1. Home
  2. 「今週の一枚Essay」目次

今週の一枚(2014/08/18)



写真をクリックすると大画面(1684)になります



Essay 684:シェアリング経済とミクロ起業家の時代(1)

 写真は、Crowsnestなのだが、場所はどうでも良くて、なんか「夢の中の風景」みたいだから、個人的に。

 「へえ、俺には全然普通の街に見えるけどな」って人が8000万人くらいいるとは思うけど(そんなに見てないって)、僕にとっては、「ここでないどこか」「知らない異郷の知らない時空間」的な印象がある。や、よく知ってる近所の時空間なんだけどさ。

 なんでそう思うのかな〜?
 どのあたりが深層心理をくすぐるのかな〜?
 多分妙に特徴的な家のシェイプと、クッキリした夕日の照り返し、そしてちょい不気味な雲の感じ、これらが渾然一体になって、「異」な感じを醸し出しているように思います。光の感じが印象派の絵画みたいな。つーか澄明なんだかノイジーなんだか、あー、ちょい不協和音てかテンション入ってますよね。コードでいえば9thあたり。うー、ようわからんけど、見入ってしまう。  


勉強だ!

 えと、最近、日本ローカルの方に気を取られてしまって、反省しています。
 日本ローカルの状況って、「ライブ時代劇」とまでいうと言い過ぎだけど、適当に遅れてて、ゆえに適当によく見える気がしたり(気がするだけだが)、また適当にダメダメでムカついて感情を刺激されたりで、要するに適当に面白いんですよね。だからついハマってしまう。

 しかし、致命的な副作用もあります。センスが悪くなるということです。
 世界全体で何が起きていて、どっちの方向に進んでいて、これから何をすると生き延びられるのか?という、動物が風の匂いだけで水場の方向を察知するような嗅覚能力、こいつが落ちるという。ヤバいです。組織にもシステムにもあんまり守られてない(拘束もされてないが)しがないゲリラ人生としては、この嗅覚が落ちるのは死活問題ですから。

 というわけでまた勉強だ!でちょこっと見たら、やっぱ1年以上遅れているのが発覚!おおお。大体やね、お前(僕)のように頭の悪い奴が怠けてていいと思ってるの?それって自殺してるようなもんだろ?そこんとこどうなの?と、自分に説教したのでした。

 今回のお勉強は、シェアリング・エコノミーとか、ミクロ起業家とか、そのあたりの世界のトレンドです。そうなるだろうなと薄々思ってたし、てか自分自身で十数年やってきたのがまさにそれなんですけど、単純に世界的に仲間が増えてくれてうれしいです。皆も同じようなこと考えてやってるんだ、って。

発端はNewsweek

 最初に読んだのがNewsweek英語版。ニューズウィークはわりと面白いですよ。日本語版もそれなりに面白いが、やっぱ英語版の方が深くていい。FREEで読める部分だけで僕には十分です。その記事をネタモトにして検索、検索、また検索って3回くらい英語文献を検索すると読みきれないくらいあがってくるから。

The Internet Is Making Home Ownership a Sentimental Mistake 
(Newsweek英語版  Kevin Maney / August 9, 2014)

 この記事なんですけど、要旨は「今どき家なんか買うのってどうなの?」というAirbnbの紹介記事です。が、その前振りに背景事情の説明があるのですが、そこにゾロゾロ出てくる固有名詞が既にもう知らんかったりして。というかね、この記事そのものは、実はそれほど衝撃的ではなくて、その背景こそが興味深いのです。

 Cloud computing, the Internet of Things, mobile technology, the sharing economy, micro-entrepreneurship―these trends add up to a giant shift in the way we think about “home.”

 「新しい時代の波は、我々の「家」概念にも巨大な修正を迫っている」ってことですが、「新しい時代の波」の例として5つ挙げられているうちの、まあ聞いたことあるのが「クラウド」と「ムーバルテクノロジー」くらいで、あとはよう知らん。でも何となく字面をみてれば分かるような気がするからって読み流してしまったらアカンのですよね。わざわざ挙げられている以上何らかの深い意味がある筈だし。

 ということで、勉強だ!

The Internet of Thingsってなに?

