シドニー雑記帳



近況雑感/97.7.7

ぎっくり腰/ステレオ/ものの値段

     10日ほど前、ギックリ腰になりました。重い荷物を運ぶときに、グキッとイッてしまったわけです。歩行困難、直立困難、起臥困難、何をどうやっても困難という悲惨なメにあっていました。もう、最初の頃は寝返り一つうつのが大事業。かなり回復した頃でも、寝返りに際して妙なひねり方をしたら、目の前が真っ白にスパークするほど激痛がやってきて、目覚めるという。寝てる間にブスッと刺されたらこんな感じなんだろうなあと思えるような。

     ネットをやってると思わぬところでヘルプがあるようで、相棒福島がやっているアロマセラピーのページの読者の一人に、プロの鍼灸師でもあり指圧師でもある方がおられ、この方から懇切で的確なアドバイスを頂きました。ここで言っても仕方がないかもしれませんが、ありがとうございました。

     おかげさまで大分よくなってきました。それまでは、ろくろくパソコンにも向えず、メールの返事は遅れ気味だわ、更新は進まないわでありました。どうも、パソコンに向って座るという姿勢が腰に宜しくないようですね。それも、30分程度ならどってことないでしょうが、一旦、メール書き出したり、ホームページいじくり出したりすると、もう3時間くらいすぐにたってしまいいますから。




     話変わります。
     ステレオを買いました、中古で。前々から欲しかったのですが、こっちは電化製品が高いわ、ビンボー生活をしてるわで、なかなか踏ん切りがつかなかったのですが、遂に買ってしまいました。「遂に」とかいっても、全部で3万円かそこらの出費で、そう大した額ではないのですけど、「そろそろ買うかなあ」と思う頃に車が故障したり、パソコンを新調したり、出鼻くじかれ続けていたわけです。

     最初は、何でもいいやという感じだったので、Kマート(という衣料雑貨関係の大きなスーパー)の特売ミニコンポあたりを物色してたのですが、段々「なんだかなあ」という気になってきました。だって、あのテのミニコンポってアンプからCDプレーヤーから全部一体になってるから、一つ故障したら全部オシャカになるでしょう?それがイヤなんですね。なんせすぐ物壊すタチだし、その昔それで一遍懲りているし。もっと安目のラジカセでいいかあとかも思ったのですが、ラジカセはスピーカーが分離しないから、どうしても音像がチャッチくなる。そのチャッチさを誤魔化すために大体ドンシャリ系の「大迫力重低音」系にいっちゃうわけですね。よく、カーステをガンガン鳴らして走ってる兄ちゃんがいますが、あのテの音ですね。それも何だかなあと。

     中学のときは、資本もなく買えるわけないのに、いっちょまえにオーディオに凝って、毎週秋葉原に出掛けて、やれJBLのスピーカーがどうのとか、スケルトンのターンテーブルがどーのとか、SN比がどーのとか、分かったようなことをエラソーに言っておりました。だもんで、いっそのこと「いいもん」を買おうかということで、その系統の店も見たのですが(探せばシドニーにもそういう店はあります)、やっぱり高い。300ドルかそこらでどうのという値段じゃないですね。300ドルではスピーカー1本の値段にもなりゃしない。打ちひしがれながらも、「そらまあ、そうだわなあ。なんぼオーディオが安くなったとかいっても」と納得したりしました。

     かくなる上はということで、中古品を物色するわけです。質流れ品の物色ですね。こっちにも質屋さんは沢山あるのです。ただ、スゴイのは、こっちは物を大切にするというか、単純にケチなのか、新品信仰がないので、中古でもかなり高い。これは生活マニュアルなどで折に触れて言ってることですが、「これ、売り物?それともゴミ?」というような物でも平気で売ってます。何日もかけて質屋を十数軒見て周り、目星をつけたあとは、「音を試聴したいんだけど?」と頼んで、棚の上のアンプなどを取り出して接続してもらったり、やっとりました。買ったはいいが音が出なかったら悲惨ですから。

