今週の1枚(05.01.10)





  

ESSAY 190/英語の学習方法(その7)−スピーキング(5)


-ソリッドなサバイバル英語とグルーピング


写真は、Manlyよりももっと北のコラロイ(Collaroy)ビーチ。




 前回は、とりあえず現場で困ってみなさいということでした。現場で困ることを出発点にして、「こういう場合はどう言えばよかったのか」ということを勉強のとっかかりとするとともに、たくさん問題意識を作っておき、正解的表現に出くわした時にすかさずそれをゲットせよ、と。そうすれば、現場で困る場面が多い順、つまり頻度順、重要度順に潰していくことが出来る、と。

 ある程度勉強が進んだら、「現場で困る」ということの質が変わっていくでしょう。

 最初は、「トイレを貸してほしい」「宿を予約したい」「切符を買いたい」という、意味が伝わればそれで良いというか、生存のため、サバイバルのために必要な表現で困ると思います。このレベルでは、細かなニュアンスがどーのといった高級なものはあまり求められません。基本単語を並べただけでも結構通じるでしょう。

 この機能性重視のゴリゴリにソリッドなレベルでは、”なにかに困っている現状を打破したいから助力を仰ぐ”というケースが多いでしょう。道が分からないとか、○○して欲しい、○○したいということで、表現パターンはもっぱら疑問文、依頼文でしょう。 Where, What, When, Why, Who, How などのいわゆる5W1Hの疑問文、Can you-? Could you-? Can I-?などの依頼文。 肯定文・平叙文でも、 I want to, I need, I'd like to、という「○○したいんじゃあ」系でしょうね。

 このレベルでしたら、ほんと中学一二年生レベルで良いですし、表現的にもそれほどバリエーションが多くないですから、一回整理して基本的なパターン数種類を徹底的に暗誦するなどして口に馴染ませ、脳味噌に馴染ませるだけで結構イケる筈です。「徹底的に暗誦」といっても、ぶっとーしで1時間、一表現につき連続5分もやれば脳髄に刻み込まれると思いますよ。ただ、連続5分言いつづけるという簡単なことを、ともすればオソロカにするのですね。バーっと眺めて、2−3度口でいってそれで終わりくらいのヌルい勉強をしてても身に着かないです。Where is a postoffice?(郵便局はどこですか)なんて、一回1秒くらいで言えます。連続5分ということは300秒だから300回。ツベコベ言わずに300回ぶっとーしで言うといいです。繰り返していけば、一連の筋肉(口蓋舌咽喉の筋肉)の動きが、何も考えなくても自然にそのパターンになってしまうまで。「嘘?」というくらい徹底して反復すること。それにしたって、たかが5分かそこらですよ。時間にしたら知れてるでしょ。

 このレベルにおいて、二、三点、気のついたコツみたいなことを書いておきます。

@ "WH"発音の難しさ
 発音というと、RとLの違いばかりが注目されたりしますが、WH系の発音もまたかなり難しいです。お手元の辞書でwhat、whereの発音記号を調べてもらえればわかりますが、whereでしたら、h + w が最初にくっつきます。これを日本語的に「ほえ」とか言ってたら通じません。辞書や基礎的な英語教本のうしろの方に発音解説表などがあると思いますが、そこを見てください。僕の持ってる旺文社ニューサンライズ英和辞典の巻末オマケの発音ページの解説によると、"h" は「息が喉を通るときの音。日本語のハ行より強く発音する」となっています。"w"は、「日本語のウよりももっと唇を突き出し、急に両側に引くようにする。”u"と区別する」となっています。

 コツは、100%忠実にこのとおりやることです。「雰囲気、っぽかったらいいか」なんてのはダメ。

 h音とw音、どちらも強敵です。
 h音ですが、思うにこれが出来たらかなり上級というか、現場ではなかなか出来ないですよ。というのは、「強いハ音」なんですけど、これって腹式呼吸で喋ってないとなかなか出にくい音だと思うからです。誰かの本に書いてありましたが、英語の発音というのは基本的にはみな腹式呼吸(発声)であると。本当かどうか実証的に確かめたことはないですけど、そう言われれば「なるほどね」と思えるくらい説得力があります。

