よくある質問と回答
オーストラリアに移住したいのですが
(97年3月20日)
(99年10月微訂)
(2003年9月改訂)
(2006年2月改訂)
Q:
オーストラリアで生活(移住)したいのですが、何をどうすればいいのか全く分かりません。
A:
APLACのHPを立ち上げて以来、一貫してこの系統の質問が多いです。でも、僕らもよく分からんのですね。それでも、知ってる範囲で頑張ってお答えしたいと思います。本来、独立した項目として「生活マニュアル上級編」に載せるべきと思っているんですが、内容が煮詰まらないままグズグズしています。そこで、例によって、不完全でもいいから現時点の到達点としてここにまとめておくことにします。
さて、「生活」「移住」と言っても色々なパターンがあるでしょうが、ここでは「オーストラリア現地で生計を立てながら住む」ということで話を進めたいと思います。生計を考えないのならば(現地で働くことを考えない)、別に観光ビザでやっていて、更新の度に日本に帰国したり海外旅行したりすれば足りる話でもあります。法的にも実際的にもネックになるのは、「現地で適法に働く」という点です。
簡単に整理すると、移住プロセスが完了するには、
(1)いかにして日本から離れるか
(→意思決定、退職、親族関係、年金その他の公的処理)
(2)いかにしてオーストラリアに適法に滞在するか(VISAの問題)
(3)いかにしてオーストラリアで生計を立てるか(就職の問題)
という、大きな3本柱があるように思います。
(1)については、各自勝手にダンドリかまして戴くとして、一般に問題なのは(2)と(3)でしょう。なお、個人的には、一連の過程で一番大変だったのは(1)でした。特に仕事関係で、数十件もの継続案件を抱えながら徐々に整理し、引き継ぎうる状態にもっていくのに、やっぱり1〜2年くらい掛かりました(最初は絶対無理だと思ったくらい)。(3)については、これ未だにクリアできてないので(わはは。APLaCなんか止めて就職しよかな)、困ったもんなのですが、あまり精神的にはこたえてないですね。どうかすると日本で生計立てるほうが大変なんじゃないかな。まあ、おいおい述べます。
第一の関門:VISA(ビザ)
まずビザについての概説的な話やビザ関連サイトのリンク、さらに僕らの永住権取得体験記については、
生活体験マニュアルのコラム
に書いてありますのでご参照下さい。
ここでも簡単に整理すると、ビザ(入国許可証)というものは、その国にとって利益になる人しか与えられないわけで、利益の度合が明確で直接的なほど簡単にくれます。つまりは観光ビザのように「お客さん」の場合は、現地に金を落としていくだけの存在ですので、「いらっしゃいませ」と言ってくれるわけで、非常に簡単にくれるわけです(最近はいちいちビザという形でなく簡略化されてますが)。同じように、留学などの学生ビザについても、授業料というお金を落としてくれるわけですから比較的簡単ですね。なお、オーストラリアの場合、海外からの留学生というのがドル箱になってまして、現地の人間の授業料にくらべて2倍〜4倍もボッタくってるわけで(TAFEなんか100倍くらい)、早いところ国際競争で負けて(アメリカとかに食われつつあるけど)価格破壊した方がいいと思いますね。
逆に「来ないで欲しい」と言われているのは、どこの国でも同じですが不法移民であり、不法就労者。西ヨーロッパ諸国なんか年がら年中この問題で紛糾してますが、ドドドと低賃金の外国人労働者がやってくるので現地の人間は職に就けないから問題だというわけです。さらに、時折センセーショナルに書き立てられるのが、「福祉狙いの偽装家族」のようなパターンで、一人に永住権を与えてしまえば、その人間を頼って親類縁者(と称する者)が大挙して押しかけ、彼らにも永住権は与えられますし(ファミリー・リユニオンなど)、永住権保持者には失業保険その他の公的扶助が与えられますので(これが結構手厚い)、「福祉金をタカりに来てる」「入管過ぎたら失業保険事務所に直行」などという表現で言われてたりします(多分にオーバーだし、下品な報道なのだが)。しかも、オーストラリアの場合、デ・ファクト(籍は入れてないけど事実上の婚姻関係)というカテゴリーがあったりするから、永住権/市民権保持者が配偶者として名前だけ貸すビジネスやらその手続を請け負う業者やらいたりします(らしいです)。
これは極端な例ですが、オーストラリアから見れば、「オーストラリアで働きたい」という人は、潜在的に上記の危険があるわけです。つまり、現地の職を奪うという問題と公的扶助のタダ乗り問題。だから、「ダメ」というのが基本的な姿勢です。で、本来ダメなんだけど、一定の範囲で「限定解除」しましょうとなっているわけで、ここでの話は、いかにしてその限定解除項目をクリアするかという話になっていきます。
