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今週の1枚(01.10.29)






雑文/近況 ・ TAX RETURN



 堅い話が続いたので、今回はのんびりと近況を。
 というか、本当は今回はお休みしようかと思ったくらいなのです。なぜかといと、TAX RETURN/確定申告の締め切りと、BAS(Business Activity Statement/GSTの支払)の四半期締め切りが重なっているのですね。確定申告の締め切りは10月31日、BASの締め切りにいたっては今日です。今日。こんなもん書いてる場合ではなかったりします。

 いや〜、しかし、面倒臭いですね、税金。
 こちらは、全員確定申告をするシステムになっておりまして、皆さんやってます。多くの場合は、源泉徴収などで先に徴収された分の還付を受けるケースですので、確定申告というよりは文字どおりタックス・リターン、税金の還付を受ける「楽しい」作業だったりするのですが、僕の場合は単純に払うだけですので、シビアです。「そろそろパソコンも新調しようかなあ、どうしようかなあ」なんて思ってたら、パソコン分くらいは軽くぶっとびそうです。それどころか日本への帰国旅費分くらいもぶっとびそうです。くそお。

 昔は良かったんですよね、税金。儲かってなかったから。何をどう書いても、どんなにいい加減に帳簿つけても、ミエミエに赤字でしたもんね。税務署の皆さんも、「あ、まだビジネス始めたばっかりなのね、それでこんなボロボロな数字なわけね、まあ、頑張ってください」ってな感じなのでしょうね。仮に調査に入られても全然恐くなかったもんね。気楽なものでした。

 ところが、石の上にも三年というか、やってりゃそれなりに儲かってくるようになります。鼻歌まじりに帳簿つけたりしてると、確定申告のときに集計して予想税額をはじき出してみて、「マジかよ?」とサーっと青ざめるようになります。こ、これはマズイということで、真剣に経費計算をするようになります。領収書もとっておこうという話になります。

 僕のやってる仕事は、メインには皆さんをどっかの語学学校に紹介して、その見返りとして紹介料(コミッション)を頂くということをやってます。各語学学校もキチンと申告するだろうから、収入に関しては、もう明々白々、隠しようがないわけです。これだけ明白だともう帳簿操作でどうこうしようという気もおきませんから、楽といっちゃ楽なんですけど、つらいですね(^^*)。

 でもって経費ですが、これはSOHO形態(Small Office Home Office)で自宅でやってることから、異様にややこしかったりします。SOHOの場合、フロア面積などで、これはプライベート、これはビジネス用などと割合計算をして、経費をはじき出します。言葉にしちゃうと簡単なんだけど、実際にやるとなると大変。家賃くらいだったら簡単にはじき出せるんですが、電話電気料金から、電球一個、クッション一個にいたるまで、「40%ビジネス、60%プライベート」など決定していかねばならないです。

 また、ゲストルームを日割りシェアのようにお貸しすることもありますから、それもまた申告せねばなりませぬ。しかし、シェアとかホームステイとか、こんなの皆イチイチやってるのかなあ?まあ、やってんだろうなあ。でもって、その経費も出てきますし、これまた割合計算をしなければなりません。家賃ひとつとっても、ここまではメインビジネス割合、これはゲストルーム分とか比率計算をします。カーテンでも買おうものなら、これは自分の寝室だからプライベートで、これはゲストルームだから、これはリビングだから共有で、、、とかやっていきます。さらに、電球なんかまとめ買いしますから、いちいちこの電球はどの部屋につけた、、、なんてやってらんないです。

 車の経費も、プライベートとビジネス比率を決めるために、いろいろな算出方法がありますが、一番実態に即しているのがログ・ブックをつける方法で、いちいち何月何日どこまで行きました、トリップメーターの数字も書いて、何キロ走ったかを算出して、それらを積算して公私比率を決めるという。しかし、これも厳密にいってたらキリがないのですね。例えば、皆さんをお連れして語学学校を見学に行きました、その途中でふと思い付いて晩御飯の野菜を買いました、、なんてケースの場合、一瞬プライベートも入るわけで、そんなこと考えていたら頭がウニになります。





 国民全員が確定申告をする建前になってますから、税務署が毎年発行しているマニュアル本もかなりしっかり作りこんでいます。逆にいえばブ厚い。メインの本で128頁あります。これに、サプルメント68頁、ビジネス用40頁がつきます。もちろん全部英語。

 順番に読んでいけば、誰でも出来るように編集されているのですが、まず全部読むという作業が大変。明らかに関係ない個所(年金受給者とか、軍人恩給とか)はガンガンすっとばせますから全部読む必要はないとはいえ、小説読んでるわけではないですからね。例えば、今年から導入された、PSIという制度の説明でも、

 This rules are designed to improve the integrity of the tax system by ensuring that, after allowing certain deductions to the entity, any remaining personal services income is attributed to and included in the assessable income of the individual who provided the personal services.

