よくある質問と回答
福島記:97年6月11日初出、2010/08/28田村補訂



オーストラリアで実際日本人が就職できる職種と、
その給料について詳細情報も含めて教えてください



Q:オーストラリアにおいていろいろ仕事があると思いますが、実際日本人が就く職業はどれくらい給料がでるのでしょうか。具体的な職業における具体的な金額を求人情報や実例を含めておしえてくだされば幸いです。

 お尋ねの「実際日本人が就く職業の給料」についてお答えしたいと思います。が、私たちは特に仕事斡旋をしている人材紹介の会社ではないので、正確な知識・データはありません。まがりなりにもシドニーにやってきて就職活動を経験した者の「経験談」として聞いてください。
 また、「職業」といっても範囲が広く、分野によっても就職のしやすさ、待遇などは異なります。以下、もっぱら一般事務を念頭において概括的な話をします。

 「シドニーで仕事を探す方法」でも書きましたが、シドニーで英語がパーフェクトではない日本人が就職しようとすると、どうしても日本語を武器にした仕事になってしまいます。おそらくは、システムエンジニアとか、シェフとか、手に職・スキルをもった人たちならば、英語があまり出来なくても技術で通用する部分がある等、事情もまた違うと思いますと思いますが、特にスキルのない文系人間の場合は、そうもいきません。

 日本語が武器になる職種といえば、日本人と関係のある業種になります。結果的に多いのは、観光業界(免税店、ツアーオペレーター、ツアーコンサルタント、航空会社、ツアーガイド、ホテル、日本食レストラン等)、日系企業の支店、商社、金融関係になるでしょう。

 尚、日本語を武器にした職業としてすぐに思い付くのが日本語教師ですが、今や市場は飽和状態で、あまりオススメできません。よほど田舎でない限り、フルタイムのポジションは空いていないので、労働ビザをスポンサードしてもらった上での就職は実際には難しいと思った方が良いでしょう。もっとも、オーストラリアで合法的に労働できるビザを持っていれば(但し、雇用者指名の労働ビザではその会社以外で働くことは禁止されている)、アルバイト程度の仕事(日本語学校のパート教師、家庭教師等)、さらにボランティアなら可能でしょう。

   給与水準ですが、もちろんポジションによって開きがありますが、オーストラリアでの給与は一貫して上がり続けており、2010年現在となっては日本よりも遙かに高くなっています。例えば、MyCareeaという就職サイトのデータをみると、09-10年のラフな平均年収は約90K弱。9万ドル。ドル100円換算で平均年収900万、ドル80円換算でも720万です。この項を最初に書いた97年時点では、「フルタイムの平社員レベルでだいたい年収2万5千ドルくらいから3万ドル(30Kと表示する。K=1000の意味)くらいでしょう。マネージャークラスで、3万5千ドルから4万5千ドルくらい。年収5万ドルといったら、こっちではかなりの高給取りというイメージです」なんて書いていたのだから、いかに伸びているかです。逆に言えばいかに日本が伸びていないかでもあるのだけど。


実例検証<求人広告>


<新聞の部>

 以下の項目は、毎週土曜日のシドニーモーニングヘラルドという新聞の求人欄から"Japanese"の部分を抜粋して解説したものです。現在は、My Careerで新聞広告検索が出来ますので、いちいち新聞を買うまでもないです。10年前の古い広告で給与水準などはかなり違うのですが、しかし解読の仕方などについては今もそう変わってないと思われますので、そのまま挙げておきます。


★JAPANESE TRAVEL AGENCY require an Assistant Operation Manager to be based in its Sydney branch office. The successful applicant will be fluent in both written and spoken Japanese and English with an in-depth understanding of both Japan and Australia and their cultures and business practices. The position required at least 3 years experience in the travel/tourism industry including at least 3 years at a managerial or supervisory level. You will be responsible for 25 staff and for direct liaison and negotiations with travel agencies in Japan and local service suppliers. Base salary $40K. plus annual performance bonus and statutory entitlements. Applications should be in writing and forwarded to : **********.


これは現地オペレーターのアシスタントマネージャーのポジションですね。給料は年収4万ドル+業績に応じたボーナスとかなりいい方ですが、条件をみるとかなり厳しい。旅行業界でマネージャークラスの経験が少なくとも3年以上とあります。 日本語・英語能力、そしてマネージメントスキルもかなり高レベルを要求されていますね。


★JAPANESE CUSTOMER SERVICE ASSISTANT. We are a busy mail order company located in North Sydney. We require a Japanese speaker/writer to assist in our customer service dept. The successful applicant will be proficient wit Japanese word processor, can compose business letters in Japanese. Be familier with Japanese cities and prefectures. Must be Australian resident or hold permanent Australian working visa - working hour M-F 9am - 1pm (20hours) plus additional hours as demand warrants. - $13.00 per hour. Full resume and references should be faxed to *****, **********(address) Fax:***-****