 腹式呼吸というのは−これも何度か過去に書いたことがあるのですが-、「腹から声を出す」ってことですけど、早い話が、舞台俳優さんやアナウンサー、あるいはバンドのボーカルの人がやってるボイストレーニングです。高校の部活で演劇部や放送部の連中が屋上などで「あー、あ!あ!あ!」「あめんぼ赤いなあいうえお」とかやってたでしょ。僕は柔道部でしけど、練習中のBCMはずっとアレだったから未だに耳に焼き付いてます。

 腹式呼吸だと発声が良くなります。音吐朗々という感じで、声が強く、深く、豊かになり、遠くまで声が通る(「透る」という漢字をいうべきか)。細かい原理は僕にもわからんのですが、腹式の方が呼気量が多く、また調節もしやすい。だからボリュームも表現力も豊かになるのでしょう。大排気量の車の方が、低速で走っても静かに滑らかに走るのと似たようなものなのでしょう。あるいはオーディオの大容量アンプの方が小音量でも表現が豊かであるとか、パソコンでも大容量メモリーの方が簡単なタスクでもより滑らかに動くのと同じようなものなのでしょう。

 深呼吸で大きく息を吐くと自然に「は〜」という音になるように、大容量で呼吸をするとナチュラルにH音が入るのですね。だから英語スピーカーはあまり苦労せずにH音が強く豊かに出ますし、逆に言えばそこで要求されるH音は日本語の「は行」よりもキレもコクも勢いもあるH音だったりします。

 いっぽう日本語は、少ない呼気量で発音できますし、また後でも触れると思いますが口唇の動きが少なくても良い、さらに音素数が非常に少ないという、どれをとっても省エネタイプというか、非力というか、質量ともにバリエーションが狭い。したがって日本語に慣れた僕らが英語という大排気量世界に進んでいくということは、原付で高速道路を走るような無理さが最初からあるのだと思います。だから通じない。日本人の発音が通じない原因は、@そもそも声が小さい、A口や舌を動かさないからその発音になってない、B複雑微妙な音素の差を理解してないから正確な音を出そうと思っていない、Cもともと母国語にない音を出すので、自分でその音が正しいかどうかモニタリングできない、などの理由がありますが、Cは矯正するのが一生無理とすら思われるのに対し、@Aはそうと意識するだけでその瞬間から矯正可能です。

 というわけで、日本人的にH音を理解しようと思ったら、単なる「は行」では足りず、武道の気合のような「はっ!」くらいの気持でやるといいと思います。多少大袈裟にいってますが、言ったとおりできるわけではないので、気の持ち方としてはそのくらいに思っていて丁度いいでしょう。

 ところが現場でこれをやるのがまた至難の業です。というのは、人間というのは腹式呼吸、あるいは深呼吸でもいいですが、これが出来るのはかなり精神的にリラックスしているときです。お風呂に入って「ふぅ〜」と思わず深呼吸しますし、お腹一杯食べて満足なときも「はぁ〜」ってなりますが、このようにリラックスしてると呼吸は深く、豊かになる。逆に、焦ってたり、精神的にきつくなってくると、「はっ、はっ、はっ」という胸式の浅い呼吸になっていきます。もっと焦るともっと浅くなり、「ひ、ひぃー」とか声が裏返ったりします。現場で英語を喋るというのは、最初のうちはかなりストレスがかかります。だから本来的に腹式の豊かな発声がやりにくい状況なんですね。意を決して喋ってみても全然通じなかったりして、「え、なに?」と聞き返されたりすると、「げ、まずい、、」とさらに焦りますよね。だからより浅い発声なり益々通じにくくなる。何度言っても通じない、よりいっそう焦る、よりダメな発音になるという、悪循環に陥ります。でもって最後にブチ切れてヤケクソで大声だしたら通じたというオチがついたりします(^_^)。ですので発音というのは、まずは「焦らない」「ゆったりした気持を保つ」「平常心」という、メンタル管理論が最初に来たりするのでしょう。