 なんて説明が延々書いてあって、一回読んだだけでは、「あん?」」と理解できなかったりします。


 もう税金なんか朝令暮改の最たるものですから、去年やったからといって今年も同じというわけにはいきません。毎年新たに制度が出てきて、出たと思ったら改正されて、また変わって、、という具合です。これも無視してると、意外と減税システムだったりしますから、ちゃんと読まないと損します。

 去年の7月から始まっているGST(消費税)ですが、これも改正が多い。GSTそのものは改正されてないですけど、その申告の方法がどんどん簡素になっていってますし、オプションも増えてきました。"GST Kills"と言われるくらい、じつは結構静かにスモールビジネスを侵食していっていると批判されてますが、そのなかでも納税事務の大変さが挙げられてます。これ、僕なんかまだ簡単な方ですが、ニュースエージェントなどで、はいチョコレート売りました、バースデーカード売りましたでいちいち集計していくのは、そりゃあ大変だろうなと思いますわ。GSTで儲かるのはアカウンタント(税理士)だけとか言われてますが、そうだろうなあという。

 今年はGSTが導入されて初めての確定申告なわけです。過去に四半期ごとに消費税を払ってるから、これらの帳簿と集計記録を単純に合算すればいいと思ってたら、そうはいきませんでした。やっぱり、消費税の算出の仕方と、所得税のそれとは枠組みが違ったりします。勘定項目のたてかたが違うから、結局全部やりなおして確認しないとならなかったです。

 また所得税の場合も、所得のなかからGST分、経費のなかかもGST分(正確にいえば還付請求可能なGST分)を控除する必要があるわけで、これも面倒臭いです。





 こういうのって税理士に頼んでしまえば簡単なのかな?とも思うのですが、僕の場合はあんまり簡単でもなさそう。物を仕入れて売りましたという形態ではないし、前述の「この電球は〜」なんて説明をイチイチ他人にやるのかと思うと、また税理士にわかるような形で英語で帳簿つけるとか考えると(この帳簿つけが一番イヤなんですよね)、うんざりするものはあります。

 これ、もっともっと儲かって手に負えなくなってきたら、それはそれで話も楽になるとおもいます。なまじ自分でできちゃう程度の規模だと、自分が一番わかってるから自分でやった方が手っ取り早いという部分はあります。


 しかし、折に触れ思うのですが、日本を出てきてこちらで暮らすにせよ、日本である程度仕事して社会のことわかっていた方がいいです。こちらで何かをする場合、それは納税でも、家を借りることでも何でもいいのですが、二つの問題点があります。ひとつはシステムそのものの知識、もうひとつは英語です。英語で、全く知らないシステムをゼロから理解するのは中々大変です。

 日本である程度世慣れておくと、システムそのもの知識はありますから、現地システムの違いだけを理解すればいいのでまだしも楽です。それに、英語にしても、こういう領域は独特の用語と論理で話が進んでいきますので、下地がないと英語だけ読んでいても理解しにくいです。






 タックスは大変ですけど、国民全員がやるというのはイイですよね。
 まず、「血税払った」という意識が染み付きますから。それに納税事務をやっていくと学んでいくものもありますから、政府がやってる福祉政策にせよなんにせよ、具体的にイメージできるようになります。

 よく選挙などで「イメージ先行で、政策論争がない」とかいう批判があったりしますが、政策を論じるにしてもそれを聞かされる国民がその政策を理解しないとやってもしょうがないという部分もあります。福祉政策といっても、その大半は財源問題ですから、福祉論は財源論、財政論でもあります。財政がわかってなかったら福祉も分からないという面は大いにあると思います。こちらでは、一方の党がなにか政策をブチあげるにしても、いちいち財源について説明せねばならず、財源を語らず政策だけいってると、それは単なる"wish list"を読み上げてるだけのオトギバナシに過ぎない、「こうなったらいいなあ〜」という夢を語ってるだけで「政策」ではないと、反対の党からボロカス言われちゃったりもします。

