第3章:シドニーの基礎知識
    3.2 英語について


      3.2.2 知っておくと便利な「超」初歩のフレーズ


      日本人が日常最も頻繁に使う言葉は、おそらく「どうも」「すみません」ではないでしょうか。我々はどういう場合に「どうも」というかと考えていけば、おそらくありとあらゆる場面で「どうも」と喋っていると思われます。「どうも」自体にはさして明確な意味はないのですが、「知っておくと便利な一言」ですし、これを知らないで日本語の日常会話を理解しようと思うとかなりしんどい。そういった、何気ないけど、非常によく使い、便利な一言を集めてみます。

      これらの言葉はあまりに基礎的すぎて、ともすれば英会話の教材にも載ってなかったりしますが、現場では意外と重宝します。生活体験レベルにおける日常の英会話の内容は、そのほとんどが以下の言葉で占められているように思います。自分の場合を省みても、何もわからないまま子供のような状態でまず覚えたのがこれらのフレーズですし、これらがしっかり使えたら、日常生活はかなり滑らかになると思われます。

      ★Sorry=すみません

      英語圏の諸国のなかでもオーストラリアは頻繁にSorryを使うようです(オーストラリアに来たヨーロッパ人がオーストラリア人の特徴としてエッセイで書いてるほど−「オーストラリア人の常識」R.トレポーラング著、柏瀬省五訳、大学教育出版P24〜)。

      どんな場合に言うかというと、

      1. 通常に謝罪する場合(待ち合わせの時間に遅刻したなど)

      2. 軽い儀礼的な謝罪の場合(例えばスーパーの通路に立ち止まって相手の進路を阻んでいることに気づいたとき、あるいは荷物が誰かの身体に触れたなど)。よく『先にSorryと謝ったら裁判で不利になるから絶対に言うな』などと聞きますが、オーストラリアに関しては町のあちこちで年中みんな言っています(いざ真剣に紛争になったときはまた違うのでしょうが)。これは日本語の「すみません」「どうも」の感覚に近いと思いますが、日本人以上に些細なことでも声を掛け合っているようです(くしゃみをしても言う)。この種のSorryを言われたときの返しかたは、基本的には人それぞれですが、“It's(That's)OK”(いいんですよ、気にしないで下さい)などと言うようです。

      3. 人を呼び、会話を始める冒頭の言葉として
        日本人の場合、ちょっと人に話しかける場合、なぜか「すみません」と言いますが(「お手間取らせてすみません」の略でしょうか)、同じような感覚で使われているように思います。正式にはエクスキューズ・ミーですが、簡単にSorryで代用してしてしまう人もいます。

      4. 相手の喋ったことが聞き取れなかったので「もう一回言って下さい」と頼む場合
        感覚的には「えっ?」に当たる言葉で、自然に語尾が上がります。おそらく我々が最も多く使用し、またそう言われる英単語になるでしょう。

      いずれの用法も「社会生活上の最低の礼儀」という脈絡で使われており、その重要度は日本語の「すみません」に匹敵すると思われます。

      なお、発音は、現場で聞けば一発で分かると思いますが、「ソーリー」と平らにのばずのではなく、「リ」のR音を思いっきり響かせて(舌を巻いて引っ込めて)「ぅり」という感じで、「ソぅリぃ」と言います。

      ★Hi = やあ。どうも。

      「はぁい!」という掛け声はお聞きになったことがあると思いますし、陽気で元気な響きやイメージのある言葉ですが、病気で死にそうなときにも使うわけで、言葉それ自体が特に陽気なわけではなく、日本語でいう「どうも」のニュアンスに近いです。

