今週の1枚(05.01.24)





ESSAY 192/英語の学習方法(その9)


−リーディング(その2) 新聞(その2)



写真は、City。ウィンヤード駅の地下街





 このシリーズも第九回目を迎えます。こんなに書くつもりはなかったのですが、ちょっと書いたらもう一回終わってしまうので、ついつい長くなっています。リーディングのその2回目です。

 前回の新聞リーディングについて書きましたが、多少書き残したことがあるので付記しておきます。

D.NEWS独特の表現


 新聞やニュースには、あんまり一般会話には使わない独特な言い回しや表現があります。
 これは日本語でも同じで、「安否が気遣われています」とか、「意識不明の重態です」とか、「連休最後の日曜日、各地は行楽客で賑わい」とか、「ゆく夏を惜しんでいました」、「(首相は○○で○○と述べ○○)との考えを示した」などなど、幾らでもあります。

 英語の新聞やニュースでも繰り返し読んだり聞いたりしていると、「いつも出てくるな、このフレーズ」という一種の紋切り型の表現があるのに気付きます。最初は読み慣れないので理解するのに苦労しますが、ひとつづつ潰していけば、どんどん読むのが楽になっていくはずです。これらの紋切り型の慣用フレーズは一種のパッケージのようなもので、分かってしまえば、それが出て時点で「はいはい」とチャッチャと一括処理できるから読むのも速くなるでしょう。

 例えば、意識不明の重態です→be in a critical condition、訴え/申し立てによると彼は交差点で停止するのを怠り〜→He allgedly failed to stap at the intersection,  伝えられるところによると→reportedly などです。


E.分野別ボキャブラリー


 Dがフレーズだとすれば、Eはボキャブラリーです。例えば犯罪にまつわるニュースであれば、「殺人」「窃盗」などの罪名、「打撲」「全治2週間」などの被害状況、「逮捕/勾留」「懲役」「判決」などの刑事手続、「巡査」「警部」「警視総監」などの警察の階級用語などが頻繁に用いられます。
 経済記事になれば、「上場」「配当」「合併」「倒産」「公定歩合」「原油価格」などの用語が必須になってくるでしょう。

 結局、ひとつひとつ潰していくしかないのですが、行き当たりばったりでやってるよりは、グルーピングして意識しておくと、効率も良いと思います。

 新聞やニュースというのは、評論とか文芸作品ではないので、単純に事実を伝えることが目的とされます。文章のすべては、事実関係の説明をやってるわけで、事実関係を明らかにすればそれで終わりです。ですので、登場してくる基礎概念/ボキャブラリーを押さえていけば、おおむね意味は分かるはずですし、極端な話、ボキャブラリーや表現が分かればそれでOKというシンプルな特徴があります。

 これが、評論とか小説とか詩などの文学系になってくると、そんなに簡単にはいきません。新聞だったら「AがBを殺した」という簡素な説明で終わるところを、殺害当事の動機、葛藤、悔悟、懊悩などが延々と手を変え品を変え表現されます。「拳銃で胸を撃って殺害した」というだけでも、「引き金を握る彼の手のひらはじっとりと汗ばんでいた。逞しい胸を大きく上下させ、荒い呼吸を続ける。あと一息の決断をめぐる逡巡。長くまっすぐに伸ばした右腕は○○の胸を指したまま微動だにししない。しかし、握り締めた拳銃が次第に耐え難い重さに感じられてきた」とかなんとか、あれこれ書きつづけるわけです。それだけにどんな表現が飛び出してくるのか予想もつかず、また準備もできないから読みこなすのが大変ですし、頑張って読みこなしてボキャブラリや表現を増やしたところで、次にこれと同じ表現に出くわす確率はかなり低い。

 だから、シンプルで骨格がはっきりしていて、しかも同じような表現が繰り返し使われる新聞とかニュース領域は、リーディングのレッスンとして適していると思うわけです。


F.背景論理


 これは前回の「日本語で読んでもわからないもの読まなくても良い」ということとやや重複しますが、英文として訳すことはできても意味がわからないことというのは良くありますし、意味の推測ができないから確定的な訳が出来ないということもよくあります。

