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今週の1枚(2012/10/15)



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Essay 589: 地元で問題視されつつある超過密違法シェア物件

 写真は、ご存知オペラハウス。何の変哲もない、構図も今ひとつの写真ですが、よく見てください。純白のウェディングドレスも麗しい花嫁さんのフォトセッションが二組も同時進行中です。

 大体土日に行くと、年がら年中この光景に出くわします。

 


問題点の変遷 日本人同士→住環境の劣悪さ

 今週もオーストラリアネタですが、前回よりもぐっと身近な話題、超過密ルームシェアの話です。
 最近どんどんヒドくなっていって、ついには地元社会でも問題視されるようになってきた、というのが今週のトピックです。

 このHPでも、留学やワーホリのページ、特にシェア探し系のページに時々言及していますが、お約束のように日本で学校に申し込んで、お約束のように「最初はホームステイ」でホームステイをやって、その後、お約束のように皆が住むのが、このシティその他にありふれた存在である超過密シェアです。2DKのマンションに十数人がすし詰め状態で住んでいるという。よく東京の大久保あたりで、外国人労働者さん達が同じような過密状態で住んでいるのが報道されたりしますが、日本人も一歩外に出たら似たようなものだということです。

 十数年前からその種の存在は普通にありました。現地在住の日本人(永住権やビジネスビザなど)にとっては、よく聞く話であります。で、この種の話題が出る場合、「素晴らしいこと」として語られるというよりは、「なんだかな」的に語られる場合が多かったです。

 でも、その理由が微妙に変わってきているように思います。

日本人同士

   昔は、「日本人ばっかりで群れている」という部分がポイントで、「せっかく来たのになんで?」という文脈でした。別に日本人同士暮してはいけないという法律はないし、永住権者だって日本人同士のカップルの場合は当たり前のように日本人同士暮しているわけですけど、でも、英語の勉強や異文化体験が目的で来ている短期滞在者(数年程度だったら"短期”です)が日本人同士暮して意味あんのか?と余計なお世話ながら思ってしまうという部分ですね。

 でも、まあ別に違法なことでもないし、「人それぞれでしょ」って感じで距離を置いていたのですが、段々日系ビジネスが「充実」してきて、日本のTVドラマはすぐに見られるし、カラオケもあるし、漫画喫茶もあるし、、、という具合に、ほとんど日本で暮していると変わらなくなり、どっちかといえば「いかに日本環境を再構築するか」みたいな感じになっていく。それもインターネットの充実によって、ネット上では殆ど変わらなくなり、異国感は日に日に下がっていくという。

 そんなこんなで今は日本人同士(ないし日韓その他混合)のこの種のルームシェアで暮すのは、殆どお約束化してきていると思います。普通にやってたらまずそうなる、という。だからこそ一括パックやシェア探し特訓やってるわけなんだけど、「特訓」くらいしないと、その環境から抜け出しにくい。てか入ってしまう前にやらないと手遅れで、一回ぬるま湯に入ったら最後、もう出てこれなくなる。絶対とは言わないけど、かなりの意志力が要ると思うし、かなりの意志力があるなら最初からそうなってない。

 これはシドニーだけではなく、NZのオークランドでもカナダのバンクーバーでも同じという話を聞いたことがあります(もっと凄いとも)。要するに、ハワイが半分日本であるようなものですよね。

普通そうなる

   ここで改めて言っておきますが、僕はこういった傾向を一概に悪いとは思わないし、全く無価値であるとも思わないし、それをやってる人々が根性なしのヘタレであるとも思わないです。やっぱ海外は半端じゃないし、特に英語がろくすっぽ分からない段階で一人ぼっちでいるしんどさは、やったことがある人でないと分からないと思う。海で溺れる経験みたいなもので、鼻に水が入ったときの苦しさは、経験しないと分からない。あれが半永久的に続くくらいの苦しさがありますよ。精神的にどれだけツライか。また、日本人同士といっても、年齢も職業も違う人達、日本では出会うことはなかっただろう人達と共同生活をすることは、それなりに得るものもあるだろうし、波長があえば楽しくもあるでしょう。だから、一概に悪いことではない。

 しかし、「それがベストな状態か?」と言われると、そうではないと思う。地元オーストラリア人社会にも、多国籍社会にもスーッと入って行けるという選択肢の自由度は欲しいでしょう。そして、それを得るためにはそれなりの技術と経験が必要であり、問題はその技術と経験を得る機会が減ってきていることだと思います。

 その昔は、群れようにも日本人同士どこにいるのか分からなかったし、日本語系のサービスや物販も殆どなかった。僕が来たときも、オーストラリアに着いてから2週間以上たって、初めて自分ら以外の日本人を学校でみかけて、「あ、いるんだ、やっぱり」と思ったもんです。これは大変なんだけど、すっごい楽なんですよ。ネットもないし、情報もないし、日本人や日本語に頼りたくても「無い」んだから諦めも付いた。というか「諦める」以前に期待もしない。だからオーストラリア社会に突撃するしかない。一本道だから、これは楽ですよ。でもって、やってみたらオーストラリア人優しいし、「英語が出来なくてもコミュニケーションは出来る」という大事なことがすぐに体感的に分かるし、「なあんだ!」って思う。全然怖くなくなるし、苦しさも感じる前に通り越えてしまう。だから、着いて3日もすれば、もう日本に帰りたくなくなった。