 まず、the Internet of Thingsですが、「モノのインターネット」というダサい邦訳というか、まあそうとしか言いようがないのですが、人ではなくモノがやってるインターネットという意味ですが、これじゃようわからんですよね。

 今は空調設備でもなんでもコンピューター制御になってますよね。それを遠隔でやる。新幹線のATCシステムのようなものです。これはもう昔っからあります。大昔の例では「鉄人28号のリモコン」がそう(まあ、鉄人なんか未だに作れてないけど)、身近な例ではテレビのリモコンもそうなんだけど、もう少し遠い距離から動かすものでいえば、外出先から留守番電話を聞けますとか、出張先から自宅のPCにアクセスしてとかその種のものはあります。そこからさらに進んで、モノをコントロールするコンピュター制御システム同士が、インターネットで繋がれるようになるという。

 この種の制御をどんどん取り入れていく製造業の流れを「インダストリー4.0」と呼ぶそうです。また、The(←Theを忘れないように) Internet of Things(←複数形にすること)のことをIoTって省略されたります("lol"=Lots of Laughじゃないよ)。あるいはM2M(Machine to Machine)とも言うらしい。もう新しい名称ばっかですね。

 でも、新しい呼び名を付けてイキがって遊んでるわけでは勿論なくて、とある予想によるとネットにつながってる「モノ」の数は、スマホやPCの数以上になり、2020年までには世界で260億!になるそうな(500億と書いてある文献もあって、その辺の数字は気分なんだろうな)。自動車産業でも活発に取り入れられ、盗難の際の追跡は有名ですが、他にも例えば事故を起こした時、ヘルプ信号を自動的に発信する「eCall」緊急コールシステムは、2017年までのEUの車の法定条件になるとか。走行中の異常を検知したら即座に遠隔で補正プログラムを送信して、例えばサスペンションを固定したりして事故を未然に防ぐとか。経済的には、運送会社は全ての車両の走行内容を把握できるから、燃費計算や高速道路料金など、コスパ的にベストな最適化をすることも出来ると。

 ま、言うならば世の中の機械の動きの全てをデーター信号としてトレースし、それをゲットし、コントロールするということで、いかにも未来社会っぽいんだけど、クソ窮屈そうな社会でもありますな。ま、しかし、トレンドとしてはそうで、そのコントロールアプリをどう開発するか、どこのプラットフォームがPCにおけるウィンドウズみたいな地位をゲットするかで世界で熾烈な闘いが行われているとのことです。みんな、頑張ってるみたいです。このあたりを紹介し始めるとそれだけで数本くらいになるから、ご興味のある方は「モノのインターネット」の衝撃(ZDJapan)の記事検索あたりをご参照ください。

Unscalingと職住リンクの打破〜不動産の居住機能と投資価値の分離

 さて、くだんのNewsweekの記事に戻りますが、ここでは不動産に焦点を当ててます。要旨を一言にまとめれば「人々はもう一箇所に定住する必要がなくなっている」から、「居住に関してはレンタルになり、所有に関しては株取引のような投資対象になって分離していく」ってことでしょう。

 まず前段の「一箇所にじっとしてなくてもよい」という点ですが、それだけの条件が整ってきているという背景があると。実際ハーバード大学の研究によると、アメリカの賃借物件は2005-2013年に年間100万件づつ増えているのに対し、持ち家率は9年連続で下がっているという統計がある。不景気のせいだというのは簡単だが、それ以上に大きな地殻変動があるのだと。なにかというと、それが例えばムーバビリティ(単に携帯電話の意味ではなく「移動性」一般)、どこにいてもデーターのやりとりができるようになってること。

 そして、ビジネス的にはUnscalingという動きがあります。似た言葉でダウンサイジングというのがあるけど、僕のチラ見速習した理解では、そういう企業規模の大きい/小さいというスケールすら無意味化してきて、大企業と中小企業をカテゴリ分類すこと自体がもう古いという。それだけ個々人レベルで物やサービスの取引ができるネット環境が整ってきている。

 例として挙げられていたのが、Shapeways Etsy という世界的なサイトです。まあぱっと見、楽天モールの世界版やeBayみたいなものだろうけど、楽天ほどガチガチではないだろうし、何よりも顧客の母集団の数が桁違い。和風テイストの製品だったらこっちの方が儲かるんじゃないかな?それにeBayほどとっ散らかってないし。