 その原因は、その分野や世界における背景となる論理、システム、あるいはお約束やルールを知らないからという場合が多いです。例えば裁判報道だったら、陪審制度というものが分からないと何を言ってるのか分からない。判決はジャッジメント/judgmentなのは分かるとして、ヴァーディクト/verdictって何じゃ?ということになります(陪審員の評決のことです)。じゃあ陪審員はいったい何をどこまで決めるのか、決めたことに裁判官は拘束されるのか、陪審員が全て決めるなら裁判官は何をやってるのか、ただの司会か?とかね、そこらへんの社会制度が分からないとよく分からない。その領域の論理やシステムが分からないと結局理解できない、訳せないということはママあります。

 パソコンなんかでも、「CPUを増やしたから楽に動くようになった」という文章も、「メモリが足りないからフリーズする」という表現も、背景論理が分かってる人だったら別に問題なく理解できるでしょう。しかし、これ、知らなかったら、「記憶が足りないから凍結した」と訳すことになり、なんで記憶力が悪いと凍死するんだ?もしかして雪山登山の話か?記憶力が悪いから帰り道が分からなくなって遭難して凍死するってことだなとか、とんでもない大ジャンプをして訳してしまうことも、ありがちなんですね。

 こういう場合の対処は二つありまして、ひとつはすっぱり諦める。これは初心者向きです。こんなものは「知ってるか/知らないか」であり、知識の有無に基づくものはいくら立ち止まって考えてもラチがあきませんから。今ここでやっている主目的はなにかというと、その文章を理解することではなく、あくまで「英語の勉強をすること」なのですから。

 もう一つは、中上級者向けですが、この際これをキッカケにして、その社会システムや領域について調べて自分のモノにすることです。あまりに専門的な領域は別に知らなくても構わないですけど、英語圏の一般社会人だったら常識として知ってるような物事は、やはり知っておいた方が何かと便利ですからね。刑事手続で、bail という単語が良く出てきますが、辞書でひくと「保釈」と出ているはずです。そして「保釈ってなんだ?」ってことになったら、もうこれを機会に勉強しておいた方がいいでしょう。いやしくも20歳過ぎて現地で暮らそうというのだったら、保釈制度のひとつくらい知ってて当然ですからね。現地の人が常識として知ってることを知らないと、現地の人と世間話もできませんもん。


G.投書


 どの新聞でも”LETTERS”という欄に読者の投書が載せられています。これが結構面白いです。歯ごたえもあるし。

 投書は、普通の記事とは違って、素人が書いてますから(プロが校正しているでしょうけど)、そのスタイルや表現は千差万別です。それゆれ難易度は一般記事よりも高いかもしれません。なんせ様々な角度、さまざまな表現方法、論法で書かれてますから、「いろいろなパターンの英文に触れる」という意味では格好な武者修行になります。

 副産物としては、現地の人々のナマの考え方が分かるということです。「おお、やっぱりオージーもこの電車のいい加減な運行には腹が立っているのか」とか、「なるほど、最近はこんなことが話題になっているのか」など、そのあたりの突っ込んだ部分がじっくり読めます。そのあたりのことは、現地のオージー同士が話しているのを聞けばわかるのですが、ネィティブ同士の会話というのはかなり聞き取りにくいです。僕でも半分くらいしか分からんし、全く聞き取れないことも珍しくないです(ネィティブ同士の会話がなぜ聞き取りにくいのかは、またリスニングのところでやります)。いつも聞き取れないこと、「あいつら何を言ってるんだ」ということが、投書欄ではじっくり読めたりするわけで、現地に馴染むためには格好な手がかりになると思います。

 あと、こちらの投書欄は面白いです。日本の新聞の投書欄は、どうも堅苦しいというか、品行方性というか、「青年の主張の」の大人版みたいな感じがするのですが、こちらの投書は、1行ジョークみたいなものもバンバン出てきますし、子供の頃からデイベートなどで鍛えられているので、議論の技術やレトリックに長けており、「うまいこと言うなあ」って参考になるようなことも多いです。これらの感覚を養っておくと、あとで議論したり、あるいはどこかにコンプレイン(苦情申立)をするときにも役に立つと思いますよ。


