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今週の一枚(2014/04/28)



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Essay 668:SCAMとSPAM/シドニー新空港決定?

   
 写真は、Crows Nestの秋空。

 シドニーも大分秋めいてきて、今年はミゼラブルな曇・雨天が多いけど、でも晴れたら空がきれいです。「天高く馬肥ゆる秋」と言いますが、秋の空は天が高い。

 日本の場合は、乾燥した大陸の空気に覆われ、視界が良くなるから「天高く」に見えるそうだけど、オーストラリアの場合は平均して乾燥しているから同列には言えないでしょう。おそらくは真夏は太陽直射が激しいのと、それに伴う強い水蒸気の上昇でhazyに見えるのに対して、秋になると澄んで見えるかもしれません。テキトーな推測だけど。

 そして、Lower Northshoreでは、このCrows Nestが一番高台(だからこその地名=カラスの巣=見張り台の意味)だから、クロウズネストにくると、いつも空が綺麗だなあって思いますね。


 前回はハイテンションで詰め込み過ぎたので、今週は意図的にゆるゆるに流します。

 というか、どんどん長くなるのね、このエッセイ。初期の頃の4倍くらいの長さになってる。いっとき「短く!」と思って短めにしたけど、ちょっと気を抜くと長くなる。この種の連載ものというのは、やっていくうちに徐々に短くなったり、間隔が疎(まば)らになってフェイドアウトしていくのが通り相場なのに、なんでこれだけ逆なのか。自分でも不思議。

 その昔は、「この先、年取ったらもう少し枯れるだろう」とか思ってたんだけど、最初の頃から数えたらもう16歳くらい老けているはずなんだけど、あんまし。てか全然。しかしな〜、あんまり枯れないのも暑苦しいし、キモチ悪いよな。もう「先日、裏庭の独活(うど)の木が花をつけました」だけで終わるような、淡〜い感じにせねば。武者小路実篤の野菜の絵みたいな。

ドツボ脱却後日談

 で、ゆる〜く、(誰も興味もないだろうが)近況なんぞを書くと、前々回にレベル7くらいまでいったドツボ周期は、おかげさまで少しづつ回復。今は警戒レベル2くらいまで下がっています。この下がっていく過程もですね〜、さすが一筋縄ではいかないというか、一つのことが一回でスパンと解決しない。「おお!」という好展開を迎えるのだけど、完全ではない。

 最悪のピークは、腰痛&歯痛でダブルでしんどかったときに、朝空港に二人(しかも同時刻に国際線と国内線バラバラ)をお迎えにいって、しかも一人はGCから乗継便がキャンセルになってしまい、でも本人とは連絡が取れず。メールを送っていただいたんだけど、瞬時に到達すべきメールが、なぜかこのときに限って半日遅れに届くという。「ダメダメなときはこんなもん」って典型みたいなパターン。しかも空港で遅れると、その日の歯医者の時間も遅れてしまって数日我慢した歯痛ゴールがまた遠のくという脱力展開。このあたりが大底でしたね。

 以下、全てが好転し出します。普通キャンセルになったら後の便に乗せられるのだけど、このときばかりは前の便に振り分けられ、それがなんともう一人の方と同じ便になるというラッキーさ。この偶然が生じたときに、「あ、底を打った」と感じました。前々回に書いたように、ドツボというのは(不)運の連続クラスターだと思います。丁半博打でいえば、丁丁丁丁丁丁、、、と連続して丁が出ているような不均一な状態であり、そこで半が出た時点でこのクラスターは破れ、全体の流れが変わる。予想外に不運な出来事がやたら続くときは、予想外にラッキーな出来事が生じた時点で流れが変わる。これって長いこと生きてると、段々分かるようになりますよ。過信は禁物だけど、よーく注意してみていると、カシャッと「あ、変わった」という地点が何となくわかるようになります(気がするだけなんかもしれないけど)。仕事なんかやってると、そういうことって結構あります。

