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治安とリスク管理(3) シティについて



3-1 シティの構造


 留学生やワーホリである皆さんが最も被害に遭いやすいのはシティ(都心、CBD)ですし、そのことは統計的にも裏付けられています。

 このことは地元的には常識ですが、意外とシティに住まわれている日本人留学生/ワーホリが多いです(日本人に限らないが)。日系のシェア掲示板を見てもシティ近辺が多い。なぜ?と素朴に疑問なのです。日本を出る前は皆さん「海外は治安が〜」と言っていたのが、着いた途端に急に「命知らずの猛者」に変貌するわけでもなかろうし。もしかして重大なカン違いをしてないか?と。

 この際だからハッキリ言うと、シティに住むのは東京の新宿や歌舞伎町に住むようなものです。もっと言えばタウンホールより北は新宿でも西口(高層ビルや都庁のある方)で、タウンホールよりも南は東口(歌舞伎町から新大久保方面)みたいなものです。こんなこと当たり前すぎるからか、なぜか誰も書かないので、敢えて一章設けて書きます。

 なぜシティに犯罪が多いか?というと、これは簡単。あなたが犯罪者の立場になって物を考えれば分かると思います。緑豊かな住宅街サバーブでは、皆さん車で動くから、歩いている人なんか殆どいません。10分歩いて3人すれ違えば多いくらいでしょう。こんなところで待ってたって仕方ありません。それにずっと立ってたら近所から不審者として通報されてしまいます。また、10分のうちの3人とはどういう人かというと、例えばジョギングとか犬の散歩をしているような人です。お金なんか持ってそうにないです。ヘタに襲ったところで自分よりも強いかもしれないし、大声出されて周囲の家々から人々が集まってきたら即御用です。

 そこへ行くとシティは泥棒天国です。やたらお金を持ってそうなアジア人観光客がゾロゾロ歩いています。彼らは沢山お土産を買うから軍資金も豊富です。そして彼らからモノを盗るのは簡単です。後述のような治安対策が手薄なことをはじめ、仮にひったくりをしても、土地鑑がないから追いかけてきにくい、足が遅い、助けを呼ぼうにも英語がヘタだから呼べない(「ひったくり」って英語でなんて言うのか知ってますか?)、また警察に届けても犯人の特徴=「瞳の色」「東欧系の容貌」がそもそも判別しにくいし、出来たとしてもそれを英語で表現できない。そんな人々がウロウロ歩き回ってるのですから、これは盗らないテはないでしょう。だから、シティは犯罪が多い。これって別にオーストラリアに限ったことではなく、世界どこにいっても同じでしょう。のどかな農村地帯では犯罪率も低いです。

 ところで僕が来た頃(1994年頃)は、シティというのは夕方5時過ぎると(ロックスなど北部観光エリアと南部のチャイナタウンを除けば)ゴーストタウンになって、シティに住むなんて物好きな人間は少なかったし、住みたくても居住用建物が殆どなかった。シティで夜を明かしているのは北部の高級ホテルに泊ってる観光客かセントラル付近のバッパーくらいでした。ところが、その後サルトル市長の土建行政とオリンピックブームによって、シティのビル開発が急ピッチで進められ、チャイナタウンを中心に居住用高層マンションがどんどん増え、中国人をはじめとする日韓人を含むアジア系住人も増えてきました。人が増えればビジネスも盛んになる道理で繁華街化していきます。00年代中期頃からはワーホリの部屋でも触れましたが、韓国系ワーホリ・留学生の激増が、そしてBRICsの台頭とオーストラリアの永住権狙い留学により、ブラジル系やインド・ネパール系が増え、さらに混沌としたエリアになりつつあります。また、オフィスビルの乱立と供給過剰でテナント料が周辺サバーブよりも安くなってきたこともあり、日本人がよくタムロする情報センターその他の日系ビジネスの多くがニュートラルベイやボンダイからシティに移ってきました。かくして日本語ヘルプが欲しい日系ワーホリ・学生の一極集中化を招きます。