 それはともかくH音です。WH系のH音だけでも、これだけのゴタクが並べられるわけで、あだやおろそかにするまじ、ってことですね。



 次のW音。これがH音に匹敵するくらいの難敵です。「わ」じゃないです。「ぅわっ!」です。
 まず唇をすぼめて前に突き出す。まるでキスをするときのような、それもファーストキスの時のようなヘタクソな感じ、ひょっとこ的というか、タコ的というか、「ぅ〜」と唇を突き出します。結構みっともないというか、ずっとこのポーズでいるのは恥かしいくらいの感じですね。それが第一動作。次にその唇の位置から、真横に、一気に口を開きます。これが第二動作。この第一、第二の動作きを、一瞬にして連続技でやります。それもかなり力を入れてやります。

 そうすると音的にいえば、単なる「わ」音ではなく、「ぅわ!」音になると思います。イメージとしては、静かな湖面に石を投げ込んだときに波紋が円形にきれいに広がりますが、あんな感じ。空気の波紋を、それもクッキリとエッジの立った波紋が「んワン!」とあなたの口元から部屋の隅まで広がっていくように。丁度津波の波動が広がっていくように。これ、実際に目の前で聞かせてあげたらわかりやすいのですけど、文字で書いてるとどうも隔靴掻痒ですね。言ってる意味わかりますか?この音声のエッジ、一瞬の強弱の差がかもしだす波動こそが、W音の本質であろうと僕は思ってます。

 練習としては、上記の第一動作、第二動作を反復するしかないですよね。唇を思いっきり突き出す→真横に一気に開く、ということで、これもイメージとしては、平泳ぎの選手の力強い腕のストロークのような感じ。グン!と前に突き出し、しゅわっと左右に切り開く。さ、やってみよう!これ、かなり唇の筋肉が強くないとできないです。発音の本質は筋トレであると僕が強調するゆえんですが、これまで日本語しか喋ったことなかった人で、特にボイストレーニングなどしたことない普通の日本人だったらなかなか出来ないでしょう。だから、練習あるのみ。気の遠くなるような反復練習をどうぞ。目安としては、そうですね、一挙動0.2秒くらい、1秒に5回くらい、キレのいいW音が出たらいいんじゃないでしょうか。


 さて、WH系の質問ですが、このH音とW音という強敵兄弟がタッグを組んでたりするもんだから、かなり大変。Hだけ、Wだけでも相当てこずるのに、両者を同時に面倒みなければなりません。感じとしては、W音を主体にして、その前に、ほんの一瞬、いや一瞬の何分の1くらいのごく微細な瞬間、H音を乗せてやると良いのでしょう。だから、H音は腹式呼吸にナチュラルについてくるH音をベースにしてやらないと、つまり特に意識しなくても自然に「はー」音になっているのを、ほんの微量、意識してやるって感じになろうかと思います。

 というわけでWH系の発音は難しいというお話でした。難しいから出来ない、出来ないとどうなるかというと、WH系の質問が全滅するわけですね。Where?と聞いているのに、whenだと誤解されて時間を答えられたりとか、そういう経験ないですか?まあ全滅ってのは言い過ぎで、5Wのうちwhat, why, whoは発音がわりと聞き取りやすいから楽ですし、通じやすいと思います。逆に、where、whenは難しいでしょうね。それは「えあ」「えん」という(二重)母音系発音の強敵もここに加わるからでしょう。

 現時点では、なるほどH音もW音も大変なのねというのを知って、ちょっと意識的に練習してみるくらいでいいと思います。それだけでも結構違うと思いますよ。

 なお、発音についてですが、もっと深くやりたいのであれば、googleあたりで「英語発音」で検索したら幾らでもネットにサイトはあります。いまちょっと検索しただけでも、たとえば桃谷高校通信制英語科の小沢さんという方が「英語学習のヒント」というホームページを開いておられ、そのなかに音声付(WAVファイル)で発音記号の練習という解説ページがあります。その他英語発音に関する個人のホームページで他にもいちかわ家のホームページ/英語の発音物語なんてのもあります。英語・発音・語彙というページもありました。皆さん頑張っていいサイトを作ってくれています。でも、こういう頑張ってるサイトを見ると、「よーし、俺も」と勇気付けられる反面、別に僕なんかが書かなくてもいいじゃないの?って気もしますね(^_^)。