 それよりも「匂い」が違う。「商売でやってます」的なテイストが薄く、製作者の顔写真とかもあるし、アーティストの展示即売っていうか、もっとバックボーンに「国や大企業なんかにやらせておいても嘘とクソばっかだから、俺らで勝手にやってこうぜ」的な思想らしきものがあるような気がする。実際、Etsyは Certified B Corporation(TM)の認定を受けていて、ビジネスの力によって社会や環境問題を解決していこうと実践している企業に付与されるものです。

 Shapewaysは3D-Printingの会社だけど、顧客はデザインだけ考えて定額の料金を払って発注すれば製品化してもらえ、さらにそれをネットで売ることが出来るということですね。製作料金は使用素材の質&量による。一番安い素材で1立方cmあたり140円、高いプラチナで17万円。見てると、なんか自分でもオリジナルの指輪とか作りたくなってよく出来てるわ。数十万もする本格的な3DのCADも紹介しているけど、よくあるパターンだったらオンラインだけでデザインできるようになっている。チュートリアルも丁寧。でもって世界的に売りに出せるわけで、売れたらめっけもんと。

 で、ここではこういう流れがあり、この流れに乗ってやっていけたら、好きなところに好きなように住めばいいから、定住性ってのは薄らいでいくよという流れが一つの背景事情としてあるよ、ということです。これまでは職の場所に住が限定される=職&住リンケージがありました。独立自営でやるにしても、顧客数が多い都市にショップや仕事場を構えてせっせと通わなければならない。本当は田舎暮らしはしたいけど過疎の村だから顧客もいないし商売にならない。だからイヤでも都会に住まねばって「よんどころない事情」があったのだが、売り方や市場がフレキシブルになってきた分、自由になってきたってことですね。

Airbnb

 次に出てくる背景が、シェアリングエコノミーとかいうもので、後でまとめて書きますが、簡単に言えば、いちいち全部買うことはないよ、その時々に貸してもらえば良いではないかという発想です。それもレンタルショップからではなく、個人間の貸し借り、ちょうど高校時代にマンガの貸し借りを友人間でやっていたようにやればいいじゃんっていうノリです。これはカーシェアリングで既にシドニーでもかなり広まってます。

 で、その家のシェア版。これもそこそこ昔からあったし、オーストラリアの普通のシェアなんかもそうだし、さらにカジュアルになったカウチ・サーフィングがあるけど、もっとそれをトラベル&バケーションのジャンルで押し進め、世界規模でそれをやるのがAirbnbです。

 さっそくシドニーでも山ほど出ている物件を見たけど、サリーヒルズなんか地の利があるからか、やっぱ一泊100ドルとかその前後。だから普通のワーホリ・留学生さんのシェアとは違うんだけど、旅行で泊まるんだったら、それも現地の人の家に泊まってみたい、ホームステイほどじゃなくて、、、ってことだったら、オススメかも。これまでも、地元の不動産業者、あるいは専門業者によってウィークリーマンション(1日からでも可)があって、ホテルよりもずっとお値打ちだったんだけど、こっちの方が選べるレンジが広いからいいかもしれない。

 でもって地図を動かしていくと、へえ、ウチの近所にも結構出てるじゃん。当たり前だけど都心よりもサバーブの方にいけば一般に安くなります。一泊50ドル台でもあるし、追加人数料金なしというのもあるからカップルだったらいいかも。リゾートエリア、ブルーマウンテンなんかにも結構ありますな。50ドル台からある。B&Bの広告をココにも出してるのもあるだろうけど。パースの近くのマーガレットリバーあたりにも結構あった。見てると面白いです。

 物件の詳細な情報もさることながら、オーナーと直にやりとりできるし、レビューもダイレクトに書かれているから、あんまりアコギなことも出来ないでしょうし。

 東京もあります。といっても、23区で20件足らずだから数は全然少ないけど、日本でももう参加している人もいる。レビュー数166件を誇る足立区のお宅では、一泊6000円で世界中の人が泊まりに来ている。楽しそうだなあ。