限定解除項目(各種ビザのカテゴリー)は、上にあげたリスクがないことをどう証明するかによって決まってくるのでしょう。
★インディペンデント(独立)永住権 Skilled Migration
「若くて、英語もできて、職にも困らないだけの技能を身に付けている者」であることが証明されれば、オーストラリアにそれほど迷惑はかけないだろうし、起業して現地の人間を採用してくれるかもしれないからいいかもしれないということで与えられるカテゴリーです。5年毎に更新手続きするだけで、あとは「勝手にやんなはれ」でうるさく干渉されず、誰の顔色を窺わなく済みますので、取れるものなら取りたいビザです。
しかし、それだけに取るのは難しい。前記リンクのビザの項目でも書きましたが、@年令点、A英語点、B職業点の3つの観点から点数をはじきだし、総合○点以上なら合格ということになってますが、総合ボーダーラインや各種の配点が猫の目のように変わるわ、この世に無数にある職業をいかにランク付けするかの職業点配点がブラックボックスになってますので、「これなら大丈夫」というライン設定は、専門の業者さんでもないと中々予想がつかないです。一応目安となる職業リストもあります(後述)。
ただ大筋の傾向として言えるのは、(1)大学出てないとダメ、(2)実際に職場経験(直近3年以上だったかな)がないとダメ、(3)34才までが一つの分水嶺で35才を過ぎるとガクンと年令点が落ちるのでほぼ不可能(だったのですが大分要件が緩和されて45歳までなら10点下がるだけ)、(4)職業点の採点は、役職名ではなく具体的に何をやってきたかという実戦スキルが重視される、(5)唯一短時間の努力で向上できるのが英語点でIELTSテストで6.0以上は欲しい、などです。ただこれも色々細かな「ボーナスポイント」やらの修正がありますので要注意。
2003年9月現在のボーダーラインは115点とか聞きますので、9年前の僕らのときの100点に比べたらかなり厳しくなってます(もっとも一旦115点だったのが110点まで下がり、また115点にあがった)。2006年3現在、なんと120点まであがっています。オーストラリアは移民先として世界的に人気が高いので、ボーダーを上げてもそれでもそれをクリアする人材は世界中に沢山いるということですね。
いずれの時の政策判断でコロコロ変わりうるものですし、最終的には何とも言えません。例えば、これまでオーストラリアはバブル景気で調子がよく、人手不足、特に熟練労働者不足が叫ばれているので技術移住については門戸を広げようとしています。また、オーストラリアの輸出産業の柱になるのは大学などの教育産業です。連邦政府の大学への補助金カット政策(各大学は自分の甲斐性で稼ぎなさい政策)により、各大学とも留学生だのみになってきており、この大学経営を支援するために、2年以上ビジネス学校や大学に通った場合永住権が取れるという新卒者永住権も作られています。しかし、これも景気が変わったり、政権が変わったりしたらどうなるかわかりません。あくまで一過性の政策であるということを頭に入れておいてください。ほんと、バーの高さが良く見えないままハイジャンプするようなもので、精神衛生上宜しくないですのですが、せめてリアルタイムに正確な情報を確保しておいて下さい。
詳しいことは
オーストラリア大使館
、ビザ代行業者さんに聞いたほうがいいです。また、
前述の移民局のホームページ
のにも情報が載っています。 でも、ビザの代行業者さんのホームページが一番親切ですね。シドニーにも日本人がやっている業者さんがいくつかありますので、ご覧になったらいいと思います。老舗では
NBCA
、
スタッフサービス
あたりがあげられるでしょう。
僕もこれまで、十数人、へたすれば何十人という永住権取得者あるいは希望者の方とお話ししてきましたが、やっぱりそれなりに皆さん苦労されています。若くて+十分スキルがあって(しかもオーストラリアで評価されて)+英語力バッチリという”三冠王”も、いないことはないですけど、少ないです。なんせスキルを身に付けるまでに若くなくなってしまうし、スキルを身につけている間は忙しくて英語を勉強しているヒマがなかったりします。かといって、留学して英語をやってるうちに、スキル点が無くなってしまうとか(例えば過去18ヶ月中12ヶ月その職業に従事していること、などという条件もあったりしますから)、あちらを立てればこちらが立たずというのが基本的な状況だと思います。
