英語雑記帳


新・単語の覚え方 (Part06)

英単語の覚え方 INDEX

 Part 01 : 効率の良い勉強方法、連想とデーターリンク
 Part 02 : 偉大なる「こじつけ」パワー、部分的でもまず定着させる
 Part 03 : 用途と対象を明確に、読み方の覚え方
 Part 04 : スペルの記憶術
 Part 05 : テスト用記憶術
 Part 06 : 実生活での記憶術

 単語の覚え方初版
 
 今回は、実生活編です。
 海外の、特に英語圏社会に暮らすようになってからの英単語記憶法です。

実生活用記憶術

人工的な調整が一切加えられてないワイルドさ

 前回のテスト用記憶との大きな違いは、「人工的に整えられていない」ことでしょう。
 テストの場合は、それが入試であろうが、英検であろうが、TOEICであろうが、「試験にふさわしいもの」という限定が掛かり、人工的に調整されています。英単語においても「まあこの程度の難易度」という調整が施されているし、範囲についても極めて専門的な分野については避けられています。そして当たり前ですが、表現や内容についても一応「正しい英語」が出題されます。

 ところが、100%生の現場ではそのような人工的な手心は一切加えられておらず、実にワイルドです。
 場合によっては情け容赦なく専門用語がビシバシ飛び交いますし、難易度などという概念すらなかったりします。そして何よりも、「間違ってるかもしれない」というワイルドカードがあります。ネィティブが常に完全な英語を喋るというのは大嘘で、スペルは間違ってるわ、発音は違うわ、場合によっては意味すら誤解しているときもあります。これは日本人が常に100%正確な日本語を喋るわけではないのと一緒です。まして英語圏の現場では、ノンネィティブも沢山いるので、「相手が間違ってるかもしれない」という要素は常に頭にいれておかねばなりません。なんせ現実世界そのままですからね、何でもアリの世界です。

 範囲が広いというのは記憶術に関して言えば、かなりアゲインストな環境です。覚えた単語が実際に使われている場面に遭遇する比率が低く、反復機会に乏しいからです。せっかく覚えた単語であっても、実際にその使用場面に遭遇するのは数年後とか、もしかしたら死ぬまで出会わないかもしれません。一生使う機会がないなら覚えるだけ無駄でもあります。もう茫漠としてつかみどころがない。僕も語学学校を出たあと、新聞やTV、地元の人との会話などで英語を勉強しましたが、あまりの範囲の広さ、ワイルドさに呆然としました。浜辺の砂を数えているようなやりきれなさも感じたものです。

意識的に範囲を限定してみる

 だんだん分かってきたのですが、まず出現・反復頻度が低いなら、これを高くすべきです。つまり何らかの方法で範囲を限定するといいです。例えば一括パックでやってるシェア探しなんてのはその好例で、いわゆる「シェア探し用語」を短期集中的に反復するので、それらについてはかなり記憶定着率が高くなります。同じようにどこかの業界で働くなら、その業界の用語はかなり覚えられるでしょう。実際に自分がやってみるというのは、最初に述べた最強最速の「情況記憶」につながりますから、これはかなり強いです。覚えたくなくても覚えてしまうでしょう。

 このように、自分から進んで範囲を限定してみるのが一つの突破口になると思います。

 ではどのように限定をするか?一つには、自分の日常生活を考え、頻度が高いものから色々な分野を切り取るといいでしょう。まず自分がやっている仕事(学校)について「よく使われる頻出単語」を集めてみるといいです。もっとも、これは毎日のように出てくるでしょうから勉強するまでもなく覚えてしまうとは思います。それでも、まだ始めたばかりで一日でも早く覚えてしまいたい場合は、ノートでも裏紙でもなんでもいいですから、必要そうな英単語、あるいは英語は分からないけど必要そうな単語(日本語)を思いつくままに片っ端から書き付けていくといいでしょう。