 余談ですが、ワーホリや留学の効用のところで「海外リテラシー」がつくと書きましたけど、それは例えばこういうことですね。
 実際に自分でやってみたら、「すわ、外人だ!」といちいち阿呆みたいに色めき立たないし浮足立たなくなる。それにシェアやバッパー暮らし等でのべ数百人と一緒に寝泊まりしていれば、「誰とでもそこそこ上手くやっていくスキル」もつきますわ。てか日本人は、日本人と付き合うのが一番難しいもんね。外人の方が全然楽(人によるけど、もちろん)。
 そのあたりが感覚的に腑に落ちてると、知らない外人が次から次へとやってきて自宅に泊まるなんてことも恐怖的な情景ではなく、面白がれるようになる。それに大概の事だったら対処できるように自然となってるからね。たかが数泊、長くて数週でしょ?しかも日本というホームグラウンドなんだから、天涯孤独×異郷の地でそれをやってきたことに比べれば、全然楽勝でしょ?
 この「力」というのは、英語力と肩を並べるかそれ以上に実戦的だし、実際にこうやってお金も稼げるし、ビジネスチャンスにもなるし、ただ単純に平凡な人生が楽しくなる。お値打ちですよん。

 このAirbnbという企業は2008年にサンフランシスコで出来たらしいのですが、このあたりはさすが西欧人というか国際展開が滅茶苦茶早くて、既に世界190カ国、3万4000都市、通算ゲスト数1700万人に広がってます。面白いのは「城600件以上」ということで、お城に泊まるんだろう。

 基本は旅サイトなんだけど、同時に、個人レベルの遊休資産の有効活用でもあり、ある意味では友達を増やすというソーシャルネットワーキングでもあるという。

 なおNewsweekの記事の後段、「不動産は純粋投資・投機物件になる」というのは、IoTの応用で、家のあちこちに設置しているセンサーやモニターでリアルタイムのその物件の状況が分かる。投資家は、その莫大な不動産データーを解析し、投資最適化を行う。そういうアルゴリズムを作るのですね。ま、でもここは本題にあんまり関係ないのでカットします。

Sharing Economy

 さて、Sharing Economyとか、Micro-Eentrepreneurshipとか、Collaborative Consumptionとかいろんな名前で呼ばれます。

 最初のよく元ネタで紹介されるのが、イギリスのThe Economist誌の 「The rise of the sharing economy」(2013/MAR/09)ですが、これを日本語で簡単に訳して紹介してくれている「シェアリング・エコノミーの台頭」はやぶささんのブログがあります。感謝です。

 このエコノミストの記事はまだ概括的な紹介だったのですが、より具体的に何がどうなるかをわかりやすく書いてくれている、しかも日本語というありがたいサイトは、シェアリングエコノミーで生計を立てる未来の生き方(サノウラボブログ 2013/FEB/19)です。日付をみるとエコノミストよりも情報が早いですね。「WEBサービスをつくる人へ役に立つ情報をお届けするブログ」らしいのですが。ここに具体的なサイトとともにいろいろ書かれています。それによると---

 家事手伝い系は、TaskRabbitというサイトがあり、ちょっとした家事手伝い(家の掃除とか)をやってくれる人を探す。Zaarlyというサイトもある。料金の何割かがそのサイトが運営費として取る。

 クルマ系、カーシェアリングですが、Getaroundがあります。アプリで近所の会員を探して借りると。iPhoneが車の鍵代わりになるというのはアイディアですな。これは他にも沢山あります。

 同じくクルマ系で、Lyftというのは、カーシェアリングではなく、そのときだけ個人タクシーになるというものですね。登録していて、クルマが欲しくなったら、アプリで近所のメンバーを探し連絡を取って乗っけて貰うという。SideCarなんてのもある。

 でもって、アコモ系は、先ほどのAirbnb。探せば他にも結構あると思います。


 これらのポイントは、利用者にとっては安く、フレキシブルに利用できるというメリットがあり、提供者からすれば自分の遊休資産・時間を活用してサイドビジネス的に収入を得られるという点です。でもって、サイドビジネスじゃなくて、これだけで食っていけるか?という点については、「Will you leave your job to join the sharing economy?」(VB News January 21, 2013 Justin Elof Johnson )の記事を以下のように手際よく翻訳して引用してくれています。孫引きします。

