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治安とリスク管理(その2) 対策編





2-1 基礎力編


 まず最初に、原理的なリスク対策を箇条書きにしておきます。原則論ですので即効性はないのですが、いわば全てに共通する基礎体力みたいなものです。

@英語が上手くなること

 「対策」に入るのかどうか分からないけど、最も抜本的で効果的なのはやっぱりコレでしょう。英語が出来ない方がどうしてもリスク値が高くなりがちでしょう。例えば緊急000番で警察の助けを求めるにしても、状況や場所を的確に英語でいえなかったら警察の対応も遅れます。逆に英語でひととおりの事が言えるようになれば、ナンパその他でしつこく誘われたような場合、きっぱりと(しかし角を立てずに)断ることも出来ます(断り方の英語は後で書きます)。困ったときに気楽に周囲のオージーにヘルプを求めることもできます。言うべきや確認すべきをことを怠り、予約や売買上のトラブルになることも未然に防げます。ラウンドなどで知らない町を訪れる場合、地元の人に注意点などを聞くことも出来ます。こちらの英語サイトで詳細なリスク情報を調べることも出来ます。それに、これは自分自身の実感でもありますが、英語が出来るようになればなるほど舐められないというか、一個の人間として尊重してくれるようになります。

 A地元ローカルの知人を沢山つくること

 @とやや重複しますが、地元のことは地元の人が一番よく知ってますし、対処の方法も知ってます。ワーホリ、学生、バッパー同士だと、しょせん現地不案内な人ばかりなので、適切な対応が出来ないことがあります。犯罪もうそうですがビーチで泳ぐときのブルーボトルなど毒クラゲの存在とか、気候の項でも書きましたが、Total Fire BanのときにBBQをやって犯罪者扱いされるとか、地元独特のシステムをよく知ってる人が周囲にいるといないのとでは大違いです。リスク管理に限らず、ローカルの人を知ってると何かと便利ですよ。必要なときに車を出してくれたり、仕事を紹介してくれたり、そのメリットは計り知れない。

 B道をしっかり知ること

 まかり間違って後述のレッドファーンのイヴリーストリートに迷い込んでしまうことはないにせよ、道の迷うと用もないのに路地裏などをウロウロする羽目になります。道をよく知っておくこと。そのためにはしっかりした優秀な地図を用意しておくことです。地図のオススメは、ワーホリサバイバル講座/ギア装備 地図編を参照。

 C交通機関を使いこなせること 

 これもAと同様、深夜に意味なくウロウロすることを防止できます。パーティに呼ばれて、ほろ酔い気分で帰るときに、「あれ?」と道に迷ったら悲惨です。帰りのバスの時刻やルートくらいは調べておくといいでしょう。最悪、タクシーを呼ぶ必要もあるでしょうから、タクシー会社の番号くらいは携帯に登録しておくといいです(走ってるタクシーの横腹にも書いてあるが)。

 なお、タクシーを呼ぶときは、ストリートの名前とサバーブの名前が必要ですが、ストリートの名前だけではなく、さらにそのストリートと交差するストリートの名前を求められることもあります(”Crossing Street?”とか聞かれる)。ストリートの名前なんか多くのサバーブで重複してます。名前にジョージがつくストリートなんかシドニー全体で70本くらいあります。でも、二つのストリート名が交差する地点となると確率はぐっと減り、位置が正確に特定できるのでしょう。多分、地図のソフトかなんかあって、入力したら出てくるのだと思います(推測)。ですので、道に迷ってタクシーを呼ぶ場合、ストリートとストリートの交差点にいき、二つのストリートの名前を見ながら(通例交差点には表示がある)電話するといいです。

 その他、タクシー料金、利用時の英会話、忘れ物の際の連絡先、万が一にもぼったくられたときの救済などついての一般的な知識は、生活体験ノート6-2 タクシー編をご参照ください。