 そうなると繁華街独特の治安状況になり、パブで酔った挙句の乱闘沙汰というアルコール関係の犯罪も増え、またアジア系の若者同士による犯罪なども増えていきます。特にタウンホール以南からチャイナタウンにかけては、夜にいくと渋谷のセンター街か香港みたいな感じになっています。


3-2 シティと他のエリアの犯罪発生率比較


 以下、統計をもとに各エリアのリスク値を見てみましょう。
 ちょっと前に「犯罪統計はアテにならない場合もある」と書きましたが、統計手法や分類、実行の徹底度や警察力がバラバラな状態で統計を単純比較しても意味が乏しいのですが、これから述べるのは同じオーストラリア、同じNSW州で同じ機関が取った統計内部でのエリア比較ですので、その点のバラツキはなく、ある程度信頼しても良いと思います。

 まず出典を明らかにします。
 The NSW Bureau of Crime Statistics and Research (BOCSAR) (NSW州犯罪統計・研究所)という組織があり、ここがNSW州の犯罪のデーターを豊富を一般公開しています。州の司法省(Justice and Attony General)のサイトの中にあり、メインページはここです

 このデーターの中に年別・エリア別(ローカルカウンシル=市町村)別の犯罪統計があり、シドニー周辺地区はココにあります。エリアも数十に分かれ、全部紹介してたら膨大な量になりますので、シティを中心に半径10キロ程度のエリアを抜き出し、それでも膨大な量があるので、2008年度データーを取り出して比較してみました。エクセルファイルになっているものを、それぞれコピー&ペーストして一覧表にしてみました。

シドニー各地域犯罪発生率.xls
エクセルをお持ちの方はクリックしてダウンロードしてください。

 また、簡易に見るために、主要な犯罪項目だけさらに抜粋し、画面キャプチャーして画像ファイルとしても載せておきます。
 マウスを乗せるとグーンと拡大します。数値や項目の感じが分かると思います。ただし、画像がデカ過ぎてディスプレイからはみ出るでしょうから、じっくり読みたいときはクリックして画像だけ表示せてください。

シドニーエリア別犯罪統計


 上の表のタテが犯罪の種類です。ヨコが各エリア。見れば大体分かると思いますが、左端がシティと呼ばれるSydney(CBDとその周辺)、その右がマリックビル・カウンシルのエリアで管轄となるサバーブは、NEWTOWN, ENMOREから南西へDULWICH HILL やHURLSTONE PARKあたりまで、ライカードは、イタリア村ライカードですが、BALMAIN、GLEBE POINTなども含まれます。Ashfieldエリアはライカードよりもさらに西になります。Willoughbyエリアはノースで、CHATSWOODとかARTARMONなどのエリア、Waverleyは東のボンダイエリアです。正確に知りたい人は、州政府のサバーブサーチのページを。選挙対策のためか(ゲリマンダーという)、変な区切りをしているので同じサバーブがエリアによって別々になってたりして止めて欲しいのですけど、まあ、大体のトコロがわかればいいです。

 以下、個々の犯罪類型ごとに、エリアよる変化や特色をじっくりデーターを読み込んでいきましょう。
 いきなりですが、まず殺人は件数が最大3件と絶対数が少なすぎ、統計的意味が薄いので割愛します。

 Assault(暴行)
 一般の暴力沙汰です。DV(家庭内暴力)と家庭外がありますが、DVが皆さんに関係あるのは、シェアメイト夫婦の痴話喧嘩のとばっちりを受けるくらいのケース(あるいは自分達がやる)くらいでしょうから外していいでしょう。大事なのは、Non-domestic violence related(家庭外/一般暴行犯)です。これがシティで絶対数で4883件、人口比率で2598件あります。この数値を他のエリアと比較すると、シティの暴行犯は、絶対数で他のエリアの10倍以上、人口比率で4倍〜8倍で発生していることが分かります。