 でも、日本語サービスがあるよというのは厳しいです。だって「やらなくてもいい」という選択肢があるんだもん。「意思の力」というのは、全て選択肢あっての話です。選択肢が無ければ意思なんか要らない。現在日本人同士固まっている人で、不本意でそうなってしまっている人は、確かに意思が弱いのかもしれないけど、その弱さは、普通にダイエットで失敗するくらいの弱さですし、僕自身その程度の弱さでしかないと思います。食い物が無くて、食うや食わずでやってたら自然と誰でもダイエットできる。したくなくても出来てしまう。しかし、24時間間断なく、目の前に美味しそうなケーキを見せられて、いつでも自由に食べられる環境におかれたら、ダイエットなんかそうそう出来るものじゃないです。そゆことですね。

 でも、十年以上前は、まだボンダイとかモスマンとかパディントンあたりテラスハウスや一軒家で、皆さん個室で暮していたというケースも結構ありました。つまりは住環境はさほど悪くもなく、またお値段的にもそんなにぼったくられているわけでもないという。単に日本人同士って部分だけがトピックだった。でも、今は違う。

住環境の問題、安全性の問題

   今、問題になってるのは、日本人同士云々以上に「住環境の悪さ」です。
 どう考えても、2DKに十数人というのは詰め込みすぎだろって思う。大久保だってそこまでひどくはないんじゃないか。バックパッカー宿の場合も、6人部屋とは普通にあるけど、あそこはキッチンやラウンジ、バックヤードなど共有スペースも広いし、そうやって暮すことを前提に設計されているし、許認可も得ている。しかし、2DKというのはそこまで考えて設計されていないわけで、そこで暮すこと自体がどうかという点、もう一つはボッたくられているという経済的損失の点。第三に安全性です。地元では、この安全性から先に論じられています。

 ということで、そろそろ地元記事を紹介しますが、前振りとしては、先日(9月)に、この種のルームシェア物件で火災があり、可愛らしい(新聞に写真が載ってた)中国の学生さんが亡くなってしまいました。火災にまかれてベランダに出て、苦しさにたまりかねて、皆が息を飲んでるなか、墜落死という痛ましい事故です。そこで、なんでこんなに詰め込んでるんだ、これじゃ火災が起きたらひとたまりもないだろって話になり、今回の調査報道につながっていくわけです。

Living on the edge in danger high-rises

Overcrowding and illegal renovations are turning high-rise apartments into potential death traps, a Sun-Herald investigation has found.

サン・ヘラルド社の調査チームによると、過密&違法な改築は、高層マンションの死傷事故の危険を増大させていることがわかった。


September 30, 2012 Esther Han, Natalie O'Brien



Just weeks after a young woman died in a fire in a Bankstown unit with an extra unauthorised bedroom, enquiries have found several other units in the same block have unapproved alterations.
違法なベッドルームが増改築されていたバンクスタウンのマンションで、若い女性が火事で死亡してからちょうど1週間後、同じマンションの他の数世帯においても、違法な増改築が行われていることが判明した。

Couch surfing ... six people in a three bedroom unit in Chippendale and the living room's up for rent. Photo: James Brickwood
ネット版記事の写真の説明:(写真のリンクはココ)カウチ・サーフィング(本来の意味は、友達の家を居候して渡り歩くこと(カウチ=ソファで寝かせて貰って、ソファからソファへサーフィンみたいに移動するから):チッペンデールの物件。3BRに6人。リビングルーム住まいもあり)
 上のスキャン記事の写真のキャプションで"overcrowded"(過密、詰め込み)はわかるとしても、"sardine living"には笑ってしまいました。こんな言葉があるのかどうか知りませんが、オイルサーデンの缶詰のように、人々がぎっしり詰め込まれているってイメージでしょう。

The Sun-Herald has also uncovered rampant overcrowding in inner-Sydney apartment blocks, finding three examples after contacting just eight ''room-for-rent'' advertisers.
サンヘラルド社の調査によると、シドニー都心近郊のマンションでの過密居住が一般化しており、8件のシェアルーム広告の中から3件の実例を見いだすことが出来た。

The discovery of eight people sleeping four to a room in a two-bedroom unit in Pyrmont adds to widespread examples dogging councils, such as Auburn after finding 11 people in a two-bedroom flat.
Pyrmontのシェア広告でみつけた2BR(ベッドルーム=2LDK相当)のマンションに、一部屋4人づつ合計8人が暮している実例は、シドニー全体に広まっていて自治体を悩ましている事例〜例えばAuburnには2BRに11人という事例があった〜のほんの一例に過ぎない。

In areas around Macquarie University in North Ryde, up to 20 students were hot bunking - sharing beds alternating different times of the day and night. Another student, who had fallen ill, was found living in the laundry of an apartment.
マッコーリー大学の周辺であるノースライドでは、なんと20人がベッドシェアをしているという事例もあった〜昼間と夜間で交代するのだ。病気になったある学生は、洗濯室で生活していた。

Property experts believe unsafe overcrowding is widespread and expected to escalate amid tightening rental markets.
住宅の専門家は、安全性に問題のある過密住宅は広まっており、昨今の賃借市場の厳しさからして、それはさらに悪化するだろうと予測している。

Meanwhile, the building supervisor co-ordinating the repair work at the fire-damaged West Terrace apartments in Bankstown has discovered numerous units with apparently illegal additions.
この間、先日の火事でダメージで負ったバンクスタウンの(ウェストテラスという名前の)マンションの補修工事を司っている工事監督は、数多くの世帯において、違法な造作が行われているのを発見した。