 D足が速いこと(^_^)、少なくとも早く走れる靴を履くこと

 半分冗談みたいですが、実際に走って逃げるようなことはマレでしょうが、要は気の持ちようです。フットワークが軽いというのはいろんな意味で有利でしょう。足の速そうな人からわざわざひったくる奴もいないでしょうし。そういった直接的な意味よりも、あれこれ心配するなら、文字通りまず「足もとをかためよ」という配慮が必要だと思います。道に迷うときというのは、足が疲れてきていい加減な推測で近道をしようとする場合だったりします。歩きにくい靴を履いているというだけで、判断を誤るってこともあるわけです。

E都市伝説にビビらない

 この種の話は山ほどあります。やれどこそこでレイプされたとか、やれ日本人は狙われているとかさ、今はもう日本人がビンボーなのは皆知ってます。そーゆー「学校の怪談」みたいな話って、酒のサカナには面白いけど実戦的な意味でいえば有害無益です。オージーが「TOKYOの地下鉄に乗るとサリン吸って死んじゃうんだぞ」といってるようなもん。そーゆーことも確かにあるけど、So what?ですよ。飛行機に乗れば墜落するし、車に乗れば事故に遭うし、食事をすれば食中毒、泳ぎに行けば鮫に食われるんですよ。問題は、出典も不明な事件のあれこれではなく、その確率であり、それが生じる構造とパターンであり、それを未然に防ぐための対策です。そこまで考えなければリスク対策にならないし、「食中毒が恐くて餓死する」みたいな本末転倒の状況になったりもする。面白おかしく思考停止し、結果としてもっと多大なリスクを招くという意味で有害。

F一番大事なのは直感

 直感というとヤマカンのようにいい加減なものを連想されるかもしれませんが、現場で一番頼りになるのはこの直観力です。「この人は大丈夫」「ちょっと危なそう」という感覚は、動物だったら本能的に持ってるものです。こちらのリスク対策情報などには、「直感を信じろ」というアドバイスはよく出てきます。

 後述のデートレイプの公共の対策のページで、”Trust your gut feelings/Listen to your instincts and leave situations that you don't feel good about.”という具合に、"gut feeling"というのは直訳すれば「内臓の感覚」ですが、日本語になってる「ガッツ」(guts)であり、「腹の底から」「肚が座ってる」「肝っ玉」「腑に落ちる」みたいな肉体感覚に直結した感性という意味です。同じように、instincts(本能)、intuition(直感)という単語も良く使われます。

 もちろんこんな感覚に全てをゆだねるのは危険でしょう。しかし、杓子定規で応用のきかないマニュアル漬けになっているのは、それ以上に危険だと思います。「絶対安全」なんてことはこの世には存在しません。日本の自宅にひきこもっていたとしても、いつ強盗が入ってくるかわかったもんじゃないです。プロの詐欺犯にかかれば、警戒心の強い人を騙すのは、その心理を逆手に取れば良いので普通の人以上に騙しやすいといいます。何かに囚われて心のバランスを崩すとそこにスキが生まれる。内心「おかしいな」と思いつつ、「○○は大丈夫って書いてあったから大丈夫だよね」と無理やり自分に言い聞かしたりしない方がいいです。お役所仕じゃないのですから、形式やルールにとらわれず、自分自身の本能や直感にもまた耳を傾けてください。常日頃からその感覚を磨いておくといいです。いわゆる「ピンとくる」というやつです。

 直感というのとはちょっと違うかもしれませんが、いわゆる「人間としての常識的な感覚」なども大事でしょう。「海外だから意外にも」って物事は沢山ありますが、「基本的には日本と全く同じ」という物事もまた沢山あります。オーストラリアは開放的で明るい社会ですが、一面では日本以上にキチンとしている部分もあります。例えば、お酒の強要はまずしません。泥酔=犯罪くらいに酒には厳しいです。「酒の上での過ち」は全く言い訳にならず、非難がより強まるだけです(だから皆さんがジャパレスで働くときにRSA講習を受けないとならない)。デートレイプで書きましたが、(性)関係の強要も日本以上にしつこく言い寄りません。明るく口説くけど、強要はしない。また、シェアや売買などで1セントでもお金の授受があったときは領収書を切る習慣は日本以上に徹底しています。総じていえば、義理にからめてその人の主体性を侵害したり、ウヤムヤにすることは日本以上に少ない。だから、もしそういうことをされたら、十分なレスペクトを受けていない、なんかヘンだなと思ったらいいです。