 なお一般に、都市中心部や繁華街の犯罪状況を見る場合、居住人口が少ない割には訪問人口が多い関係で、対人口比率でみてると多めにカウントされる傾向があると言われます。人口比率とともに絶対数をも比較するといいと思います。しかし、シドニーシティの暴力犯については、絶対数・比率共に抜きんでています。なお、本当はエリア面積との比率も出すべきなのでしょうが、大体が似たり寄ったりの広さなので、まずは発生率&絶対数でみるといいといいでしょう。

 Robbery without a weapon(武器を使わない強盗)ですが、これもシティが突出しています。発生率がノースの10倍以上という比率もさることながら、絶対数の多さも特筆モノでしょう(ノースの30倍もある)。武器を使う強盗は、さらに火器(銃など)とそれ以外(ナイフなど)とに分かれますが、これもシティがダントツ。銃火器は絶対数が少ないのですが、ナイフ等の場合は、絶対数で二位のMarrickvilleの5倍以上の大差をつけてます(ノースの45倍)。

なお、日本刑法の解釈だと武器を使わずに強盗罪を認定するのはマレだと思います。強盗罪は「犯行を抑圧するに足る暴行強迫」、恐喝罪は「犯行を著しく困難にする」というのが区別の基準で、検察官が起訴状を書くときも、強盗罪の場合は「ナイフを首筋に押しつけ」とし、恐喝罪の場合は「ナイフをチラつかせ」と書きます。武器を使ってもなお恐喝という領域で処理する日本刑法の概念に照らし合わせれば、武器を使わない強盗は端的に「恐喝」として分類すべきだと思います。日本に比べてオーストラリアの強盗発生率が異様に高いのも、このあたりの概念区分によるところもあります。

 次に、性的犯罪ですが、これも3分割され、直接的なSexual assault (強姦や強制猥褻)の他、間接的なIndecent assault, act of indecency(卑猥な言動、イヤガラセ)という犯罪類型があり、いわばセクハラの酷いケースでしょう。いずれの領域もシティは他のサバーブの数倍に達しています。

 実際に生活する場合には、強姦など直接的な場合だけではなく、間接的な性的な攻撃/イヤガラセが日常的な不快感や不安感をかきたてるでしょう。強姦系はデートレイプのように顔見知り間の場合が多いのですが、このイヤガラセ系は通りすがりの赤の他人にやられるケースが多いでしょうから、尚更その遭遇機会と不快感も高いと思われます。要注意。なおカテゴリー上の「その他」というのは、覗きとか露出とか淫行とかそのあたりでしょう。ちなみに交通機関での痴漢行為は、そこまで電車やバスが混んでないのであんまり無いでしょう。せめても慰めは、性犯罪は絶対数が少ないことです。シティですら200件以下であり、上の一般暴行犯の4000件やスリ・置き引きの3500件からしたら数十分の1のボリュームです(だから安心しろとは言わないが)。

 イッコイッコやってると大変なので以下気づいたことだけ。

 Steal from person(住居侵入盗ではない窃盗=スリ、置き引き系)は、前ページで書いたように路上盗犯ですが、やはりシティが量・率とも群を抜いています。絶対数3566件、比率2114件は、他のエリアとの比較でいっても10倍を超え、ところによっては数十倍ものリスク値になってます。発生率では意外とボンダイ周辺のWaveryが高く502(それにしたってシティの4分の1)、差が一番大きいのはAshfieldエリアで、発生率71はシティの50分の1です。くれぐれもシティでは盗犯に御用心です。

 Steal from dwelling(住居内部での窃盗)というのも注目です。これは住居内で起きた窃盗なのですが、外部侵入者によらない場合。つまり、パーティなどで招かれた客や、シェアメイト相互で盗んでいるような場合です。これってシェア生活においては結構キツいですよね。でも、この種の犯罪は、盛り場がどうとかいうよりも人間関係系ですからエリア差はそれほどありません。そうは言ってもやっぱりシティが一番リスク高いですけど(数倍以上)。