A Sydney University student, Connie Zhang, died on September 6 when her flat, with an extra bedroom that was never approved by council, was enveloped in flames.
さる9月6日、シドニー大学の学生コニー・ツァンが亡くなったときも、炎に包まれた彼女のマンションの部屋には、役所に認められていないベッドルームが付加されていた。

In some outer suburbs, illegal subdividing of units to create extra bedrooms has been a long-term problem and, in Auburn, the council is about to launch another crackdown.
郊外地では、部屋を間仕切りしてベッドルームを増やす違法行為は長いこと悩みの種であり、オーバーンでは、このたび一斉摘発を行う予定である。

Mark Brisby, the council's director of planning and environment, said ''it seems to be fairly common throughout the metropolitan area''.
市役所の計画環境課長マーク・ブリスビー氏は、「この問題は、シドニー全域にわたって普通の慣行になりつつあります」と語る。

Mr Brisby said they had had problems with the 500-unit Auburn Central block in the past as well as two other apartment buildings in the area.
「オーバーン・セントラル(という名前の)500世帯のマンションでも問題が起きましたし、同じ地域に他に2棟の問題物件がありました」とブリスビー氏は続ける。

But authorities say there is little they can do about the numbers of people living in apartments.
しかし、世帯の居住人数について、市の当局がなしうることは少ない。

There are no laws to limit how many people can share an apartment.
マンションの一世帯に何人まで住めるかを定めた一律の法律は存在しないのだ。
(注:但し、増改築については許認可を定めた法はあるし、また人数については個々の契約やマンション単位の規約はありうる)。

A spokeswoman for Fire and Rescue NSW said they usually discover the overcrowding and illegal renovations after they have responded to a fire alarm or emergency.
NSW州消防局によると、火災報知機や緊急出動で出かけていくと、この種の過密住宅や違法増改築世帯によく出くわすそうだ。

More than 300 fire safety orders to fix problems were issued as a result of the 350 fire safety inspections carried out by Fire and Rescue in the past financial year.
前年度において、消防局は、350回の火災予防検査を行っているが、そのうち300件以上に改善命令を出している。

Fire and Rescue has previously issued orders in December 2006 in relation to Auburn Central. Subsequent inspections through 2007 found these orders had not been complied with and revealed more concerns.
消防局は、2006年12月にオーバーン・セントラルに改善命令を出している。しかし、その後2007年の事後調査では、これらの改善命令がほとんど実行されておらず、新たな問題点すら発見している。

Other areas of concern included major issues including alarm systems that don't work, missing fire doors, missing smoke detectors and painted-over sprinkler heads which compromised their operation.
その他の懸念事項というのは、例えば火災アラームシステムが働かないことであり、それは防災ドアが無かったり、火災報知機が無かったり、スプリンクラーのヘッドの上を塗られてしまっているので適正に作動しないことであったり。

When examining overcrowding, The Sun-Herald obtained the contact details of available rooms and beds from flyers taped to poles in the Chinatown and World Square precincts. The three units identified as overcrowded offered accommodation for $130 to $175 a week.
過密住宅問題を調査中、サン・ヘラルド社は、チャイナタウンとワールド・スクェア(都心南部にある巨大な居住&商業施設)付近の電柱にテープで貼られていたシェア広告をもとに連絡を取ってみると、過密住宅と思われるマンションのルームシェアが週130ドルから170ドルで貸し出されていた。

The Sun-Herald visited a unit block on Bunn Street in Pyrmont with many international students. The man renting out a bed for $175 a week said the two-bedroom apartment had eight people with four women in one room and four men in the other.
PyrmontのBunn Stにある物件を見たところ、多くの留学生達が住んでいた。週175ドルのルームシェアをしているという男性は2BRの物件に8人=男性4人、女性4人がそれぞれ一部屋に暮しているとのことであった。

At an apartment block at 49 Regent Street in Chippendale, one of the six people living in a three-bedroom apartment was planning to convert part of the living room for a seventh housemate for $130 a week.
Chippendale の49 Regent Stの物件では、3BRの物件に6人が暮しており、リビングルームの一部を週130ドルで貸す予定であるという。

The former chairwoman of the City of Sydney Residents' Network Jill Yates said the problem of overcrowded housing was growing. ''I know that it's a lot worse than it used to be. Before, 10 people were cramped into two-bedroom apartments. Now I've heard it's far more.''
シドニー都心部の住民ネットワークの代表であったジル・イェーツ氏は、この過密住宅問題はどんどん増えているとのことである。「一昔前よりもずっと悪化していますよ。前には2BRに10人なんて話がありましたけど、今はそれどころじゃないですから」

To let: bed for $100

Colin Volkofsky has seen it all. The head of Volkofsky & Brown, which manages nine apartment blocks in Sydney's CBD, says it no longer shocks him when he finds 20 people living in a two-bedroom unit.
コリン・ボルコフスキー氏は、こういった状況をずって間近に見続けてきた。ボルコフスキー&ブラウン社というシドニー都市のマンション管理業を営んでいるボルコフスキー氏にとって、2BRに20人という物件を見ても、もう驚かないという。