H.天気予報


  新聞には大抵天気予報が載っています。
 一回、数時間費やしてもいいから、徹底的に辞書を片手に読破されるといいですよ。なぜかというと、天気予報の用語というのは厳密に定義づけられているものが多く、気分によって文学的に表現を変えるということを普通しません。また、天気の種類なんか限りがありますから、一通りの天気(予報)用語と表現を覚えておけば、それでOKというお手軽さがあります。
 こうやって、ある程度単語を覚えておけば、次にTVやラジオで天気予報を聞くときも、かなり聞き取れるようになっているはずです。

 この際徹底的に用語をマスターしようという方は、オーストラリア気象庁のWeather Wordsのコーナー をどうぞ。

 なんとなく分かったようで釈然としないのが、「シャワーとレインの違い」とか、「ファイン、クリア、サニー、ドライの違い」とかですよね。シャワーとレインの違いは、以下のように説明されています。

Rain: Precipitation of liquid water drops greater than 0.5 mm in diameter. In contrast to showers, it is steadier and normally falls from stratiform (layer) cloud.

Showers: Usually begin and end suddenly. Relatively short-lived, but may last half an hour. Often, but not always, separated by blue sky.

 ということで、Rainは、「直径0.5ミリ以上の水滴の落下であり、シャワーとの違いは、より間断なく、通例何層にもなった雲から降るもの」であり、Showerは「通例、突然始まり突然終わる。比較的短時間のものであるが、30分降ることもある。しばしば、しかし常にではないが、青空によって分けられる(=降ってるところと降ってないところの間に青空がのぞいたりする)」となっています。要するに、レインの方がしっかり降り、シャワーは一時的ってことですね。でも、シャワーっていいながら一日中延々降ってたりすることもありますが、一応予報のレベルでは雲がビッシリ詰まっていて一時的にせよ止みそうもなかったらレインで、降ったり止んだりが予想されたらシャワーなのでしょう。

 ちなみに、直径0.5m以下の水滴の場合は、Drizzleといい、”Fairly uniform precipitation composed exclusively of very small water droplets (less than 0.5 mm in diameter) very close to one another.”となってます。「煙るような雨」「霧雨」ですね。ここまでくると、霧(fog)とかもや(mist)と近くなります。fogとmistの差は、視界が1キロ以上あったらmist、それ以下だったらfog。なお、fogのようでありながらそれが水以外のもの(煤煙とか)の場合、smoke fog = smog、スモッグと呼ばれます。

 ちなみに、日本の天気予報の場合の用語の使い方はどうかというと、気象庁のホームページに詳しくかかれています。0.5mで分けるのは、日本も同じようですね。

 あと、降り方なんかも段階があります。よく聞くのが、isolaeted(アイソレイティド=孤立した、降ってる地域と降ってない地域がはっきり分離できるもの)、patchy(パッチィ=パッチワークのパッチで、降ってるところと降ってないところが”つぎはぎ”的にまだらになって、降ったり止んだりすること)などです。あと、few, scatterd, sporadic, widespreadなんかもあります。

 風については、日本以上にしつこく言いますよね。方角のほか、強さ。calm→light→moderate→fresh→strong→galeという順に強くなります。なお、風速の表示は、日本の「秒速」ではなく「時速」で言います。だから分かりにくいんですよね。ヒマなときに自分なりに暗算用の目安を作っておくといいです。時速10キロの風は、秒速に直すと10000メートル÷3600秒ですから、秒速2.77メートルです。さらに面倒なのはノットで表示されるときで、時速1ノットは時速1.852キロです。10ノットで時速18キロ強だから、秒速5メートル。日本の基準では風速10−15メートルで「やや強い風」と表現されるようですので(前述の気象庁のページ)、20ノットを超えると「やや風が強いのかな」と思っておくといいということです。



I、社説、コラム、評論、マンガその他


 新聞にはニュースだけが載っているのではなく、硬い論文調の社説、評論文もあります。こういった文章は、アカデミック・ライティングなどのお手本になります。逆に柔らかい方向として、軽妙洒脱なエッセイ、最新の映画や音楽の紹介文、そしてマンガなんかもあります。

 難易度としては、実はエッセイやマンガが一番高いのかもしれません。なんせ辞書には載ってないような新語やスラングがガンガン出てきますし、独特のギャグやユーモアセンスが問われます。そのあたりの難しさは、以前書いたと思いますが、 ESSAY60/ ネィティブ英語鑑賞会 をご覧下さい。ほとんど全単語が一筋縄ではいかないというのが分かると思います。

