カーテン




どうして鬱陶しいのか判った。
とても簡単なことだ。
カーテンが閉まってたからだ。

カーテンを開けたら、
待ちかねていたように、
窓一杯の太陽の光が降り注ぐ
酸素がいっぱい踊ってる、新鮮な空気が流れ込んでくる。

青い空から笑いを含んだ声で、『ばーか』って言われたみたいだ。
『うっせーな』とはみかみながら、俺も俯いて笑った。

海が広がってる。
広い、広い、こんなに広かったのか?
こんな広い海の近くにいて
あんな暗い穴ぐらみたいな所で
何をやってたんだろう?

沖まで遠浅のグリーンの道がついている。
歩いていける?
歩けそうだ。 
うん。あそこまで行ってみようか。



ばいばい。



そよ風は、光合成をやってる最中の木々の葉脈を通り抜けて
俺の周囲をくるりと廻って
『おい、先に行ってるぜ』って
言い残して、行っちまった。

俺も海に行くぜ。
俺は海に行くぜ。

生まれて初めて見る水平線と
生まれて初めて見る地平線と

とにかく、俺は、「生まれて初めて」の所に行きたいんだ。
とにかく、俺以外は全部「総とっかえ」するんだ。

もう一回生まれ直してくるんだ。


Cindy? Cindyじゃねぇか?
なんだよ、こんな所にさ
思い直してくれたかい?
あはは、へっへへ。

まぁ、いいって。飲れよ、一杯。
あの夕陽が今沈んでいく山が
シェラ・ネバタの山脈さ
あそこを越えたら、もう金鉱だぜ

見てな?サボテンってやつはな
小金持ちのババァみたいなもんで
こうやって水を溜め込んでいるんだ
それを、俺はこうやって盗んじまうって寸法さ

なぁ、Cindyっていい名前じゃねえか
へへっ、俺はそう思うよ
ただ、それだけのことさ。


よお?あいつ何て言ってるんだよ?
早口で、全然聞き取れねえよ
何か、すげえ怒ってるみたいだぜ
わっ、わっ、気が短い奴だな
殴り掛かってきやがったぜ
逃げよ!とにかく
話合いどころじゃねえよ
 

あぁ、腹が減ったなぁ
日が暮れちまうぜ
どっち行けばいいんだよ?
どっち向いても同じ風景じゃんかよお
腹減ったなぁ...
なぁ、この草食えると思わん?
あんまり美味そうじゃないけど
こんなのはね、気合なんだって気合....
うう...ぺっ!ぺっ!すっげーまじー...
おい、何、腹かかえて笑ってんだよ!!


生きることって、最高に面白い遊びだと思わん?
今、一瞬、めちゃくちゃそう思えた。
あーあ、あと何十年かで終わっちまうのかなあ
勿体ないなあ
惜しいなあ




カーテン?
あぁ、開けたままにしておいて
もう二度と閉めないで、

夜空を見ながら寝ようぜ
例えそれが絶望に満ちた夜の嵐であろうとも
屍が累々と続く荒野であろうとも

そんな中で意気軒昂に歩いていこうぜ
気にしないもんね。
だいじょうぶ
へいきだから

もう、へいきだから。









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