''They occupy balconies, divide the lounge room with curtains and put multiple bunk beds into bedrooms,'' he said.
「彼らは、バルコニーでさえ貸し出すし、リビングルームをカーテンで仕切った上で、幾つもの二段ベッドを設置しているんだ」と言う。

He has overseen the removal of 30 false walls. ''We have no authority to enter an apartment on a suspicion of wrongdoing. We are only provided an opportunity to prove overcrowding during fire inspections.''
ボルコフスキー氏は、これまで30もの”撤去すべき壁”の見過ごしてきた。「我々には、いかに不審が疑われても、個々人の部屋に立ち入る権限はないのですよ。火災予防調査の際に、過密住宅である旨告げるくらいのことしか出来ないのです。」

Mr Volkofsky says many apartments are leased by locals who sub-let them for more than $100 a bed or mattress. He has heard of a couple who reaped $150,000 a year in cash.
「多くのマンションでは、ベッドやマットレスひとつに100ドル以上の値を付けて又貸しされています。あるカップルは、1年で1500万円もの現金収入を得ているという話を聞いたことがあります」

- NSW Public Health Regulation 2012 says in the case of long-term sleeping accommodation the minimum occupancy rate is 5.5 square metres per person.
NSW州の公衆衛生規制2012によれば、長期にわたって住む場合の宿の、最低限の人口密度は、一人当たり5.5平方メートル以上ということになっている(注:畳一枚1.6平米だから、おおよそ3.4畳相当)

 以上です。
 わりと正確に取材しているようで、49 Regent Stの物件は、年がら年中シェア広告に出てきますよね。まだ悪くない物件ではありますが(ウチから行った人はいないけど)。ピアモントのBunn Stもちょくちょく見かけます。オーバーンは遠すぎるから普通サーチ範囲から外しますが、ここもちょこちょこ出てます。

いくつかの論点

 

地元的な問題点

   ここで紹介されているような寿司詰めのシェア形態を、僕はよく冗談めかして「養鶏場シェア」とか呼んだりしますが、「英語の勉強にならない」とか「来た甲斐がない」とかいう"good old issue"は、日本人世界での話であり、地元的には違います。

 第一に、他の住人がたまったものではないことです。あなたが日本でマンション住まいをして、我が身に置き換えてみれば分かるでしょう。自分のマンションの他の世帯がどんどん過密化していき、同じような2LDKの間取りでありながら、やれ303号室では11人住んでいて、508号室では14人暮していて、肝心の隣はまだ8人しか住んでないけど、深夜になっても人の出入りが絶えず、毎晩パーティーやったり怒鳴り合いやったり、エレベーターも混んでるし、一階フロアもどこの誰とも分からない人が常に大勢いて、まるで駅のコンコースのようになってしまったら、どう思います?

 住環境の整備ということに関しては、一般にオージーとは日本人以上にうるさいです。カミさんの仕事場の小振りのマンションにも自治会があるのですが、まあ、よく仕事をしてます。掃除やゴミ出しのケアテイカーのビルメンテの会社があるのだけど、最近仕事が雑になったので他の会社に即変えるとか、○号室のフェンスのペンキを塗るのに○色で塗るという申請が出ているが、これは周囲の住環境の品位にマッチするかとか、事細かにやってます。また、オージーも不動産の購入は転売することが前提であり、且つ住環境の良さは物件価値に直結するだけに、かなり真剣。年がら年中リノベーションをやっているのも、そうした方が高く売れるという一種の投資です。

 そういった一般的なオージー感覚からしたら、2BRに十人以上なんてのは「論外」です。普通の賃貸契約を結ぶときも、○人以下と書かれたり、居住者の氏名を全員書かされたりすることも珍しくない。それもセキュリティマンションで、カードキーや暗証番号が必要な場合、ホテル化してカードキーが乱発されたらセキュリティの意味がない。大体の人数はベッドルーム数の2倍がマックスでしょう。ダブルルームだったら二人住んでもいいけど、シングルルームは一人に限るとか、ベッドルームのタイプで厳密に限定する場合もあります。まあ、2BRだったら、両親一つ、子供部屋に一つ(二段ベッドで二人とか)で、いいとこ4人が限界でしょう。以前、シェアに行った人で、一瞬前の住人の居住期間と重なり、制限人数を一人オーバーするというので、重なっている間(数日間だけだけど)、なるべく外にでないで息をひそめて居て欲しいと要請された例があります。見つかったら速攻で追い出されるという。

 したがって、そんな無茶苦茶な使い方をしている世帯があったら文句が出るでしょう。生活環境が劣化すること、さらには自分の持ってるプロパティ(不動産資産)の価値が下がりますから。同じビルだけではなく、住宅街のストリート単位でも苦情が出たりするでしょう。そんなわけで、苦情を受け付ける自治体も辛いところだと思います。でも、そもそも、そんな養鶏場シェアがある物件は、もうビル自体が「そーゆービル」になってしまっている可能性が強いです。そこは、もう、伝統的な意味での「オーストラリア」ではないですね。

