語学学校研究/総論
語学学校の選択の基準(その3)
規模の大小はハッキリあります。片や30名内外でやっているところもあれば、600名を越えるところまであります。
大規模校の特長は、スケールメリットにあるでしょう。設備の充実もさることながら、人数が多いからこそできる細かなレベル別のクラス分け、EAPなどの豊富なコースやカリキュラム、バラエティに富んだアクティビティなどが挙げられるでしょう。
小規模校の場合は、小人数ならではのアットホームな雰囲気が特長になるでしょう。単にほのぼのというだけではなく、先生や学校側との距離も短くなりますので、クラスを超えてキメ細かいつきあいやケアが期待できるとでしょう。
中規模校の場合は、その中間ということで、適当にコースも別れており且つ適当にアットホームであるということになるでしょう。
メリットとデメリットは表裏一体であるように、これらのことも良くも言えれば悪くも言えます。大規模校においては、クラス以外に特に知り合いができるものでもなく、まるで駅の構内を歩くように淡白に校内を歩き、授業が終ったらそれで終りということで、マイペースといえばいいですが、味気ないといえば味気ないかもしれません。
小規模校のアットホームさも、いい人ばかりなら楽しいかもしれませんが、話の合わない人ばかりだったらフレンドリーさも単に鬱陶しいだけになりかねません。もし肌合いが合わなかった場合、規模が小さいだけに逃げ場がないということになります。また、どうしても絶対人数の少なさから、クラス編成やレベル分けも荒くならざえるを得ないという面もあります。この点の補って余りあるのは少人数独特のアットホーム感だと思われるのですが、それゆえに学校の空気があなたの肌に合うかどうかが非常に重要なポイントになるでしょう。
規模以上に大事なのは雰囲気です。規模など雰囲気を構成する一要素に過ぎないともいえるでしょう。
英語雑記帳/英語の学習方法−教授法、学校、教師/スピーキングでも詳しく解説しましたが、オーストラリアの語学学校の場合、カリキュラムや教師の資格についてはカッチリと公的に定められており、オーストラリア政府に語学学校として認定されているならば(移民局で学生ビザ発行主体として認定されているならば)、本来学校によってカリキュラムの差があってはならないことになってます。会話中心の学校の場合、それが真に会話だけに特化しているならば、本来なら学生ビザ認定校にはなりえないです。
このようにカリキュラムや教え方に差が無いのだったら、どこの英語学校に通っても同じではないかと思われるかもしれません。しかし、全然違います。カリキュラムが同じであっても、尚も学校選びを厳密にやるべき必要性はあります。
これは、日本の高校を考えてみたら分かると思います。日本の公立・私立の高校は数千あると思いますが、超一流の進学校もあれば、スポーツに強い学校もあり、お金持ちのお嬢様の学校もあるかと思ったら、ヤンキー御用達みたいな学校もあるでしょう。でも、どれもこれも「高等学校」です。つまりは、文部省指定の指導要領に準拠したカリキュラムを行っているわけです。このようにカリキュラムが同じであったとしても、尚もさまざまな個性がありうるのであり、文部省の指導要領どおりだからどこの高校に入っても同じだとは思わないでしょう?では何が違うのか?それは学生の質や方向性であり、全体としての「雰囲気」でしょう。語学学校についても全く同じことが言えます。
実際にあなたが学校に通う場合、学校滞在時間に最も影響を与え、しかも四六時中常に感じさせられる要素は、この「雰囲気」だといって過言ではないでしょう。しかし、「雰囲気」は”データー”という形では表示しにくいです。無理やり言葉にしても、「アットホームな」「フレンドリーな」とか、ありきたりな表現になってしまうでしょう。
ここで、語学学校のような専門単科学校にそんなに雰囲気の差なんかあるのか?自動車教習所みたいにどこも似たような感じではないのかな?と疑問に思われるかもしれません。しかし、雰囲気の差はあります。厳然としてあると言っていいです。また、それが今後のあなたの海外生活に大きな影響を与えます。