Gシティに居ないこと

 後に述べるRedfernのEveleigh Stは別格として、それ以外のエリアで留学生やワーホリである皆さんが最も被害に遭いやすいのはシティ(都心、CBD)だと思います。実際、統計的にも一番多い、もうダントツでシティが一番危ないです。だから、行くな、住むな、です。僕も17年住んでろくすっぽ犯罪らしい犯罪に出くわしてないですが、それは必要のない限りシティに近寄ってないから、という要素も大きいと思います。

 ただし、日本人学生・ワーホリのシティ集中率は年々増加の一途を辿ってます。これはシティのオフィスビルが供給過多になり、テナント料が安くなったことから、Neutral BayやBondi Junctionというこれまで日本人が多いサバーブにあった日本人向けビジネスが一気にシティに集中してきたのと軌を一にしています。数年前からシティの摩天楼ビルに「2DKで11人シェア」というとんでもない居住環境が普通になり、さらには「シドニーのワーホリ・留学はシティに住むもの」というトンデモ認識が常識化しつつあります。もう端的に間違ってない?って強く思うので、これはもう一章別枠に設けて次に書きます。


2-2 ストリートでの盗犯対策 「スキのない私」を演出すること


 犯罪被害を大きく二つにカテゴライズすれば、(1)家の外(路上や出先)、(2)自宅内(住居侵入)があるでしょう。
 学生さんやワーホリさんの場合、総じて(1)のケースが多いでしょうし、その多くが盗犯系です。つまりは路上における盗犯=置き引き、スリ、ひったくりなどです。シティのタウンホール近辺などはよく話に聞きますし、実際に僕がお世話した人の中でも被害にあった人が幾らかいます。その殆どがシティですね。ということで、路上における盗難被害をいかに防止すべきか、これが治安対策の第一の眼目になるでしょう。

 といって、いたずらにビビってキョロキョロしてても無意味です。大事なのは犯人の視点に立って考えることだと思います。彼らの多くは、ドラッグ代や小遣銭稼ぎのためのイージーマネーを探しています。「いかに盗りやすい人から安全に盗るか」という視点で、行き交う人々を見ていることでしょう。わざわざ盗りにくい人から盗って、盗みの芸術を追い求めるルパン三世みたいな人間は滅多にいないでしょう。盗りやすい人から盗る、と。じゃあ、どういう人が「盗りやすい人」なのか、より本質的には彼らから見て盗りやすい人に見えるかどうかです。

@背後や周囲にナチュラルに気を配れ
 見るともなく周囲を気にしていてください。よく「野球でセンターを守ってるくらいの感じ」と僕は表現しますが、別にピッチャーとかバッターとかサードほどギンギンに集中してなくていいです。外野席の客と雑談をするくらいリラックスしていながら、カーンと打者が打ったらダッシュ出来るくらいには意識を残しておく。「見るともなく全体を見る」ってやつです。マンガの「バガボンド」にも同じようなセリフが出てきましたな。自動車を運転するとき、さりげにバックミラーで背後の交通状況をチェックしてるでしょう?あんな感じですよね。