 この間、私はLyftというカープール(相乗り)サービスを利用しました。その時、ドライバーと少し会話をしたのですが、彼女は26歳で修士号を取得後、スタートアップで数年間働いて、次に何をすべきか考えて、プログラミングを学ぶために数ヶ月前に仕事を辞めたそうです。生活をやりくりするために、一通りアルバイトを探したそうなのですが、とりあえずAirbnbで部屋を貸し、TaskRabbitで週に何回かタスク代行サービスを始めたとのこと。今では週に何日かは必ずLyftでドライバーをして、お金を稼いでいるようです。さらに、この3つのシェアサービスを組み合わせて、正社員だった時よりも収入が増えているから驚きです。しかも、起業するリスクを一切背負わずに。
 今までのシェアサービス提供者は、仕事の合間にあくまで副業として、このようなシェアビジネスを活用して小遣い稼ぎをしているのがほとんどでした。しかし、このドライバーの話を聞いていると、フルタイムの雇用の正社員としてではなく、自由に自分の時間の使い方を決めて、異なるシェアビジネスを組み合わせて生計を立てることも十分可能だということが実感できます。2013年は、そのような生き方をする人が現れる最初の年になるかもしれません。

 ということで、これは非常にうまくいってる人の例なんだろうとは思いますが、FXで家が建ったとか、アフィリエイトでどうのこうのよりは現実的かと思います。自分で工夫できますからね。


 その他、これらに関する文献は山ほどありますが、

 Sharing economyのWiki解説(英語。日本語版はなし)
 Micro-enterpriseのWiki解説(英語。日本語版はなし)

 シェアリング経済の主要プレーヤーがわかる一枚のインフォグラフィック〜各業界のシェア経済の企業と流れが一目瞭然です。

 How micro-entrepreneurs could change the world (London Business School)、ミクロ起業家〜要するに超零細自営業ってことだけど、それ以外に職がないアフリカやインドでの課題と、IT技術の普遍化がいかに彼らの生業を変えているかのレポートで、趣は違うんだけど、これはこれで興味深いです。

Jamie Wongさんの檄文

 でも、一つだけ読むんだったら、The Rise Of The Micro-Entrepreneurship Economyがいいです。Co.Existに掲載されているVayableのCEOのJamie Wongさんの記事です。記事というよりも、新世代の檄文みたいな感じで、面白い。

 原文と対訳してたら冗長になるので、ばーっと意訳しておきますね。


 アトランタのラッセルさんは、広告代理店のクリエイティブ局に勤めていたが、予算カットによって失業した。彼は自分の心が決まるまでの数年間、いろいろな会社の仕事をこなしてきたが、ついにアーティストのためのNPOを立ち上げた。余暇時間に、私が立ち上げたVayableというサイトで、ストリートアートツアーを催行し収入を得ている。

 この話の前半は不況による現実の厳しさを知るパートであるが、後半部分は、自分の仕事に満足できない労働者が会社による「保障」を離れ、自らのパッションに従うことが、現在のポスト産業社会における新しい波になっているという点である。それはアメリカ、EU、オーストラリアによく見られる。

 メディアはこの”ミクロ起業家(マイクロ・アントレプレナーズ)”に向かうトレンドを、「創造者階級の興隆」「ギグ・ライフ」「フリーランス・エコノミー」などと呼んだ。これら約410万人(総労働者の14%)は、公式な統計によればいずれも自営業者であるが、しかしその他の数百万人がまだ存在する。彼らは副業としてやっているだけだ。90年台後半の「フリー・エージェント・ネイション」と今日の「マイクロ・アントレプレナーズ」には顕著な違いがある。

 このような人々の数を正確に把握する統計手法はまだないが、一つの指針としては、こういった「 Do-it-Yourself Economy」のプラットフォームになるサイトが次々に登場し、急速に成長していることだ。それはAirbnb (vacation rentals), Taskrabbit (home services), Uber (car service), Etsy (handmade goods), Skillshare (education), LooseCubes (co-working), Getaround (cars), RelayRides (cars) など、そして私の作った Vayable (tours and activities)がある。

 これら新しい経済の特徴は、一つは個々人を力強くするということであり、それを最新のテクノロジーが可能にするという点だろう。個々人に自分の仕事を作り出さしめ、人生と時間を祝福し、お金というものに対する考え方の変化を促す。現在のテクノロジーは、世界のどこにいようともその人のスキルをお金に換えることを可能にしつつある。そしてアーティストや失業者だけがこのプラットフォームに群がっているのではない、プロ達もまた、より高い次元での人生の充実、よりフレキシブルな稼働環境、そして家族とともに過ごす時間を求めて参加してきている。