 第二に、安全性です。これは新聞に書かれているように、火事その他の災害の場合に死傷者が出る可能性が高くなることです。大体、この種の”養鶏場”の設置者というのは、人柄の良し悪しはともかく、この種の防災とかその点については無頓着な人が多いだろうと思われます。だから、避難ルートも、防災設備も無視して、勝手に部屋を間仕切りしたり、避難すべきドアが開かなくなったり、書かれているように火災感知器やスプリンクラーが作動しなかったりします。ウチの借りてる物件では、年に二度のチェックが入りますし、1年に一回は必ず火災報知機が作動するかチェックし電池を入れ替える法律上の義務がキチンと履行されますが、そんなことやってるかどうか。そして書かれているように警告を受けても無視してたりもするでしょう。その点、同じ寿司詰めでもバッパーの場合は、バッパーとして許認可を受けているし、行政指導も厳しいし、それを遵守しないと色々な面で不都合でしょうから、ちょっと話は違うと思います。

 書かれていない問題では、これは治安の章でも書きましたが、シティではおおむねどんな犯罪も発生率10倍以上でヤバいんですけど、特に同じ住居内での窃盗が目立つ。これはホテル等の宿泊施設が多いことも一つの理由でしょうが、この種のシェアが多いことも、多分理由の一つになるのでしょう。一部屋に3人も4人も住んで、総勢十数人もルームシェア状態でいて、それで皆仲良くやってたらいいですけど、入れ替り立ち替り人の出入りが激しいところもあるでしょう。そうなると、誰かが誰かの物を盗っても分からんよな。

 第三に違法性ですが、これも記事に書かれているように、何人以上住んではいけないという「法律」はないけど、普通賃貸契約で明記されますし、建物の管理規約にもあるでしょう(よく「ストラタ」と呼ばれる)。部屋の間仕切りなどの増改築するのは許認可が必要ですし、壁を増やすことで、壁の自重その他が、建造物の複雑な荷重計算に影響を与える場合もありうる。記事で「イリーガル」と書いているのはそういう意味でしょう。

 これらのことが地元的には問題点になるでしょう。

貸す側の事情

 なんでこんな違法&過密住宅が蔓延しているのか、その理由はなぜなのか?幾つかの要因が考えられます。

 第一に、貸す側の事情でいえば儲かるからでしょう。記事にも「1年間に1500万円の現金収入」と書かれているように、やり方次第ではかなり儲かる。投資用にシティに物件を買ってローンを払っていたとしても、2DKで10人入れて、一人150ドルづつ取ってたって、週に1500ドル、年間で7万8000ドル。これを二件やれば1500万円だもんね。僕もAPLaCなんかやってないで、これやった方がずっと儲かるよな〜(^_^)。しかもこんな現金所得、税務申告なんか限りなく誤魔化せるんだから、真面目に源泉徴収(PAYGという)を払っている年収2000万円以上のビジネスマン以上に裕福になる。

 右の新聞記事(Claims health officer overcrowded flat)は、誰でもよく見かけるシティのシェア広告が写真になってますが、内容的には、こういった過密違法シェアを取り締まっていた人物が、実はあとになって自分でもオーナーとして貸し出していたことが発覚したという暴露記事です。「お前もやってるじゃん!?」というわけなんだけど、取り締まっている間に、「これはボロい商売だ!」と思ってしまったんでしょうねえ。

 このように一方当事者(貸し主)が濡れ手に粟で儲かるということは、他方当事者(借主)が逆に必要以上に高い買物をさせられている、大損している、もっと平たくいえば「ぼったくられている」ということを意味します。

 じゃあ何故わざわざ大損をしてまで養鶏場に入るのか?です。

借り手の事情

 一つには損をしているということに気づいていない、ということがありえます。

 上の紹介記事でオイルサーデン状態と揶揄されているサセックスSTのWINDSOR PLAZAの賃貸価格(シェアではなく)を調べてみたら、2BRで安いのでは週610ドルというのがありました。他にも600ドル台がゴロゴロあり、これは周辺のサバーブ(特にノース)よりも安いです。

 日本人やアジア人は、都心=超高いという「発展途上国的な先入観」があるのかもしれないけど、生活水準の高いオーストラリアでは、あんな治安も悪く、自然もなく、庭もないようなハイライズ(高層建築)は住宅価値としては低いです。それに職場に近いというのも、仕事第一の人生を送ってないので大したメリットでもない。「シティだから凄く高い」というのは、不動産価格的には嘘です。もちろん週2000ドル近い物件もあるけど、これはオペラハウスを見下ろすとか、ホテルのスィートルーム的な物件です。平均的には2BRで600-800ドルくらいじゃないか?

 600ドルのマンションに150ドルも出して10人シェアするんだったら、5人集めて自分らで借りてしまえばいいじゃんか、ってことです。値段も安くなって人口密度は半分になる。もっとも、そこまでしてまで都心に住む必要があるかどうかですが。

 他の地域の多くのシェアは、この種の「利潤追求」型は少ないです。特に僕がシェア特訓して皆が決めているような物件は、物件自体の相場価値からしても相当〜お値打ちなところを探してきます。まともに全部借りたら600ドル以上はするだろう3LDKの物件の個室を170ドルとかね。そりゃそれだけ探すのだから当然だけど、その程度だったら3−4日探せば普通に出てくる。先日は、週6時間だけバイト(手伝い)をしてくれたら週85ドルという物件に行った人もいる。ローンを払い終った持ち家物件で、リタイアして悠々自適な世話好きじーちゃん・ばーちゃんの物件なんか、かなりお値打ちなのが多い。アナンデール個室130ドルというのもあったし。結構な広さの家でばーちゃんと二人暮らし。

 過密シェアは、大体において物件本来の価値の2倍くらい取られているから、週140ドルだったらコンスタントに週70ドル損している計算になります。3か月で840ドル、年間で30万円くらい損をするのだから結構なダメージだと思うのだけど、そういうことをするというのは、おそらくはこのあたりの算盤が弾けない、知らないのではないか?と。頭から「そーゆーもんだ」と思いこんでしまっているのかな?って気がします。

 確かに直接的な価格や、目先の支出としては安いんだろうけど、「見えないところで(コンスタント&大きく)損をする」パターンです。よくある話です。経営マネジメントや収支に構造的欠陥があるというか、破産管財人の報告書「第一章:破産に至る経緯」でお馴染みのパターンです。「安物買いの銭失い」以上に、金持ちになるか貧乏のままかは、このあたりの上手下手なんでしょうね。

どこで何をしたいか?