 ということで流れが変わって、その日は予定通り歯医者にも間に合うわ、おまけに親切な暫定経過観察・治療方針で思った以上に安く済みそうになります。ただし、底を打っただけだからいきなり何もかもパーフェクトにはなりません。完全には好転するわけはない。歯も、その後半日くらいは神経消毒による自然痛で痛みそのものは前よりもキツくなった。けど、時の経過で薄らいでいきました。ただし暫定措置なので経過観察でまた通院が必要になる可能性も大きい。油断はできないので、いつもは途中で飲むのをやめる抗生物質も、このときばかりは全部飲み続けました。

 車の車検登録と整備点検(2台)も、結局は出来るんだけど、案の定、その過程で何をやってもすんなりとはいきません。強制保険のリニューアルもサイトにいって番号入力してもエラーが出るとか、車自体も完全スルーではなく、オルタネーターベルトとかブレーキとか交換。ま、想定内ですけど。さらにバッテリーが弱ってるから早めに交換するか?と聞かれた時は、「ぜひ」と言いました。トラブルというのは逃げたら最後、絶対に追いかけてこられるので、こっちから迎え撃って、追いかけて、追い詰めて、叩き潰すくらいでないと。でも、今度はコンピューターのリセットがうまくいかずにエンスト気味で、これも経過観察。大分治った感じだけど。

 腰痛関係はほぼ回復しつつも、課題山積。今はネットでいろいろな情報がわかるし、整体師さんなどがあれこれ腰痛対策の方法を教えてくれるのですが、一方では「腰痛体操なんぞやればやるほど悪化する、寝てるのが一番」という意見もありーので、筋肉の弛緩とは何か、疲労とは何か?を考え、A筋肉を休ませるとB筋肉に負荷がかかるという全体像を考え、アナトミーの人体解剖図をみながら大腰筋の位置を確認したり。カミさんにキネシオロジーのタッチ・フォー・ヘルスやってもらって、腎臓が弱って解毒が滞ってるから、もっと水飲め&カフェイン抜けとアドバイスを受け(これは結構効いた)などなど、やらねばならないことが複数ありつつも、同時にやったら矛盾するとか、筋肉痛と回復のタイムラグを見はからってとか、はっきり言って腰よりも頭を酷使しました。まあ、でも、かなり勉強になりました。AT車運転と右手マウスで身体の左右バランスが悪くなってるのもこの機会に自覚できたし。

 生活習慣の改善は、もうベッド周囲の家具の配置から、仕事のダンドリそのものを変更するとか、あれこれやりつつあります。ちょっと良くなって40分ほど走りこんだら、腰は大丈夫だったけど、今度はふくらはぎが妙な筋肉痛になって、夜に寝返り打ったら足が攣りそうなったとか。ともあれ何をやっても一筋縄ではいかない。一つ成功するためには必ず一つどっかで失敗しないとならないって感じ。でもそれまでの成功の歩合比率に比べれば、かなりマシになってます。

 ただし、この種のものは、油断させておいて、最後の最後に大どんでん返しが来て、雨道でスリップして事故って死ぬとかのサプライズのオチが待っているという。だからもうそういう前提で、ハリウッド娯楽映画の定番みたいに「そーゆーもんだ」と仮定して、やってます。「これで終わりと思うなよ」「思っとらんわい!」という。

カー・アクシデント詐欺コール 

 そんなある日ある時、手持ちの携帯が鳴りました。
 自動車事故があったから、倍賞のなんたらでクレジットカード会社がどうのとか、藪から棒に何言っとるんじゃ?という電話でありました。

 英語が聞き取れない。流暢にしゃべるんだけど、発音が丸まってて「え?」って感じでさっぱり分からん。なんかね〜、比喩で言えば、炎天下の夏の日に車の中に置きっぱなしにしていた飴玉の袋みたいな感じ。そのココロは?といえば、飴が溶けて丸まって、全部くっついているような感じ。そんなイメージの英語。れろれろれろってひと固まりになってる。

