よくある質問と回答


オーストラリアへ子連れで留学したいのですが・・・

(99年3月8日)



Q:子供を連れてオーストラリアに語学留学したいと思っていますが、可能でしょうか? もし可能なら、予算はどれくらい見ればよいのでしょうか? また、注意点などがあれば教えてください。



A:(福島の回答)

    可能か不可能か?と聞かれれば、可能です。実際、子連れ留学をされている方もいますし、APLaCでも子連れおかあさんの生活体験サポートや、家族での留学サポートもしたことがあります。

    ただ、現実は非常に厳しいと思っておいた方がいいです。成功するかどうかはその方の目的意識次第でしょう。たとえば「英語をマスターして将来は大学院に行くんだ!」みたいな目的がハッキリある方は強いですが、「なんとなく海外生活を夢みて・・」みたいな甘い幻想を抱いていると、挫折しがちです。

    あるいは、そんな具体的な目的でなくとも、「異文化の中で生き抜くという体験をしてみたい」ということなら、それはそれで価値あろうかと思います。とにかく、「修行」くらいのつもりで、「なにがあっても一人でやり抜くぞ」という根性が備わってないと難しいです。

    なにがそんなに大変か?というと、まず英語力がないということ。英語力をつけるために語学学校に通うわけですが、その前に生活周辺の手配をすべて自分でしなければならないわけです(シングルならホームステイやシェアという手もありますから、生活周辺の雑事をある程度回避できますが)。

    家探しに始まって、電話や電気の契約、家具や生活必需品の調達等々。生活できるレベルになるまで、本当に一苦労です。
    その上、思いもかけないトラブルが頻発するものです。電話の契約は済んでるはずなのに電話がつながらない、家の契約時に説明されたのと条件が違う、頼んでおいた家具が届かない、買ったばかりの冷蔵庫が壊れた・・・。特にこっちは交渉社会ですので、小さなトラブルは頻発しますが、交渉すればうまいこと応じてくれることが多いです。これ、全部一人 で、しかも英語でこなさねばならない。身振り手振りでなら何とか通じるとはいっても、大抵は電話でのやりとりです。いきなり英語で電話して交渉する実力と度胸のある方ならいいでしょうが。

    さらにお子さん連れの場合、保育所探しそれ自体も大変ですが、保育所でなにか起これば、すぐ駆けつけて先生と話し合ったり、時には交渉したりしなければなりません。病気になればお医者さんのお世話にもなるでしょう。生活一般のことにしても、自分だけならガマンすれば済むことも、お子さんのこととなればそういうわけにはいかないこともあり、一人で生活するより当然要求水準は高くなります。

    もちろん、出来るだけ英語に触れる機会を減らすべく、日本人が経営している不動産屋、家具屋、医者、保育園等を極力利用するという方法も考えられます。でも、完全に日本語だけで生活するのは不可能です。先日もお子さん連れのご一家がシドニーに語学留学でやってこられたのですが、日本人の不動産屋で賃貸契約を結んだところ、契約以降は不動産屋は関係ないため、その後のトラブルは大家さんと英語で交渉することになりました。




    シドニーの語学学校は過当競争気味なので、どこも独自の特徴を出そうと努力しているので、中には面倒見のよい学校もあります。特にスペシャルティなど、カウンセラー自らが生活の段取りを整えるところから面倒見てくれたり、細かなトラブルにも出来るだけ対応してくれるようです。それでも限界ありますから、最後は自分自身で何とかするっきゃない。その腹括りがあるかどうかが分水嶺になるような気がします。

    今までサポートしてきて感じるのですが、「誰かが何とかしてくれる」という甘えのある人、他伐的で文句言いの人、「日本じゃこんなことないのに」と日本と同じ環境を求める人、こういう人は非常に難しい。サポートする立場の人もだんだんいやな気持ちになっていくでしょうし、現実的な問題が起こって挫折するのも時間の問題という気もします。

    一方、自分で出来るところまでは何とか自力でやってみる、それでどうにもならない時だけヘルプ信号を出す、こういう独立心の旺盛な方は、うまいことやっていきますし、結局英語の上達も早いです。

    それから、もうひとつ、楽観的な人はうまくいく傾向がありますね。もう毎日のように落ち込むような出来事はあるわけですので、その度にいちいち落ちこんでいたらキリがありませんから。もっとも現地で生活するうちに、皆さん逞しく(図太くとも言うが)なっていきますけど。