A.依頼文のときは、死んでも"please"を忘れるな
 ”please"の重要性は、これまでもことあるごとに書いてきましたけど、何度でも書きます。日本人はよくプリーズを落っことして喋ってますから。

 プリーズは、大人&対等の人間関係で、他人にものを頼むときには必ずといっていいくらいつけます。総理大臣だろうが社長だろうが、部下に物を頼むときにも使います。親が子供にお使いを頼むときにも使います。まあ、絶対100%使ってるかというと、必ずしもそんなことないですよ。でもそれはよほどベースとなる信頼関係があるとか、ブッキラボーなパーソナリティで世の中渡っていく人であるとか、そんな場合でしょう。あと、軍隊とか刑務所などの「命令」言語の場ではプリーズをつけませんが、逆に言えばそんなレベルの言語に聞こえてしまうわけです。

 日本語で言えば、お店で「これ下さい」と「ですます」調の敬語を使いますが、これを使わないで「これくれ」と言ってるような感じ。あなたが居酒屋に入って、「おい、ビールもってこい」と頭ごなしに言うような人で、そういうノリで現地でもやっていこうと思ってたら、プリーズをつけなくてもいいです。あるいは、目の前の相手を、名前に「さん」をつけないで呼び捨てにしたり、「お前」「こいつ」とか言うような感じでしょうか。だからすごい親しい友人間とかだったら許されますけど、初対面とかそんなに親しくないのにプリーズ抜きだと、けっこうルード(無礼)に響くようですので気をつけるように。これは「つけた方が望ましい」という甘いレベルではなく、「つけろ」という感じ、「プリーズつけなかったらブン殴られても仕方がないと思え」くらいに(^_^)。まあ、例によって大袈裟に言ってますけど、そこまで言わないとなかなか本気で考えないでしょ。

 Can you tell me the way to the station please?と、最後にpleaseをつけるわけですが、ビギナーの場合、本文をシドロモドロで言っているうちに、最後のプリーズはすっかり頭から脱落してしまうパターンが多かろうと思います。それを避けるために、pleaseの位置を、Can you please tell me-と Can youのすぐ後にもってきて、「キャンユープリーズ」で一まとめにして覚えておく方法もあります。


B.基本例文を用意しておくこと
 トラベル英会話とか基礎本に幾らでも載ってると思いますが、自分なりに整理しておくといいと思います。
 How much is it? (これ幾ら?)は日本人観光客の定番英語ですね。嘉門達夫の「ニッポン・チャチャチャ」という曲にも出てくるくらいで(”ハウマッチ、ハウマッチ、ニッポンチャチャチャ!”という笑える歌詞)。まあ、そんなんでいいのですが、適当に見繕って書き出して覚えておくといいでしょう。

 もう少し深くしていこうと思ったら、How much is it?だけだったら、固定的な物体の値段を聞く言い方で、虫歯を治したら「幾らかかるか?」という言い方の場合は、How much does it cost という言い方もあるのだとか、距離を聞くときは How far is it? どのくらい時間がかかるかを聞くときはHow long does it take? だとか、そのあたりのバリエーションも、覚えられる範囲でいいですから、ピックアップするといいかと思います。

 ピックアップしたら、あとは例によって徹底反復練習。How long does it take?くらいだったら全部言うのに1秒くらいで出来るでしょうから、10回10秒、0.1秒のためらいもなくスラスラ言えるくらいになってください。そのくらい染み込ませないと、焦ってパニくって思考能力が普段の半分くらいになっている英語現場では口から出てこないでしょう。よく「とっさの一言」とか言いますが、とっさの一言のマスターしようと思ったら、全体の勉強量のうちとっさの一言の例文を知るのが10%、あとの90%反復練習に充てるくらいの感じですね。

