今週の1枚(08.06.02)
ESSAY 362 : 日本帰省記(3) 南紀白浜旅行 ”ビジネス研修”的温泉旅館体験記
写真は、泊った宿の部屋からの絶景風景。
日本帰省シリーズの3週目です。案外と書くネタがあったりします。今週も太平楽ブログ風に白浜旅行編です。まったりいきたいと思ってるのですが。
海外在住の日本人が日本に帰ってきたら、やることは決まってます。@美味しい日本料理、そしてA温泉です。日本や日本人が嫌いな日本人というのは沢山いると思いますが、「温泉が嫌いな日本人」というのは未だかつて会ったことがありません。あなたは嫌いですか?
というわけで、帰る度に温泉に行ってるわけですが、加賀温泉、湯河原と続いて、今回は近場で和歌山県の白浜温泉です。白浜は何度も行ったことがありますが、手頃なんですよね。大阪から特急で2時間ちょい。東京圏における熱海や伊豆みたいなもんでしょう。
ネットであれこれ研究して、取った宿が「浜千鳥ホテル海舟(かいしゅう)」というところでした。また、一泊しての翌日は、ベタなんだけど白浜のアドベンチャーワールドです。なんつーか、とっても普通で、とってもベタな日本人のホリデーなんですけど、なかなか良かったりするわけです。何が良くて、何が良くなくて、そこで何が見えて、何を考えさせられたのか、そのあたりを書いていきます。
浜千鳥 ホテル海舟
ホテル海舟のサイト
このホテル(というか旅館というか)は、ユニークでありました。よく考えられているなあと感心しました。おいおい話します。
前回の湯河原プロジェクトは、「一泊3000円程度のトラディショナルでシャビーな日本宿」というコンセプトでありましたが、今度は普通に「多少金がかかってもいいから、しっかりのんびり」というものです。悪友達とどんちゃん騒ぐのではなく、今回はカミさん旅行ですし。だから一泊一人3万円までという豪気な予算で探していたわけですが、理想は、部屋数が少なく、広告も少なく、リピーターですぐ埋まってしまうような料理の美味しい静かな旅館、、、というものでした。条件にかなう宿が一つあったのですが、日程の関係でどうしても取れませんでした。「むむ、しからば」と第二志望にあがってきたのが、この海舟です。
何故良いと思ったかですが、立地です。「岬全体が施設」というのが面白いと思ったのですね。岬の付け根に本館があり、両翼に部屋棟があり、岬に向かって降りていく過程で露天風呂が点在し、最後は海辺レベルの露天風呂に至るという。しかも「離れ」の部屋も点在し、岬の先端は展望台になっている。こういう発想が面白いなと思ったのが一つ。
もう一つは、敷地が広い分、全体にスカスカというか、せせこましくなくゆとりのある空間であろうし、岬というのは視界が開けているわけですから、どこからでも眺望に恵まれているだろうと推測したからです。面白さ+ゆったり感ですね。そして、この予想は見事に当たりました。
↑写真左と中央は部屋からの眺め。右はロビーの風景
もう一つ、施設の説明や、利用者の体験ブログなどを呼んでいると、「ふーん」という面白い趣向があれこれあるわけです。夜食の無料ラーメンとか、作務衣や浴衣のデザインが豊富で好きなモノを選べるとか、全館全て畳敷きであることとか。そのあたり、わりと興味をそそられました。
これらの期待は裏切られることなく、思った以上に「新しい試み」が随所に見られました。あまりにも面白いので、途中から「旅館でホリデー」というよりはホスピタリティビジネスプランを吟味する「ビジネス研修」みたいになってしまいました。カミさんも昔の仕事柄そのあたりには強いので、ふたりで「なるほど、だからこうなっているのか」「巧いやり方だ」と議論してたりします。
細かく挙げていくと十数項目に達するので、まず大きなところから述べますが、このホテルは、従来のホテル業・旅館業とは全然違うタイプの業態を目指しています。それは何かというと、例えば「団体客を全くアテにしていない」ということです。旅館やホテル(特に客室が100を超える大きな施設)の経営のドル箱というか、大きな柱になるのは、慰安旅行とか研修旅行などの団体客でしょう。1グループきたら大きいですからね。団体客にとって絶対必要な施設は「大宴会場」です。ずらりとお膳を並べて、ステージがあって、乾杯の音頭を取って、カラオケをやる場所です。ところが、このホテル海舟は、この宴会場というのが全くありません。二階に宿泊客全員が食べる大きな食堂が二つあるだけです。
また、お酒の自動販売機が一つしかないです。それもコインランドリーだったかな、分かりにくいところにある販売機の中でビールをちょこっと売ってるだけです。お部屋の中の冷蔵庫にも酒類が全くないです。ウーロン茶と水だけです(でもって無料)。つまり、集団でやってきて、温泉入って、酒飲んでガハハ!という団体客、ある意味典型的な「温泉客」は全く眼中に無いという。
はい!ここでビジネス研修です。なぜそうするのか?あなたはなぜだと思いますか?