 喋ってる雰囲気からして、「もうしゃべり慣れたいつものフレーズを喋ってる」ぽいからスパムコールかと思うのだが、笑っちゃうくらい聞き取りにくい。感じとしていえば、おそらくはインド系の訛りの英語で、これがまた商業コールである推測を呼ぶ。今から10年以上前の話だけど、新聞読んでたら、人件費をケチるためにオーストラリアの企業のお客様コールセンターがどんどんインドに移ってて、オーストラリア消費者から苦情の嵐だという。その中に「何言ってるのかわからない」「英語が通じない」という理由もありましたね。また、インドのどっか片田舎でやってるらしいから、回答者がオーストラリアのこと知らなすぎ。オーストラリア人だったら絶対知ってることも知らないから、消費者が何かを相談するときに状況説明するのも大変。「え、コールズってなんだ?」みたいな感じなんだろうな。ANZ銀行なんかもそうだったらしく、「コストカッティングもええかげんにせえ!」「ちゃんとオーストラリア人を雇え、国内雇用を守れよ」と悪評ふんぷんで、辞めたのか改善したのか最近とんと聞かなかったんだけど、今回はもろにそれ。

 ここまで英語が聞き取れないとは!と、多少は落ち込むし、いやあ勉強しなきゃと思うのだけど、一方ではこっちに長いこと住んでるから心臓に毛が生えてきて、英語が聞き取れなくても全然悪いとも思わない。悪びれもせずに「あの〜、何言ってるのかさっぱりわからんのだけど」と聞くんだけど、断片的に"car accident""credit card""compensation"とかいうのだけしか分からん。

 話が全然見えないので、こういうときはこっちから逆に質問して、「事故っていつ、どこで?見たの?」「車種と車の色は言える?」「なんでこの電話番号知ってるの?ナンバープレート登録とはリンクしてない筈なんだけど」「そもそも事故なんか起こしてないんだけど」とあれこれまくしたててるうちに、相手が根負けして「じゃあ、いいです」で切ろうとするから、「ちょっちょっ、最後までちゃんと説明して下さいよ。具体的にどの事故のことを言ってるのか、それが分からないで電話してるわけないでしょう?」とかいってるうちに切られてしまった。相手の番号はPrivat Numberで表示されず。

 怪しい---と思って、ネットで調べてみました。ありました。

 詳細はScammers blitz Fair Trading call centre -- was it an accident? (6 April 2014)にあります。過去の交通事故で、本来もらえる筈なんだけど未払の賠償案件が残っており、ついては送金するためのクレジットカードや銀行口座などを教えてくれといって、いわゆる個人情報窃盗(identity theft)をするのが目的だそうです。

 オレオレ詐欺と同じよう手口で、無差別に電話して、「過去数年以内の些細な交通事故の事務処理について」と大きく網を投げ、確率は低いけど偶然にも事故の心当たりのある人が電話に出るのを期待し、言葉巧みに個人情報を得ようとする目論見のようですね。

 こんなんでひっかかる人いるんか?って思うけど、いるんだろうし、クレジット番号や名前、電話番号その他の断片をつなぎあわせるだけで何らかの利得を得られるのかな?と思うけど、それも方法があるのでしょう。僕としては、それ以前にあの英語が聞き取れるという段階で凄いなと思うけど(まあ、ネィティブだったら聞き取れるかしらんけど)。

 ということで皆様もお気をつけを。
 また、この種の消費者被害情報は、オーストラリア政府のSCAM watchというサイトにあります。

 もっとも他にも沢山ありますし、大抵僕が調べるときは、"Google Australia"で、適当に語句を入れて検索する方法でやっています。今回も、"car accident, credit, scam"でヒットしたものです。妙なセールス電話で相手の番号が着信履歴でわかってる時は、その番号で検索すると結構ヒットします。そのためのサイトもあります(例えば、逆探知ともいうべき、"Reverse Australia"など)。