これはパートタイマーの募集。時給13ドルですから、いい方だと思います。月曜から金曜まで一日4時間ずつ週5日間の勤務プラス、希望があればもっとやらせてもくれるという。仕事は日本宛にビジネスレターを書くことなので、それなりの日本語能力と日本語ワープロを使えることが条件、さらに宛名書きをする関係でしょう、日本の都市や県の地名にも慣れている人がいい、とあります。但し、永住権保持者に限るとありますので、ビザのスポンサードはしないということでしょう。


★Office Clerk in int'l company in CBD. Excel, oral Jpn and strong interest in Japanese. $24K plus


上記2つに比べると一段と省略語だらけの色気のない求人広告です。都心にある(CBD=central business district)国際企業の事務員さん募集。エクセルが使えて、日本語の会話ができる人、日本に興味を強く持っていることが必須条件(ess=essential)。つまり、日本語のできるオーストラリア人を望んでいるようです。「日本人募集」といったように国籍や性別を条件に求人広告することは法律で禁じられているため、会社側がオーストラリア人が欲しい場合、「英語はネイティブレベル、日本語は会話程度」といった表現で書かれていることが多いので、求人広告を読み続けているうちに、オーストラリア人と日本人のどちらが欲しいのかが読み取れるようになってきます。


★Outbound consultant in int'l co. in CBD. Jpn and tourism exp. adv. Approx. $25K.


旅行コンサルタント。日本語と観光業界経験があるとアドバンテージ(adv=advantage)になる、ということで、未経験でも雇ってもらえるニュアンスがあります。ただし、給料はあまりよくないですね。


★Assistant Manager in int'l fin. inst. in CBD Fl Jpn (oral and written), tertiary edu. and sound exp. in relevand ind. ess: Legal or acct background adv. up to $70K


金融会社のアシスタントマネジャー。給料がメチャメチャいいので惹かれますが、よーく読むと、これオージー向けの求人ですね(「日本語が流暢」とある−fluentという形容詞は普通ネイティブには使わない)。大学卒でアメリカ型キャリアアップ指向のオーストラリア人マネジャーを求めているような感じがします。現実的に現地採用の日本人にこんな大金払ってくれる会社なんてまずないです(日本からの海外赴任なら話は別ですが)。

PS:なお、現地での求人状況がどうなっているかですが、世の中便利になったもので、現地で新聞読まなくたってインターネットでほぼフォローできます。便利なところでは、オーストラリアの求人用ネット或いはクラシファイド・アド(求人の他、売ります買いますなど募集広告集)をあつめたリンクページがあります。検索付きのサイトもありますので、ご自分の職域あるいは”japanese”あたりで検索すると、求人状況や年収など大雑把な感触が掴めるでしょう。いろいろあるようですが、 たとえばSEEK Job searchなんかがあります。




<日本人向け地元紙の部>


 現地在住の日本人のコミュニティペーパーは数多くあり、殆どがWEBになっていますので、求人も簡単に探せるようになってきました。幾つかピックアップしてリンクを貼っておきます。

 日豪プレスの求人広告
 JAMSの求人広告
 CHEERSの求人広告


 掲載されている仕事のほとんどが、ワーキングホリデーメーカーや学生さん向けのアルバイト的なパート、カジュアルジョブですが、中にはフルタイムの求人もありますし、マレに「ビザのスポンサードします」と明記した求人広告も見掛けます。



オーストラリアの給料は安い?!


 こちらでは就職の際に給料は年収で契約します(パートの場合は週給または時給で契約する)。たとえば年収5万ドルといえば、ドル80円のレートで400万円程度になります。支給は2週に一度("fortnight"という)の会社と月イチの会社がありますが、年収5万円の場合、税金引くと手取りで月額約30万円弱になります。しかも、ボーナスはありません。

 10年前のこのコラムは「いかにオーストラリアの給料が安いか」というテーマであり、「愕然とするほど少ない、というか超貧乏になりそうな気がしませんか?」などと書いていたのですが、今は話が全く逆になりました。しかし、それでも以下の部分は現在なおも通用します。

 私(福島)の場合、日本からこちらに移住してきて、日本でもらっていた給料のざっと半額になりました。それでも生活の質はあがりました。別に贅沢三昧できるようになったという意味ではなく、広くて快適な部屋に住み、おいしい食事がお腹いっぱい食べられて、仕事上のストレスや残業がほとんどなくなったということです。実際、食材は安いので、食費に関しては日本の数分の1で済むでしょう。シドニーの家賃は安くはありませんが、日本で支払っていたのと同じだけ出せば、広ーい家に住めます。仕事は日本社会のようなうっとーしさはないし、残業もほとんどないので(ある会社もありますから一概には言えませんが)、かなり規則正しい健康的な生活が出来るわけです。