合ってるかどうか分からんけど、僕とカミさんの考えたのはこういうことです。この種の温泉団体客というのは、他の個人客に取ってははた迷惑な存在です。夜更けまで大騒ぎしてるし、泥酔して廊下をよたって歩いているし、大浴場を我が物顔に占拠するし、深夜まで部屋で麻雀やったりしてるし。夫婦水入らずででゆっくり静かに、、とやってきた個人客にとっては、天敵のような存在です。まあ、多少誇張して書いてますし、僕自身その団体客として何度も大騒ぎしてましたし、同じ人があるときは団体客であり、あるときは個人客であったりもするでしょうから、別段悪意はないです。ただ、利用客のニーズや、利用形態は確かに違うだろうなってことです。そこで、団体客ゼロということを打ち出せば、ゆっくり静かに過ごしたい個人客にとっては非常に魅力的なわけです。
といって、別にこのホテルがHPや宣伝広告で大々的に「団体客がいなくて個人客にはいい宿ですよ」と言っているわけではないです。おそらく一言も書いてないてんじゃないかな。でも、別に「団体客お断り」とか「騒がしい客はダメ」と敵対的な経営姿勢を示さなくても、「大宴会場がない」という事実それ自体で自然に団体客をカット出来ちゃうんですよね。また、個人客もそれを知って行くわけではないでしょうが、泊ったときの静かさや居心地の良さでリピーターにもなろうし、クチコミでも広めてくれるでしょう。このあたりのやり方が巧いなー、と思った次第です。
あと補足的に思うに、白浜のような昔からあるド定番の温泉地の場合、もう市場は飽和状態、完熟トマト状態になっているでしょう。このホテルは昨年の出来たばかりだそうですが、こういう飽和市場に後から参入していくとしてら、従来どおりのスタイルでは難しいでしょう。団体客市場は、忘年旅行や新人歓迎会などおそらく毎年恒例のように行われているだろうし(僕も大阪弁護士会の新人歓迎旅行で白浜に行きました)、クライアントである団体と旅館、そして間に入る旅行代理店とでは長年の関係が結ばれているケースも多いでしょう。後発には絶対不利です。よほどの好条件でも出さないと食い込んでいくのは難しい。一方、翻って考えてみるに、団体旅行市場というのはこの先どうなのか?業界に不案内な素人の推測ですが、それほど市場が拡大する分野とも思いがたい。なぜなら、連綿と続く時代の傾向としては「社員旅行で親睦を」的なノリは減ってきているでしょうし、テンポラリーな派遣社員を広く雇用する今日の企業風土においては尚更です。公共投資の削減による接待機会の減少、大規模小売店の増大によるチェーンの個人商店主を接待する機会も減っているだろう。また少子化などの影響で修学旅行などの学校関係の需要が先細りすることも考えられます。いずれにせよ、日本人がこの先、今まで以上にガンガン団体旅行をするとは思いにくいにのですね。だから、見通しの暗いマーケットに、コネなし不利のまま新規参入をするくらいなら、いっそのことバッサリ切り捨てて、個人客というマーケットに特化した方が戦略としては良いのではないか、と。また、団塊の世代が退職し、「裕福な新老人層」が増えるにしたがって、夫婦水入らずのフルムーン系、あるいは2−4人程度の少人数グループ旅行の方がむしろ伸びるかもしれませんしね。
僕ら部外者の余計なお世話の推測なんかどうでもいいのですが、しかし、結果として泊っているお客さんは、若い人から熟年のカップル、あるいは少人数のグループさんだけでした。当然というべきか、大きな団体客は見かけませんでした。値段が高いせいか総じて落ち着いた感じのお客さんが多かったです。暴れず、ムチャ言わず、金払いもいい、、つまりはホテル側としてはもっとも好ましい良い客筋になっているのでしょう。
この大きな経営選択=団体客をカットするなど従来の温泉旅館スタイルから離れ、個人客のためのユニークなスタイルの追求=に従って、驚くほど細かいところまで巧みなアイデアが詰め込まれています。