 選挙といえば、来る11月10日には、連邦総選挙があります。
 労働党(レイバー)が返り咲くか、連立与党が維持するか、かなり混沌としてきております。

 先日もディベートがありました。
 選挙前には、二大政党制ということもあって、それぞれ与党と野党の党首が出てきて、テレビで一騎打ちのディベートをやることになってます。アメリカの大統領選でもやりますが、なかなか面白いです。

 日本でもやれば面白いのに。今だったら小泉首相と菅直人とか小沢一郎とか好カードが組めそうですもんね。森首相のときは、、、、?でしたけど。こういうディベートは、一対一でやるというのがミソでして、3人以上でやってしまうとどうしても論点はボケるし、突っ込みも足りなくなりがちですから。

 ちなみに、今年のディベートは、野党党首キム・ビーズリーの勝ちというのが一般の評価です。
 僕個人の感想としていえば、今のジョン・ハワード首相とビーズリーとでは、ビーズリーの方が政治家としての器は大きいように思えます。これは、昔からそう思ってます。キィーティングを破ってハワードが首相になったときも、「大丈夫かな、この人」って、カリスマ性もないし、なんか頼りなさそうな感じも受けたのですが、それでも2期6年首相を務めていると、それなりに風格は出てきてます。

 ただ、それでも、ビーズリーの方がより大きな風格を感じます。実際身体もデカいし、柔和な大男といういかにもオーストラリア人という感じだし。言ってることもしっかりしてるし、それなりの哲学もありそうなんですが、いかんせん野党というのは割が悪く、ましてやずっと好景気が続いているだけに突っ込むスキが少なく、攻めあぐねているという感じを受けます。

 もし与党が勝って政権を維持したら、次の首相はおそらくピーター・コステロでしょう。いつも人を冷笑してるような、カミソリのような鋭角的な印象があって、あまり人好きはしないのですが、与党内部では実力ナンバーワンだと思います。野党は、ビーズリーの次はサイモン・クリーンが二番手でしょう。

 このあたり、次は誰というのが非常に明確だったします。それも、党内人事に長けているとかいう理由ではなく、また奥の院にいるどっかの長老が決めるというわけでもなく、実際に政治的能力がある順にあがっていってるという感じでして、それなりに分かりやすくていいと思います。




 
 ただ、今回の選挙は、例のアメリカ vs アフガニスタンのテロ戦争の陰に隠れてしまって、最初はなかなか盛り上がらなかったのですが、これからラストスパートに向けて、いろいろ盛り上がっていくだろうとは思います。まあ、それだけ、テロ戦争の方が長期化し新鮮味がなくなってきているという面もあるのですが。

 上の写真は、ニューヨークアタックがあった後に撮ったものです。シティとキングスクロスの間に軍港があるのですが、オーストラリア海軍の軍艦が集まってました。写真をよく見ると、左側に潜水艦が浮上しているのがわかると思います。

 今回の戦争で、オーストラリア軍も全面参加するわけで、よく日本から「時節柄、そちらは大丈夫ですか、日本に帰ってこないのですか?」とか聞かれますが、上の写真の通りです。皆さん、潜水艦の横で呑気にヨットで遊んでます。

 思うのですけど、もし世界大戦みたいなとんでもない事態になったとしても、こっちに居ると思います。こっちにいた方が安全ですもん。なんせ、オリンピックやラグビーでもやらない限りは世界の桧舞台になかなか立てないオーストラリアですから、誰もそんなに注目してないし。それに、何かあって貿易補給路が断たれたとしても、こちらは食料と資源だけは売るほどあるし(実際、売ってるし)、家が焼かれたとしても幾らでもそのへんでキャンプ張るところはあるし、こっちの人はブッシュファイアーで慣れてるから、そういう緊急時の対応も伝統的に手慣れたものだろうし。

 それより何より、焼け出されて何にも無くなったとしても、こっちでは貧乏してても気が楽なんですよね。全体ののんびりしてるし、楽天的だから。おそらく屋根が吹き飛ばされて無くなったとしても、"Hey! You've got sky!!"なんて冗談言ってるんじゃないかって。





写真・文/田村


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