 以下は、先日読んだ面白い記事の冒頭部分ですが、僕も全然わかりません。これはシドニーの各エリアによって住んでいる人間のタイプが違う、そういったステレオタイプは我々シドニー住人の中には(他の州都に比べても特に)確固としてあり、引越をしても中々自分のテリトリーから離れたがらない傾向にあるという趣旨の記事なのですが、その冒頭部分。”Yuppie scum live in the east. Bible-bashing breeders live in the Sutherland shire. Rich-kid jocks and sufer stoners live in the north. And in the west - well, that's easy, it's populated by bogan westies."

 分かりますか?最初の"yuppie scum"が「ヤッピー気取りの軽薄なカス共」みたいなニュアンスは何となくわかりますけど、"rich-kid jocks"になると分からない。多分、流行の本”金持ち父さん”系の"Rich-kid、Smart kid"(日本でのタイトルは「金持ち父さんの子どもはみんな天才」からとっているのでしょうが。jocksも辞書で見ると、競馬の騎手、運動選手、スコットランド人、マニア、オタクなどの意味があり、この場合どの意味でいっているのかが分からない。多分、「金持ちの家に生まれてスポーツばっかり励んでる体育系バカ」って意味なんじゃないかなって気もします。bible-bashingは一般名詞で「敬虔な信者」という意味でわかりますが、ここで出てくる”breeder”の意味が分からない。養育者、繁殖者(特に犬の繁殖などをやる)、飼育者、既婚のホモ、ホモでない人などの意味が並びます。なんかどれも当てはまりそうもないです。サザーランドって犬のブリーダーが多いの?それか、ガーデニングに狂って植物の品種改良に励んでるってことかな?カメリアパークもあるし、、、むむむ。このあたりのニュアンスは、ほんとネィティブでないとなかなかピンとこないのですね。まあ、なぜネィティブ同士の英語が分からないかの構造的な分析(大袈裟な!)はまた後日やります。


 他にも、料理だったらレストラン紹介、レシピー、ワインの論評があり、スポーツ記事、トラベル記事、就職情報、新車や車の売買情報、公示催告のようなリーガルノーティス、訃報、そしてコピーライティングをした大きな広告、政府広報、さらにクラスファイドと呼ばれる分類分けされた「3行幾ら」の広告が並びます。


 というわけで、新聞ひとつ買ってくるだけで、相当遊べます。もう骨までしゃぶるつもりで一度隅から隅まで徹底的に読んでみたらいかがですか?


 それから、、、って、今回はこのくらいにしておきます。なんか過去のエッセイをみたら昔はもっと短かったのですね。僕のつかってるHTMLエディターで200行以下くらいで書いてたのですが、それが段々長大化して、ここのところ350行以上書いてます。ですので、ちょっと意識的に、短くできるときは短くしておきます。読むのも大変でしょうし、もちろん書く方も大変ですから。everyone happy ということで。




文責:田村

英語の勉強方法 INDEX

(その1)−前提段階  ”量の砂漠”を越える「確信力」
(その2)−波長同調
(その3)−教授法・学校・教師/スピーキングの練習=搾り出し
(その4)−スピーキング(2) コミュニケーションと封印解除
(その5)−スピーキング(3) スピーキングを支える基礎力
(その6)−スピーキング(4) とにかくいっぺん現場で困ってみなはれ〜二つの果実
(その7)−スピーキング(5) ソリッドなサバイバル英語とグルーピング
(その8)−リーディング(その1) 新聞
(その9)−リーディング(その2) 新聞(2)
(その10)−リーディング(その3) 小説
(その11)−リーディング(その4) 精読と濫読
(その12)−リスニング(その1) リスニングが難しい理由/原音に忠実に
(その13)−リスニング(その2) パターン化しやすい口語表現/口癖のようなボカした慣用表現、長文リスニングのフレームワーク
(その14)−リスニング(その3) リエゾンとスピード
(その15)−リスニング(その4) 聴こえない音を聴くための精読的リスニングほか
(その16)−ライティング 文才と英作文能力の違い/定型性とサンプリング


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