 ただ、この類型の統計を見てて面白いのは、ノースとAshfieldが格段に少ないのですね。推測するに、シティから離れるにつれ、人物重視のシェア選び、人選びをしているのだと推測されます。いわゆる「自宅」としての快適さを皆が求める。しかし、繁華街や観光地(ビーチサイド)などは単なるホテル的なアコモデーション的利用の仕方をされ、人の出入りも激しく、つながりも薄い。だから窃盗なども起りやすいのではないか?と。まあ、単なる推測ですけど、シェア探しサポートを10年以上やってても、離れた方が安いだけではなく、人情味のあるしっくり&しっとりしたシェアが多いのは動かし難い事実ですよね。

 Fraud(詐欺)がシティで絶対数4000件を越えるという高値を誇ってますが、これはビジネスの中心地だからその種の経済犯罪も多くなることの他に、次章の補足で書いたような観光客や留学生目当ての詐欺ケースなども含まれると思います。意外と詐欺が多いということも頭に入れておいてください。

 Offensive conduct(攻撃的で粗野な行動)Offensive language(攻撃的で粗野な言葉を浴びせる)も、こんなのがイチイチ犯罪として取り締まられ、立件されているのが凄いのですが(実際に身体が触れたら暴行罪で処理されるから純粋に口だけでしょう)、でも実際に日常生活をしていて不愉快な思い、恐怖心をかきたてられるのはこの種の粗野な言動だと思いますので、注目です。自分が直接の被害者ではなくても、目撃するだけで恐いですもんね。これも圧倒的大差でシティは他のエリアを引き離してます。繁華街なるがゆえでしょうが、レストランのメッカ・ニュータウンのあるMarrickville、ボンダイなどビーチの多いWaveryの10倍前後。粗野言語犯の絶対数だけでいえばノースの50倍もあるという。まあ、生活実感に照らしても、シティには"F**K!"とか叫んでる人結構見ますよね。ヘンな人、アブナイ人が多い。

 順番は前後しますが、Harassment, threatening behaviour and private nuisance(イヤガラセ、迷惑行為)なんてのも、同じように精神的ダメージの方が大きい犯罪類型ですから、居住不快度を増加させます。但し、これは隣近所の隣人紛争などが多いので、住宅地である他エリアでも「近所迷惑」系としてカウントされており、粗野言動ほど大差はついてないです。

 以上、総合してまとめてみると、

@、「殺される」とかそこまでの重大な懸念はあまりしなくても良い
 数十万人の人口中の数件だったら、事故みたいな確率ですので、そこまでビビらなくてもよい。もちろん100%油断しろと言ってるのではなく、そのエネルギーを他に振り向けろってことです。例えばクルマに気をつけろとか、飲みにいっても財布をなくすなとかそういった事柄の方が遙かに切実に役に立つ筈です。

A、シティでの暴力沙汰、スリ・置き引きに気をつけろ
 全ての犯罪にわたってシティは危険度10倍増といってもいいですが、特に粗暴犯(暴行、強盗、粗暴な言動)とストリートでの窃盗系が突出してます。シティに行く場合は「盗られるな」「暴力沙汰に巻き込まれるな」というのが実戦的なコツになろうかと思います。

B、住居侵入窃盗系はエリアによるばらつきは少ないが、シェア内トラブルを避けたかったら住宅街に行け
 シティには居住用建物がそもそも少ないということもあるのですが、「治安のいい筈のノースやイースタンサバーブ」が西エリアを越えてシティに迫る高率であることは銘記すべきでしょう。僕が泥棒でも金持ちが多いエリアを狙うんじゃないかな。
 そして、シェア内部での盗った盗られたトラブルに巻き込まれたくなかったら、シティをはじめ繁華街や観光地を離れて、静かなサバーブの住宅街に住め。