しつこく書きますが、ボーダーラインが上下する以上に、ボーナス点がついたり消えたりします。例えば、オーストラリアの大学に1年以上通ったらスキル点免除なんていう特典があったのが、2003年からいきなり1年が2年に引き伸ばされました。これは、他人事ながら「ひどいことするな」と思いますよ。二階に登って梯子を外されるようなものですからね。実際、そういう目にあった知人も何人も知ってます。
このように永住権ゲットというのは、走り高飛びのように固定的なバーを飛び越えればいいというのではなく、水上スキーをやりながら水上の標的を射撃するようなもので、自分も揺れてるし、マトも揺れているという、かなり流動性が激しいものです。ですので、専門のプロの方にしっかり査定してもらったうえ、キチンと全体構造を把握して、大きな戦略を立ててください。そして、ゴールまでの道筋で事情変更があってもこれに機敏に対処できるように「ふくらみ」のあるプランを立ててください。
ビザの専門業者さんは、どこでも無料相談などをやってますが、出来ればキチンと自分達のプロフィールなどのデーターをまとめて、料金を払って査定してもらうのがいいです。なぜなら無料でやれるのは限界がありますし、どうしても概括的な話になります。でも、これは一生に関わる重大なことですので、地図は正確であるに越したこと無いです。一家で移られて、現地の学校にいったり、ビザのためのまた別の学校や大学にいったりしながら、最後の最後で、「あなたの場合は例外にひっかかるからダメよ」と言われてしまったら、それまでの費用と労力が無駄になります。おそらく数千万単位の損害になるかもしれません。
僕の知人も一家四人でやってきて永住権を取るために頑張っておられますが、これまでに2000万くらいつかったと言ってます。最高に調べて、努力していてもなかなか取れない永住権です。また、あんがいひょこっと取れてしまうのも永住権です。ですので、出来ることは全てやるというくらいの意気込みで考えておかれるといいでしょう。
最初のグランドデザインが1ミリ違っただけで、数年後には数メートルの差になります。
出来るだけ正確に見通しを立てることが大事だと思いますから、最初に専門家にお金を払って査定してもらうのは大事なことだと思います。料金といってもそう大したことないでしょうから(査定だけだったら1−2万円くらいじゃないかな)、投資する価値はあると思いますよ。大体、永住権が取れそうかどうかの査定で何が難しいかというと、何百とある業種/職種の中から、自分の場合はスキル点何点なのかの判定であり、またその時々のオーストラリアで高度に求められている職種に該当するかの判断です。これは職業別電話帳のように細かく、見てて頭が痛くなりますし、素人が読んで理解して当てはめられるものではないです。また猫の目のように変わります。移民局に登録している専門の業者さんの場合、移民局主宰のセミナーが年に何度かありますし、また「近い将来こう変わるよ」という事前告知もなされますから情報が早いです。また、経験豊富な実務家ならではのカンみたいなものもあるでしょう(この点はあんまりうるさく言われないけど、ここは厳しく審査されるという=税務署の審査と同じ)。
ですので、インターネットサーフィンをして、僕らのような素人がチョロチョロ書いてる情報を断片的に集めて、それだけで一生にかかわる決断をされるのだけはお止めになった方がいいと思います。全知全能を尽くして完璧を期してください。そのなかでもグランドデザインは設計図そのものですから、いい加減な噂や希望的観測で作らないように。荷重計算も何も知らないで自分で図面引いてビルを建てるようなものです。
それに、これは弁護士としての僕の経験でもあるのですが、向こうもプロですから、プロというのは1円でも貰ったら「絶対に嘘は言えない」という凄いプレッシャーがかかるのですよ。分からんところは調べなければならないし。これが無料だったら「さあ、いろいろなケースがありますからねー」で誤魔化せるんですよ。そんな一般論的なアドバイスを聞いても具体的に方針がたてにくいです。やっぱり、出来るだけ正確に答えて欲しいし、そのプレッシャーをかけるためにも、積極的に払った方がいいです。結局は得ですよ。
また、余裕があれば、複数の業者さんに聞いてみたらいいです。ビザの見通しはそんなに数学的にビシッと出てくるものではなく、曖昧なグレー 領域があります。移民局の担当者がそこをどう判断するか?という「見通し」です。この見通しが楽天的な人と、悲観的な人がいて、それが回答に微妙に影響するのですね。ですので、客観的に把握するためにも、何件かに聞いてみるのは意味のあることだと思います。立体的にも理解できますし。
あと、多少なりとも払って一回そうやって見てもらったら、正規のクライアントになりますし、顧客名簿に載ります。だから、あとで追加でものを聞くときに便利ですよ。ちょっとした学生ビザのことでも「わからんから、聞いちゃえ」ってやりやすいんです。「いつもお世話になってます、田村ですけど」で話が通じるので楽ですし、向こうも粗略に扱えないでしょうし、またデーターもあるので正確に答えてくれるでしょう。