それは例えばスタッフ=「旅館なんだけど仲居さんが一人もいない」という点にも現れています。部屋にあるのは布団とベッドの中間のような、高さが低く、布団のような寝心地のベッドがあります。最初からベッドが置かれているということは、いちいちスタッフが部屋の中に入って布団を敷くという労働をカットできます。また、「皆様にゆっくりおくつろぎいただくため、特に呼び出しがない限りスタッフが皆様のお部屋に伺うことはありません」と明記されていますが、これはいかにも客のニーズを先取りしているようですが、同時に労働と人件費の大幅節約にもつながります。
確かに個人客的には、部屋に着いてからゆっくり親密になりたいわけで、別に誰かにお茶を入れてもらったり、布団の上げ下げをしてもらったからってすごーく嬉しいってもんでもないんですよね。特に若いカップルなどの場合、部屋の中は二人だけのプライベート空間であってくれた方が気が楽だというのもあるでしょう。また、これはむしろ年齢が高くなるほどそうだと思うのですが、お世話をしてくれる仲居さんに幾ら包んだらいいだろう?とか、綺麗な千円札を数枚探してポチ袋やティッシュで包む手間、あるいは包むべきかどうすべきかの見極めを考えるのは、ある意味鬱陶しくはあります。でも仲居さんが全然こないんだったら、この種の思い煩いはなく、楽です。
その当然の帰結として、食事は例外なく全員大食堂でやります。
部屋食は、温泉旅館の醍醐味でもあるし、これを無くしてしまったら客も減るとは思います。が、部屋食アリにしてしまうと、配膳の施設やらスタッフやら膨大なコストがかかりますし、全体の配置図それ自体にも影響があるでしょう(例えばもっと厨房と部屋の距離を縮めた方がよく、こうも広々と部屋との距離を取れない)。そもそも仲居さんフリーの特徴が消えちゃいます。だからこの点はホテルとしても譲れないでしょう。
その代わり大食堂をゴージャスにする。確かに感じのいい空間で、それぞれ2−4人づつの間仕切りされたブースになってますから、だだっ広い大広間で他のお客さんと一緒に、、という感じではないです。食事中は誰にも見られないし、またテーブル席だから、女性客にも気安いでしょう。また、ドーンと窓に面したカウンター席もあり、これなんか都会のビルの最上階ラウンジのデートスポット的感覚です。写真右は、朝食の際の窓に面したカウンター席から撮ったものです。
それに、部屋食はたしかに嬉しいのですが、2人ないし4人で食べる場合、純然たる「ゴハン」である場合が多く、そのまま「宴会」になだれ込んでいくという感じでもないでしょうから、ダメージは乏しいかもしれません。実際、僕も、部屋食でないのは詰まらなかったのですが、でも、食堂が良かったのでそう大きな不満はないです。
スタッフは、おしなべて皆さん若かったですね。前述したように、比較的客筋が良く、怪獣みたいなうるさい客が少ないということは、逆に言えば海千山千の仲居さんや女将、あるいは敏腕フロントマネージャーがいなくても、若いスタッフだけでやっていけるということでもあるでしょう。
もっとも若いといっても頼りない感じでは無く、キビキビしてとても感じのいい皆さんでした。それに、あんまりイヤイヤやってる感じではなかったです。この感じは、伸び盛りの頃のリクルート社に似てます。友人がリクルート社にいたので、梅田の同社ビルのバーに寄せてもらって飲んでたことがありますが、社員が皆若く、生き生きしている感じが似ています。あとでも述べますが、これは単に使われているだけではなく、結構「任されている」んじゃないかな。また、ついこないだまで自分自身が消費者だった、消費者と距離が近い若い人の意見やアイディアがどしどし取り入れられているようにも思えますし。
消費者的なアイディアというのは、例えば、浴衣や作務衣を選べることです。部屋にも備え付けのものがありますが、「もっとファッショナブルなものを着たい、面白いものを着たい」という意向もあろうと思うのです。そこでフロントの正面に浴衣と作務衣が色とりどりに置いてあり、宿泊客は勝手に(幾つでも)持っていっていいのですね。