 例えばあなたが語学学校に通学を始めたような場合、誰かかが遅刻して"Sorry, I'm late"といいながら入ってきたら、「おお、「遅刻する」というのは be late というのか」という実例に出くわします。そこで早速、「遅刻する=be late」と書き付けておくわけです。また、"your class will be finished at 3pm"と先生が言うのを聞くと、「おお、"class"という単語は、単に「学級、クラス」という集団単位を意味するだけではなく、「授業」という意味もあるのか」と気づいたら、それも書き付ける。文法用語なども最初は全部英語なので戸惑うでしょうから、テキストなどで出てくるままに、「名詞=noun」と書いておく。この要領で、「宿題」「遠足」「卒業」選択科目」「休憩時間」などなど。

 要領が分かったら、「買物編」、「銀行編」「車の整備編」「水道修理編」「タックスリターン編」「メディケアや病院編」「料理編」などエリアを区切って作っていかれるといいです。

 ポイントは、英単語だけを書いていくのではなく、英語で何というのか分からないものでも、その概念を日本語で書き付けておくことです。いわば「宿題」として書いておく。「これは何と言うんだろう?」という問題意識そのものが記憶のベースになりますから、ちゃんと書いておく。そうすれば実際にその場面に出会って、「おお、○○というのか」と分かったら、その場で覚えられますし、ノートもどんどん完成度が上がります。

 例えば料理編だったら、料理に関係する全ての単語や概念を思いつくだけ書いていきます。ナイフやフォークは英語でもそもままだからわかるし、英語で書けばいいけど、「ザル」という英語が分からなかったらそのまま「ザル」と書いておく。しばらくして、ザルに相当する単語(colander)に出くわしたなら、その旨書いておく。こうやって時間をかけて充実させていったらいいです。一気に全て正解を書かなくても良い。どうせ覚えられませんからね。順次やっていった方がその都度これまでの単語を反復する機会があるからいいです。

 また、徐々に概念を精錬させていってください。ザルといってもコランダーの他に、シーブ(sieve)やバスケット(basket)という類似概念があるのですが、どこがどう違うか?コランダーは本質的には「水切り」という意味です。茹でたパスタのお湯を切るような場合ですね。しかし、シーブはもっと目が細かくてザルというよりは「篩/ふるい」です。逆にバスケットはもっと目が粗くて、入れ物として機能するようなもの、つまりは「籠/かご」です。このように、英単語を覚えると同時に、その概念の正確な意味や位置づけをハッキリさせていくといいです。日本語の概念種別とは違った分け方をしている場合も多々ありますから気をつけて。例えば、日本語ではフライパンと鍋は全然別物で、鍋=煮る、フライパン=焼くという料理法にまで連なる違いのような気がします。しかし、英語では、深いものをpot(深鍋、鉢、瓶、壺、)といい、浅いものをpan(パン、平鍋、平鉢)と言い、要するに包みこむような形状のものをいい、料理法や用途を問わずただ深浅が違うだけという種別の仕方をします。


実生活での記憶術〜スーパーの陳列棚やチラシは格好の教科書

 実生活に密着した単語は、品詞で言えば動詞や形容詞など一般的なものよりも、個別的な名詞の方が多いでしょう。例えば「野菜」系の動詞は、栽培から料理まで一連の段階で、「種を蒔く」「植える」「育てる」「収穫する」「洗う」「出荷する」「売る」「買う」「皮を剥く」「輪切りにする(などカッティング法)」「焼く、煮る(調理法)」「食べる」あたりが出てきますが、別に野菜に関係なく一般的に使う動詞も多々ありますし、別の言葉で言い換えするもの可能です。しかし、野菜の名詞はもっと沢山あります。まず、ピーマン(カプシカム)、胡瓜(キューカンバー)、なす、ジャガイモ、、、など数十種類ありますし、これらは言い換えが難しいです。ピーマンを別の言葉で言えと言われても、「青唐辛子というか、もっと大きくてズングリしてて、辛くなくて、、」みたいないい方になってしまう。ドンピシャにはやっぱりその名詞を覚えるしかないです。動詞や形容詞は汎用性が高く、他の分野でも使う場合が多いから言い換え可能なのですが(記憶してなくても別の言葉で言えるから致命傷にはならない)、名詞はその分野でしか使わない特殊なものが多いので、ベタ覚えしなくてはならない場合が多いということです。