        よく英会話教本で挨拶用語で、“How do you do?”(はじめまして)などが書いてありますが、実際にはビジネスシーンやフォーマルなパーティーなどでもないと、なかなか使わないようです。ではなんと言ってるかというと、ほとんど「ハァイ」とか「ハロー」で間に合わしてしまうようです。ニュアンスをもっと正確にすると、「ハウドゥユードゥ」は『はじめまして』というよりもっと固い『初めてお目にかかります』くらいの感じでしょうか。礼儀正しいので言って間違いではありませんが、親しい集まりや5歳の子供に向かって、いちいち『お初にお目にかかります』などと言ってるとちょっと無気味ですが、そのくらいのニュアンスなのでしょう。日本人でも、初対面であっても実際には「やあ、どうもどうも」で済ましてしまう場合が多いですし。

      Hiは、「こんにちわ、おはよう、こんばんわ」の代用もできますし、応用範囲が広いというか、要するに人と出会ったとき友好の感情を示す半ば動物的な掛け声みたいなもので、その意味で『どうも』『やあ』に近いと言えましょう。殆どの会話の場合、Hiで始まりますし、Hiと言っておけば間違いがないとも言えます。それだけに向こうが言ってるのにHiと返さないと、ちょっと「無愛想な奴」という印象を与えかねないし、相手の顔にも軽い緊張が走ったりします。

      ところで、一般にこちらの人の方が日本人よりマメに挨拶するようです。スーパーのレジで順番が来たら店員さんとHi、向こうから歩いている人と何となく目が合ったらハァイ、給油のためにスタンドに停車して出てきた店員さんとハィという具合に、しょっちゅう言っています。ちなみにこちらでは、買物をしたとき、お客の方もサンキューと言います。お客様が一方的に神様なのは日本で、こちらでは対等です。いちいちこうして声を掛け合っているのも最初は大変ですが、慣れれば気持のいいもので、たまに日本に帰るとレジのところでニコリともせずに黙々とお金を払ってる人々の群を見て「なんて無愛想な人々だ」と逆カルチャーショックを受けたりもします。

      ★OK = いい。良い。だいじょうぶ。

      改めて説明するまでもないようですが、これも意外と使用範囲が広くて重宝します。

      1. 簡単な疑問文として=「いいですか?」
        「それでいい」という肯定的な意味から、語尾を上げるだけで「〜できますか?いいですか?」という簡単な疑問文になります。例えばホテルへ予約をするとき、「明日そちらに泊まりたいのですが、空いてますか?」と言う場合、「明日」「行く」「いいですか?」とブツ切りにして並べた方がずっと簡単ですし、誤解の余地も少ない。この場合、「いいですか?」「それでいけますか?」に相当するのが「OK?」です。最後に“Is it OK?”ないし単に“OK?”をつければ瞬時にして「相手に許可や状況を尋ねる疑問文」になりますので非常に便利です。

        もちろんより的確な英語表現は沢山ありますが、いざ実戦の場で「疑問文は助動詞を文頭に持ってきて云々」と複雑なことを考えながら完全な文章を喋るのは大変です。これは日本語でも「主語は」「推定の助動詞の活用形は」などと考えながら喋れっこないのと一緒。会話集によく載ってる“I would like to〜”などの構文前半を呪文のように思い出して喋ってるうちに燃え尽きてしまって肝心の用件まで辿り着けないというのが悲しいかな実状かと思われます(結局、無意識で口癖のように出てこないと、人間一度にそんなに沢山のことを考えられないのでしょう)。学校の試験を受けてるのではないのですから、この際文法の正確さは多少犠牲にしても、意思疎通を第一に考えた方がいいし、相手もそれを望むでしょう(1分かけてノロノロと正確な文章を喋られるよりも、単語並べただけでも5秒で用件が通じた方がいい)。