また、ちょっと小腹の空いた夜に、夜食のラーメンを無料で提供するアイディアとか、朝はインスタントではないコーヒーメーカーのコーヒーを無料で飲めるとか、こういうのって「そういうのがあるといいなあ」という消費者的視点だと思うのですね。僕はこのラーメンが楽しみだったのですが、満腹と連日の疲れから、食事後ふと寝てしまい、気付いたらラーメンタイムは終わってしまっていました。返すがえすも残念であります。あ、無料といえば、浴場のアイスキャンデーも無料でした。これは食べました (^_^)。
さて、僕らの泊った部屋は、比較的小さな部屋の「波の抄」という部屋棟ですが、それでも資料によれば41平米あります。「和洋室」ということで奥が板張りの洋間、手前が畳の和室。4階、5階のみという「上層階確約プラン」というものを予約したのですが、低層階だと眺望がイマイチだそうなのでこの棟にされるならば上層階がオススメです。
特筆すべきは、各部屋のベランダに風呂があることです。チェックインしたとき、フロントの操作でお湯が溜まり始め、部屋について着替えて一服してやれやれという頃合いに風呂が溜る(自動的に湯が止まる)。でもって、ベランダの絶景眺望を見ながら、まずは一風呂浴びるわけです。これも、プロらしからぬアイデアだと思うのですね。ベランダに簡単な囲いとともに木枠の風呂がポンとあるなんて、「あったら嬉しい」という素人的、消費者的な発想です。また、ベランダの風呂も部屋から死角に配置され、且つ風呂桶の前は間仕切りされたシャワールームや洗面所&更衣空間になっていて、相部屋の人の視線も気にしないで済むいう心配りが見られます。僕らが行ったときは、季節柄、菖蒲湯ということで、なにげに菖蒲が置かれていたりします。ニクいですね。しかし、海を遠望しながらの風呂はメチャクチャ気持ちよかったですよ。
↑写真右の洗面所の奥がシャワールームになっており、さらにそこからダイレクトに風呂に行ける。洗面所の下にある網カゴは大浴場や露天風呂に行く際の「お風呂セット」。
このように最初の発想は素人チックな思いつきであるのですが、思いつきっぱなしではなく、それを実現していく過程においてもイチイチ消費者的な視点や頭脳を一回通しているのを感じるわけです。ただし結果としての仕事が素人っぽいわけではないです。頭脳は素人的良さを持ちながらも、実行する手腕は確実にプロのそれです。各種のデザインといい、ネーミングといい、システムといい、コスト計算といい、プロの仕事でしょう。プロといっても、この道何十年の旅館やホテルのプロではなく、広告代理店的な匂いがするというか、別業種でバリバリとビジネスをやってきた企業が、その思考パターンとスキルでホテル業もやっているという感じがします。例えば、以下の写真は部屋に飾られていた調度品です。どれも非常にセンスがよく、御当地名物の備長炭をそのまま飾るという発想なども秀逸だと思います。
ただし、そんなにコストはかかってないと思うのですよ。もちろん安物やガラクタの類ではなく、しっかりしたインテリア小物なのですが、旅館やホテルの発想ではないような気がします。伝統的な旅館だったら、床の間の掛け軸とか、古九谷焼の銘品なんかが置かれていたりするのですが、そのコスト(ン十万円以上)に比べたら、それほど高いものではないでしょう。しかし、だからといって安っぽかったり、雰囲気を壊しているわけでもなく、ちゃんと調和しています。これは、素人仕事ではないですよね。プロのインテリアコーディネーターの仕事なんじゃないかな。このあたりのコスト感覚と、費用対効果の感覚。旅館業には素人である僕らには、むしろ一般ビジネス的感覚として馴染むんですよね。掛け軸とか見ても正直言ってわからんもん。
気になるお風呂ですが、ごく普通の大浴場(プラス露天風呂が二つ)の他、岬の斜面を降りながら貸し切り露天風呂が3つ(これは早い者勝ち)、一番下に混浴の大露天風呂があります。混浴風呂の写真はナシです。さすがにそんなところまでカメラ持って撮影しにはいけないよ(誰もいなかったとはいえ)。
