シドニー雑記帳

続 アロマ物語

〜「アロマの部屋」大改装と価格改訂の経緯と背景 〜




     既にお気づきの方もおられるでしょうが、只今「アロマの部屋」の大改装に取り掛かっております。今日は日本全国100万人の(ホントか?)アロマセラピー・ファンの方に、APLaCの「アロマの部屋」で何が起こっているかをご説明したいと思います。アロマセラピーに興味のない方も、お暇があったらちょっと聞いてってくださいな。



     アロマセラピーに凝りだし、エッセンシャルオイルをはじめとするアロマ関連商品の通信販売を開始して、はや1年近くが過ぎようとしています。

     当初は「相手の顔も見えないインターネットなんか通じて海外からモノを取り寄せようとする人なんて、本当にいるもんかね?」と疑心暗鬼で、最初の発注が来た時は「よくこんなホームページを信用してくれたもんだな」と感激し、パソコンの前で万歳三唱したものです。次第にお客さんは増え、再発注してくださる方も多く、最近ではプロの方々からの大口発注も受けるようになりました。

     さらに、APLaCのアロマ通信販売を利用されるお客さんは、なぜか皆さんいい方ばかりで、波長の合う方も結構多く、アロマ関連の情報交換は勿論、個人的な話題に踏み込んで親交を深めたりしています。
     おかげさまで、昨年1年間でこの通信販売を通して、たくさんの「アロマ仲間」ができましたし、知識も経験も相当蓄積してきました。

     もともとオーストラリアと日本のエッセンシャルオイルの価格差に驚いて、意地でも安く提供しようと考えたのが、この通信販売を始めたキッカケでした。(こんな余芸を始めた経緯については、「アロマ物語」で暴露してますので、ご興味があればご参照を。)
     が、どうやらAPLaCのお客さんたちにはその安さ、商品の質に対する評価もさることながら、ホームページで紹介している情報の質と量、そしてメールでのやりとりを通して、なにか付加価値を感じていただいているのではないかと、僭越ながら推察しております。趣味と好奇心(プラス「日本市場価格破壊」という野望も…)で始めたことが、これほどの「収穫」になろうとは予期しませんでした。本当にありがたいことです。

     そういうわけで、「人の輪」という収穫は予想以上にあったものの、収益の方はAPLaC他部門同様、まったくダメです。「ダメです」といばってる場合ではないのですが、「とにかく安く!」をコンセプトにやっているんだから、当然といえば当然。別に利益出そうという意識もありませんでしたし、時間も貯金も多少はあったから趣味感覚で楽しんできました。わずかな儲けで、自分の人体実験用のオイルを購入できれば、それでよし!と考えていました。



     しかし、ここへ来てこのアロマ通信販売も見直さざるを得なくなってきました。なぜかといえば、ひとつには個人的な金欠問題(情けない…)、もう1つは時間的な問題です。

     APLaCはたった3人のメンバーで留学から観光まで幅広く手掛けているので、私もアロマばかりにかまけているわけにもいきません。昨年までは情報収集&提供というAPLaC立ち上げ&準備期間のつもりでしたので、さほどお客さんの対応に忙殺されることもなく、趣味感覚でアロマ通信販売と掛け持ちすることができました。が、そろそろアロマ部門もそれなりに「ビジネス」として切り盛りすることを考えなくてはならない時期になってきました。「おばあちゃんが送ってくれる青森のりんご」では事業として成立しないわけです。個人的には預金もそろそろ底をつくし、いい加減マジメに生活のことを考えなきゃなんないし(いや、自慢じゃないけどホンマ深刻に金ないんですわ)。

     ついでだから、どのくらいアロマ通信販売が儲からないかということを数字で算出してみましょうか。だいたい1回の発注の平均販売価格が8千円前後。これまでは原価の2割掛け程度の価格設定でしたので、1回の注文を受けて入る粗利が1600円。この1600円ぽっちを儲けるために私がやってることというのは、メールでの見積算出含めた対応、入金確認、商品手配(これが車ぶっ飛ばしてシドニー郊外にある仕入先まで買いに行くわけですが、往復1時間以上かかる。更に欠品があると2度も3度も足を運ばねばならない。)、仕入れた商品の確認と梱包(200種類近くある商品を各発注内容に即して仕分けて梱包するのは大変。3つくらい発注が重なると、もう混乱してくる。)、郵便局まで持参しての発送手続。だから1回の発注に関わる見積もり受付から商品発送までにかかる平均総労働時間は3時間程度。つまり私の時給は500円強ということになる。