     結果、2軒の質屋から、アンプ、CDプレーヤー、カセットデッキ、スピーカーを、合計350ドルくらいで調達したわけです。種々の制約からベストとは到底言い難いのですが、この値段にしては、かなりマトモな音が出ると思います。それでも、アンプなんかムチャクチャ古い。なんてたって「4チャンネル対応(知ってます?)」だったりしますもん。すごいでしょ。ソニーのアンプなのですが、多分20年位前(中学の頃)、高嶺の花と憧れてた機種のような気がしますね。でも、もとの作りがいいせいか、ちゃんと鳴ります。やや控え目な音だけど、セパレーションとかすごくいいし。

     ああ、それでも、CDプレーヤーはハズレで。左チャンネルの音が出たり出なかったりという。出てもなんか100%出てる気がしない。速攻で翌日替えて貰いにいきました。1ヵ月ワランティ(保証)ですのんで、それも可。ここで中古品4つ買って、1個ハズレなら勝率いい方ですね。もうそういうのも慣れてしまった。その昔、3ヵ月の保証期間の切れるのを待つように、しっかり冷蔵庫壊れましたもんね。




     別に高いといっても30万も出せばかなりのものが揃う筈なんですけど、なんかケチですねえ、僕は。高い金払っていいもの買うってのが、なんかキライなんですね。頭悪そうで。そりゃ払わねばならない物はいくら高くても全然惜しいとも思わないけど、値段に見合う品質が納得できなかったり、いろいろ工夫する余地があるならば、まずそれをやってみたくなりますね。

     APLaCのホテルリストもレストランガイドも、リーズナブルな所ばっかりです。一泊200ドルとか300ドルクラスのホテルなんか見向きもしてませんね。その気になって調べれば2〜3日で調べられるのでしょうけど、その気にならない。その半額で、歴史的建物のB&Bとか人々の生活の趣が感じられる宿に泊れるのに、何が悲しくて、シティのど真ん中の、ピカピカの高層ビルなんぞに泊らないとならんのだという。いくら美室とかいっても、そんなんだったら日本だって幾らでも泊れるじゃん。シティが便利とかいっても、便利なのはビジネスユースと、通り一遍の定番観光と、あとは旅行会社のピックアップの便利さだけちゃうか?と。それを抜かせば、車は停められないわ、駐車料金は高いわ、大渋滞だわ、ろくなスーパーはないわ、物価は高いわ、人々はセカセカ歩いているわ、でロクなところじゃないと思う。シティは「仕事するため」に便利なように出来ているので、当然といえばそうなのですが。




     かといって、安物買いの銭失いでは意味ないから、難しいところです。結局アレですね、高いものというのは、買物にあたっての選球眼や技術の無さをフォローするために高いのでしょうね。ムチャクチャ高くてムチャクチャ悪いものというのは、確率的にいってそうそうないですけど、値段が落ちてくるに従って玉石混交になってきます。そこで、それを見極める選別知識や技術というのが必要になるのですが、そこが心許ないと、どうしても値段で見てしまう。思うに、「値段が高いから買う」というのは、そこにそれだけのコダワリをもっているか、単に無能なのか、どっちかなのでしょう。

     車でも住宅でも、カンドコロを知ってる人は、パッと見てそれがどの程度のモノなのか分かるけど、知らなきゃ全然わかりません。ボンネットのぞいて、「○○が大分ヘタっているから交換だな、○○はあと1万キロはいけそうだから大丈夫、○○も気になるから交換した方がいい。修理費がだいたい○○ドルだから、それを差し引いてもこれは”買い”だな」とか、分かるのでしょうねえ。