 思うのですが、おそらく自然にこれが出来るようになってる人は、泥棒さんから見て「盗りにくい人」なのだと思います。

A意識が一点集中してしまう局面を知っておく
 見るともなく周囲を見るといっても、どうしても前面に100%神経がいってしまう場面があるでしょう。例えば、英語で話かけられたり、話をしたりするときはシドロモドロ状態になり、カーっとなったりするから、もう100%神経がそっちにいってしまいますよね。また、店の中で真剣に商品を見ているとき、例えばシャンプーや薬の裏の注意書きの英文を読んでるときとかです。カウンターで物を頼むときもそうでしょう。はじめてATMを使うときも、「え、なにこれ?」とかパニックになったりもするでしゅう。そういうときは全意識が一点集中してしまいがちですし、逆言えば周囲や持ち物に対する配慮が留守になりがちです。実際、着いたばかりの頃は何もかもが珍しく、不安ですから、何をするにも「全力で取り組む」ことになりますが、全力で取り組むというのは、要するに他への注意(背負ってるバッグとか)がゼロになるということです。

 ですので、100%集中してしまいそうなとき(=何かをするとき)は、そうなる前に防衛策を講じておくことです。多くの人はディパックなどのバッグを肩から下げたりしていると思いますが、背後に下げているバッグをちょっとズラしてラッコみたいに身体の前面にもってくるとか、脇に抱え込むとかするといいでしょう。とられにくくガードしてから買物やATMを使うってことです。最初は意識的に練習したりして、最後には無意識的にそういう動きになるようにするといいでしょう。それをやってるだけで、泥棒さんは「む、こいつはスキがないわ」って諦めてくれるでしょう。

B盗られやすい状態を予め知っておく
 歩いている人からモノを盗るのは難しいです。スリのように一瞬のワザが必要です。しかし静止している人からこっそり物を盗るのはたやすい。ということは「信号待ちをしているとき」に注意ですし、特に「信号待ちをしながら友達と熱心に喋ってるとき」は要注意ということです。

 バスや電車に乗ってるとき、あるいはフードコートでゴハンを食べてるときも盗られやすい。フードコートで椅子にバックパックをランドセル掛けしている人がいますが、話に夢中になって前のめりになって背中がイスから離れ、カバンと身体が接触しなくなったら持っていかれてもわかりません。実際、このパターンの被害は多いです。このような場合、カバンは床の両足の間に置くとか、隣の席に置くにせよどっか身体と接触させておくといいです。

 というわけで、ほんのちょっとの気配りでいいですから、やっておくといいです。常には出来ないでしょうから、もうクセにしておくといいでしょう。なお、日本でやってるように、カウンターで注文する間に座席にカバンをおいて席を確保するなんてことは論外。

 あと、スーパーのショッピングカートの上にポーチを置いておくなんてのもダメです。カートの一番深いところに置いて、上から買った商品で埋めておくくらいの気合でいるといいです。

 実際にそんなに盗られるものではないですが、何度も言うように周囲にいるかもしれない泥棒さんに対して、スキのない私を演出することに意味があります。「あ、こいつ、ガード固そう、ダメ」って諦めていただければそれで良いのです。

 ほんのちょっとの動作だけでかなりの程度プロテクトできると思います。


2-3 被害を最小限に留める


 しかし、どんなに注意しても盗られるときは盗られます。それはもう運命みたいなもので、長い人生誰しもそういうことはあります。そこで、万が一盗られたときのことも想定しておく必要があります。ある意味では、こちらの方がずっと大事かもしれません。

C不必要なものは持ち歩かない
 日本円とか、日本の運転免許証とか、TSUTAYAの会員証とか、別にこっちに住んでいたら全く何の役にも立たない物を持ち歩いている人がいます。こういった物は、持っていても何の役にも立たないくせに、盗られたらそれなりに被害になります。レンタルCDの会員証なんかどうでもいいですけど、運転免許証とか盗られたら面倒くさいですよ。また、日本に帰ってから再発行手続きで1日潰れますし、お金もかかります。直ちに困らないけど、被害はでかいです。だから、役にも立たないものを持ち歩かないってことです。現金なども、初動は学校の費用やシェア代など出費がかさみますが、安定してしまえば別に一日20ドルとか50ドルで足ります。