まず具体的にどういう雰囲気の差があるのか?ですが、それは一つには学生の国籍構成です。
日本人学生が100%の学校と、10%の学校とでは自ずと雰囲気が違う、学習効率が違うということは何となく分かるでしょう。しかし、日本人比率だけ見ていてもダメです。日本人比率5%の学校でも、同時に中国人比率95%という学校だってありうるわけです。その学校のどの国の生徒が多く来るかは、ひとえに学校の営業力や集客力の強さ、もっと端的にいえばその学校をプッシュしてくれる友好的なエージェントがどの国に多くあるかということで決まってきます。あなたがシドニーに語学学校を開講したとしても、日本にしか販路がなかったら結果的に日本人学生ばっかりになるでしょう。チェコやブラジルの学生を呼んでこようと思ったら、チェコやブラジルに営業展開をしなければなりません。シドニーの語学学校の中には在校生の国籍数30カ国を超える学校もありますが、それらの学校は30カ国以上に営業展開をしていることになり、それゆえ営業経費も嵩み、それが結果として授業料にはねかえってきます。逆にいえば豊富な国籍環境を整えるのもコストがかかるということです。
また国籍数といっても単にバラけていればいいというものではないです。10カ国から人がきているといっても、うち一カ国だけで90%を占め、あとはボチボチというのではあんまり意味がないです。また、ヨーロピアンの生徒はほとんどケンブリッジコースに行き、ゼネラルコースは殆どアジア人、日韓人で占められるというのは共通の傾向ではありますが、それでも程度の差というのはあります。クッキリ二極分化しがちなところと、全体にゆったりとミックスしているところもあります。
さらに、日本人学生内部においても差があります。日本人といってもいろんなタイプの人がいますし、類型があります。シリアスに勉強をしにきた日本人と、「学校なんか適当に行ってればいいや」と思ってる日本人もいます。英語というのはそう簡単に身につくものではなく、かなりハードにやらないとダメだということを骨身に染みて知ってる人もいるし、全く舐めてる人もいます。オーストラリア社会や他の国に人たちの中に積極的に入っていける日本人もいれば、日本人同士固まって”日本人村”から抜け出せない日本人もいます(こっちの方が多いでしょう)。
あなたがシリアススタディを志向するのであれば、シリアスな日本人が多い学校がいいでしょう。雛鳥の刷り込み現象(生まれたての雛鳥に人形を与えるとその人形を母鳥だと思う)と同じで、周囲の人間のスタンダードというのはあなたのこれからのスタンダードを作ります。いろんな国の人たちと住み、ジャパレスではなく地元オージーのところでバイトし、当たり前のようにボランティアをやってるような日本人に囲まれていれば「そういうもんだ」と自然に思うでしょうし、逆に日本人専用の情報センターを回遊し、日本人御用達のパブやカラオケボックスに常駐している人に囲まれていれば、これまた「そういうもんだ」と思うでしょう。僕自身、学校選びの際においては、この点が非常に大きなポイントになると思います。一番最初の「角度」の設定を間違えると、ほんと日常的な積み重ねですから、時間が経過するにつれてとんでもない格差になって現れてきます。
さらに複雑なのは、あなたの英語レベルや性格がこれに絡んでくることです。あなたが既に相当の英語力を持っていれば(例えばTOEICで800-900点クラス)、周囲のいるのはあなたと同じように頑張ってきた日本人学生(ないしアジア系)か、ヨーロピアン学生になるでしょう。また、レベルの差を気にせず、物怖じせずにヨーロピアンをはじめとする他国の学生達の中に一人で入っていける人であれば、自分で居心地のいい環境を構築していくことはできるでしょう。ところが、それほど英語ができるわけでもなく、また平均的な日本人的に引っ込み思案でもあるというあなたの場合、周囲の助力というのは有効な援軍にもなりうるし、逆に足を引っ張る要因にもなりうるでしょう。既に英語が出来る人は、その実力ゆえに、学校のもってるポテンシャルを最大に引き出せるから楽なのですが、英語が出来ない人ほど、周囲の影響が巨大になりますから、いっそう慎重に考える必要があると思います。だが、現実は往々にしてこの逆で、英語が出来る人ほどこれまでの経験で学校や環境の選球眼がいいです。英語が出来ない人ほど知らない哀しさで選球眼が鈍ってたりします。まあ、これは英語に限らずなんでもそうでしょうけど。