        ブロークンな英語ですが、実は意外と一番ナチュラルな英語になってる場合も多いのです。実際に日本語でも、現場においては『明日なんですけど、予約、いけますか?』とブツ切りにして喋ってるじゃないですか。これを『私は、明日に、あなたのホテルに宿泊する旨の予約をしたいのですが、できますでしょうか?』のような不自然に完全な長文を喋ろうとして無駄な苦労をしている場合が実は多いように思います。一生懸命would like toをつかっても、「だけど」が「ですけど」に変わる程度の効果しかなく、そんな部分にただでさえ乏しい精力を使うならもっと本体部分に切り込んだ方がいいと思います。日本語知らない外人さんや、中学英語の基礎すら怪しい他国の人がネイティブ顔負けにガンガン英語を喋っているのも、そのあたりを割り切っているからでしょう。また使いこなせない段階で妙に文法知識があっても足枷にしかならない(自分で喋ってて間違いを自覚するから恐くて喋れなくなる)。


        OKはこれが言えたら大概の用件は間に合ってしまう便利な言葉で、道で転んだ人や、顔色の悪い人に、「大丈夫ですか?」と聞くのも、You、OK?ですし(「大丈夫です」と答えるのは“I'mOK”)、『(出発は)明朝6時になりますけど、それでもいいですか?』も、Tomorrow morning、6AM、You、OK?でいけます。

      2. 謝辞への応答
        SorryやThank youと言われて「いいんですよ」「気にしないでください」と軽く返す場合にもOKが使えます。

      3. ”NO”としてのOK
        日本語の「いいです」が、肯定否定両方の意味があるように、否定的な意味でOKが使われます。『いえ結構です/もういいです』という場合、“No、it's OK”と言うことも出来ます。細かく理屈をつければ、「コーヒーもう一杯いかがですか?」「いえ、もういいです」の場合で、一体なにが「いい(OK)」のかといえば、「現状」が「いい」のでしょう。つまり、「このままで十分なので、これ以上やって戴くことはありません」という意味で「いい」のでしょう。発想は日本語と同じだと思います。

      4. 『じゃ、そういうことで』
        意外な用法としては、電話や会話をしていて、あらかた用件が片付き、そろそろ切り上げるときに「OK」と言います。食事をしていて、そろそろ出ようかというときにもOK。ニュアンスを言うのは難しいのですが、現場に居合わせたら雰囲気ですぐに分かるでしょう。日本語で対応する言葉でいえば、『さて』『じゃそういうことで』でしょうか。居酒屋で飲んでて「じゃあ、そろそろ切り上げて出ますか」というのを省略して、『さて−。』と誰ともなく閉幕宣言のように口にしますが、あのニュアンスに近いかもしれません。「この場はこれで一件落着」という文脈でのOKなのでしょう。電話をしていて相手にOKと言われたら「そろそろ切るよ」というシグナルでもあります。


      ★Please= お願いします

      買物をするとき、日本語で「これくれ」と横柄な口調で言うのと、「これお願いします」と言うのとでは随分感じが違いますが、英語の場合にこの差に相当するのがPleaseを入れるかどうかになると思います。ともすれば、日本人はよくpleaseを落とす傾向があるらしく、知人の留学生は日本から友人が来て喋っているのを横で聞いていて「お願いだから、プリーズを付けて!」といつもハラハラしてるとこぼしていました。これは「Pleaseをつけた方が好ましい」というよりはハッキリと「つけるべき!」と言って良いと思いますので、癖になるまで叩き込んでおくと良いでしょう。


      ★Thank you

      ただのサンキューですが、注意すべきはただ一点。「こまめに言う」ということです。繰り返しになりますが、挨拶の頻度が日本よりも多く、また目礼のような簡便な習慣がない(ないことはないが日本の場合とちょっと違う)ので、いちいち口に出して応答するように心がけていると良いでしょう。レジでお金を払うとき、レストランで配膳してくれるとき、他人が何かしてくれたら一応言っておくくらいの気持ちで。

      Thank you,Thanks,Thanks a lot,Thank you very muchでも何でもいいのですが、「th」音(歯で舌を挟む→「挟むような気持ちで」ではなく本当にちゃんと挟む)でという発音しにくい音で始まるので、意外と言いにくい言葉です。咄嗟に言えるようになるためには、それなりに練習が必要。