 ★マイクロアントレプレナーズがもつ5つの訴求力
 「Flexibility・柔軟性」=家族や健康に時間を割くためには、単に時間がふんだんにあるだけでは足りず、それがフレキシブルでなければならない。
 「Following your heart・自分の心に従うこと」=やりたいことができる。
 「Making money」 既に持っている物、知識、場所、技術をもってお金に換えることができる。
 「Enrichment(充実)」職において長い経験を有している者の中には、彼らの知識や技術をより深める新しい方法を探したり、リタイアした後においても生き生きと活動できる場を探す。
 「Creativity(創造性)」 自分のボスに自分がなることは、単に号令にしたがって行進しているのではなく、自分の仕事の背景や夢が描けるようになる。

 独立自営の魅力は、多くの企業内のクリエーターをその会社から離れさせるだけの力を持つが、それだけではなく、単に一人でやっているだけでは構築できない大きなビジネスの枠組、資源、ガイドラインをプラットフォームを通して提供する点に意味がある。

 しかし、全ての経済に共通することであるが、マイクロアントレプレナーズの生き残りは市場によって決せられることに変わりはない。顧客は、より小さく、よりカスタムメイドで、よりユニークな体験を好む傾向があるか?これまでのところ、その答えは強くYESである。

 労働者の選好が企業文化や枠組みから徐々に離れていっているように、我々の購買選好もまたそうである。マイクロアントレプレナーズを利用する顧客の好みも、やる側のものと同じだったりする。

 ★顧客側の選好
 「Price」個々人から直接買う方が、往々にして大手から買うよりもよい取引が出来る場合が多い。
 「Flexibility」 今日の消費者は、かつてないほど個人化、カスタマイズ化を求めている。消費者は、いつ、どうやって、幾らで買うかについて幅広い選択肢を欲している。これらマイクロ〜は、旧来のやり方よりもはるかに選択肢が広い。
 「Ease of use」多くの理由のトップにくるのは、消費者にとって利用しやすいという点だ。彼らが本当にほしい物をより簡単に検索し、求めることができる。
 「Authenticity(信頼性)」製作者から直接購入できるというのは、消費者によい取引をしたという満足を与える場合が多い。
 「Unique experience」移動や宿泊、食材を買うことなどが、単に日常生活の必要でやってるだけではなく、それぞれが出会いの場であり、思い出になりうる。
 「It’s good for the world」 責任ある商取引は顧客増大に必須であり、自分の払ったお金がちゃんとその製作者やコミュニティのもとに(どっかでピンハネされるのではなく)届くのを知るのは払う側にある種の満足を与えるし、経済を活性化させ、資源の浪費も防げる

 9時5時仕事からの離脱と自営への流れは、理想や政治や社会的な熱意をも生み出すし、それがまたムーブメントをより盛んにする。オキュパイムーブメントや政府への不信感は、新しい経済の波へとつながり、改革が必要であり差し迫っているというメッセージを増幅させる。マイクロ〜の規模や種類の著しい増大傾向は、この経済の必要性によって生じている。

 この新しい経済は伸びているが、それは人々をよりよい生活に向かわせるからである。しかし、技術的な革命がこれらの新しい自治と柔軟性を付与しつつも、生き残っていくためには、人間的なインフラの整備もまた必要である。

 ★DIY economyを稼働させるために必要なこと
 「Trust(信用)」 大企業に対する信頼は低下する一方であるし、金融機関に対する信頼はラストストロー(殆どゼロ)である(特にそれによって職を失った人々にとっては)。新しい経済を構築するにあたっては、売り手と買い手の信用が決定的に重要になる。
 「Collaboration(協調)」 例えそれが大企業であろうとも、自分の利益や人生の幸福、最低限の生計の資を常に企業に頼れるわけではない。我々の場合、相互に頼り、コミュニティに頼る。DIY経済が今後伸展するにあたっては、政府と協調し、医療や障害者、退職者たちの必要なニーズが満たされる政策や実施が行われることも視野に入れねばならない。
 「Accountability(説明)」 時代遅れの承認システム、資格、学位などは急速に効力を失ってきているが、それに代わる新しい説明責任や透明性が図られねばならない。人々はお互いにレビューを通じて承認し合い、取引を反復させ、新しい形の信用を築いていくのである。
 「Security(保障)」 オンラインのセキュリティの他、オフラインのセキュリティについても同様に考慮されねばならない。
 「Technology」 これが心臓部分である。技術革新を継続させ、創造性あふれるアプリを作り続けることが発展には不可欠である。