ところで、ここで大胆に混浴にしてしまうあたり、カップルや個人客を前提にした発想なんでしょうね。スケベな団体客もいないし(大体酔った勢いで女湯を覗いたりするのは集団心理のなせるわざですし)。でも、いくら何でも混浴は、、、という問題もあるわけですが、これは「湯あみ着」の導入でクリアしています。男性用と女性用とがあり、濡れると身体にベタッと張り付く、網目状のバスタオルのようなもので、円筒状になっているのを身体に巻き付けるという。これが結構良くできていて、濃厚な色がつけられているので身体に巻いたら全然見えないし、また布地が大きいし、適当にゴワゴワもしているので身体のラインが見えるというものでもない。要するに水着をつけているのと見た目変わらんわけです。なるほど、これなら混浴でもいけるか、と思いました。
この着慣れぬ湯あみ着をお客さんに周知徹底させるために、神話の世界のヤタガラスが登場します。ヤタガラスとは三本足のカラスで「八咫烏」と書きます。日本書紀に出てくる、神武天皇の東征の折、熊野から大和まで案内したといわれるカラスです。熊野三山において信仰されており、御当地キャラですね。で、このヤタガラス様ご一行のイラストが、湯殿に向かう廊下に紙芝居風に次々に描かれており、湯あみ着の使用方法もちゃあんと書いてあるというわけです。
↑写真左浴場の入り口を抜けると、長い廊下に壁にヤタガラスのイラストの説明書きがかかっているわけです(写真中央)。
その説明の中身が、写真右です。
↓説明を読んだあと、写真左のように湯浴み着が置かれています。
でもって、湯上がりのくつろぎスペースが設けられており、嬉しいことに無料のアイスキャンデーが置かれていたりします。アイスキャンデーなんか、一人で20本も30本も食べられるわけもないし、食べたところで原価からしたら数百円でしょう。そういう細かいところでいちいち小銭を取るよりは、いっそのこと無料にしてジェネラス(気前のよい)な感じを与えた方が経営的には得ですよね。↑写真中央は無料アイスキャンデーの場 (^_^)。
あと写真右は、これがまた上手だと思ったのですが、露天風呂に虫や葉が落ち込んだときのすくい網です。露天風呂なんだから虫が入ったり、葉っぱが落ち込んだりすることは当たり前に生じますが、都会暮らしでヒヨワになった日本人の中には、この程度のことでピーピー泣いたり、衛生がどーのうるさいことをいう人もいるでしょう。だったら露天風呂なんか最初っから入るんじゃねえって気もするのですが、それを言っちゃオシマイなので、柔らかくクリアするわけですね。注意書きの文面がふるっていて、「虫くんや葉っぱちゃんが遊びにきたら、そっと帰してあげてね」と書かれています。巧いですねー。カミさんと二人で感心しました。「虫くん」「葉っぱちゃん」と表現することによって、気分はほのぼのメルヘンですよ。また、「そっと帰してあげてね」という下りで「大自然への理解と優しさ」モードに入るわけです。虫や葉を異物や敵対物として思わせず、結果としてクレームになることを防ぐという。クレーム処理、リスク管理のお手本みたいなものです。また書体が味があったりして、これはもうまごうことなきプロの仕事でしょう。ヤタガラスのイラストにしてもそうですが、このように至るところにプロの仕事ぶりがみられるのですが、これは消費者心理を研究しぬいている広告代理店的な仕事じゃないでしょうか。
あと、お風呂で気付いたことは、身体にこすりつけるための塩が山盛り盛られているのがうれしかったですね。サウナは当然のようにあり。シャンプーは普通のものの他に、特産なのか灰をつかったシャンプーがありました(土産物屋にも売ってた)。ドライヤーやら、髭剃りやらは十分揃ってます。そのあたりは遺漏ないですよね。
設備面についてさらに敷衍しますと、↓下の写真右は正面玄関のあたりを上から撮ったものです。写真中央はフロント近くのラウンジ。写真右は、「離れ」の部屋です。