 とりあえず短期に大量に覚えようと思ったら、実際にお店に足を運んで商品を見ながら覚えるといいです。紙の上で覚えるよりも、実際に陳列棚でキュウリを手に取って、「これが”キューカンバー”」と覚えた方がいい。イチイチ「胡瓜」という日本語を頭に通さなくて、ダイレクトに物体と英語とを結びつけた方が記憶効率もいいし、正確です。また紙の上では分からなかったことが分かってきます。「これは、日本の胡瓜よりももっとズングリして大きいな」とわかり、英語のキューカンバーは日本語の胡瓜とはイコールではないということも分かります。そして、「この形は、なんかナマコみたいな、、」と思い至ったら、「ああ、だから、ナマコのことを、sea cucumber(海のキュウリ)というのか!なるほどね!」とつながっていきます。そして、日本のキュウリみたいなほっそりして小さいものを見つけたら(それでもややズングリしてるが)、その名前を見て、「おお、レバニーズキューカンバー(レバノン胡瓜)というのか」と覚えていきます。

 なお、生鮮食料品は特にそうですが、エリアによって言い方がかなり違います。カナダで覚えた野菜の名前が、オーストラリアで通用するとは限らない。魚の名前などはかなり違うといいます。そもそも売ってるものの種類が微妙に違ってたりもします。例えばナスは eggplant と言いますが、ここで「なんで卵なのだ?」と不思議に思ってください。そして実際の形状をみると、まずデカいことにビックリしますが、形状も違う。いわゆる米茄子と言われる種類で、見れば確かに卵っぽい形をしているのですね。鶏卵とは違うけど、ダチョウの卵とか言われたらなるほどそういう形にも見える。だからエッグプラントなのかと。地域によって呼び名が違うのは、日本でも同じですのでお分かりかと思います。まずは自分の住んでいるエリアでの表現を覚えるのが、生活英語の第一歩だと思います。

 ということで、買物に行って時間があったら、陳列棚をしげしげと見て単語を増やしてください。これが一番早いです。

 その他、単語を増やすネタ本や教科書は幾らでもあります。まずスーパーのチラシがいい教科書になります。チラシだけを集めたLassoというサイトもあります。またオーストラリアにも価格COMみたいな商品比較サイトがいろいろあります(例えば、My・Shopping ・com・auとか、shopbotとか)。公平なレビューだったら、消費者団体の最右翼であるCHOICE、あるいは、あるいは一般のクチコミ掲示板であるwhirlpoolがあります。

 職業に関する単語を増やしたかったら、職業別電話帳(イエローページ)を見てください。このようにネットを見ていくだけでも相当の単語数を増やせるはずです。単に街を歩いていて、一軒一軒看板を見ていくだけでも増えます。花屋のことをflorist、タバコ屋のことをなんと「タバーコニスト(tobacconist)」というのを僕は街で知りました。

 ただし闇雲に覚えていっても反復しなければすぐに忘れてしまいます。日常的に必要なもの、あるいは何かその必要があったときにちょっと意識的に見ていくといいです。上に見たようにノートに分類別に書き付けていってもいいです。


鬼門 固有名詞とスラング

 実際のローカル英語とテスト英語の大きな違いは、固有名詞です。現場は固有名詞が多い。固有名詞ばかりだと言ってもいいくらいです。

 これは日本語ネィティブである僕らの日常会話を考えたらすぐにお分かりになるでしょう。「いつもの角のローソン行ってコンビニ弁当買おうとおもったら、紅鮭弁当が売り切れてて、しょうがないからポカリスエットだけ買ってきた」「サンチカもいいんだけど、梅田のデパ地下が最近充実してて」なんて、一体どれだけ固有名詞の嵐か。サンチカ=三宮地下街なんて関西住人でも無いかぎり日本人でも知らないという。これがローカル色なのですね。