     もちろん、発注に関わる労働以外にも、ホームページのメンテ、メールを下さった方への返信(よくアロマやクレイに関する質問メールを戴くのですが、これが面倒だけど勉強になるんだわ)、現地の資料研究(読んでるうちに寝ちゃうんだけど)、人体実験(^^*)等いろいろやるこたあるわけです。更に人体実験に必要な実験材料や資料も購入しなければならないし。だから、実際には通信販売で出た粗利はみんな人体実験用のオイルや本なんぞを買った時点でふっとんでしまうわけです。ね、これじゃ儲からないでしょ?



     ところで、ずっと以前から通信販売のお得意さんたちに「この品質で価格は安すぎる、日本人は安かろう悪かろうイメージを抱きやすいから損するよ」という指摘を受けていました。でも頑固な私は「日本の価格が高すぎるのだから、できる限り安く提供したいんです」と、こんな有り難い示唆を無視してきました。しかし、昨年末に短期間日本に帰国する機会があり、その際にアロマ売り場を実際に見て愕然としました。「えっ?、高いってこんなに高いの? しかも種類もすごく少ないし、説明もほとんどないし。アロマブームって聞いてたけど、この程度のもんだったの??」と。

     そう、日本でのエッセンシャルオイルの店頭価格はAPLaCの販売価格の2〜3倍、しかも種類はAPLaCのが120種類を越えるのに対して、日本の店頭ではせいぜい20〜30種類しかないんですね。話には聞いていましたが、実際見ると聞くとでは大違いで、本当に気が抜ける思いでした。勿論プロやマニアの方たちは専門店や通信販売を利用して、豊富な種類のオイルを楽しんでいらっしゃるのでしょうが、一般の方たちはいまだにあの貧弱な売り場に頼らざるをえないわけです。あれではアロマセラピーは日本人の生活には定着しないでしょう。

     店頭に並んでいるエッセンシャルオイルのサンプルも逐一かいでみましたが、ロバートティスランド、ニールヤード等、かなり高い品質のオイルを出しているメーカーもありますが、「えー、これで3000円?」みたいなものもありました。確かにウチの仕入先の製品は安いし、品質はかなりいいし、何と言っても種類の豊富さが魅力、なんだわ。それを初めて実感しました。1年も通信販売やってて、今ごろになって実感するってのも変ですが、アロマブームと騒がれるようになって以来ずっと日本に帰国してなかったので無理もないんです。いや、本当に浦島状態でした。



     そんなわけで自分とこの商品に確たる自信をもった私は、アロマ通信販売をすべて見直す決意をしました。平たく言えば「値上げ」です。しかし、今までやってきたポリシー上、どうしても崩したくない部分もありますから、価格改訂計画に際しては次のようなことに特に留意しました。



    • 日本市場価格に比べて、郵送料を含めてもまだ値頃感がある価格設定とすること。
      この点に関しては、日本のアロマセラピストさんのご協力で、日本で扱われている商品の店頭価格を調査してもらった上で、その価格よりも安い値付けをしました。単品別に見ればAPLaC価格よりも安い店頭価格をつけているモノもありますが、全体を通せばAPLaC新価格でも今もって他メーカーよりも安い筈です。

    • 単に原価に比例した値付けではなく、品質に応じた価格となるよう考慮すること。
      といっても原価は原料価格に左右されるものなので、実際問題品質に応じたフェアな値付けは非常に難しいわけですが、他メーカーの品質&価格を検討することで、ある程度の整合性は持たせられるよう配慮することにしました。

    • お客さんが計算しやすいよう、郵送料込みの価格表示とすること。
      今までは「もともとは安いんだけど、国際郵送料がかかるから高くなっちゃうんですよ」ということを理解していただきたくて、郵送料は商品の総重量に応じてその都度見積もりを出していました。でも、これだとお客さん側からすれば発注時に総額でいくらかかるか分からないことになります。そこで、今後は郵送料は基本的に無料とし(例外はあるが)、その分を各商品の価格で吸収できるよう値付けすることにしました。