↓このように、どこもかしこも全て畳敷きになっています。エレベーターホールまで畳敷き。さすがにエレベーターの中は畳ではなく絨毯だったような気がしますが。
この畳敷きですが、単純にゴージャスな感じがして嬉しいほかに、もう一つ利点があるでしょう。それは全部畳敷きだからスリッパが要らないということであり、それは廊下をスリッパで歩くペッタラペッタラ音がしないで静かであるということです。このメリットは実は大きいのでは。
さて、気になる食事ですが、ここだけ大きな減点ポイントでありました。
いや、決して不味かったということはないですし、それなりにエンジョイできました。それどころか、下のメニューを見たら、「うわ、豪華!こんなに食べきれるかしら?」という内容でもあります。
↑写真左はメニュー。二枚の写真を貼り合わせてますが、まあ読めるでしょう。もの凄い品数でしょ?
写真中央は、食前酒と前菜。紀州蒸し、貝柱と海老、菜の花ジュレ掛け、あおさ豆腐
写真右は高菜年輪巻と湯葉のあんかけ、蛤真丈・独活・人参・木の芽・清汁仕立て
↑ドーンと舟盛り(写真左)。刺身(舟盛り右側)が烏賊、鮪、縞鯵、煮貝、太刀魚、雲丹、栄螺宝和え、海草寄せみかん釜盛り、寿司(左側)が秋刀魚棒寿司、柿の葉寿司、目張り寿司、南高梅蜜煮、紀ノ川漬け、がり、です。
写真中央は、寿司のボックスの下にある口取りで、西京焼、海老雲丹焼き、木の芽和え、こごみ旨煮、合鴨ロース、一寸豆、ケラ玉子
写真右は、鯨料理で、赤身竜田揚げ、大和煮、皮ベーコンカラースパイス
↑左は小鍋料理でカワハギとつみれ団子。
中央は最後のゴハン(ジャコ飯+十穀米)とけんちん汁、漬け物(古漬け、山牛蒡)
右がデザートで、ジャバラのババロアと和菓子
以上です。どうです、ゴージャスでしょう?
ゴージャスなんだけど、味的な感動には乏しかったです。感動具合で言えば、メニューを読んだとき>盛り合わせを見たとき>食べたとき、という感じで、見たり聞いたりする分には「おおー!」なんだけど、食べると、「うーん、まあ、こんなもんかな」という感じです。
まあ好みですから何が正しいわけでもないでしょうが、僕とカミさんの意見でいえば、品数は半分に減らしてもらっても構わないから、ビシッと美味しい磯料理を食べさせて欲しかったです。そのために白浜に来ているんだし。大体、宿代が2万6000円だったら、晩ご飯に1万円以上のグレードを期待してもバチは当たらないと思うのですが、このクオリティだったら正直いって4000円くらいかなあ。ガックリきましたね。
何がアカンかというと、それなりにゴージャスでそれなりの味もするのだけど、これ、半分くらい仕出し(外注)じゃないかな。オセチ料理的というか、会議室で食べる松花堂弁当というか、結婚式の披露宴に出てくる料理というか、高級給食というか、「まあ、そうなんだけどー、うーん」という。「うわ、これは旨いわ!」って目が覚めるような美味しさはないですね。一番ゴージャスな舟盛りや鯨料理が総じて全滅に近く、むしろ前菜とかデザートが美味しかったですね。
まあ、こんなグルメぶってエラそうに書くのもイヤミなことなんですけど、、、でもね、僕も結構楽しみにして日本に帰ってるわけです。移動費用に10万円以上かけて10日ほどしか滞在しないので、1日あたり1万円コストがかかってるわけです。わざわざ海辺にやってきたのは、それなりの魚を食べたかったからであり、それが披露宴的だとやっぱり残念です。
ただ、ここの料理人さんが下手なわけではないと思うのですよ。実際、椀物などいい味でしたし、翌朝の朝ご飯(前々回のトビラ写真)はすごく美味しかったですよ。ただ、ゴージャス感を出そうとして仕出しまがいの舟盛りをドーンとやってるところに問題があるのでは?と思いました。まあ、こうやって色々な味を楽しみたいというお客さんもいらっしゃるでしょうから、一概に何がいいとは言えませんけどね。でも、僕の好みとしては、ビシッとスジの通った料理を食べたかったです。そのために料金があがってもいいですし、あるいは「ご自分で選びたい方に」ということで、別途館内に料理屋さんを設けてくれてもいいと思います。