    あと、当たり前のことですが、出発前にできるだけ英語力を鍛えておくことです。当然こっち来てからの方が英語力は伸びますが、最低限の英会話力くらいは最初からないとキツイです。文法や読み書きよりも、リスニングや簡単な会話に重点を置いて勉強しておくことをオススメします。語学学校なんか行かなくたって、英語力を伸ばす方法はいくらでもあります。本屋に行けば英語教材なんか死ぬほど並んでますし、NHKのラジオ講座だけでも真面目にやればかなり伸びますよ。



    子供の英才教育が目的の方へ


    最近は、英語英才教育を目的に渡豪をお考えの方もおられるようです。これは個人的な意見に過ぎませんが、動機がご自身の向上欲求ではないのだとしたら、やめた方がいいと思います。

    基本的に子連れ留学ってのはお子さんにとってのメリットもあるでしょうが、デメリットも考慮した方がいいです。それでも「自分の可能性をあきらめたくない」という方が、お子さんに負担をかけるのを承知の上で、敢行することだと思います。

    お子さんへのデメリットを次に挙げます。

    @お子さんの成長に伴う健康管理に対する不安

    かかりつけのお医者さんは日本人を選ぶとしても、子供のことですから急な病気や怪我で近所の病院や救急病院に飛び込まねばならないことも起きますよね。その時、おかあさんがちゃんと状況を英語で説明できないがために、間違った処方をされてしまう可能性もないことはないです。また、予防接種や投薬にしても、現地の情報を入手して、おかあさん自身が受けさせるのどうか判断しなければなりませんし。

    Aお子さんの精神的ストレス

    一般に子供は小さいほど、新しい環境に慣れるのは早いでしょうが、個人差はあります。小学校にあがる前のお子さんなら、さほど問題なく現地に溶け込むことができるでしょうが、それでも最初の一定期間は(子供によってまちまちですが、今まで聞いた範囲では、1週間〜3ヶ月)不安定な状態になるようです。また、小学校以上になると、言葉がわかるようになるまでは地元の子供に馴染むのはなかなか難しいようです。子供といえども、小さなカルチャーショックはありますし、異なる環境に馴染むまではストレスも生じるでしょう。

    また、おかあさんも慣れない海外生活で不安定になることと思います。親の精神状態って子供に強く影響を与えてくれますよね? さらに、ご主人を日本に残していかれる場合、「おとうさんと離れること」による不安定感も影響するでしょう。
    帰国すればした時にも同じようなストレスが生じるかもしれません。今度は日本の友達とうまくいかなくなるとか。

    1〜2年など長い期間ならまだしも、1〜2ヶ月でころころ環境が変ってしまうのはお子さんにとって本当に望ましいことでしょうか?

    B日本語学習の遅れ

    これは単に日本語を学ぶスピードが遅れるということだけを指しているのではありません。お子さんは日本語を学び取ろうとしている最中です。言語という概念が出来つつあるということは、その人間の世界観が言葉を通じて構築されつつあるということでしょう。この時期に中途半端に日本を出て、英語環境に入ってしまうと、子供さんの言葉の概念は混乱します。

    もっとも、長期に渡って日本語+英語という環境で生きていくのなら、一生自分の母語は「日本語+英語」になるわけですし、周囲もそういう社会になってますからそう大きな問題ではないのですが(問題は問題だと思うけど、対処法がそれなりにある)、「日本で暮らす日本人」として日本語体系がきちんと確立できないうちに、他の言語に触れさせることの弊害も考えておいた方がいいと思います。たとえば、オーストラリアで暮らしている日本人夫婦の子で、「えんぴつズ」(複数形のSが日本語にも付いちゃう)という子がいます。子供にとっては、英語と日本語の違いなんか区別つかないんですね。

    C受験タイミングへの疑問

    小さいうちに覚えた言葉は使わないと忘れます。帰国直後には英語ペラペラでも、その後英語を使わない生活をしていたら、1年もしないうちに真っ白に忘れてしまいます。小さいうちは吸収も早いけど、忘れるのも早いものです。
    ですから、特殊な教育機関への受験をお考えなのだとしたら、帰国してすぐに入試があるならともかく、ブランクがあるんじゃ、ほとんど意味ないです。

    以下は私の言語教育観ですが、参考までに。

    私は言語というのは努力次第で誰でもいつでもマスター出来るものだと思います。たしかに小さいうちから親しんでいれば(それも、継続しなきゃ意味ないですが)、発音や言葉の概念、思考方法に馴染みやすいといったメリットはありますが、大人になってから勉強すれば立派にモノに出来ます。最後まで残る課題が「発音」ですが、別に完璧な発音じゃなくてもコミュニケーションは出来ます。