 また、テレマーケティングの対象にならないように、「自分の番号には電話しないでくれ」と登録することも出来ます。前にも紹介したかと思いますが、これは公的機関であるACME=Australian Communications and Media Authorityがやっているサービスで、Do Not Call Registerにいって、ネットで登録するといいです。テレマーケティングをやる会社は、この公的に登録された電話番号をリストから外さないとならないらしく、それを破ると罰則があると。"Do Not Call Register Act 2006"という法律があり、業界規則もできているそうです。ただし、登録して即効果があるわけではなく、大体リストの更新その他で30日くらいみておけということらしいです。僕も登録してますが、確かにピタッと止まりましたよ。まあ、今回のような詐欺コールは、最初から犯罪めいているので関係ないでしょうけどね。

 ちなみに、この種の詐欺行為をスカム(SCAM)といいます。スパムメールの「スパム」ではなく「スカム」です。よう似てるから間違えやすいし、間違えたところでどっちも悪い意味なので大差ないですけど。

 スパム(SPAM)は、詐欺というよりも迷惑メール、大量に頒布するダイレクトメールのようなものを言い、「あまりにも数が多くてありふれた存在」という意味で「SPAM」といいます。なんでSPAMなの?というと、ご存知の方も多いでしょうが、コンビーフみたい有名なハムの缶詰から来ています。もとはといえば、どのカフェにいっても定番の朝ゴハンのメニューになっているという意味で、イギリスのコメディ番組、モンティ・パイソンが言い出したのが語源だそうです。「まるでスパム・ハムのように(ありふれた存在)」って。「巨人大鵬卵焼き」みたいなニュアンスかな。SPAMというのは、「Spiced Ham=スパイスされた(味付けされた)ハム」の略称らしいです。

 オレオレ詐欺のように、最初から犯罪目的の場合は「スカム」で、テレマーケティングの商業勧誘電話のように犯罪ではないけどうざったいのは「スパム」ってことでしょう。

 調べている過程で見つけたのですが、"project honeypot"というスパムメール対策のサイトがありました。メルボルンベースのネット関係のビジネスコンサルタントの人のサイトですが、そこにスパムメールの統計分析があって、「正午が一番多く、23時が一番少ない」「スパムもホリデーを取るらしくクリスマスや元旦にはガタッと落ちる」「スパムボット(ネットを自動巡回して他人のメアドを取ってくるロボット)によってメアドを登録されてから、最初のスパムメールが届くまで大体2.5週間かかる。これは5年前の半分の早さになっている」「どっかで一回自分のメアドを取られたら、平均して850通のスパムメールを受け取るはめになる」などなど。

シドニー新空港

 過去数十年以上もめていたシドニーの第二空港について、Badgerys Creek空港がアボット首相によって正式に決まったというニュースが、2週間ほど前(2014年4月中旬頃)に流れてました。「え、ほんとに?」って感じなんですけど。

 確かに首相の発表では、2016年から2.5ビリオンドル(ドル100円として2500億円)かけて着工することになってます。そこまで話が具体的になってるなら確定路線か?というと、そんなに簡単にはいかないんじゃないかなあって僕は思ってます。なんせ異様に辺鄙なところで(だからこそ予定地になるのだが)、ここに空港を作ったところでアクセス出来ない。まずは高速つくらないとダメだろうし、鉄道だっているでしょう。着工は2016年だとしても、いつ稼働OKになるかというと微妙でしょうねえ。一応建築予定期間は10年で、完成は2026年ということになってますけど。

 なぜなら、第一に、この種の計画というのは当初の予算の数倍に膨れ上がるのが通例だからです。オーストラリアはどこも人口が増えてます。シドニーも都市化スプロールが激しいから、青写真作ってる頃と実際の着工・竣工時期とのタイムラグで内容や予算が全然変わってしまう。NSW州知事が変わる度に、シドニーのインフラ新計画!とかいうんだけど、確かにちょっとづつ実現はしているけど、大きなものほど決まらない。やれハーバーブリッジを二階建てにするとか、シティのど真ん中にトラムを通すとか地下鉄をもう一本作るとか、パラマッタロードに高架ないし地下ハイウェイを作るとか、ドラフト(草案)を作っては破りの繰り返しです。