Dカバンの中は整理する
 何でもかんでもカバンの中にほおりこんで、買物の度にカバンのなかを探し回って財布を取り出してる人がいますが、止めたほうがいいでしょう。だって、仮に盗られたとしても、そんな状態だったら何時盗られたのか全然分からないですもん。家に帰ってからはじめて盗られたのに気づくとかいう間抜けな話になりがちで、そうなると警察に届けるにしても面倒ですよね。財布とか大事なものは、同じカバンの中でもすぐに分かる場所に収納し、出来れば外側から触って存在が確かめられるのがいいでしょう。そうすれば定期的に触るクセをつけておけば安全確保しやすいです。

E二次災害に気をつけろ!!
 これが一番声を大にして言いたいです。これは弁護士経験から学んだことですが、被害や不幸というのは波状攻撃でやってきます。一発目は、それなりにキツイけど、それでもまだしのげる。しかし二発目の不幸は往々にして致命的です。例えば、町を歩いていて携帯電話を盗られたことに気づいてパニックになり、あわてて車道に飛び出して車にはねられて即死、あるいは一生車椅子生活とか。被害を受けた瞬間というのは、かなり精神的に動揺しますし、思考能力も極端に低下します。その状態が一番「危ない」のです。弁護士のところに相談にやってくるような人は、この種の二次災害、三次災害で致命的な状況に陥った人です。最初の一発で踏みとどまっていれば、「ちくしょー」くらいで済んでいたのに、パニックになるから取り返しのつかない被害を招く。それも殆どの場合が自招危難というか、自ら進んで招いた不幸です。ねえ、両足切断することに比べたら、携帯電話の一つや二つ惜しくないでしょう?

 したがって、被害に気づいた瞬間が、あなたの勝負どころです。ツライけど、両足踏ん張ってこのハードな現実を受け止めましょう。ここで姿勢を崩すと二発目が襲ってくるぞ、これで終わりじゃないぞ、今度はシャレでは済まないぞ、とクールに戦闘態勢に入って下さい。出来れば、盗られた物は一瞬にして諦め、気持ちのスィッチをカチリと切り替え、善後策をクールに講じるのが望ましいです。逆にいえば、一瞬にして諦められないような物は持ち歩くなってことでもあります。言っちゃ悪いけど、ワーホリさんや留学生さんが持ち歩くようなもので、盗られて人生が終わってしまうような物なんてないでしょう?3億円の小切手とか、数百億の訴訟の重要な証拠とかさ、なくしたら地獄ですよ。裁判官とか裁判所書記官とか、この種の重要な訴訟記録をうっかり地下鉄に置き忘れたら、まず進退伺いですよ。自殺した人もいたんじゃなかったけな。裁判に限らず、それがビジネスの現場の厳しさでしょ。出版社員が貰ったばかり原稿をなくしたら、死にたくなるでしょうよ。それに比べればねえ、「ちょっと面倒臭い」程度の被害でしょ?この程度のことでうろたえるな、と言っておきます。

F被害回復のための段取を整えておく=パニックノートのススメ
 おそらく盗られて困るものは、クレジットカードやキャッシュカードなどでしょう。不正使用の心配があります。そのために、盗られたと思ったときには直ちに日本に電話して使用差し止めを申し出る必要があります。その場合、どの電話番号にかければいいのか?すぐにはわからない、家に帰ってスーツケースの奥底に眠ってる資料をみないと分からないのではイライラが嵩じます。その焦燥感が上のEの二次災害を招きます。

 そこで「盗られたときはコレ」という、「パニックノート」を作っておくといいです。パニックを速やかに沈静させるのは「適切な措置を順次打っている」「事態は急速に良い方向に向っている」という現実ですから。頭の悪い人はこの電話番号のメモ書きを財布に一緒にいれておいて、財布ごと盗られてそれで終わりという悲惨なパターンになりがちです。そこで、コレが盗られたときはコレ、アレが盗られたときはアレと複数用意しておき、ダブルで被害に遇わないように置いておく必要があります。