C.省略できるものはしておく
 よく例文集などで、「このバスはボンダイジャンクションにいきますか?」と聞くのに、"Is this bus going to Bondi Junction?"とか"Does this bus go to"とかいう言い方があります。でも「ダズディスバス」とか言いにくくないですか?早口言葉の「バスガス爆発」みたいだし。でも、バスに乗って運転手に聞くような場合だったら、デズディスバスなんか要らないでしょう。状況それ自体で行き先を聞くというのが分かる場合は省略していいですし、省略した方がむしろ自然。"Are you going to Bondi Junction?"で十分意味は通じるし、ナチュラルです。もっと言えば”Are you"も抜いて "going to Bondi Junction?"でいいし、さらに言えば"Bondi Junction?"と語尾上がりに聞けば足ります。

 窓口で切符を買うのに、「私は新宿駅まで片道切符、大人料金、一枚を購入したいのですが」なんて言わないと同じく、I'd like to buy a single ticket to Shinjuku station?"なんて言わないです。「新宿、大人一枚」でいいですし、さらに「大人一枚」はデファクトスタンダード(特に何も言わなければコレになるという標準)だとして「新宿」だけでいいでしょ。だから"Shinjuku"でいいです。なお、シドニーの電車は近距離でも往復切符があり、往復切符の割引率がとんでもなく良い(片道3ドルでも往復3ドル60くらい)から、日本と違って片道(シングル)か往復(リターン)かはっきり言った方がいいです。スタンダードがどっちか分からんからです。

 このように省略できるものは省略するようにしておくといいでしょう。これは以前に書いた「キーワードを探せ」というのと同じ発想ですね。なにがキーワードか、です。また、前回述べたように、言語はそれが語られるTPOによって意味が決まってくるということから、TPOで分かる部分はいちいち言わないです。






 以上、長くなってしまいましたが、これがとりあえずサバイバルするための、機能性オンリーのソリッドな基礎英会話です。

 しかし、それは最低限のサバイバルのためであり、要するに観光客と同じというか、お金を使って物を買うとかいう「消費活動」しか出来ないわけです。言うならば自動販売機で代替できるような場面しかクリアしていないわけで、それだけじゃ物足りないですよね。雑談とか世間話とか、「人と人との付き合い」が出来ないわけですから。

 でも、ここから先は一気に広く、深く広がっていきます。世間話とか、座談とかいうのは、ほんと何が話題になっても不思議ではないし、時制も現在過去未来に自由自在に飛び交いますし、仮定法過去完了なんてもバンバン使うくらい多様多彩な表現が必要になります。子供の頃の話をすれば過去形になるし、「もしあのときテニス部に入ってたら」とかいう仮定の話をすれば仮定法過去だし。

 I went to the beach yesterday.くらいは喋れても、会話というのはどんどん進行しますからね。「ビーチで何をしたの」にはじまって、「こっちは紫外線強いからね」「どうしてオーストラリアは紫外線が強いの」「オゾンホールがあいてるって言われているんだけどね」「ああ聞いたことある、フロンガスがどうしたとか、そのへんの化学的な説明はわからんけど、でもなんでオーストラリアだけなのよ」「それはやっぱ風の関係、貿易風とか偏西風とか地球の自転に関係ある風の流れがあるわけで」とか進んでいっちゃうわけですよ。そうなると、「紫外線」って英語でなんていうのかとか、「貿易風」「偏西風」まで出てくるわけです。

 こんなの基本例文をピックアップして暗誦して、、とかいうやり方では到底間に合わないです。結局は、あなたが英語世界をどれだけ知っているか、どれだけ使いこなせているかという総合力の勝負になります。そして、このあたりの勉強は、前回述べたように「どう言えばいいのか」を自分なりに調べ、絶えず問題意識を持ち、実際に使われている場面に遭遇したらすかさずこれをゲットする、この繰り返しで積み上げていくしかないと思います。





 ただ、それでも、ソリッドな機能英語ではないのだけど、喋るときに「いつも、ここでつまづく」「このニュアンスが表現できない」とか、ある程度特定の言い方というのが出てくると思います。