以上、食事まで含めて総合的に考えると、この宿の特徴を一言でいえば「高級ファミレス」だと思います。
マーケティング的にも非常に良くできているし、痒いところに手が届くように考え抜かれているし、居心地も良いのだけど、でもファミレスなんだわ。一本ズシッとした本物の重厚さに欠ける。見栄えはよく、破綻もないのだけど、奥行きに今一歩欠ける。料理にそれが一番よく現れていました。というか、料理を体験したから、「ああ、そういうことか」と分かったという感じですね。
僕が今まで泊ったところで、良かったのは長野県の「たてしな藍」という旅館でした。カミさんと行ったのですが、10年近く経っても未だに二人の間では語りぐさになってるくらい。いわゆる一本スジの通った正統的な日本旅館で、たたずまいも素晴らしかったのですが、感動的なのは料理でした。びっくりした。「なに、これ?」というくらい美味しく、特に最初にでてきた梅の蜜煮は死ぬまでもう一度食べたいですね。あるいは、名前は忘れたけど三重県津市にある料亭旅館の朝飯が、これもブン殴られるくらいショックでした。美味しくて。味噌汁といい、海苔といい。あんな美味い海苔は生まれて初めて。「海苔ってこういうモノだったのか」と視界が広がった。
まあ、ここまでの感動が常にそこらへんに転がってるとは思いませんが、なかなか難しいものですね。例えば、たてしな藍に泊った同じ信州旅行で次の日に泊ったのは有名な軽井沢の万平ホテルでした。こちらの方がはるかに知名度もあるし、料金も高かったのですが、しかしぜーんぜん感動的ではなかったわけです。お金を出せばいいってもんでもないんですねー。
といいつつ、僕はこのホテル海舟にまだまだ好意的です。評価もしますし、オススメもします。
「高級ファミレス」と表現しましたが、フォローするわけではないけど、別にファミレスが悪いわけでも、ダメなわけでもないです。僕自身嫌いでもないです。入りやすいし、気楽だし、均一的な品質を保っているし、またメニューも色々あって楽しいですからね。ただ、モノゴトの当然の帰結として、間口を広くしてポップにすれば、必然的に奥行きにも限界が出てくるというだけのことです。悪いことではない。正統派の日本旅館には、正統派ゆえの良さがあります。特に良い宿、良い食事は、「底が見えない」奥行きを感じさせてくれ、それが豊かな気分にしてくれます。ただし、それだけに当たり外れも大きいし、好みのレンジもマチマチです。
何が良い悪いの問題ではなく、貴重なホリデーとお金を使って利用する以上は、その特徴をしっかり理解された方がよりハッピーな結末になるだろうと思い、余計なお世話であれこれ書いてるだけです。ということで、ここはホテル界における(いい意味での)ファミレス、それもかなり高級な部類に属するものという位置づけをしたいと思います。正統派の旅館もいいけど、もっとカジュアルに、もっと均一的な安定を求めたいという場合もあるわけで、その場合このホテルは大きな選択肢になるでしょう。ゆったりしてるし、綺麗だし、あれこれ趣向を凝らしていて面白いし。料理だって僕らが求めているレンジが狭すぎるとも言えるわけで、一般的には十分及第点だろうし、ともあれゴージャスですしね。
今、もう一度このホテルのサイトを見ながら、幾つかアドバイスをするとしたら、ゴハンに大きな期待を寄せたい貴兄は「素泊まりプラン」というのをオススメします。晩ご飯は別途白浜のどっかの寿司屋さんにでも行くわけですね。「お客様のお声により、いよいよ販売開始の素泊まりプラン」と書かれているところからすると、僕と同じような感想を抱いた方も多かったのかも知れません。ただし、ここの朝食は美味しいので1000円プラスして「朝食付き素泊まりプラン」でもいいです。あの朝食は1000円以上の値打ちはあると思いますので(本来の配膳=かなり豊富=の他に、さらにバイキングまであります)。なお、晩飯抜きの差額が約4000円だということは、上記の料理のところで「大体4000円くらい」という見当は大きく外れてはいないのでしょう。つまり、宿泊料のうち料理よりも居住空間に比重が置かれている宿であるということです。