 以上述べた地味な対策をコツコツとやることが大事でしょう。その対策そのものよりも、そういう対策を実際にやることによって、自分自身の防犯意識というのが自然に高まりますからね。緻密なカンニングペーパーを用意しているうちに内容が全て頭に入ってしまうように、パニックノートを何枚も用意しているうちに、「盗られたらエライこっちゃ」という実感が骨身に染みていくでしょう。その感覚が重要だったりすると思います。それに、「お守り」「ジンクス」って副産物もあります。傘を持っていくと雨が降らず、傘を忘れたときに限って雨が降るというのはよく体験されるでしょう。逆にいえば傘を持って出ることは雨を降らせない「お守り」にもなります。パニックノートを作るのは、被害に遭わないためのお守りだとくらいに思っておいても良いでしょう(だからといって慢心しちゃダメですよ)。

 なお、カードや携帯が盗難・紛失した場合、盗られはしないけどスキミングされた懸念がある場合、速攻でパニックノート記載のところに電話して事態を説明しておくといいです。一本電話を入れて使用履歴を調べてもらうだけで気が休まりますし、また後日何かあったときでも「遅滞なく連絡を取った」という事実は、後々大いに有利に働くでしょう。これが何ヶ月も経ってから明細を見てガビーンとなって、「あれは私じゃありません!」とか申し出てても「本当かよ?」って説得力ないでしょ。向こうだって言われるままホイホイ損を被ってるとも思えないし。法律実務でよくやりますが、「後日のために証拠を作っておく」というヤツです。


G、真に気をつけるべきは、犯罪よりも自分のドジ

 最後のもう一つ。
 今までは治安の話をしておりました。しかし、他人の違法行為によってあなたの生命・身体・財産がダメージを受ける確率よりも、その数倍数十倍の確率で、あなた自身によって同じ被害が生じます。例えば、財布を取られるよりも、自分でどっかに置き忘れるとか。バスの中に電子辞書を置き忘れた人もいました。電車の中に財布を忘れてきてしまった人もいました。パブで盛り上がって携帯電話を置いてきてしまった人もいました。

 大体これまでの人生や周囲の人を考えてみてください。他人から物を盗られたことはなくても、物を置き忘れた経験は誰でもあるでしょう?あなただってそうでしょう?あなたがこれまで怪我をした場面のうち、他人の暴行によって怪我をした場合よりも、圧倒的に自分がドジで、階段から落ちたとか、自転車でコケたという場合が多いでしょう?塀から飛び降りて足を骨折して、ホームステイ先で2ヶ月間寝たきり生活をしたワーホリさんもいます。犯罪被害や治安なんかよりも、はるかに高い確率でドジを踏むってことです。治安治安と念仏を唱えているヒマがあったら、道路を渡るときに左右確認した方が実際には役に立ちます。

 しかし、犯罪だろうがドジだろうが、被害は被害、同じです。ところが犯罪だったらまだしも保険はおりるし、他人からも同情されますが、自分がドジ踏んだ場合は、保険も「免責約款」にひっかかっておりないかもしれないし、他人も同情してくれません。被害は同じなのに、皆に笑われて被害回復もナシという、踏んだり蹴ったり状態になります。


2-4 住居侵入系に対する対策


 ここでは留学生やワーホリを念頭に置いて書いてますが、親子留学などで小さなお子さんと一緒に暮らしているので、子供の誘拐(そんなの滅多に無いけど)、交通事故が心配であるとか、自家用車を保有しているので路上駐車しておいてイタズラされたりするのが心配だとか、家の中に時価数百万円相当の什器備品を持っているとか、そういう場合もあるでしょう。