 僕がやったのは、例えば「電話の応答英語」とか、ある特定のテーマや言葉に即して、「こういう表現を知りたい」というのを可能な限り日本語で書き出してみて、それに対して自分で調べて前回述べた最高水準を作る、というやりかたをしました。これがベストな方法かどうかは自分でもわかりませんし、そんなに長続きはしませんでしたが、なんとなく英語表現の感覚みたいなもののサワリくらいは触れられたかなという気もします。

 例えば、「どうせ」という日本語の表現です。これ言いたくなるときあるんですよね、でも英語でなんといえばいいのかドンピシャの表現がわからん。だからいつももどかしい思いをしてました。そこで、まず「どうせ」についての日本語表現を掻き集めました。例えば-

 @どうせ今日中には終わらないよ
 Aどうせダメなことに変わりはないんだしさ
 Bどうせここまで来たんだから、最後まで行ってみようよ
 Cどーせそんなことじゃないかと思ったよ
 Dどうせ行くならは早い方がいい
 Eどーせ私は馬鹿ですよ!

 などなどです。これを書けるだけ書き出して、じーっと見ます。いろんな意味の違いの「どうせ」があるわけですが、「どうせ」ってどんな場合に使ってるのだろう、「どうせ」を他の日本語に置き換えたらどうなるだろう?と考えると、@Aの「どうせダメだよ」というのは、「どっちみち」「いずれにしても」「結局」などの言葉に置き換えられるのが分かります。「どっちみち」「いずれにせよ」と言い換えると英訳もしやすくなるのですね、あ、これ " anyway "じゃんって。anywayも直訳すれば「どの道」ですからね、同じことじゃないか。つまり、「考えうる全ての道筋をたどってみても」という意味なんだから、「どうせ」と言おうと思ったら、anywayを使えば結構ハマるんじゃないかなって思えてきます。また、色んな可能性を模索しても最終的にはここに落ち着くという、終局的な結論を言うのであれば「結局」という言葉が使えますよね。だから "after all"じゃないかと。after all も本来は"after all said and done"の省略らしく「すべてのことが語られ、やり尽くされた後」という意味で、いろいろやってみても最後にはこうなるでしょうという意味ですよね。そうなると、「どうせ」も「結局」も、将来のあらゆる選択肢を模索すること+その結果予想される結論を述べるときによく使うんだなってのが分かります。

 これは何の勉強かというと、僕らが何気に言い慣わしている日本語フレーズって、そのままでは英語になりにくいものが多いのですね。だから、それらの日本語を「本来どういう意味で使ってる言葉なのか」という具合に意味を分解させる、そうすると英語に訳しやすい形になってくるということです。これは英和/和英辞典よりも、普通の国語辞典を使ったほうが作業が早かったりします。

 さて、「どうせ」=anyway、after all という一つの回答らしきものが出ます。で、さっそくこれを使って英訳してみます。「どうせ今日中にはやり終わらないよ」=You can't finish it today anyway. で、なんとか意味が通じそうです。

 しかし、Cの「どーせ、そんなことじゃないかと、、」というのは、ちょっと違います。この「どうせ」は、「どうせ出来たとしても80点どまりでしょ」「どうせ出世しても課長あたりが関の山」等と言う場合の「どうせ」で、これは「やったところで、いいとこ」「せいぜい〜どまり」という意味ですよね。これをより分かりやすく「最高に上手くいっても」という具合に別の言葉でいうと、"at best" "at most"じゃないかという具合に推測できます。同時に、日本語の「いいとこ」「せいぜい」「どまり」「関の山」という言葉群も、同じく at best系の英語フレーズでいいんじゃないかってのもわかります。

 Dの「どうせここまで来たんだから」という場合は、またちょっと違います。「ここまで来た」という事実が次の行動の理由になってる場合ですよね。理由を言う場合だったら、とりあえずbecause, sinceなんか使えそうです。ただ、このあたりは語り手のニュアンスによって微妙に変わってくるでしょう。これまでやってきた事を考えれば、ここで止めても、或いはこのままやりつづけても”そんなに大差ないじゃないか”という、”結果の同一性”や”差の少なさ”に力点を置いて言うならば、after all、anyway系でもおかしくはないでしょう。しかし、「せっかくここまで来たんだから」と、今がチャンスなんだからとか、理由性が強い場合は、because などの方がよりマッチしそうです。あるいは意訳して「これは滅多に無いチャンスじゃないか」という言い方でも言いたい意味は伝わるでしょう。