あと、洋室ダブルルームは、確かに値段が半額くらい安いのですが、その分部屋の面積も半分以下(19平米)ですし、楽しい露天風呂(ベランダ風呂)がありませんので、楽しみ半減です。また、せっかくベランダ風呂を期待していても低層階で眺望がイマイチだったらこれまたガックリですので、予約の際にはそのあたりを確認されるといいと思います。その意味ではインターネットで予約するよりも直接電話して予約した方がいいかも。
なお、いざチェックアウト精算の時にサービス料その他の隠れ費用が付加されていてガーンとなることはなかったです。とても明朗会計で、予約時の値段でOKです。また、カミさんは朝食が不要だったので、予約の際にその旨告げたら朝食代1000円ちゃんと引いてくれました。この点も好感の持てるところです。
備え付けの冷蔵庫には水とウーロン茶しかありませんので、もし部屋酒をチビチビ楽しみたいとかいう向きは、自分で持ってきた方がいいでしょう。
貸し切り露天風呂は3つしかないので、混んでいる時期だと競争率が激しくなります。僕らのときはGW直後だったので楽勝でしたが、混み合う時期には厳しいかも。その代わり、一般の大浴場にも露天風呂はあります。
ところで、「ビジネス研修」な話の続きですが、ここまで書いたところで、この会社についてネットでちょっと調べてみました。このホテルの親会社は共立メインテナンスという会社のようです。どこかの財閥系のグループ企業かというとそうでもなく、石塚晴久氏が1979年に興した会社で、現在も同氏が筆頭株主であるところから同氏の会社といっていいでしょう。全国各地で学生寮や社員寮の受託事業を行い、99年に東証二部上場、2001年一部上場と一貫して業績を伸ばしています。ホームページ
のキャッチコピーに「進化する下宿屋」と書かれているように、「寮」事業が中核になってます。全国に数百という単位で学生寮、社員寮を持っていますが、これらは自社物件ではなく、他に所有者はいます。つまり不動産の有効活用ビジネスであり、有効活用の内容が寮経営であるという。
さらにHPを読み込んでいくと(企業にしては非常にわかりやすく、主張も鮮明なHPです)、単なる箱モノとしての不動産デベロッパーではなく、賃貸マンション業でもなく、「下宿のおばさん」的な「お世話のノウハウ」というソフトにこそ、この企業の核心があるようです。お世話、すなわちホスピタリティです。居住者と全然タッチしなかったら冷たいけど、かといってあれこれやりすぎても余計なお節介で鬱陶しいわけで、そのあたりの兼ね合い、やってもらいたいことと、欲しくないことの見極めこそがノウハウの主眼なのでしょう。そして、寮という中核事業の外延としてホテル事業にも進出し、ホテル海舟があるというわけです。
「なるほどね、だからこうなってるわけね」と思いました。上場して十年未満の伸び盛りの会社ですから、若いスタッフも多くて当然ですし、比較的活躍の場も与えてもらえるのかもしれません。また、「やることと、やらないことの線引き」というソフトを中核としているならば、このホテルのような発想になるのはある意味当然とすら言えます。
----しかし、まあ、僕のような赤の他人が、他人様の企業やら経営やらにあれこれコメントする必要なんか別に無いんですけどねー (^_^)。いや、まあ、わかっているのですが、それだけこのホテルがユニークで色々考えさせてくれたということです。
いかん、アドベンチャーワールドを書くスペースが無くなってしまった。
文責:田村
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