シドニー雑記帳

APLaCは成り立っているのか?



     APLaCを始めて早くも1年以上が経過しようとしています−−というのは半分ホントで半分ウソです。半分ホントというのは、確かに1年前に「APLaC」という命名をしたわけだし(思い付いて並べた50個以上の候補案から選んだ)、生活体験マニュアルも書き始めました、そこそこお客さんも来てくれてはります。その意味ではホント。しかし、確固たる団体としての体裁を整えているとか(役員がいて定款があってとか)、経常収支もキチンと廻っているとか、世間にそれなりに認知されてるとか、そういう「社会的実体」としては、あるんだかないんだか良く分からんというところでしょう。見方一つで、一周年でもあるし、まだ始まってないとも言えるわけです。

     まあ、法人格を取得するとか、ビジネスカード(名刺)を作るとか、もっともらしい組織図を作るとか、そういった形式的な事柄は実体の有無の伴わず、今日にでも出来ることです。”APLaC JAPAN”という「日本支部/現地法人」の有限会社の一つでも作るのは、職業柄たやすいことでもあります。APLaCの商標登録もしてもいいでしょう。でも、紺屋の白袴じゃないけど、そういうことには殆ど興味ないです。「それがどうした?」という気になってしまうし、実際には自己満足以外なんのメリットもないことも分かりますし。



     一方、経営的に成り立っているのかというと、これはもう破壊的に成り立っておりません。永遠に成り立たないんちゃうかな?「ちゃうかな?」なんて他人事のようなこと言ってる場合ではないかもしれませんが、現在あるサービス事業が、最大限繁盛しまくっても、メンツ三人食わせていくのは数字的に不可能という恐るべき試算結果もあります。だって、例えば観光サポートなんか幾らやっても1時間25ドルでしょ?朝から晩まで1日10時間働いても250ドル。約2万5000円。2万5000円入ればいいじゃないかと思われるかもしれないけど、これは売り上げ。そこからガソリン代やら駐車場代やら修理費減価償却費なんぞをさっ引いていけば、いいとこ2万。1年365日不休で働いても730万の粗利。これを3人で分けたら一人の年収243万也。で、365日連日来るわきゃないし、季節変動も激しいだろうし、実稼動日数300日もいかないでありましょう。さらに1日10時間フルに利用する人なんかそんなにいるわけない。だから年収もいって150〜200万そこそこ。さらにここから税金がひかれると。うう。最大繁盛してこれですから、「ま、無理やろね」と思うわけです。

     じゃあ車三台にして全員稼動すればいいじゃんという指摘があるかもしれないですが、これがネックなんですね。確かに、「ああもう一台(二台)買おうかなあ」と思うことは多々あります。お客さんというのは順番どおり規則正しく来てくれるわけないので、重なるときは重なる。だからこっちも生産キャパを広げたくなるわけです。しかし、こちらでは車が高い。マトモな新車買えばさっきの年収以上分くらいすぐにぶっ飛ぶ。金利も10%とか高い。で、思うわけですね、「この投資は割に合うのか?」と。実際問題、そんなに客なんて来るもんじゃない。また、来させようと思ったら、コミッション払って旅行会社に取り次ぎ頼んでとか、色々のダンドリをせねばなりませぬ。

     まあ、ビジネス上のダンドリは所詮ダンドリでしかないのですから、別にやればいいだけのことです。しかし、そんなこんなをやっていく過程でハズしていくもの、失われていくものもあると思うのですね。例えば、もっと大型の車で大量輸送して、1日10万以上確実に稼げるようにしていく、など。結局、つくづく思うのは「パック」にすると簡単なんですね。一人当たりの単価が下がるから売りやすいし、決まったところしか行かなければ、いまやってるようにイチイチ予習したり下見したりする手間も省けるし、全体としての売り上げも増える割には経費は増えない。だから利潤率もいいと。小型車2台買うくらいなら、8人乗りのワンボックス買って、最少催行人員を5名くらいにする。一人1日100ドルという安めの値段設定にしても5人くれば、まあ5万、なんとかなるやろってことで、どうしても、話がそっちの方向にいきがちなのは結構見えてたりしますね。