 というところでしょうか。

3-3 シティ内部でのホットスポット(危険エリア)


 ありがたいことに、特に発生率が高い場所を示した地図も無料でダウンロードできます。
 Local Government Area - Crime Maps
 というのがありますので、ご自身が住まわれているエリア、あるいは興味のあるエリアをクリックして、犯罪レポートをダウンロードしてください。数十頁ありますが、そこに犯罪別の発生頻度の高いエリアの地図が載っています。

 以下、とりあえずシティエリアのものを画像化したものを参考までに掲示しておきます。クリックすると大きくなります。
 上段には粗暴犯系、下段には盗犯系を並べてあります。色が濃いほど発生率が高いことを意味します。



↑左は一般暴行罪の発生エリア、中央はアルコール関連の暴行事件、右端は強盗です。



 ↑下段左端は注意すべきストリートでの窃盗系の発生率、中央は住居侵入窃盗、右端は住居内部での窃盗です。


 大体どれも似たような分布パターンですが、よーく見ていくと犯罪によって微妙にズレているのが分かって面白いです。面白がってる場合ではないのかも知れませんが。

 暴行罪についていえば、タウンホール以南、ダーリングハーストのOxford St沿い、そしてKings Crossエリアという「御三家」が存在感を示しています。ところがアルコール暴行になると、ダーリングハーストとキングスクロスがより強くなります。ところが強盗になってくると、ダーリングハーストとキングスクロスの他、盛り場から一歩離れたエリアが登場してきます。サリーヒルズ、そしてレッドファーンのEveleigh St周辺がその存在感を示します。

 ストリート窃盗(スリなど)になると、もうシティのチャイナタウンからタウンホールまでのジョージストリート沿いが濃密になってます。このあたりは日本人ほかアジア系留学生&ワーホリが最も集中するエリアですが、そこが「最も盗まれやすい場所」だということは銘記してください。

 ところが住居侵入窃盗になると、シティ周辺の住宅エリア、つまりチッペンデールとサリーヒルズがグンとのしてきます。新興開発したWaterlooなんかも狙われてますよね。

 住居内部での窃盗(シェア内窃盗)になると、住宅地の多い上記のチッペンデールとサリーヒルズは微減しつつ、その代わりセントラルからタウンホールの間の高層マンションやバッパーがグンと増えるのですね。まあ、雑居房みたいなシェアだったら、それは起こりうるでしょう。ちなみにキングスクロスエリアが登場するのは、このあたりのバッパーが多いからだと思います。意外と5スターホテルが林立するシティ北部エリアは被害が少ないです。

 そして、全体に見て欲しいのが、シティから離れれば離れるほど劇的に治安が良くなるということです。よく、ニュータウンが恐いとか、グリーブが危ないとかいいますが、実際の統計を見る限り、むしろ真逆であるということも知っておかれると良いと思います。


3-4 「歩いていける」からこそ危険


 シティ近辺に住まれる方は、学校もバイトも全て「歩いていけるから」こそ便利だし、交通費も浮くし、そして安全だと思われている方もあるかもしれません。しかし、リスク管理についていえば、歩いていけるからこそ危険だという面もあります。

 なぜなら、上のホットスポットをよく見ていただきたいのですが、シティ中心部から周辺にかけて危険地帯が広がっています。パブで飲んだあと、皆と別れて深夜にトボトボとこのエリアを一人で歩くというのは、僕でもあんまりやりたくないです。ジョージストリート沿いはおしなべてスリ系のメッカですし、強盗になるとピンポイントにハイドパークの南端付近や、セントラル駅の北、意外に新築マンションが建ち並ぶピアモントなんかも色が濃くなってますよね(おそらくはカジノとの関係)。ピアモントとかアルティモとか結構便利なところなんだけど、逆に近すぎてシティへは歩くしかないし、いざタウンホールあたりから歩くとなると20分くらいかかるでしょ?ライトレールがあるけど、あれも乗り場がセントラルからチャイナタウンだからホットスポットそのものだし。

 夜道のリスク管理の問題は、距離の長短ではないです。

  一人で歩かなければならないエリアがどこか?
  一人で歩いている時間がどのくらい長いか?
  一人で歩かずに済む代替手段があるか?