だから現地で見学して、そのあたりの雰囲気を見極めるといいよとアドバイスしているわけですが、そんなもん見て分かるのか?という疑問もあるでしょう。見て全てを判断するのは難しいでしょうけど、ある程度は分かりますし、コツもあります。例えば、教室の授業風景を見学して、「あ、彼は日本人だな」とあからさまに浮き上がってみえるか、アジア系学生はみな同じに見えるかどうかです。現地生活も長くなると、地元に溶け込んでいってる日本人ほど、ファッションや物腰などでもあんまり日本人には見えなくなります。「地元のアジア人」になります。でも地元に溶け込めていない日本人は、どうしても日本のときの雰囲気を引きずるのですね。それがなんというのか、見てくれの差、オーラの差になって現れます。口で言ってると嘘っぽく聞こえるかもしれませんが、結構見たらわかりますよ。顔つきなんかも全然違うし。なお、余談ながら、「地元民っぽく溶け込む」というのは治安上も重要なファクターになると思います。カモに見えませんから。
あと、コツとしては見学する時間ですね。昼食時などに見学すると、どういうわけかアジア人学生ばかりが学校の残ってたりします。アジア人はお弁当が好きな傾向があり、学校に残って友達同士でお弁当を食べたりしてるのですね。でも、ヨーロピアンはカフェが好きで、どっとと学校の外に出て行ってしまいます。そしてヨーロピアンの学生は、そのルックスゆえに、一歩学校から出ると地元のオージーと殆ど見分けがつきません。だから、昼食時や休憩時にいくと、実際よりもアジア系学生の比率が高いように感じたりしますから、騙されないようにしてください。
雰囲気というのは、何も国籍構成だけに尽きるものではありません。
他にも学生のケアが行き届いているところと、あんまり行き届いていないところの差もありますし、ケアの方向性が違うということもあります。ケアの方向性ですが、例えばヨーロピアン(特に西ヨーロッパ系)の学生に対するケアはたくさん遊ばせてあげるということだったりします。学校企画のサーフィン教室とか、エクスカージョン(遠足)が目白押しに沢山あるということですね。しかし、アジア系学生に対するケアは、もうちょっとベーシックな生活全般を安心して過ごせるようなきめの細かい配慮だったりします。一例を挙げますと、ホームステイのトラブルでも、自己主張の強いヨーロピアンの場合ハッキリ面と向かってホストに文句を言いますし、自分で喧嘩したり話し合ったりしてなんとかします。でも、日本人や韓国人などはどうしても遠慮という文化があるために、なかなか面と向かって言えなかったりします。そこで、学校のステイ担当者が辛抱強く、しかも出来れば母国語で、聞いてくれ、対処してくれた方がいいわけですね。
ホームステイのトラブルでも、英語で相談するのは大変ですよ。法外な料金を請求されたとか暴力をふるわれたとか”分かりやすい”ケースだったらまだしも英語で言いやすいです。でも、そんなケースは滅多に無く、多くは微妙な相談だったりします。「一応ゴハンも出してくれるし、味もそこそこ食べられるし、話し掛けたら返事もしてくれるし、フレンドリーっちゃフレンドリーなのかもしれないけど、なんか、こうビジネスライクというか、お金のための仕方なしにやってますというか、心から打ち解けてないというか、、、や、これは自分が心を開いていないからかもしれないし、ステイなんかこんなもんだって言えばこんなもんかもしれないけど、なんか、こう、もっとハッピーで心温まるような感じになってもいいんじゃないかって気もするし、、、、高望みなのかもしれないけど、そこらへんぶっちゃけた話どうなんでしょうね?」みたいな感じだと思うのですよ。上手くいえないけど悶々としている、みたいな。でも、このあたりのニュアンスを英語で正確に喋れますか?こんなことが喋れたらもう学校なんか行かなくてもいいんじゃないかって気もするのですよ。それを、カウンターで、「だから、何が問題なのかさっさと言いなさいよ!」"Then, what' s your problem?"とばかりに英語で切り口上で言われたら、何も言えなくなってしまうって部分はあると思うのですね。