     でも、その方向にいくと、例えば、催行人数増やせば「この人だけ」のオーダーメイドなんかやってられなくなる。「将来留学することも考えてるから英語学校を2〜3校廻ってくれますか」とか「子供を育てるにはオーストラリアがいいかなとも考えているので、そこらへんの小学校を見たいんですけど」とか「もっと庶民の生活を知りたいから郊外の大型スーパーに行って買物したい」とか、そーゆー個別的な要求は一切カットせざるを得なくなります。その趣味の人が5人以上纏まることは、まあ滅多にないでしょうし。つまり、万人がそこそこ「満足度70」位のコース、誰からも文句が出ない程度の無難なコース設定にせざるをえない。そうなってくると行くところもやることも、大体決まってくるわけです。




     そこで、はたと思うわけですね。「APLaCって、そーゆーことするわけ?」と。そーゆー普通の観光ツアーにあるようなものは、既にあるのだから僕らがやらんでもいい。まあ、同じブルーマウンテン行くにしても、ちょっとやそっとでは分からないような場所、周囲に人影も騒音も何もない素晴らしいポイントとか見つけましたので、普通にツアーするよりは面白いでしょうし、現に何人かお連れしました。でも、そんなのはあくまでも余芸。

     いまは、半分マーケット調査も兼ねて1時間25ドルにしてますが、ゆくゆくはこんなことはしないでしょう。もう少しうまい手を考えます。来るんだったら今のうちです(^^)。





     今考えているのは、一つには、徹底的にセグメかけたツアー。学校見学とか病院見学とか、そういう社会見学のようなツアー。既に病院見学は、観光会社のドル箱となりつつあるようですし(利潤が上がってるのかどうかは知らないが数は多い)、本格的に勉強しようという人ならば、アデレードの松原さんの企画が、日豪双方で看護婦資格実務経験のある人が作ってるという点からも、おそらく最高水準だろうから 「そっちの方がいいよ」と紹介します。ただ、そうじゃなくて、そこまで本業のための見学というのではなく、滞在数日のうち1日くらいは、もっとマジメなことに使って見聞を広めたいとか、漠たる興味があるような人向けのもの。

     この手の「視察旅行」みたいなものを、旅行業界の用語で「テクニカル・ヴィジット」とか言うらしいのですが、これ本格的にやろうとすると、受入先もビジネスライクになっていて(最低1,000ドル以上とか色々条件がある)、1〜2人が気楽に見てまわるには予算的にしんどい。そこをどうするかですが、専門の人が出てきてレクチャーをするとか、そこまで本格的じゃなくてもいいから、「ふーん、これがそうか」という「見物」と「見学」の中間くらいでカジュアルなもの、予算も安くて済むようなものって出来ないもんかなとか考えてます。例えば、NSW州議事堂なんか、タダで入れますし、審議やってるのを見ることも出来ます(TVで見ると広々してますけど、実際に見るとすごい狭いですよ)。

     「職場」とか「生活」とか、そういう断面をサクッと切り取って見えるような企画って、考えたら色々あるんじゃなかろうかなと思ってます。ただ、問題は、それでも小人数でやってたらやっぱり赤字になるだろなという点ですね。「人数増やして利潤を上げる」路線への対抗策になりえないんじゃないかという懸念はあります。



     方向性のその2は、いちいち付き添い/案内してるから、赤字構造になるのであって、こっちも省力化して情報提供だけに徹すると。ただ、現実問題、情報の価値というのは安く扱われている。頭では知的財産に対してそれなりの対価をいうお題目を理解してても、電話かけて数分喋って、「はい、2000円」とか言われたら「高い」と思うでしょ?僕でもそう思いますね。その路線に無条件に乗れるくらいなら、生活マニュアルとか留学資料とかに関しては、有料会員制のホームページにしてます。余談ですが、生活マニュアルは、実は、出版社から出版しましょうというお話も戴いていたのですが、その条件としてホームページからの削除(本と同内容のものがタダでネットにあってはマズいということでしょう)があったので、「そんならいいです(削除する気はない)」とあっさり蹴ってしまったという経緯もあります。勿体無いことをしたという気もしますが(^^*)、何か出版化につられてコロコロ削除するのもサモしい感じがしたし、インターネットってそういうもん(出版メディアの従属物や商業路線)じゃないだろうという気がしたもんで。