 個々人をマイクロアントレプレナーズとして力を与えていくこの新しい経済は、新しい収入の道を開き、古いビジネスモデルを壊して経済に刺激を与えるだけではなく、個々人に対してより充実した、より報われる、より真性の生活を提供する点にこそ意味がある。

 私の祖母がよく言っていた。「人生とは、結局のところ、どういう時間の使い方をしたかなのよ。」

 このJamieさんは、見た目まだ20代のカッコいいお姉さんですが、彼女の作ったVayValの自己・会社紹介の文章がなかなか良いです。これもざっと意訳しておくと、

 20歳のときモロッコを旅した。分厚いガイドブックをもってカーペットショップに入り、店員にサハラ砂漠への行き方を聞いた。一杯のミントティーを飲み終わる前に、私はその店員の運転するホンダアコードの後部座席に座っていた。アトラス山脈の風の強い道を切り分けて進むこと15時間。ようやく遊牧キャラバンのチーフでもあるアリ=店員の従兄弟のところに着いた。

 それから5日間、ラクダの背に乗って旅をした。砂で焼いてくれたパンで飢えをしのぎ、夜はウールの毛布にくるまって眠り、ちょうど日が沈む頃にキャラバンに戻ってきた。それはパスオーバー(ユダヤ教の祝祭日)の初日だった。砂丘のてっぺんで、私は新たな友人と砂の上にセンダー・プレート(同じく宗教的な意味のあるお盆)を書き、 “Let my people go”(これも宗教的なフォークソングのような)を一緒に口ずさんだ。

 満天の星空を仰ぎながら、アリは言った。「君たちと僕らの部族の本当の違いは、僕らの方が一冊だけ多く本を読んでいる(この夜空の星々)ことさ」と。

 些少なガイド料を払ったのだが、それでもアリと従兄弟にとっては優に一ヶ月分まかなえるものだった。そして、私が新たに学んだ世界のありよう、私自身、さらに憑かれるように旅をしまくった十年間は、やがてこの世界により良きインパクトを与えようという形で結実していき、このVayableを産み出すに至った。


 ということで、ジェイミーさん、いい旅してんじゃんって感じですが、これが「共通する匂い」なんだと思うのですよ。経済という角度だけから見ると見落としがちだけど、本質はもっと別にあって、まずやりたいことをやる、自分が価値があると思うことをやる、生きたいように生きる、でも先立つモノは要るしね〜って現実もある。その両者をどこで折り合わせるですけど、自分の価値観を出来るだけ曲げずにそれをやれる方法はないかってことです。それが起業活動のバックボーンになっていて、商業的に成功することが第一目的ではない。ただ、経済=商業的成功って古いレンズで通してみれば、マイクロアントレプレナーズとかそんな言い方になるのだろうけど、彼らの感覚でいえば、仕事なんだか、趣味なんだか、生きてることそのものなんだか渾然一体になってるのでしょう。その匂いですね。


 でもって、Vayableのサイトも面白いですよ。

 これは、僕がA僑で「自分のできることを10個あげて」「少なくとも自分の街のガイドくらいできるでしょ?」といってるのと軌を一にする発想で、個人ガイドのサイトです。地元民が「いいとこ連れてってあげるよ」「面白いもの見せてあげるよ」という。インディペンデンド・インサイダーによるローカルガイドのプラットフォームです。

 当然、日本でもやってます。数十というガイドが既にあります。ぱっと見たところ日本をよく知っている外人さんによるものが多いようだけど、日本人もやってます。ナオキ君とかバンバンやってるんでプロフィールをみたら、バッパー暦15年の猛者ですね。ほかにもミドリさんとか、ユリさんとか、キョースケくんとか、皆やってんじゃん。でも日本の良さを世界に知らしめるためには、あと最低でも1000人くらいはほしいところですね。

 さて、これらの紹介のうえにど〜っと色々なコメント、当然予想される難関、これを自分なりにどう発展させていくか、、、などなどは、もう長くなったので次回に回します。とりあえず今回は、遅れを取り戻した、、てか、リアルな活動レベルでは遅れているとかいう問題ではなくて、世界中に仲間がいるのを発見してうれしいって感じですね。




文責:田村



★→「今週の一枚ESSAY」バックナンバー
★→APLaCのトップに戻る