英語雑記帳




発 音 (その2)

なぜガイジンさんの声は目立つのか?豊かなボリュームの腹式発声




 個々の発音がどうという以前に、まず「発声」の問題があると思います。簡単にいうと、日本語は発生が弱く、英語は強い。だからそれなりの強い発生をしないと英語の”音”にならない、ということです。

 発生が強い/弱いというのも判りにくい概念なのは承知してますが、的確な言葉がないのですね。声が大きい/小さいというのも微妙に違うし、太い/細いというのともちょっと違う。強いていえば、オーディオのスピーカの性能を表す「音圧」という言葉がありますが、それが一番近いような気がします。ぐっと音が前にでてきて、堂々たる「存在感」のある音です。

 技術的には腹式呼吸と言われます。息を吸うときお腹が膨らむように吸って(胸式だと胸が膨らむ)、お腹に溜め込んだ空気を野太く「ほ〜〜」と出すような呼吸、発声。

 ご存知でしょうけど、カラオケなんかでも腹式で歌うとイイです。これはバンドやってたとき、いわゆるボイストレーニングとかそこらへんの雑学で知ったのですが、確かにこのコツが判ると、誰でも今の2倍は歌が上手く聞こえると思います。人によるけど3度から5度高い音も出るようになるし、カラオケいってもマイクなしに地声で歌っても結構聞えるようになります。音域的にもパワー的にもヴァージョンアップしますから、それまでヒーコラ歌ってたのが朗々と歌えるようになる、と。

 英語もコレだと思うのですね。

 電車内でもレストランでも、英語喋る外人さんがいると、すぐわかるでしょ?それは言葉が聞き慣れないから目立つというよりも、もう音そのものに存在感があるのですね。目に見えるような立体的な、まるで「物」のような音。声にパワーがありますし、深みもあるし、響きもいい。ここに際立った特徴があるのだと思います。

 なお、「腹式呼吸」といってますが、英語喋る人全てが本当に腹式呼吸をしてるのかどうかは知りません。また、そもそも「腹式呼吸」って何なのかも良く分かりません(横隔膜を共鳴させて身体で音を出すような発声なのかな)。ここでは、便宜上「腹式呼吸ないし、それっぽい感じ」というアバウトな意味で使わせていただきます。



 「英語っぽい発音」というと、外人さんの日本語のような、「ワタシハ、ニホンゴ、ワカリマセーン」的な妙に抑揚をつけたり伸ばしたり、あるいはやたら「あ」と「え」の中間のひねくったような発音で歪ませたような言い方をするイメージがあったりします。でも、まずは、音吐朗々と、オペラ歌手になったかのような気持で発音してみてください。この方がずっとずっと英語っぽく聞えると思います。

 先日も邦盤CD聴いてたのですが、途中で英詩のモノローグみたいな部分があって誰かが朗読してるのですが、これが日本人の英語というのがモロわかりだったりします。個々の発音、例えTHとかRとかはいいし、単語がつながるリエゾンもいいので、かなり勉強された方だとは思いますが、もうどうしようもなく日本人英語だとわかってしまう。英語ネィティブだったら、まず間違いなくこんな発音はしないとすぐにわかってしまう。なぜか、結局、腹式になってないからです。声が痩せたままで、英語独特の野太さや響きが全然ないから。

 同じ音程、同じ音量であっても、太さや響きは違います。マイクのボリュームをあげても痩せてるものは痩せてる。もう楽器の種類が違うような感じです。バイオリンとチェロの違いというか、フルートとサックスの違いというか。音のタイプが違う。

 よくLL教材かなんかで自分の声とお手本とを比べたりしますが、そのとき「Rが上手く出てるか」あたりの技巧に注目しがちですが、まずはこの感覚を理解したほうが効率がいいと思います。録音した自分の声が、もう誰が聞いても外人さんの声にしか思えないくらいになるまで。これは個々の発音技巧の上手い下手ではないです。だから極端な話、別に英語でなくてもいいです。日本語の文章を録音しても「日本語の上手な外人さんだな」と他人が誤解するような「音」ですね。この「音」を体得したら、ものすごく上達するんじゃないかな。