こういった今ひとつ現地の西欧系文化に馴染めずに悶々、オドオドしてしまうアジア系学生にとっては、できれば母国語で、ゆっくり相談できる環境があるというのは、ひとつの救いになるでしょうし、それが学生サービスの内容を構成すると思います。しかし、こういった学生サービスの方向性は、それぞれ学校によっても違いますし、それは主たる学生の国籍とか文化性によっても左右されるでしょう。
かといって、なんでもかんでも学校が手取り足取りやってくれると、今度は学生が過保護になって甘ったれてくるという逆の問題も出てくるわけです。「あれやって、これやって」と甘ったれた学生がベタベタやってられたら、環境として鬱陶しいってことにもなりかねません。ある程度、「自分のことは自分でやりなさい」と突き放している学校の方が、学生も自立せざるを得なくなり、ビシッと一本スジの通った空気がみなぎって気持がいいってこともあるでしょう。
どんな人でも超ハードな環境だったらメゲますし、超甘い環境だったらダレるでしょう。でも、その中間部分において、個人差というものはあると思います。ある人にとっては、このくらい突き放してくれた方が気持がいいって感じるでしょうし、それでは自分にはハードすぎると感じる人もいるでしょう。甘ったるくてやってられないって感じる人もいれば、これが丁度いいっていう人もいるでしょう。さらには、「今の自分VSなりたい自分」という構図もあります。確かに今の自分の感性からしたらこのくらい優しい学校が良いのだけど、でもそこで甘えてしまいそうな自分がイヤだから、敢えてちょっと厳しい環境で自分を育てたいって人もいるでしょう。はたまた、自分はおだてて乗せてもらった方がよく伸びると思う人もいれば、ビシバシやってもらった方が伸びるという人もいるでしょう。
ですのでこのあたりは「好み」なんですね。生理食塩水濃度のように、人によって「丁度いい」濃度は千差万別です。どの学校のどの空気が一番自分に合っているか、それはアレルギーのパッチテストのように、実際のその空気に触れてみて、「あ、いいな」「なんかヤだな」と感じるかどうか実験してみるのが一番いいとは思います。
個人差は、もう歴然としてあります。これはこれまで数百人の人をサポートしてきた経験でいっても言えます。こちらに来るときに、夫婦やカップルで来られる人、友達同士で来られる人もいます。最初は「同じ学校を」とかおっしゃるのですが、実際に学校めぐりをして決断となると、往々にして結論が分かれて、それぞれ別の学校に行ったりされます。友達であれ、夫婦であれ、個々人の感性はやっぱり違うし、その違いこそがあなたの個性でもあります。それは大事にされたらいいと思います。
雰囲気の違いはまだまだ沢山要素がありますが、全部を書ききれるものでもないのでこのくらいにしておきます。
またこういった学校間の雰囲気の差は、このHPでもとりたてて書いてません。描写して描写しきれるものではないからですし、メールなどでは出来るだけ分かりやすく比喩を交えて説明しようとしていますが、それでも実際に見学されると「なーるほど、そういう意味だったのですね、見て初めて意味がわかりました」と口を揃えたように皆さん言うのですね。ですので、言葉で伝えきれるものではないです。自分の表現の限界を思い知らされています(^^*)。また、この種の雰囲気は、極端な話、時々刻々と変わります。僕も毎週のように学校めぐりに同行しているわけですが、「うーん、最近ちょっと傾向が変わってきたかな?」と思うこともあります。出来るだけ新鮮な状態でごらんになるといいです。見学して、その数日後から学校が始まるくらいでいいです。
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