 こそがポイントだと思います。

 例えば、Kingsfordなどイースタンサバーブは、距離こそシティから離れていますけど、北はサーキュラーキーから南はセントラル駅のRailway Sqまでバスの乗り場が豊富にありますから、シティのどこからでもバスに乗れる。バスは、大動脈のAnzac Pdeを走るから本数も多いし、24時間運行をしています。また、電車沿線であればナイトライド(深夜の電車の代替バス)が出ています。どれも30分に一本は出てますし、始発点付近から乗るでしょうから時刻表記載の時間にそれほどズレはないでしょう。

 待ってる間も他の人がいるでしょうし、一人ぼっちではないはずです。第一章でも書きましたけど、他にオージー(それも普通の良識あるオージー)がいるような状況においてはリスクもかなり減ります。何かあっても助けてくれるし、彼らは殆どタメライなく警察に電話しますから。ホームでもバス停でも車両の中でも、皆と一緒にいる間はわりと安全。そして自分のエリアで降りてしまえば、あとはシティに比べれば格段に治安のよいサバーブですので、一人で歩くにしてもリスク値はかなり減ってます。

シドニーシティエリアにおける犯罪発生場所統計

 ↑上の表は、シティエリアにおける犯罪発生場所を示した統計です(クリックすると別窓拡大表示します)。

 犯罪の種類によって偏りがありますが、暴行、強盗、スリなどについては「Outodoor/Public Place」(表に赤く示した部分)が非常に危険度が高いことがわかると思います。 ここでいう「アウトドア」というのは、路上や公園であり、まさにあなたが一人でトボトボ帰るときの道と言ってもいいでしょう。

  一方、緑で囲ったのは「Public Transport」=「公共交通機関」です。バスや電車ですね。スリなどは被害者が動いている路上よりも、じっと止ってる車内の方がやりやすそうですが、それでもスリは路上の方が電車・バスの3倍の高率です。暴行犯については、2021:258(7.8倍)、強盗にいたっては917:51(18倍)ということで、暴行で7.8倍、強盗で18倍、路上の方がバス・電車よりも危険度が高いことが示されています。

 ついでにこの表で気がつくのは、スリ系の窃盗は、酒場あるいはレストラン(Licensed Premises=ここでいう「ライセンス」とは酒類提供資格のこと)、そしてスーパーなどの小売店において路上以上の危険度を示していることです。飲みに行くときやショッピングにはご注意を

 これらのことから分かるのは、路上を歩くくらいならバスや電車に乗った方がずっと安全だということです。勿論、交通機関が絶対安全ではあるわけでもなく、それなりに犯罪は起きていますが、それでも路上に比べればはるかにマシです。

 ということで、単なる地図上の距離だけで物事を決めるのは危険ですし、「歩けるから安心」ではなく「歩くからこそ危険」なのだと認識を変えられた方が良いと思います。

 したがって、仮にシティ周辺に住むにしても、そして歩ける距離にあったとしても、歩かなくても済むルートがあるかどうか(バスや電車でも行けるか)、そしてその代替手段がどれくらい使えるかです。深夜になったら運行してないのでは意味がないので、時刻表もちゃんと調べること。そして歩けてもバスが来たらバスに乗るくらいの慎重さがあってもいいです。テイラースクエアからタウンホールまでなんて全然歩けるけど、バスが来たら乗った方がいいです。酔っぱらってガードが下がってるんだから、犯罪に出くわさないまでも、クルマにひかれたり、赤信号をダッシュで走ってるときにポケットから何か落としたりしがちです。そして、「なんかヤな感じがする」ときは、躊躇うことなく(ケチることなく)タクシーを呼んだらいいです。もともと危険エリアにいるんだから、その程度にメリハリの効いた行動は取っておかれた方がいいです。災害は忘れた頃にやってきますから。