    しかも、英語は世界共通言語みたいになってますけど、共通言語になってるのはネイティブの英語じゃなくて、ブロークン・イングリッシュです。オーストラリアにも世界各国から移民が集まってますから、実際には各地訛りのブロークン・イングリッシュが公用語になってます。ほとんどの移民は英語教育も受けずにやってきて、皆さん実地で苦い体験を繰り返しながら学んでいきます。そして、その言語でコミュニケーションして社会が成り立ってる。英語ネイティブのオージーが就職難といわれる中、企業のトップで活躍している人の中には移民一世だっているんです(ちなみに英語ネイティブじゃない英語教師が、オージーに英語を教えていたりもします)。つまり、小さな時から英語に親しんだメリットよりも、大人になってから勉強して身につけた英語の方が実社会では数段使えるものだということです。

    私らは英語ネイティブではないので、どんなに頑張っても英語ネイティブと同じレベルに英語を使いこなすことは不可能だろうと思う反面、努力した獲得した英語力に関しては、オージーに負けないぞという自負もあります。言語というのは、母語の能力に比例するようで、日本語がきちんと出来てる人は英語もかなりのレベルまでいきます。最近、オーストラリアでも若い人たちの英語能力の低下が社会問題化していまして、確かに読み書きがキチンと出来ないオージーも結構います。実際、知り合いのオージーが書いた文章見て「これなら私の英語のがマシだぞ」と思うこともあるくらいです。

    語学は本人がその気になって勉強しないと伸びないものです(たとえ母国語であっても)。日本人にはどうも「英語コンプレックス」があるようで、「この子にだけは」という親心から、英才教育に英語を取り入れようとする親御さんも増えているようですが、それって「外国語を学んだ経験のない親が、英才教育産業の食いものにされているだけ」じゃないかと気になります。

    小さいうちに英語を強要するよりも、小さいうちから異文化に興味を持たせ、大きくなってから「英語を勉強しよう」という自発的なモチベーションを引き出してあげることの方がずっと大事だと思います。もっとも効果的なのは、親御さん自身が「英語を勉強したことによって、こんなに世界が広がったんだよ」という実体験をもつことでしょう。その方が子供にとってはよほど説得力があるんじゃないでしょうか?

    それに、お子さんが社会で活躍する時代には、英語じゃなくて中国語あたりが世界共通言語になっているやもしれません。小さいうちにから特定の言語を教えるより、時代の変化に順応できる柔軟性と新しいことを吸収しようとする意欲のある人間に育てたいと思いませんか?

    ちなみに、自分自身の体験を通して思うのは、「語学は努力と根性でどうにでもなる!」ということ。そして、無謀にも渡豪してきた結果得たものは、英語力そのものというより、「世界にはこんなに頑張って生きてる人たちがいるんだ」「人間何やったって生きていけるもんだ」「人間みんな同じなんだ」という世界観の広がりの方が大きかったんじゃないかと思います。



    精神論ばかりが長くなってしましました。でも、一番大事なことだと思います。
    ここまで「大変だよ〜」と脅かされながらも(^^;)、「よし、やってみよう!」と思われる方は、次に読み進んでください。





    具体的な段取り


    ビザ

    3ヶ月以内なら観光ビザでもいいですが、それより長期の場合は、学生ビザを取得します。学生ビザは原則的に語学学校(語学力があればビジネス学校等他教育機関でもいい)に入学手続をし、健康診断で問題がなければ、取得できます。ビザ申請の際、「扶養者同伴」であることを明記すれば、お子さん連れで渡航できます。
    なお、パスポートも「併記する子」が掲載したものを用意する必要があります。

    語学学校

    語学学校への入学手続きは、お一人での手続き方法と同じですし、当然授業料等も同じです。但し、お子さん連れで留学されることは先方に参考までに知らせておいた方がいいでしょう。また、「保育園探しや住居探しを手伝ってもらえるか?」といった質問は、学校を選ぶ段階でいくつかの学校に確認しておいた方がいいでしょう。

    住居

    シドニー近郊の賃貸物件は安くはありません(2BRで週250-300ドル)。また、最短6ヶ月からの契約がふつうです。お子さん連れで6ヶ月未満の留学をお考えの場合、住居に関しては代替案を考えねばならないでしょう(長期滞在型のホテルを利用する、ホームステイを利用する等)。