 もう一つ、都心やターミナルの方が「便利だから」という理由もあるでしょう。交通費かからないからコストも安くなるという理由もありうる。

 これは結局、どこで何をしたいのか?にかかってくると思います。大学の勉強がハード過ぎるので通学時間も勿体ない、忙しいからバイトもままならないし、年がら年中研究室に入り浸れるようにしたい、だから大学近くに安く住みたい。これは分かる。NSW大学近くのキングスフォードにシェアが多く、またマッコーリー大学近くの(記事にも出てた)ノースライドやイーストウッドなど。これらは「必要性」あってのことだし、勉強に集中という意味でより高い価値を求めているのだから分かる(あんなシェア環境で勉強出来るのか?という気もするが)。あるいは、深夜の仕事の関係で近場がいいというのも分かる。

 あと、ナイトクラビングとか、シアター鑑賞その他のシティライフが「好き」というのも大きな理由になるでしょう。これは住居というユーティリティ(実用性)ではなく、好き/嫌いの娯楽的消費支出なんだから、高くてもいいでしょう。しかし、どこまでいっても健康優良児的な垢抜け無さがつきまとうオーストラリアの都心でどれだけの「シティライフ」が得られるか微妙なところですし、その種の刺激が欲しかったら、東京やNY、あるいは上海などの方が面白いのではないか。

 でも、普通に英語や異文化体験をしたくて来て、普通に学校通って、普通にジャパレスで働いているならば、別にシティその他の過密シェアに住まねばならない合理的理由はないでしょう。ジャパレスなんかシティ以外にその十数倍あるし、労働条件や客質が良いのはむしろサバーブの方だし。

 基本的にシドニーシティって、東京で言えば、霞ヶ関と丸の内と兜町と銀座、それに大久保〜歌舞伎町がミックスしたような地域ですから、そこに用がある人は限られている。すなわち、政治家、官僚、エリートビジネスマン、富裕層買物客、そして夜のお仕事+観光業関係者くらいです。僕も仕事の必要が無ければ、1年に一回もシティに行かない。数年に一回くらい、在外投票をしに日本領事館に行ったり、美術展やイベントがあるなら行くけど、そのくらい。ほかに行く理由がない。あなたが霞ヶ関に行く理由がないのと同じです。

 だからこそ、人口440万人、面積で東京都以上にあるシドニー全域からしたら、CBD/シティと呼ばれる都心部は猫の額のように小さい。もう日本の感覚でいえば、「え?これだけ?」と拍子抜けするくらい。東京で十数以上あるターミナル駅周辺商業繁華街の一つくらいでしかない。つまり「シティ」なんかオーストラリアの社会全体からしたら、地下のボイラー室や配電室のようにかなり特殊な機能を司っている特殊なエリアであり、それほどの広さが必要なわけでもないです。

 もともと2000年のオリンピック以前のシティは、5時を過ぎるとゴーストタウン化してたし、居住用物件も少なかった。それが今日のようになったのはフランク・サルトル市長時代の開発市政でしょう。もうニョキニョキ高層マンションが林立するようになった。それが一般オージー市民の反発を喰らい、「シドニーを香港みたいにするな」という反開発主義&女性&無所属のクローバー・ムーアの長期市政になっている(先の選挙でも4期目を迎えたし)。しかし、サルトル時代に認可されていた多くの居住物件が、今日の"留学生村"の基礎になり、ややもするとエスニック・ゲットー(民族的スラム)化しつつもあるという感じなんでしょうね。

 だから、どこで何をしたいのか?にかかってくると思います。

利便性 VS 意味性〜開始即燃え尽き症候群

 ここで思うのは、人間の行動には「利便性」と「価値性」という二つの動機があることです。これは面白いので別項で描きたいのですが、要旨だけ書けば、「何故それをやるのか?」という動機には、@楽ちんだからという系統と、A面白いから(やる価値があるから)という系統の二つがあります。交通の便とか、安いとかいうのは@系の理由です。わざわざ生命のリスクを犯してまでエベレストに登るのはA系です。

 大体、日本で暮していればいいものを、何を血迷ったかオーストラリアくんだりまでやってくるという時点で、基本Aでしょう。会社の命令で赴任するなら@ですが、好きこのんでやってきている時点でA。ベースがAだったら、行動の基本はAでいくのがスジでしょう。便利なこと、安いこと、楽なことが良いのだったら、最初から来なきゃいいのだ。自宅でヌクヌクしてたら、安いし、楽だし、怖くないし、最高じゃん。高いお金払って、長時間飛行機の狭い座席に耐え、英語不自由に耐え、あらゆる不快と苦痛に耐えてきているのは、ひとえに「やる価値があるから」のA系でしょう。学びたいから、修行したいから、視野を広くしたいから、人生の可能性を掴みたいから、、、それはいろいろだけど、「楽だから」って理由はないでしょう。なのに、こっちきた途端に、A原理→@原理にシフトしちゃったら、来た意味がないという。