 というわけで、それでもアナタはシティに住むの?と問いかけたいのですが、でも、こんなのは個人の趣味です。お好きになさいませ。

 ただし、シティが一番安全で、一歩シティ外のサバーブに行ったらそこは魑魅魍魎の百鬼夜行の世界だとか思っていたら、それは大いなるカン違いです。ここまで180度の真逆な誤解というのも珍しいというか、誤解するにもほどがあると思うのですが、事実はそうです。判断はそれぞれ各人がなすべきですが、それも正確な情報を前提にしての話ですからね。

 ちなみにシティ以外のサバーブ間の良し悪しは、実は意外と地元のオージーもよく分かってなくて、自分の住んでるところが最高とばかりに笑っちゃうくらいに偏見バリバリだったりしますね。同じサバーブ内でも「駅の北には行くな」と「駅の南には行くな」とそれぞれが真逆なアドバイスを大真面目にしてたりして(実話)。東と西とでも、統計だけでいえば、微差とはいえ総じて東の方が西よりも悪かったりもするのですよ。何でもノースが治安が良いかというと、それも大嘘で住居侵入窃盗だったら西よりもリスク値が高い。

 地元のオーストラリア人は意外と地元を知らないです。知ってる部分は異様に詳しいけど、知らない部分は嘘みたいに無知。てか偏見バリバリ。だから「オージーがこう言ってた」というのを鵜呑みにしたらアカンです。これは日本だって同じ事で、東京でも田園調布の住民で下町エリアを「ガラが悪い」「治安が悪い」とか言う人、いそうでしょう?

 でも、まあ、シティが危ないっていっても、別にそう大したこたあないですよ。矛盾することを言うようですが、この程度の危険度だったら、日本の盛り場、渋谷とかミナミとか中州とかすすきのと大差ないですよ。毎週日本人学生が刺殺されているという話も聞かないし(というか、はるか昔に一人ケアンズで殺されたくらいでしょ。韓国人がシティで殺されたのは数年前にあったけど)。せいぜいが飲みに行って喧嘩沙汰に巻き込まれたり、携帯や財布をすられたり、シェア内でトラブったりする程度で、そんな命に関わるようなことは無いでしょう。歌舞伎町とかミナミの裏街あたりの方が恐いっちゃ恐いです。

 それに、面白いところというのはナチュラルに危ないものだし、スリリングなシティライフを満喫したいなら、その程度のリスクは織り込み済みでしょう?むしろヤバイからこそ面白いって面もあります。だから、分かってやってるんだったら、それも全然アリだと僕は思います。でも、分かってないでやってるんだったら、それはちょっとマズイのではないかと。それだけです。


 以下、カテゴライズしきれなかったトピックをいくつか補足説明します。
 かなり読み疲れたけど、もうちょっとだから頑張って次に行く→

1.治安とリスク管理(1) 傾向編
 1-1.概況 オーストラリアの犯罪状況
 1-2.最初は活動重視、徐々に引き締めること
 1-3.周囲のオージーがあなたの警備隊
2..治安とリスク管理(2) 対策編
 2-1.リスク対策基礎力編
 2-2.路上盗犯対策 「スキのない私」の演出
 2-3.被害を最小限に留めるワザ各種
 2-4.住居侵入窃盗系に対する対策
3.治安とリスク管理(3) シティについて
 3-1.シティの構造
 3-2.シティと他のエリアの犯罪発生率比較
 3-3.シティ内部でのホットスポット(危険エリア)
 3-4.歩いていけるからこそ危険
4.治安とリスク管理(4) 補足トピック編
 4-1.Redfern/Eveleigh Stについて
 4-2.デートレイプについて
 4-3.寸借詐欺