    子供の教育

    体系だったことまではよく分かりませんが、今までサポートしたケースに即した体験談程度のことならお話できます。

    公立のデイケアセンター(託児施設)、幼稚園、小学校は、そのエリアに住んでいる人ならばビザの種類に関係なく基本的には受け入れてくれるようです。ただし、空きがない場合は他の施設をあたってみることになります。また、小学校は義務教育なので無料で受け入れてくれるようですが、デイケアセンター、幼稚園については有料になるようです(託児費用は1日40ドル前後が相場ですが年々上昇しています)。

    最近、学生ビザで小学校にあたる年齢のお子さんを連れてくる場合には、学生ビザ申請前に、地元の学校で受け入れてくれることを証明することが条件付けられたそうです。が、実際には現地の小学校ではその居住区の学校が受け入れてくれますので、無意味な条件だなあと不思議に思っています。
    以前にあったケースでは、学生ビザを申請する前に下見で渡豪された折、居住することになりそうな地域の小学校を訪ね、校長先生にお願いしてその場で一筆書いてもらったことがあります。


    なお、小学校の費用ですが、その昔はNSW州の場合、無料だったのですが、現在では有料になっています。
    また、その子がどういうビザで滞在しているかどうかによっても料金が違います。すわなち観光ビザで滞在しているか、子供本人あるいは家族の誰かが学生ビザを取得しての滞在であるかどうかです。

    詳しくは、NSW州の教育省(NSW Department of Education and Training )のホームページでご確認ください。

    以下、上記ページから適宜抜粋してみます。

    Student Visa Holders: Fees and Payment
     これはお子さん自身が学生ビザを保持している場合についての規定です。子供さん自身が留学する場合ですね。
      Fees in 2005
      Years 11 and 12 A$11,600 per year
      Years 7 to 10 A$9,600 per year
      Years 1 to 6 A$8,600 per year

    Temporary Resident and Visitor Visa Holders
     ここでは、オーストラリア国民や永住権保持者以外の「一時的住人(テンポラリーレジデント)」場合、どういう人が入学できるのかというカテゴリーが記載されています。

      Students holding a Temporary Resident Visas (including Dependant Student Visa holders and Bridging Visa holders) and Visitor Visas have the opportunity to study at a New South Wales (NSW) government school. Students holding these visa enrol through the ISC's Temporary Visa holders Unit (TVHU).
      010-099 Temporary: Bridging visas while decision made on application for other substantive visa
      300s Temporary: Provisionals applying for permanency
      400s Temporary: Business/occupational/cultural/humanitarian
      500s Temporary: Dependents of International students  (親御さんが学生ビザを取得した場合のお子さんのケース)
      600s Temporary: Visitors (観光ビザで来た場合)
      900s Temporary: Electronic Travel Authorities (ETAs)  (同じく観光ビザ、ただしETASという電子ビザの場合=今では殆どこれですけど)

    Temporary Visa Holders: Fees and Payment
    ここではこういったテンポラリーレジデントの学費について記載されています。

    Temporary Visa Holders: Fees and Payment
    Most students holding a Temporary Residents Visa or Visitor Visa are required to pay the Temporary Visa Holders Education Fee and an Administration fee.

    Fees for students who hold Temporary Resident Visas or Bridging Visas are payable twelve-months in advance.
    (親御さんが学生ビザを取得しているケースがここに当ると思われます)
      The current fee for a 12 month period are:
      Years K-6 Primary School A$4,500.00
      Years 7-10 Junior High School A$4,500.00
      Years 11-12 Senior High School A$5,500.00
    Students holding a Visitor's Visa are restricted to 12 weeks study per visa. Fees are charged on a pro-rata basis for the period of enrolment.
    (観光ビザで滞在している場合の費用がここに該当するでしょう。観光ビザの滞在期限3ヶ月に対応してます)
      The current twelve-week fees are:
      Years K-6 Primary School A$2,580.00 (A$215.00 per week)
      Years 7-10 Junior High School A$2,880.00 (A$240.00 per week)
      Years 11-12 Senior High School A$3,480.00 (A$290.00 per week)


    予算


    仮に滞在期間を1年として算出してみましょう。
    お子さんと二人でシドニー郊外の1BRアパートに住み、小学校未満のお子さんを預けながら語学学校に通い、自炊して節約し、旅行もせず清貧に暮らした場合のざっくばらんな予算です。

    • 住居費:$200×52週=$10400
    • 授業料:$250×48週=$12000
    • 生活費:$200×52週=$10400
    • 託児費:$200×48週=$ 9600

    ざっと4万ドル、350万円前後でしょうか。これ以外にも、保険、医療費、電話代など、思わぬ出費はあろうかと思います。結構かかりますね。




    それでも「やってみよう!」と思われる方は、ご相談に乗ります。EMAILにてお問い合わせください。



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