     こういう知識は財産になります。安全パイばかり買ってたら学ばないけど、安物買って失敗したら、それなり知識や経験は得られます。実際、4000ドル台のボロ車買って、車の修理に関することかなり学びましたもんね。修理費がいくら掛かるかなんて、実際に修理を経験しないと中々分からんですし。今回もステレオ買うのに、シドニーの質屋の相場やら、付帯して分かったことって結構ありますし。




     とりとめなく続きますが、高いといえば、想像を絶するほど無茶苦茶に値段を高く設定することによって、強づくで消費者をかっさらうという手法がありますね。よくあるのが霊感商法。多宝塔とかいう、部屋だか庭だかに置く妙チキリンな塔なんか、600万円とかしたりしますもんね。すごいなあ、買う人も買う人だけど、売る人も売る人だなあ。思い付かんよ、そんな値段、普通。多分原価の100倍とか無茶苦茶な設定なんだろうけど、そこまでムチャクチャだと、却ってありがたみが出てしまうという。これが、「特売!!49万8000円!」とかやったら売れないんでしょうね。

     宗教系は値段なんかあってなきが如しで、戒名料とか、なんで数十万もすんの?と思うもんね。高い金を出すことで故人への想いを表すというならば、戒名なんかつけないで、その分どっかの施設に寄付でもすりゃいいじゃんと思うのですけど。こういうのは生きてる間に話し合っておいた方がいいかもしれませんね。もし死んでからも「草葉の陰」とかどこかに存在して意識が残存するとしたら、戒名がどうとかいうより、年に一回墓参りをするとか、折に触れて思い出してくれるとか、そういうことの方が嬉しいと思いますけど。

     その類の話は、多分あなたにもいろいろと心当たりがあることでしょう。

     子供の頃は、物の値段と品質は正比例関係にあるのだと思ってましたけど、大人になって価格決定のメカニズムが分かってくると、段々と見方も変わってきますね。例えば万引き被害が多いので、あらかじめ価格にその分を織り込んで設定するとか。品質に関係無い、事務所の立地とか、家賃とか、宣伝費とかそこらへんも全部「経費」ですので、価格に転嫁しないと儲からないわけで、社長の見栄だけで目抜き通りに事務所構えてれば、それだけ値段は高くなる。その業界の仕組を知るといろいろと値段に対する考え方も変わってくるのでしょう。TVや雑誌でガンガン広告出してるのを見ると、「おそらくは数億規模でかかるだろう宣伝費を出してもまだお釣が来るほど利益幅が大きいんだろうなあ」と思ってしまったりもします。

     シドニーのシティ(CBD)にも、沢山の高層ビルが立ち並んでますし、さらに建設もしてますが、素朴に思うのは、「そんなに必要なの?」ということです。そりゃ、弁護士事務所は裁判所の近くにあった方がいいとか、そういった必然性は勿論あるのでしょうが、どうも都心のいろいろな事務所とか見ていますと、そこらへんの必然性があまり感じられないようなものも多いです。

     シティに事務所構えられると、ハッキリいって客としても不便なんですよね。車でいくと、時間も金もすごい掛かるし。なんとなく便利なような気がするけど、きちんと時間を測ったり、行動を冷静に見れば、大して便利でもないです。相棒福島がアロマセラピーのピュアオイルを仕入れている店は(半分研究ラボみたいなところ)は、シティから車で20〜30分程離れていますが、シティまで行って駐車して帰ってくる手間を考えたら、却ってこっちのほうが便利です。この店が、妙な色気だして都心の目抜き通りに店なんか構えた日には、コスト構造からいってこの低料金で済むべくもなく、遠からず値上げとなるでしょう。

     そりゃ経営する側からすれば、「いずれ都心にドーンとオフィス構えて」という「夢」があるのは分かります。わかるんだけど、その個人的な願望を価格に転嫁されると、消費者としてはちょっとヤですね。

     ほんと、今回は何のマトマリもないですね。すいません。七夕だというのに(関係ないか)。
     

(田村)

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