    • 一部取り扱い商品の変更。ビギナー用オイルの扱い中止。
      ビギナー用オイルの取り扱いについては以前から懸案事項だったのですが、中止に際しては悩みました。結局、最初はビギナー用を発注された方も最終的にはほとんどの方がピュアオイルに落ち着くこと、レシピが明らかになっていない製品を扱うことに疑問と不安が湧いてきたこと、商品手配の煩雑さ(仕入先がこれだけ違う)、ピュアオイルでも最初の投資価格はさして高くはないだろうこと等から扱い中止を決意しました。

    • ホームページ上で各商品の情報をより充実させること。
      APLaCの扱い商品の魅力のひとつは、種類の豊富さ、ケモタイプまでカバーした商品分けの木目細かさにあります。だけど、知らないモノは使いようがありません。どうやら日本では各精油の情報があまりに欠落しているようなので、現地の専門情報をもっと丹念に調べて翻訳・解説したり、人体実験結果ももっと充実させ(まだ紹介していないレシピもいっぱい溜まっているんです)、目的用途によって検索しやすくするなど、ホームページをより充実させていこうと思っています。

    • お客さんとのメールのやりとりは、今まで通り丁寧に細かくフォローすること。
      やっぱり通信販売やってて一番楽しいのは、「アロマ仲間」が増えていく喜びですからね、値段は上げてもこれは変えるわけにはいかない。もっともわざわざ宣言するまでもなく、機械的なメール処理はできないタチなので、今後もフレンドリーな(orうっとーしいとも言う)メールを返信するでしょう。あしからず(^^*)。



     結果的にはエッセンシャルオイルで平均1.5倍、キャリアオイルで1.3倍の値上げとなりました(但し、これは表示価格上の値上げ率なので、郵送料を考慮すれば実質2割程度の値上げ幅に留まっているはずです)。しつこいようですが、それでもなお且つ日本市場価格と比較すれば、ずっとお買い得価格であることに違いはありません。実際、ホームページ改訂等の私の稼動時間をも加味して純利益を算出すれば、これでもまだ赤字、という価格設定です。

     ただ、これまでAPLaCの通信販売をご利用されてきたお客さんからすれば、「あーあ、値上がりしちゃったのね、残念」と思われるのは当然でしょう。私としても、値上げを機にAPLaCのアロマ通信販売創世期をともに歩んできた(ちょっと大袈裟か)方々との音信が途絶えてしまうのは悲しいことです。それでも「ビジネス」として成立させる以上、安さだけに魅力を感じておられる方々との縁が切れてしまうのは致し方ないことなのかな、とも思います。シビアな見方をすれば、「この価格で儲からないようなら、インターネット経由のアロマビジネスは成功する余地のない市場である」と判断せざるをえないでしょう。「これでダメなら、アロマ通信販売そのものを辞めるしかないわ」という腹括りもあります。まあ、本音を言えば、「そんなに発注数が増えちゃったら、APLaCの本業に専念できなくなってしまう」という部分もあるわけですし。だから、せめて「発注が来れば来るほど忙しくなるばかりで利益が出ない」という構造からは脱出したいということです。 



     ところで、アロマセラピーなんて「シドニー生活文化研究会」というネーミミングとは関係ないかのようですが(実際APLaCの中でもアロマセラピー部門は浮きまくっているわけですが)、世界が距離を越えて近づきつつある今日、世界の何処にあろうが「いいものはいいのだ」として紹介すること自体は、APLaCのポリシーと共通するわけです。

     アロマセラピーは日本では一つの流行としてもてはやされてきたようですから、やがて廃れる日も来るでしょうし、もうその兆候は見えているという指摘も聞いています。でも、せっかく流行ったのなら、単なる流行で終わらずに、せめて「生活の一部」に食い込んで、自然な形でアロマと付き合う人たちが増えていくことを願っています。

     そのために、私のホームページなり通信販売なりが一助となれば、こんなに嬉しいことはないです。私はアロマセラピーのプロではないけど、自然の香りとパワーの魅力にハマってしまった者の一人として、アロマの普及に何がしか役に立てたらいいなあと。それが「ビジネス」と結びついて、自分の生活費くらい稼げるようになれば、万万歳なんですけどね(^^*)。

    (1998年1月14日 福島)




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