★ワーキングビザ(ビジネスビザ)
これは日本企業の現地駐在の方など、よく見られるパターンですが、雇用者がスポンサーになることによって与えられるビザです。確実に特定の雇用主のもとで働くことが明らかにされていることから、少なくとも公的扶助のタダ乗りのリスクはありませんし、現地の労働市場を乱す恐れも少ないということでしょう。
問題は、(1)スポンサーになってくれる雇用主を探し出すこと、(2)スポンサーが下りたら終わり(クビになったら終わり)ということであり、さらに期間制限があること(2年+延長2年、管理職は4年+4年でしたか)でしょう。
最近は、このワーキングビザがおりにくくなってます。発給できる職種も限定され、且つ最低年棒制限なんてのもカマされてきてますので、昔のようにワーホリや学生ビザからビジネスビザを取ってそのまま居続けるということがしにくくなってきています。
★雇用者指名永住権
ワーキングビザのようでありながら永住権であるというわかりにくいカテゴリー。まず特定の雇用者に雇われるという意味ではワーキングビザに似てるのですが、雇用者が「この人でないとダメ!」「他に代替のきかない人材である」と主張立証するパターンです。ワーキングビザが「不法就労じゃないよ」という程度の消極的な立証であるのに対し、こちらは「代え難い有能な人物」という積極的な立証という点で違います。この積極的な立証が、インディペントの職業点立証の代わりになるようなものなのでしょう、「そこまで有能な人材だったら居ていいよ」ということで、永住権が与えられるのでしょう。
永住権ですから、指名してくれた雇用主から首になっても退去する必要はありませんし、 2年なんたらという期間制限もないです。そこまで見込んで指名してくれた雇用者がクビといえば、その時点で失効しちゃう方が道理が通ってるようにも見えるのですが、そうならないのは、それが有能性の一般立証だからでしょう。一人の雇用者をそこまで言わせるほどに有能ならば他の会社にも容易に就職できるだろうということ。実際、単に指名しただけでは足りず、雇用主は一定期間、公の場で求人広告を出す必要があり、「公に募集したけど、やっぱり、これが出来る人材はオーストラリアの労働市場にはいませんでした」という事実立証もしなきゃならないわけです。逆にいえば、雇用者としてはアレコレやらなならんことがあって、面倒臭いビザでもあります。
★その他のビザ
その他「働けるビザ」としては、学生ビザの場合は週20時間までならば認められていますし、ワーキングホリデーの場合は同じ場所に3ヶ月までならば働けます。
家族の誰かがオーストラリアで永住権を取ったこと、あるいはオーストラリア永住権保持者と親族関係になること(国際結婚など)による家族移住というパターンもあります。
ご自分で事業を経営されてる方は、事業者移住ビザもあります。ただしこれは一種の「企業誘致」のようなもので、個人資産数千万とか年商1億とかかなりハードルは高いです。
以上がビザの概要ですが、ビザといっても実は100種類以上あるらしく、本当はこんなものではないのでしょう。また個別的な解説や類型も刻々と変化していくでしょうから、あくまで目安としてお考え下さい。
ただ、物の考え方としては、労働ビザのような
一時滞在ビザ
と永住権のような
永住ビザ
の二種類があるということ(ビザ申請の結果がでるまでの間、滞在許可されるブリッジビザという過渡的なものもありますが)を押さえておいて下さい。そしてテンポラリー(一時滞在)かパーマネント(永住)かの違いは、単に有効期限の差だけではなく、所得税の税率、メディケアなどの国民健康保険の加入資格、年金などの公的扶助の受給資格その他で結構大きな差があります。永住権保持者の場合、選挙を除いてほぼ国民と同じように扱われますが、テンポラリーの場合はなかなかに厳しいです。
詳しくは、ビザ申請代行業者と相談したり、移民局や日本にあるオーストラリア大使館/領事館で相談されることです(領事館に各ビザのパンフレットがおいてあります)。なお、やたら複雑な制度のせいでしょうか、移民局の現場でも実務処理をめぐって結構混乱してたりするそうですし、窓口レベルでいうことをあまり鵜呑みにしない方がいいでしょう。オーストラリアの処世術としては、「3回聞くまで安心するな」ですから。
では、引き続いて生計の立てかた、さらに以上の所与の前提のもとにいかなる戦略を取ればいいのか、考えてみたいと思います。
次につづく
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