     ただ、情報に関しては、「乗数効果」というか、コンプリヘンシブ(総合的網羅的)にしていくほどに価値が掛け算式に高まるだろうとも思ってて、自分で納得できる水準までいけば金とってもいいかなという気がしてます。何を言ってるかというと、例えばホテルガイドでも、現在数十軒のリストが手持財産としてありますが、これを数百軒レベルまで高めるとそれなりの価値が出てくるかな、そこまで纏め上げてしまえば売ってもいいし売れるかなとも思いますね。数軒程度の「お気に入りの宿」だったら、単なる「タダの意見」ですが、それが「全ホテルガイド」まで蓄積すれば、自ずとデータベース的な別種の価値が生じてくるだろうということです。

     これは、いまやってることを単に継続していけば、段々蓄積していきますから、そう難しいことでもないでしょう。連載コラムをまとめて単行本化するようなものですね。ホテルガイドも、ある程度纏まるまでこのホームページにタダで載せておいてもいいかなと思うのですが、量が量だけに面倒だし、バイト数嵩むのでやってませんけど、希望があれば。まあ、土地カンもないのに数十あるファイルを比較検討するのも大変でしょうし、「予算○○くらいで、こんな感じの宿」という最終結論だけ知りたいなら、その情報が全部頭に入ってる僕らに聞いてくれた方が安いし早いでしょうけど。でも、まあ、自分で探す楽しみもまたあるでしょうし。

     情報に関するもう一つの方向は、オーストラリアに関してもっと突っ込んだ研究レポートを出すことですね。しかるべき書物を翻訳するとか。これが一番「研究会」にふさわしいし、翻訳はAPLaCの柏木氏の本業でもありますし。というわけで、僕も最近オーストラリアの福祉関係の分厚い本を読み出してるのですが、これが暑くてなかなか進まない(^^*)。ま、時間をかけてゆっくりやってくしかないでしょう。




     そんな事業アイデアをこんなところでバラしてしまっていいのか?とご懸念になる向きもあるやもしれませんが、いいんです。おかげさんでアイデアにだけは困ったことがないので、上記の各点についても、誰かがパクって実現するなら、是非実現して戴きたいものです。自分等でやる手間が省けて助かりますし。というか、いずれの企画も、何よりも自分が知りたいことばかりでして、なかなか誰もやってくれないので仕方無しに自分達でやってるようなものですから。

     あ、採算とか経営とかいう話からちょっと逸れてますね。でも、まあ、「経営的に成り立つかどうか」なんか、正直言ってあんまり興味ないんですよね。そういう金算段に興味があるなら、日本に居続けて本業に精出してた方が数倍の効率で金作れますもん。そんなことより、「やりたいこと」のプライオリティを考えて、やったりする方が大事で、そこはもう結構キッチリやってけてるんじゃないかなと思います。福島氏はアロマオイルに凝ってるし、柏木氏は現地の日本語教育法のノウハウ(かなり進んでる)を日本の英語教育に生かすためのプロジェクト(補助教材作ったりとか)を実行してたりとか、各自勝手にやりたいこと、やるべきことをやってるわけです。そこはそれ、「うるさい上司」がいるわけでもないし、金銭問題をめぐって仲間割れするほど儲かってるわけじゃないですから。各自が「やりたいことをやる」というのが一番大事なことだとするならば、それが「成り立ってる」ことの大事な条件だとするならば、APLaCってメチャクチャ成り立っているでしょう。集まっても、ニコニコしながら「(採算合わなくて)困ったもんだねえ」とか言い合ってるという。


(1997年2月24日:田村)

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