 Eの「どーせ私は馬鹿ですよ!」というスネた言い方は、これは感情の爆発に意味があるのだから、別に一言一句忠実に訳す必要もないし、訳してると意味が変わってきてしまうこともあります。”Yes, yes, yes, I know I'm stupid!" でもいいでしょうし、"Of course!"でもいいかもしれないし、「はいはい、アンタはエラいよ」みたいな言い方でもいいでしょう。”OK, You are the boss"なんて言い方もありますよね。

 Dの「どうせ行くなら」という場合、"at all"という言い方もあります。If you do it at all, do in now (どうせやるなら今やれ)という具合に、"at all"という熟語には、「まったく」「いったい」などの他に「いやしくも」「どうせ-なら」という意味もあります。

 このように書き出してみつつ、あーでもないと考えていくと、どういう具合に英語で言えば良いのか見当もつかなかった日本語も、なんとか糸口らしきものが見つかっていくと思います。と同時に知っておくべきは、同じ日本語の「どうせ」でも、いろいろな意味の違いが実はあるのであり、この全てを英語一単語で言い尽くせるわけはないということですね。





 同じように、いろんなシリーズがあるのですが、以下、過去僕が自分でノートに書き出したものを列挙しておきますから、ご自分で宿題方々「9うーん」と考えて見てください。

 「何/なに」シリーズなんてのもあります。「なんかしらんけど」「何がなんでも」「何とかして間に合わせたい」「なんと言っても」「なんとかしてくれよ」「なんとも言えない」「なんなら俺がやろうか」「人を騙すことを何とも思わない」「何でも屋」「なんだかんだで一年があっという間に過ぎた」などです。

 「ああ」シリーズ、「ああはなりたくないね」「ああするより他仕方なかった」「ああ言えばこう言う」「あーだこーだとうるさい」「ああやってやるわけね」「ああいう奴なんだよ」「あんな風になれるかな」などなど。

 「ワケ」シリーズ、「というワケで」「わけがわからん」「どういうワケか」「そんなワケでですね」「それには深いワケがあるの」「それとこれとはワケが違うでしょ」「そういうワケなら話も違うわ」「そこまでされたら断るワケにもいかないでしょう?」「ちょっとワケアリでさ」

 「話」シリーズ、「話が違うじゃないか」「話半分に聞いておく」「話の腰を折る」「話し上手/聞き上手」「話相手が欲しい」「あの話しぶりじゃダメだろうな」「話がうますぎる」「話が逆だろ」「ちょっと話があるんだけど」「話が合う」「話がつく」「話が早い」「話が見えない」「話が弾む」「話し言葉」「廊下まで話し声が聞こえてきた」「話好き」「すっかり話し込んでしまった」「話にならん」「妙な話なんですけど」「話を持ち出す」「ここだけの話」「話がこじれる」「話をそらすな」「その話はまたあとで」などなど。話=talkだけでは到底太刀打ちできないですよ。