 だから今回の空港も、僕は話半分に聞いてます。「うまくいったら、でしょ?」ってな感じで。
 その懸念を裏付けるような新聞記事をみつけたのでご紹介しますね。Take-off won't be plane sailing for Badgerysという記事で、Sydney Morning Herald 紙の April 19, 2014付けです。

 記事の内容を一言でいえば、この新空港着工のキャスティングボードを実質的に握っているのは、オーストラリアの政府ではなく、現在のシドニー空港株式会社というイチ民間企業であり、この会社がGOサインを出さない限りは何も進まないということです。

シドニー空港のサイトにある
所有関係図
 これはいわゆる公共インフラの民営化の問題としてカテゴライズできるものですが、現在のシドニー空港は2002年に民営化されています。正確には、かつての香港みたいな「99年間の貸借契約」で、当時のハワード政府がSydney Airport Corporation Limited(SACL)と契約を結んでいます。「民間セクターの活力を利用」と、美しく表現すればそうなるのでしょうが、ありていにいえば、政府はお金を出す気はないけど、公的インフラを貸してやるから、「これを使って儲けなさい、ただし自腹でメンテ&拡充してね」ってことです。悪くいえば「他人の褌で相撲を取る」ってやつですね。この政府の”口車”に乗って、シティを横断するCross City TunnelもLane Cove Tunnelも民間資本の寄せ集めで開発運営されたのですが、赤字続きで当初のコンソーシアムは破綻してるんじゃなかったかな。上手といえば上手、ソフィスティケートされているといえばそうなんですけど、儲け話を巡っての狐と狸の化かし合いみたいな。

 しかし、シドニー空港のオーナー群=当時80%以上の株式を保有するマッコーリーバンク(投資銀行)をはじめとして、株式市場を通じて10万人に及ぶ個人投資家群やら、Southern Cross Aiprport Corporation Holdingsやらその関係は複雑(右図参照→)=はシタタカで、せっせと儲けています。そのアグレッシブな「儲けまっせ」方針は、オーストラリアの公正取引委員会(ACCC)から、2010年のレポートで、独占体制を利用した「ぼったくり」と糾弾され、オーストラリアの5大空港の最下位、利用客一人あたりの負担は平均13.63ドルでメルボルン空港の7.96ドルに比べて2倍近く、2007-8年度に駐車場の利用料金も4時間で28ドルから50ドルに一気に値上げするなど、「やり過ぎだろ」という感じは確かにします。僕も年間何十回となく空港にいくので、そのアコギぶりは身にしみてます。大体、一部とはいえ、空港のトロリー(カート)を有料(400円だっけな)にすることはないだろう、という。

 そして、このぼったくり大王のようなシドニー空港が、第二シドニー空港の建設運営については第一順位の優先権を持っています。当初の契約でそうなっているわけで、それは理解できます。第二空港がどっかに出来て、それで商売上がったりになってしまうリスクを防ぐためには、第二空港の支配権をキープしたいでしょうからね。また、話が不調になって流れて、オーストラリア政府が他の希望者と話をする際にも、シドニー空港に対する以上に有利な条件を付けることを禁止するなど、契約上の優先的関与権と、国家間の条約でいう「最恵国待遇」のような権利をキープしています。

 だから、バジャリーズ・クリークに第二空港新設!再来年から着工だ、完成は2026年だといっても、典型的な絵に描いた餅であって、それが進むもコケるも、商売上手なシドニー空港(株)が、自費を投下して着工・メンテしても、それでも儲かる!というソロバンが成立しての話です。そして、記事によると「(Moore-Wilton says Sydney Airport has not yet spoken with the government but, when it does, will ''participate in a thoroughly professional and commercial manner''.=シドニー空港のCEOであるムーア・ウィルソン氏は、まだ政府と話はしていないが、もしするとなったら、”徹底的にプロフェッショナル&商業ベースに乗せて”やるつもりであると述べた」ということで、儲からない話に乗るつもりはない、やるんだったら徹底的に儲けさせてもらうと。なんせ「徹底的に(thoroughly)」と敢えて言ってるくらいですからね。