 その街に住むなら、最低限メインのサバーブや通りの名前は知っておく必要があります。東京に住んでて「新宿」とは新しいホテルのことで、「秋葉原」は秋のピクニック行楽地であるなんて理解をしてたらやっていけません。大阪に住めば御堂筋、谷町筋などの通りの名前のほか、「南北は「筋」といい東西は「通り」という」という原理も知っておくといいでしょう。このように、現地人だったら当然知っている固有名詞、例えば企業名、商品名、有名人、地名、、、それだけで辞書が出来るくらいです。

 オーストラリアやシドニーでも事情は同じです。「アンザック・パレード」というのが単に通りの名前だとは知らずに、「パレードがあるんだ!」とノコノコ見物に出かけたります(それは私です)。オージーの日常会話も、"You can find Eskys at Bunnings, Mitre10 or even Target or K-Mart" てな感じで固有名詞だらけだったりします。Eskyというのはオーストラリアのクーラーボックスの商品名です。あとのBunnings以降の4つは全部店の名前。実際に暮らしていこうと思ったら、この手の固有名詞は積極的に蒐集記憶されるといいと思います。

 スラングも多いです。人によってはスラングばっかりってこともあります。オーストラリア特産スラングでは、Arvo (afternoon)、Down Under(オーストラリアとNZのこと)、Footy(オージールールと呼ばれるフットボール)、Salvos(Salvation Army=救世軍、チャリティ団体)、Sanger (サンドイッチ)、、などなど、山ほどあります。

 ただし、スラングは、固有名詞ほど真剣に覚えなくても良い、というのが僕の意見です。スラングは、それが方言的に使われている変な言葉であることはネィティブも知ってます。そもそも同じ英語ネィティブのアメリカ人や本家イギリス人から、はたまた違う世代の人達から、「なにそれ?」「意味わからん」と言われ慣れているでしょうしね。だから僕らが分からなくてもそんなに不思議がられないし、それで別段メチャクチャ困るということもないです。これに引替え、有名デパートの名前(David Jones、日本で三越とか)などの固有名詞は、言い換え不可能ですので、やはりコマメに覚えるしかないです。

 なお固有名詞がさらに省略されてスラング化するという鬼の二乗のような言葉もあります。オーストラリアの二大スーパーチェーンであるウールワース(Woolworths)という固有名詞を、さらに省略して"Woolies"と言ったりするわけです。日本語でも、木村拓哉が「キムタク」になったり、梅田地下街が「ウメチカ」になるわけです。よく見かけるな〜って思ったら、覚えましょう。これはもう純粋に知ってるか/知らないかだけの世界ですから。

語学から文化へ

 これは「単語の覚え方」という本題から外れますのでサワリだけ書いておきますが、現地ローカルの英語、ストリートの実戦英語をやっていると、「文化の壁」に突き当たります。

 外国の人が日本語を勉強しようとした場合を考えたら分かりやすいのですが、例えば日本語の「お盆」とか「三回忌」とか「七五三」などは、言語を習得するというよりは、日本のカルチャーを知るという要素が強くなってきます。英語でも事情は同じで、クリスマスの語義だけ知っていても不十分であり、実際にクリスマスがどのように受け止められ、どうやって過すのかというカルチャー的な部分が大事になります。聖書に出てくる言葉も、日々の新聞などで一般用語として出てきたりします。例えば、キリストの復活を意味するリザレクション(resurrection)は、一般的な意味で使われることもあります。また、オーストラリアにおけるハローウィンの扱いも中々に微妙で、ウチのストリートでも「あれはアメリカの習慣だ」と吐き捨てるように言う人もいますし、子供達の楽しいアクティビティだからとして積極的にやってる人もいます。同じ国、同じストリートでも温度差がある。深いのですね。

 英語の勉強がだんだん進んでいくと、語学から文化論になっていきます。海外における生の実生活を体験していくことで、その単語の本当のニュアンスがわかっていきます。このあたりは本や辞書では中々学べません。まさに実生活ならでは学習機会だと言えるでしょう。ということで、語学留学されるのでしたら、学校に閉じこもったり机に向っているだけではなく、もう少し周囲を見渡したり、視野を広げられるといいと思います。



英単語の覚え方 INDEX

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 Part 02 : 偉大なる「こじつけ」パワー、部分的でもまず定着させる
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