 留学生やワーホリの方は、多くの場合子供さんはいませんし、自動車を持ってる人もマレでしょう。また、家には大事な全財産が置かれているとはいえ、その財産的価値は失礼ながらそれほど高くはなく、高価な宝石、名画骨董品を収集している人もマレでしょう。多くの場合はシェアかステイに暮しています。ということは、住居侵入窃盗があったとしても、犯人はまずオーナーの居住エリアで金目のものを狙うでしょうし、やたら嵩張るスーツケースや、脱ぎ散らかしてあるジャージなんか盗る人は少ないと思われます。ただし、ノートパソコン、携帯、MP3プレーヤーなどは狙われるでしょうから、目立つところに放置しておかないという配慮があってもいいです。

 ということで、ここで住居侵入系の治安対策を多少考えてみます。住居侵入は犯罪統計上は"Break and Enter"などと言われますが、日常的には"break-in"と呼ばれたりしますので、万が一警察に通報するようなときのために覚えておいてください。

Hエリアよりもストリート単位で考える

 住まいを決める場合、治安の良いサバーブに住むことを考えますが、どこであれ治安の良いストリートに住まわれる方がいいです。エリア単位で物事考えるのではなく、ストリート単位で考えろということです。逆に治安が悪いという意味で有名なRedfernですが(後述)、本当に「行っちゃダメ!」というのはEveleigh Stであって、このストリートとその他とでは、リスク度に天地の開きがあります。

 ストリート一本違うだけで雰囲気が変わりますし、ストリート単位で犯罪率もまた違います。良いストリートは、近隣住民相互に知り合いであり、前庭でいつも誰かが日向ぼっこしてたり、草木に水をやっていたり、行き交う人と挨拶をしてるようなストリートです。こういうストリートでは、相互監視の目が自然に出来上がってきますので、外部者は入っていきにくいです。目撃されやすいし、不審な挙動をしてたらたちまち警察に通報されます。

 また、出来れば、行き止まり(カル・デ・サコという)ないし車の交通の不便なストリートがいいです。物を盗ってすぐに逃げられないような場所。これらの条件は、客観的に防犯に役立つというよりは、もっぱら犯人の心理という主観的なものに影響するのでしょう。彼らだってリスクを背負って犯罪をおかすわけですから、「なんかここはイヤだな」ってストリートだったら犯行にも至りにくい。

 僕の感覚でいえば、サバーブ単位でいえば、RedfernとCity以外だったら、基本どこでも許容範囲にあり、問題はその家がどんなストリートにあるか、あるいはどんな造りをしているかの方が大事だと思います。「絶対ノースがいい」とか言うけど、ノースだから絶対大丈夫なんてことはあるはずもなく、そういうキメうちは考え方として荒いと思います。エリアをみる場合、治安云々よりも、そのサバーブの特徴をよく知っておいた方が良いでしょう。別に治安だけで生活が成り立っているわけではないし、冷静に考えれば、治安など日常の生活感覚を構成する要素の数%以下でしかないです(交通の利便性とか、物価とか、英語に不慣れな住人に優しいかとか)。

 なおサバーブの特徴は、生活体験マニュアル3.1.土地カンをつけようシェア探しのためのシドニー・サバーブ別解説シドニーサバーブ&イベントギャラリーなどに多少書いておきました。

 また、そのサバーブのプロファイルは、Domainという不動産情報サイトのサバーブプロファイルのページで概略が分かります。カッコ内にサバーブの名前(あるいは郵便番号)を入れると、そのエリアの不動産価格の相場の他、住民数、移民比率、出身国割合、年齢層、宗教、学歴、職業、居住形態、通勤手段、持ち家率などがわかります。より正確にはオーストラリア統計局のセンサスの情報、さらにオーストラリアの犯罪統計におけるサバーブ別・犯罪別統計などが役に立ちます。最後の犯罪統計はシティの項で説明します。