 で、儲かるの?というと、微妙なんじゃないですかね?あんなクソ辺鄙なところに空港作って、それも自腹で工事してモトが取れるのか?という。

 イチ住人としては、こういうフレームで話が進んでいるなら、コケてほしいですけどね。だって、いくら民間であるシドニー空港が費用を持つといっても、空港までの高速道路や鉄道路線までは整備できないでしょう。仮に税金湯水のようにつかって電車が通ったとしても、在来線乗り継ぎだったらシティまで2時間くらいかかるぞ。高速だって、シティまで往復110キロ、既存のM7とM5リンクだけで片道15ドル、往復3000円もかかる。ガス代いれたらその倍はかかる。誰が利用したいと思うのか。

 それでシドニー空港が儲けようとおもったら、現在のシドニー空港の発着料金を途方もなく高くして、新空港に航空会社を誘導しようとするだろうし、そうなったらシドニー利用客の不便は著しいでしょう。結果的に観光旅行客の皆さんが割を食って、帰路の朝のフライトを間に合わせるためには、シティのホテルで朝の3時起きとかになるかも。これじゃ無理すぎて、シドニーのパッケージツアーが売上激減、結果的にシドニーの観光業界も大打撃となるかも、です。

 ということで、記事で書かれているように、アボット政府は「決定!」と言ってるものの、実際にはこれから数年がかりでシドニー空港(株)と詰めた話し合いが行われるし、空港側がどう言うか、それで儲かる胸算用が弾けるかどうかにかかっているので、何ともいえないでしょう。だいたい、今から数年後の経済環境がどうなっているかは誰にも分からないしね。

 ところで、シドニー空港に投資しているマッコーリー・バンクですが、どっかで聞いたことないですか?オーストラリア在住の人だったらよく聞く名前ですけど、日本のマスコミでも名前が出てます。羽田空港の買収問題で話題になりましたよね。いっときは羽田空港の筆頭株主(20%)になってますから。

 〔焦点〕海外ファンド、日本のインフラ投資に傾斜 アベノミクスにらみ新戦略という2014年 02月 27日付のロイターの記事によると、「インフラ投資ですでに実績のあるマッコーリーは、羽田空港のターミナルビルを運営する日本空港ビルデング の株式を一時、約20パーセント保有し、筆頭株主になったが、これが空港運営の外資規制の議論を巻き起こした。日空ビルの買収防衛策に阻まれ、マッコーリーは09年に同社の自社株買いに応じる形で保有株を手放した。マッコーリーは13年、前田建設工業 とインフラ投資のジョイントベンチャーを設立することで合意し、再度日本のインフラ投資拡大を模索しているという。」ということです。他人ごとではないのですね。

 別に外資導入が悪いとは言わないし、うまくやれば「税金使わずにインフラ拡充」の妙案でもあります。ただし、そこは狐と狸の世界ですから、かなりしたたかに国際投資ビジネスに精通してないと(日本側が)、庇を貸して母屋を取られる結果になるかもしれないし、彼らは儲けることに関しては非常に上手ですから。

 そして資本主義社会で金儲けが上手であることは、美徳でこそあれ悪徳ではない。私企業に対して「儲けるな」と言うのは、漁師さんに対して「魚を捕るな」というくらいナンセンスでしょう。

 したがって、暴走しがちな私企業に対しては、適宜適切にカウンターを当てて抑制しなければならない。そこで政府など公的セクターの役割が期待されるのだけど、政府や官界というのは、ともすれば財界と二人三脚で大ボケぶっこいたりするから、結局は一般市民サイドの監視の目が大切。そのためには、例えば、このような一般の新聞記事(特殊なビジネス専門紙ではなく)で、この程度のレベルの経済分析の記事が一般市民に読めるように提供されているのが(また一般市民にそれを理解できる知的水準をキープすることが)、情報環境として必要だと思います。「難しいことは分からない」と安易に言ってしまうのは、「私は馬鹿だから殺されてもしょうがない」と言うくらいナンセンスなことだとも思う。



 以上、冒頭に述べたように今回はあっさり風に短くしておきましょ。




 
文責:田村



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