 なお誤解してほしくないのは、日本語それ自体が、か細く痩せた発音を求めているわけではありません。現在の日本人が多くの人がそういう発声をしている、というだけのことです。訓練されたアナウンサーとか劇団の方などはキチンと豊かな発声をしますし、生まれつき(或いは意識して)朗々、ハキハキと喋る人もいます。ただ、そーゆー豊かさに欠ける乏しい発声でも日本語は発音できてしまうということです。もっと言えば、僕らは日本語ネィティブですから、発音のコツを体得していて、だから省エネ発音でも事足りるのかもしれません。英語でもコツがわかってくると囁くように喋っても通じますから。




 そういえばどこかの英語教本で読んだのですが、英語の腹式呼吸に関連して、腹式呼吸は単に息を吐いてるだけでもH音が混じる、つまり「は〜」とか「ほ〜」という音が自然にミックスされていると。溜め息が自然と「はぁ〜」になるようなもんで、これはそうかもしれません。

 で、この本曰くは、英語は(腹式は)ほおっておいてもH音が出てるから、Hで始まる単語はイチイチH音を発音しない場合が多いと。例えば、honestyはオネスティ、honorはオナーになるとか。「ほお、なるほど」とか思いましたが、よく考えてみればH音をしっかり発音する単語も数多いから(というかそっちの方が断然多いと思うけど)、一概には言えないんですけど。

 ただ示唆に富む話ですよね。「Hを必要以上に重要視すべきでない場合もある」というのは考えどころかもしれません。というのは日本人が発音に意外と四苦八苦するのが、「ホェ」系の発音だと思うからです。これは、whaleとかもそうですし、又 whenとかwhereとか非常に頻繁に使う単語があります。where?と聴いてるのに、whenと聞き間違えられたりした経験ありませんか?僕は結構ありましたよ。

 何が悪いのかというと、多分僕が思うに、whenを「ホエン」だと思ってるのが間違いの始まりではないかと。whenの発音記号を良く見ると”hwen”であって ”hoen”ではない。つまり「w」音を無視しちゃってるのが間違いの第一。ただ、このw音というのは結構日本人にとっては鬼門の発音だと思います。あんまり語られないし。wもレッキとした子音の一つであると、余り認識されてない。

 w音は、例えばwaだったら単なる「わ」ではなく「ぅわ」です。まずキスするようにオチョボ口にすぼめて、次の瞬間、口を素早くパッと開く。この一連の動作がワンセットになっていて、こう発音すると、単なる「わ」ではなく、もっとハツラツとした、イキイキ・ピチピチした立体感ある音になります。手品師が何もない空間から突然ブワッと花を取り出したような、魔法をかけて突然何かが出現したような、非常に存在感の強い印象的な音です。わかります?この音の違いを頭に叩き込んでください。個人的には、W音を出すときは、水泳の平泳ぎを連想するのですね。真っ直ぐ腕を揃えて出して、ぶわ〜っと広げていく感じが、自分の頭のなかではW音を発音するときの感じに似てるからです。「唇で平泳ぎをする」と(^^*)。なんか自分の納得できるコツを見つけられるといいと思います。

 さて、whenもwhereも、ポイントは最初のH音ではなく、w音です。このw音が出てるかどうかで、彼らは聞き分けてるんじゃないかと思うのですね。最初のh音なんか付足しくらいで、別に聞こえても聞こえなくてもいいです。「ホエン」ではなく「ゥエン」ですね。

 あと大事なのが、後に続く母音の強さ。「エン」なのか「エア」なのか「エイル」なのか等。「ホエン」だと思ってると「ホエ」まで言ったら何となく安心しちゃって最後の詰めが甘くなる(ここで鼻にしっかりかかるN系発音が出来てるかもポイントになります)。ここが曖昧だから、whereとwhenを聞き間違われてしまうのでしょう。

 いずれにせよ最初のH音に気を取られてると、その単語の発音の核心部分を誤解しがちですので注意が必要だと思います。また、w音にせよ、次の母音にせよ、かなりのボリュームと音圧を必要とします。何となくボソボソと発声してたらクリアにでません。そして、腹式の十分なボリュームがあったら、アタマにh音を乗せるのはそんなに難しいことでもないし、特に意識しなくてもある程度自然に出てるでしょう。

 whale watchingも、「ホエール・ウオッチング」ではなく、「ゥエイル・ゥアッチング」くらいに考えておいたらいいのだろうと思います。






99年08月03日初出:田村
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