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Celebration

柑橘系の心をもつ神々の子らへの祝詞


 その若者は、海の彼方に未来を抱き、
 そしてのちの世に、それを実現させる。

 その娘は、若者よりも年上で
 若者よりも先に海の彼方に向かう。

 波の音で声もとぎれとぎれになる砂浜
 
 海よりも大きな希望と夢を
 胸におさめよう、抱こうとする二人は
 たとえ他人から見ればちっぽけであろうとも
 この海よりも大きかった。

 白けることなく
 ひねくれることもなく
 ただ、ただ打ち立てる。
 静かに、しかし圧倒的な力で打ち立てる。



 いつだって
 雑巾をしぼるような切なさとともに
 希望と夢は感じられる。
 祈りのような一点の光点。
 
 若い人間だけにしか宿らない
 なにか不思議な  張りつめた清らかさ
 何の用途にも使えそうもない細身のナイフは
 思い詰めたように鋭く、美しい
 

 もてあます膨大な自意識は
 夜が白むまでのわずかな間に、
 壊れたエレベーターのごとく
 極楽へ押し上げ、地獄へと叩き込む

 ベッドの上でのたうちまわる
 修羅の夜を幾度となく過ごし
 胸を絞りきって したたり落ちてくる
 一滴の祈り
 一点の光点
 細身のナイフは、ますます鋭く思い詰める

 喜びと悲しみにしなやかに感応する、
 その柑橘系の心は
 自ずとうちに酸性になり
 卑劣なるものを滅ぼす。






 二人は今日、はじめて唇を重ねた。

 心臓が止まるような

 時が止まるような





 海の神、山の神、空の神よ
 祝え。
 そして称えよ。

 あなた達の子だ



1998年11月10日:田村
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