 もう一つ、テーマを決めて調べてみたものとしては、電話会話英語。これも以下日本語での電話用語を片端から列挙するから、英語でどういうのか考えてみてください。

 「○○さんいらっしゃいますか」「○○社の○○と申します」
 「いま日本からかけてます」「内線654番の○○さんお願いします」「昨日からそちらにチェックインしている筈の○○さんの部屋につないでください」
 「どなたにおかけですか?」「すいません番号間違いました」「お間違えじゃないんですか」
 「至急お目にかかりたいのですが」「是非ともお会いしたい」「ちょっとご挨拶に立ち寄りたい」「行きがてらちょっと顔を出す」「個人的な用件でお話したい」
 「明日に」「今週中に」「来週に一度」「月曜日に」「午後に」「月曜の午前に」「月曜の朝イチに」「ここ2,3日中の朝イチに」
 「いつでもいいです」「午後ならいつでもいいです」「午後3時以降ならいいです」「勤務時間後だったらいいですよ」
 「5分か10分でいいんです」「お手間とらせません」「なるべく早く切り上げるようにします」「1時間ほどお時間をとっていただきたい」「3時に変更できますか」
 「その頃にはおみえですか?」「ご在宅でしょうか」
 「もしよろしかったら」「出来るならば」「また別の機会に」「ご都合をお聞かせください」
 「どのようなご用件でしょうか」「○○の件でお電話いたしました」
 「ご伝言を承りましょうか」「すみません、伝言お願いできますでしょうか」
 「電話のあったことだけお伝えください」「1時間後にまたかけるとお伝えください」「○○支部の○○が連絡を取りたがってるとお伝えください」「今日は遅くまで事務所の方に詰めてますので、何時になっても結構ですからお電話ください」
 「あ、○○です!お電話いただいたそうで」「どうも連絡が遅くなって申し訳ありませんでした」「お忙しいところ恐縮です」
 「○○は今ちょっと外出中です」「長期休暇中です」「会議中です」「他の電話中です」「昼食中です」「出張中です」「ちょっと席を外しています」
 「○○は今席を外しておりますが、折り返しこちらの方からお電話させましょうか?」
 「すみません、今日の10時というお約束でしたが、15分ほど遅れそうです」

 これに尽きるものではないですが、電話口で言いそうなフレーズを片端から書き出してみてください。それが済んだら、今度は片端から英語で言っていってください。ひっかっかったら、そこで考え、自分なりの「最高水準」を作ってみてください。






 しかし、こんな具合にグルーピングできるのは、ほんの一部分に過ぎません。
 前述のように、広い広い言葉の大海原が待ってます。「虫除けスプレー」「洗剤で手が荒れる」「はさみ打ち」「悪循環」「老眼」「最大公約数」「衝動買い」「徴兵制」「分割払い」「おんぶ」「村八分」「定年」「下ネタ」「ハマってしまった」「肩書き」「記憶喪失」「輸血」「寝ぼける」「省エネ」「帰化」「お守り」「九九を覚える」「均一料金」、、、、、もう無限にあるけど、でも知らないわけにもいかないでしょ。イッコイッコ地道にやっていきましょう。

 しかし、これらは事前に準備といっても限界ありますし、なにをどう準備すればいいのか途方にくれるでしょう。
 そうなると、やっぱり前回述べたとおり、あらかじめ問題意識をもちながら、実際の英語表現に触れ、ピックアップして覚えていくしかないです。

 したがって、ここから先はスピーキングというアウトプットではなく、仕入れ、すなわちインプット=リーディング、リスニングの話になっていきます。ですので、スピーキング編は一応ここまで、ここから先は徐々にリーディング編に移行します。

 まあ、リーディング編といっても、例によって基本は「量」です。量しかないですよ。とにかく沢山たくさん本を読んで、聞いて、「これが知りたかった」とか「これ、使える!」と思ったら、単語であれ、熟語であれ、構文であれ、なんでもかんでもムシャムシャ食べていってください。




文責:田村

英語の勉強方法 INDEX

(その1)−前提段階  ”量の砂漠”を越える「確信力」
(その2)−波長同調
(その3)−教授法・学校・教師/スピーキングの練習=搾り出し
(その4)−スピーキング(2) コミュニケーションと封印解除
(その5)−スピーキング(3) スピーキングを支える基礎力
(その6)−スピーキング(4) とにかくいっぺん現場で困ってみなはれ〜二つの果実
(その7)−スピーキング(5) ソリッドなサバイバル英語とグルーピング
(その8)−リーディング(その1) 新聞
(その9)−リーディング(その2) 新聞(2)
(その10)−リーディング(その3) 小説
(その11)−リーディング(その4) 精読と濫読
(その12)−リスニング(その1) リスニングが難しい理由/原音に忠実に
(その13)−リスニング(その2) パターン化しやすい口語表現/口癖のようなボカした慣用表現、長文リスニングのフレームワーク
(その14)−リスニング(その3) リエゾンとスピード
(その15)−リスニング(その4) 聴こえない音を聴くための精読的リスニングほか
(その16)−ライティング 文才と英作文能力の違い/定型性とサンプリング


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