 でも、これありがちですよね。せっかく会社休んで、大金払って、ディズニーランドまで来たけど、門をくぐった途端に疲れちゃって、もう歩きたくないから、そのへんのベンチでずーっと座っているという。こう書くと阿呆みたいなんだけど、よくやるよね。勉強したくて、真剣に書評を読んで、選びに選んで参考書を買うけど、買った途端に満足して、全然読んでない、みたいな話。英語勉強するために学校にいったけど、入った途端全然勉強しないとか。これを何と呼べばいいのか分からないけど、「開始した瞬間に燃え尽きる症候群」とでも呼ぼうか。でも、ありがちですよね。人のことは言えないです。


賃貸価格の高騰

 
 でも、通奏低音のように鳴り響いているのは、シドニー(オーストラリア)の賃貸価格の高騰でしょう。もう嘘みたいに上がってます。右の記事は、Record rents continue to lock out tenantsというものです。

 不動産売買価格そのものはそんなに上がってないけど(ここ1-2年下がってすらいた)、なんでこんなに賃貸だけ高くなるのか?色々な解説がありますが、例えば、不動産価格が常識外れの高値になってしまっているから、おいそれと買えなくなってきているという説明があります。既に持ってる人だったら買い換えでなんとかなるけど、ゼロからローンを組んで買う人(ファースト・ホーム・バイヤーといいますが)には余りにもハードルが高くなり過ぎた。だから従来の購買層が賃借に廻るので、賃貸市場がタイトになる理屈らしいです。

 賃貸価格の上昇に伴い、シェアも上がっています。だから、超過密だろうが、ぼったくりだろうが、安全性に問題があろうがなんだろうが、安いシェアに集まるという傾向があります。

 一般的な中高額のローカルシェア、相場でいえば週200〜300ドルの層は比例的に上がっていると思いますが、低価格層は案外変わってないです。なぜかといえば、中低額シェア層の支払能力には限度があるからでしょう。高額層は、一般にペイのいい仕事に就けているし、給与自体もシェア以上に上がっているから賄えるのでしょう。しかし、中低額層は留学生など稼働条件に制限があるので、賃金上昇の恩恵を受けにくいという事情がある。物件が高額化しつつ、消費者の支払能力に限界がある場合にどうなるか?商品の質が劣化します。質が犠牲にした安物が出回る。だから、エスニックゲットー化がさらに強まり、こうして現地社会でも問題視されるようになってなっているということでしょう。

 もう一つ低価格層物件があるというのは、ビジネスライクにやってない、とっくの昔にローン完済持ち家物件のローカルシェアが一定比率であるからです。これらはちょっと浮世離れしていて、世の中の動向にビビットに反応しないで、昔ながらの感じでやってる。これが狙い目。大体、数百件に1件くらいの比率で出てくるのですが、このくらいの比率だったら楽勝でしょう。一見大変そうだけど、でもシドニー全域のシェアだったらGumtreeでもリアルタイムに7000件前後はあるし、毎日数百件は新規で出てくる。だからちゃんと探せば1日平均で一軒は出てきます。

 ちなみに日本人の場合まだ楽です。本国の給与水準や貨幣価値が低い他国の留学生やワーホリの方がより切実だと思います。豪ドルはかなり上がってるけど日本円も上がっているので相対的に変化がないし。それに日本人の場合は、以前にも書いたけど、摘発されたりしてジャパレスの給与も上がってきてます。ちょっと前まで普通に時給8ドルとかあったけど、今では10-12ドルでしょう?日曜には17ドルという話も聞いたことがある。家賃上昇率よりも給与上昇率の方が高いんだから、むしろ生活は楽になってる筈。ジャパレスももの凄い勢いで増えているけど、逆に留学・ワーホリ人数は激減してるんだから、昔に比べたらかなりの売手市場でしょう。まあ楽ではないでしょうけど、4−5年前のドル105円時代に来た連中は、なんだかんだで今の二倍くらいしんどかったと思います。

 そういえば、インドや中国から来ている留学生さんもしんどいんじゃないかな。いくら経済発展してるとはいっても、よほどの富裕層でなければ持ってこれるお金も限界あるだろうし、一方で現地の中国人・インド人は激増しているけど、だからといって中華・インド料理屋が激増しているというわけでもない。かなり競争激しいと思います。まあ、競争の激しさは、彼らも本国で慣れているとは思うけど。その昔、チャイナタウンで時給2ドルって裏話を聞いたことがあります。別にそれが全てではないだろうし、今どうなってるのか分からないけど、でも、母国での出身階層が同じくらいだったら、日本人よりも楽ってケースは少ないでしょう。

 ところで、右の記事の統計数値は、あんまり鵜呑みにしない方がいいです。アーンクリフなんか、「誰も知らないアーンクリフ」と言われているくらい地味なサバーブだけど、いきなり26%も上がって中間値530ドルというも、嘘とは言わないけど、実際とはちょっと違うような気もしますね。ライカードが430ドルでアーンクリフよりも100ドルも安いというのだけど、普通のシドニー住人だったら「はて?」と首をひねるでしょう。人気度でいえばイタリア人街のライカードの方が圧倒的に人気が高いでしょうし、高額物件も多い筈です。