      ★See you、Bye-Bye=さようなら

      “See you later”のlaterは通例省略されて、単に「スィーユー」という場合が多いです。さらにyouが変形して「や」になり、「スィーヤ」(See Ya)というのもよく聞きます。
      バイバイも言いますが、日本と違って最初の「バイ」ではなく、後ろの「バイ」にアクセントがきて「ばいばあい」と言う場合が多いです。

      ★No problem、Don't worry= 大丈夫です

      楽天的な国民性を反映してか、オーストラリア人の代表的な口癖と言えるくらい、よく耳にする言葉です(She'll be all rightなどバリエーションは沢山ありますが)。「今夜のチェックイン、ちょっと遅れるんですけど」と聞いたときも、にっこり笑って“Don't worry”などと返ってくることが多いです。ニコッと微笑みながら、大きく肯きながら言うので、意味は通じるでしょう。

      ★How are you? How's it going?
      「ハウアーユー」「アイムファイン、サンキュー、アンドユー」が初級英会話で掲げられてますが、この超初歩的な筈の言葉が、現場では慣れないと聞き逃します。というのは、一般に現地の英語は、日本人が何となく考えている2倍は早口だと思ってよく、さらにCNNのニュースなどに比べて2倍は聞き取りにくいです(訓練されたアナウンサーでないので当然ですが)。ともすれば「ハウ・アー・ユー」を3語だと思ってしまうのですが(そのとおりなのですが)、実際の感覚ではまとめて一語だと思った方がいいです。人によって言い方に個性はあるものの、先入観なしに純粋に音として捉えると「ハワイ湯」と聞こえたりもして、これが頭のなかにある悠長なリズムの「はうあーゆー」に結びつかず、「え?」となったりします。朝、道で出会って、“Hi!morning、How are you?”と言うのに1秒足らずの間に言われます。

      しかも困ったことには、“How are you?”以外の言い方が沢山あり、むしろそっちの方が多いことです。“How's it going?””How'ya going?”もその一つで(意味は大体似たようなもの)、数えていけば10〜20通りあるのではないかと思われます。これを全部憶えるのは大変ですし、あまり意味のあることでもない。実践的には、特別な用件でも喋られているのでなければ、出会い頭に「ハウ」という響きで始まれば、もうこの類の挨拶だと思って「グッド!」と返しておけばいいでしょう。ただこれも反射的に言えるようでないと、なかなか咄嗟に返せないのですが、“How are you?”と聞いて返事が返ってこないと向こうも何か落着かないようで(日本で言えばこっちがお辞儀しているのに、返礼されずにじっと見つめ返されているような不安定な感じなのでしょうか)。一言「グッド!」と言っておけば満足げですので、頑張って返すといいです。なお、文法的には“fine”が正しいのですが(無論それでも可)、goodと言う人が多いです(他にも色々ありますが省略)。

      ★その他

      ★スィンニー=Sydney
      シドニー(Sydney)という言葉ですが、「しどにー」ではなく「すぃドゥにー」です。真ん中の「ドゥ」は限りなく小さく発音しますので、実際には「すぃ(ン)にー」に聞こえます。

      ★グダイマイ=Good day、mate
      どのガイドブックにも解説されてるでしょうが、“Good day,Mate”という世界的に有名なオーストラリア弁の挨拶があります。day(デイ)が「ダイ」になり、mate(メイト=仲間、友達という意味)が「マイト」になり、「グッドデイ、メイト(こんちわ)」が「グダイマイト」になり、さらに崩れると「ギダイマイ」になります(表記も“G'day、mate””gidday”になる)。「こんにちわ」が「ちわ〜」になるようなものでしょう。ビジネスライクな場所(銀行やホテルなど)ではあまり聞きませんが、普通の下町やカントリーに行けば、「ハーイ、グダイ」と声をかけられることもあるでしょう。

      英語については、自分自身悩まされていますので書きたいことは山ほどあるのですが、ここではこの程度に留めておきます。また、雑記帳の方にでもまとめて書きます。

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