I機械よりも人間 セキュリティシステムの限界

 一軒家とフラットとでどっちがいいか?というと、これは一概には言えません。ケースバイケースでしょう。集合住宅の場合でも1階や庭が死角になっているとか入ってきやすいところは避けた方がいいです。玄関がオートロックされているセキュリティシステムも絶対ではありません。特に大きな建物の場合、ひっきりになしに住人が出入りするから事実上フリーパスですもんね。去年だったかWaterlooで中国・韓国人留学生のシェアしているマンションに暴漢が押し入った事件がありましたが、あれもバリバリのセキュリティマンションで、しかも高層階だった筈です。あのテのシステムは入ってこられたら脆い。

 ですのでセキュリティを気にするのと同じくらいのエネルギーで、常日頃から隣近所と仲良くしておく方が効果的です。ウチのストリートの場合は、年に一回恒例のストリートパーティがあり、そこで隣人同士親睦を深め、顔見知りを増やします。近所の公園や、ウチの隣の家の前庭などは、幼稚園かと思うくらい近所の子供が大勢遊びに来ています。このようにコミュニティが強いところは、やはり犯罪率も少なく、このストリートでの犯罪といえば、年に一回車上狙いがあるかどうか、敷地内に入ってくるという事例は過去10年以上の間に一回だけ、ガレージでペンキを盗まれたという1例だけった筈です。ちなみに僕の仕事も皆さん自然と知っていて、APLaCを訪ねに来た人も、「日本人かい?じゃあ、あの家だよ」と通りすがりの近所の人に教えてもらったりしています。見てないようで、皆さんよく見てます。

J公的な防犯情報を知る
 ここで、 Neighbourhood Watchや、NSW州警察のCrime Preventionなどの組織やプログラムを知っておいてください。ネイバーフード・ウオッチは、警察主催のコミュニティの防犯草の根組織で、ココにオーストラリア全土のHPがあります。しかし、実際に役に立つのは、右にスキャンして示したように、定期的に郵便ポストに入れられる地元ニュースです。エリアによって違うのでしょうが季刊で印刷され(地元の印刷屋さんがボランティアでやってたりする)、折々の防犯情報と、直近過去の犯罪レポートがあります。そこで「○○ストリートでこんなことがあった」と分かるわけですね。全てのサバーブでやってるわけでもないでしょうが、こういうことをしているサバーブは概して治安はいいです。

 あと、Crime Preventionのサイトには、いろいろなケースの防犯上のコツや注意点が事細かに記されています。「こうやって賊は侵入する」なんて写真入りで書いてあったりして面白いですよ。

 いずれにせよ本気でリスク管理をしたかったら、ここも含めて日本語情報なんか頼りにしていてはダメで、ちゃんと地元警察や防犯組織の英語サイトで勉強すべきです。僕のサイトはそのための橋渡しにすぎません。10年以上住んでるとはいえ、単に住んでるだけの移民者である僕が、話のついでに書いてるような情報よりも、「防犯一筋○○年」というプロの言うことを聞くべきです。日本語情報(ネット、文書&クチコミ)だけで済ませようとしている時点で、既にリスク管理としては努力が足りないと思います。お住まいになるエリアの警察やカウンシルの場所やサイトの情報を一応目を通しておかれるといいですよ。「ほう?」というような発見がありますから。


 さて、では最後に残しておいたシティ危ない論を書きます。次に行く→


1.治安とリスク管理(1) 傾向編
 1-1.概況 オーストラリアの犯罪状況
 1-2.最初は活動重視、徐々に引き締めること
 1-3.周囲のオージーがあなたの警備隊
2..治安とリスク管理(2) 対策編
 2-1.リスク対策基礎力編
 2-2.路上盗犯対策 「スキのない私」の演出
 2-3.被害を最小限に留めるワザ各種
 2-4.住居侵入窃盗系に対する対策
3.治安とリスク管理(3) シティについて
 3-1.シティの構造
 3-2.シティと他のエリアの犯罪発生率比較
 3-3.シティ内部でのホットスポット(危険エリア)
 3-4.歩いていけるからこそ危険
4.治安とリスク管理(4) 補足トピック編
 4-1.Redfern/Eveleigh Stについて
 4-2.デートレイプについて
 4-3.寸借詐欺