 多分、種明かしは、アークリフあたりは、もともとがさびれていたから、新築大規模マンションを建てる余地があり、実際建てたんだと思います。賃貸物件みてても、ピカピカ物件が多い。旧来型の物件だったらアーンクリフ2BRで300ドル代からあるもん。一方、ライカードは、そういうピカピカ物件を建てる敷地がない。従来型のサバーブ住宅街だから、建てるにとしても強烈な住民の反対運動が起きるのは必定。そもそもカウンシルが許可しないでしょ。だから従来型のまま推移しているってことだと思います。同じ理由でセント・レナーズが高いのも同様でしょう。

 また、同じく、各州都における差額ですが、鉱山ブームでダーウィンが跳ね上がっているのは別格として、あとはあんまり統計数値だけ見てても意味ないです。自分が住みたいであろうサバーブの、住みたいであろう物件の価格同士を比較しないと、なにもかもごちゃ混ぜにして全体統計取っても意味がないです。

 ただ、それにしても価格高騰しすぎだという気がします。
 これも問題だよなと思うのだけど、しかし、この問題を考えていくと、ややこしい経済話になります。もう書いてる余裕もないから、ちょっとだけ。

 そもそもなんで不動産の値段が上がるの?というと、経済成長というベーシックな部分(人口増加、産業増大など)に加えて不動産投機/投資という現象があるからでしょう。安定的に経済が成長しているときは、そういうのもいいよねって感じだったけど、もう先進国経済が頭打ちになって、資本主義の毒性も日に日に強くなっているかのような昨今、投機や投資のように「お金でお金を稼ぐ」という、最初から金持ちでないと参加できないアクティビティに対する世間の風当たりは、今後強くなっていくような気がします。

 これに、「持てる中高年層 VS 持たざる若年層」という世代的なカラミが入ってくると、結局、裕福なジジー共が強欲に投機や投資をしてるから、どんどん値が上がって、俺達のマイホームが買えないんじゃないかよ!こんなスラムみたいな住環境で勉強しなきゃいけないんじゃないか!って形で体感・肉声的に翻訳されていくのも時間の問題だという気もします。今のオーストラリアは、若い世代もまだ辛うじて夢が持てる社会なので、なんとか頑張ってマイホームをゲットし、それをベースに利殖に励んでという人生設計がアリなんだけど、それもいつまで続くことやら、です。

 続かなくなった時点でヤバイです。
 その種のルサンチマンが破裂するかもしれないという社会不安がひとつ。これはOWS的なロジックが世界中の若い世代に浸透しつつあることに加えて、前回触れたようなソーシャルメディアの普及で、物事の進展が早く、ドラスティックになってきていることです。

 第二に、仮に不動産高騰幻想が醒めて値崩れなんかを起こしたら、これまで高騰するという前提でローン組んだり、ポートフォリオで投資している層がダメージを喰らいます。移民を増やしたり、外国人の土地所有制限を緩和して不動産の価格維持を図るというのもスジが違う気がするし、皆の支持を得られるかどうか分からんし、第一そんなに実効性があるのかどうかも分かりません。幾ら移民国家といっても、年間の絶対数でいえば大したことないし。

 でも、これらの資産ダメージは、アメリカのサブプライム破綻ほどではないにせよ、やっぱりそれなりに衝撃があるでしょうね。そうなったら、今度はそのインパクトが別の形で社会に跳ね返るでしょう。裕福な高齢者を貧乏に転落させたところで、今度はその介護や世話のための福祉費用がかかり、結局税金その他が上がるというわけで誰も得しないのですよね。だったら、その痛みを家賃という形で分割払いしてたらいいのかもという気もして、このあたりは考えがまとまってません。

 さて、前回と今回、地元新聞ネタを書いたわけですが、他にも結構面白い記事があります。
 日本の「幸福の科学」がオーストラリアにも進出してきて、ウチの近所に白亜の御殿みたいなものが建ってたりします(周囲が林なので、あの白さと独特な建築様式と相まって、なにやら日本の田舎のラブホテル風に見えてしまうのですが)。新聞記事では、なぜああいう新興宗教が西洋で受けるのか論で、とある識者が分析してました。

 それによると、@仏教ベースというのが良い。西欧では仏教は宗教というよりも、哲学として見られがちなので抵抗が少ない。A内容が自己啓発セミナーみたいな所が良い。これはアメリカに多いパターンで、「教祖」というよりも、提唱者、メソッド開発者と見られやすい。最近世界で売れてる新興宗教の共通パターンらしいです。幸福の科学でも、教祖が敢えて信者との距離を置いて、説教はもっぱらその著書でやり、且つ内容がアメリカのモチベーショナル・スピーチのメソッドに酷似しているのでとっつきやすい。B「マスター」という言葉に西欧人は弱い。ゼン・マスターとか、マスターが付くと、達人+教授+聖者を足して3で割ったようなニュアンスがあって(ここは僕個人の意見)、ありがたがってしまう。日本で「マスター」と言っても喫茶店の店主みたいなイメージなんだけど、英語圏では違う。以上、要するに、あんまり新興宗教カルトのように見えてないわけね、ということです。「へえ、そう見えるんだ」と面白いです。

 他にも、、なんて書いてたらキリがないので、このへんでやめます。では、また。



文責:田村



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