というか専門家でないともう分からないと思います。上記は一応の概略まで。
★永住権以外で、オーストラリアで働くビザ/ビジネスビザ
これは日本企業の現地駐在の方など、よく見られるパターンですが、雇用者がスポンサーになることによって与えられるビザです。確実に特定の雇用主のもとで働くことが明らかにされていることから、少なくとも公的扶助のタダ乗りのリスクはありませんし、現地の労働市場を乱す恐れも少ないということでしょう。
問題は、(1)スポンサーになってくれる雇用主を探し出すこと、(2)スポンサーが下りたら終わり(クビになったら終わり)ということであり、さらに永住権ではないので、期間に制限があること(2年+延長2年、管理職は4年+4年でしたか)でしょう。
最近は、このワーキングビザがおりにくくなってます。発給できる職種も限定され、且つ最低年棒制限なんてのもカマされてきてますので、昔のようにワーホリや学生ビザからビジネスビザを取ってそのまま居続けるということがやりにくくなってます。というか、オーストラリアのビジネスビザは永住権よりも難しくなっているとも言えます。
一番簡単にビジネスビザを取る方法は、日本で就職してオーストラリアに赴任することです。日本も就職氷河期で大変かもしれませんが、ビザのない人間がオーストラリアに来て、厳しい制限をクリアしてまで現地企業に「是非、キミが欲しい」とまで言わせるのは至難の業でしょう。まあ、いい雇用主に出会えばそれも可能ですが、幾ら雇う気満々でいてくれても、その企業が要件を満たさなかったらダメです。もっとも日本で商社やメーカーに就職できたとして、それでめでたくオーストラリアに赴任させてくれるという保証は全くありません。
いずれにせよ、相手(雇用主)あってこその話であり、その成否は多分に偶然とか運の要素が大きい。ポイントさえ積み上げていけば誰でも取れる永住権の方がまだしも楽だと言われるユエンです。
その他「働けるビザ」としては、学生ビザの場合は週20時間までならば認められていますし、ワーキングホリデーの場合は同じ場所に6ヶ月までならば働けます(3か月から延長されました)。こうして他のビザの激戦状況をみると、学生ビザ、特にワーホリビザがいかに優遇された特権ビザであるかが分かります。年齢以外にこれといってなーんの審査も条件も要らないんだから。それでいて不法労働者扱いされず、堂々と働けるんですから、もう貴族みたいなものです。
以上がビザの概要ですが、ビザといっても実は100種類以上あるらしく、本当はこんなものではないのでしょう。また個別的な解説や類型も刻々と変化していくでしょうから、あくまで目安としてお考え下さい。
ただ、物の考え方としては、労働ビザのような
一時滞在ビザと永住権のような
永住ビザの二種類があるということ(ビザ申請の結果がでるまでの間、滞在許可されるブリッジビザという過渡的なものもありますが)を押さえておいて下さい。そしてテンポラリー(一時滞在)かパーマネント(永住)かの違いは、単に有効期限の差だけではなく、所得税の税率、メディケアなどの国民健康保険の加入資格、年金などの公的扶助の受給資格その他で結構大きな差があります。永住権保持者の場合、選挙を除いてほぼ国民と同じように扱われますが、テンポラリーの場合はなかなかに厳しいです。
あと、ビザについて総じて言えることは、
英語条件が年々厳しくなっていることです。今回のMODL改廃でも、移民大臣発言の裏にチラチラしているのは、英語ネィティブ、ないし準ネィティブのバリバリのエリートが欲しいって本音です。どのような永住権でも、IELTS(という英語試験)5点は必要ですし、普通は6点、さらに7点取るとボーナスが貰えるから7点は欲しいです。大学入学資格でも7点とか7..5点とかとんでもなく高いハードルの学部もあります。しかし、僕の知り合いも職業的にはバリバリ成功しながらも、IELTS5点がついに取れないまま日本に帰国した人もいます。5点ですらもそれほどまでに難しい。6点だったら普通の語学学校でトップクラスになって下さい。IELTS1点上げるのに語学学校に1年通学するというのが通り相場ですから、7点というのがいかに高いか。年齢、職業、英語のうち、年齢はどう努力してもタイムマシンがない限り点数UPするわけないし、職業点は大きな人生の枠組みに関わるから小刻みな改善など出来ない。そうなると、今からでも努力でなんとかなるのは英語だけです。逆に言えばそれすらも取りこぼすようでは話になりませんから。
ところで、やたら複雑な制度のせいでしょうか、移民局の現場でも実務処理をめぐって結構混乱してたりするそうですし、窓口レベルでいうことをあまり鵜呑みにしない方がいいでしょう。オーストラリアの処世術としては、「3回聞くまで(聞いても)安心するな」ですから。ですので、専門の業者さん、それも品質に信頼がおける日系の業者さんに聞く方が安全だと思います。
では、引き続いて生計の立てかた、さらに以上の所与の前提のもとにいかなる戦略を取ればいいのか、考えてみたいと思います。
→次(第二の関門:生計)につづく