 結果的に、ストレスがたまらないので、カラオケやら飲み代に消えていた交際費・夜遊び代がほぼゼロになりました。ファッションも流行というものがないので、自分の気に入った服を好きに来ていればいいので、洋服も滅多に買わなくなりました。週末のレジャー費用もかからないし(ガソリン代だけで近所の気持ちのいい公園に行ける)、病気になっても国民保険で85%カバーされています。質素に生活しようと思えば、年収3万ドルでもそれなりに貯金もできます。

 というわけで、この国では収入が少なくても十分豊かに暮らしていけるわけです。

 もっとも、思い切りビジネスやって大金を動かして、大穴狙いで儲ける!ということをやりたい方には不向きです。確かに10年前に比べれば給与水準も上がり、オージーも良く働くようにはなりました。しかし、仕事に対する真摯さや、「全知全能をかけて」みたいな部分は相変わらず乏しいです。2010年現在であっても、同じ給料を出すなら日本人を雇った方が真面目にやってくれそうな気がしますね。オーストラリア人でも、仕事で自己実現!ってアンビシャスなタイプの人間は、アメリカや欧州に行ったりしますもん。もちろん、そういう激烈な職務もオーストラリアにはありますが、英語力やコネの問題で、いきなりやってきた日本人がそこまでたどり着くのが難しいです。

 だからこそ、それが盾の両面です。そこまでガリガリ仕事をしないカルチャーのあるのがオーストラリアのいいところでもあり、逆にそれだと物足りない人もいるでしょう。



※尚、オーストラリアでの就職は、移住・ビザ問題と密接に関わっています。当サイト内にある以下の関連ページを参照ください。


《インデックス》

●トップページ

●ビザの問題をクリアする!

●イチにもニにも英語力!!

●基本的に過去のキャリアがモノを言う。

●未経験者でも入り込めるチャンスがある職種

●時期によって変わる雇用情勢

●日系企業か、地元企業か

●仕事の探し方
(人材紹介会社リスト)

●履歴書、命。
(英文履歴書サンプル)

●面接の心得

●やっぱり、仕事するなら「自分の会社」?
参考:シドニーでの就職・仕事に関するページ

エッセイから〜
オージーの仕事観を探る(96/12/1)
下手な英語で仕事するコツ(97/5/29)
ESSAY 278/「外国人労働者」とは我々のこと〜「海外で働く」ということに過剰な幻想を抱かないために(06/10/02)

体験レポート
特別寄稿体験談 (by Kさん)/アルバイト先との給与支払トラブルを労働委員会を通じて解決した実例レポート
日本語教師アシスタント・ボランティア(インターン)

実戦ワーホリ講座
8−1.仕事をしよう(その1) 仕事の効用 
8−2.仕事をしよう(その2) 仕事の探し方 日系〜ジャバレス編
8−3.仕事をしよう(その3) 仕事の探し方(2) 日系その他編、ローカル編
8−4.仕事をしよう(その4) 英文履歴書・実戦例
9−1.ラウンドのススメ(その1) ラウンドとは何か?都会定住との比較
9−2.ラウンドのススメ(その2) ラウンド先での仕事

◆コラム/間違いだらけの留学&ワーホリ生活
 7.ジャパレスで働いても英語が伸びない?
 8.タックスリターンで税金が返ってくる?

さらに関連:オーストラリア移住に関するもの
オーストラリア移住について INDEX
第一の関門:VISA
ビザの原理原則/技術独立移住永住権/頻繁に変わるビザ規定/専門業者さん/その他の永住権/永住権以外の労働できるビザ
第二の関門:生計
ビザ用のスキルと生計用のスキル/「日本人」というスキル/世界のオキテ/オーストラリア仕事探しサイト内リンク
戦略と戦術(その1)
フォーマット設定/欲望のディレクトリ〜永住権だけが全てではない、手段と目的を明瞭に意識すべし
戦略と戦術(その2)  よくある基本パターンと組み合わせ
永住権優先でいくか、ステップアップ方式でいくか/「はじめの一歩」をどうするか/利益衡量/ストレート永住権の場合の具体的戦略/ステップアップ方式の場合の具体的戦略〜意外と使えるワーホリビザ/ダメだった場合〜あなたにとっての「成功」とは何か?/先のことは分からない/

今週の一枚ESSAYより
 「”海外”という選択シリーズ」 過去回INDEX

ESSAY 452/(1) 〜これまで日本に暮していたベタな日本人がいきなり海外移住なんかしちゃっていいの?
ESSAY 453/(2) 〜日本離脱の理由、海外永住の理由
ESSAY 454/(3) 〜「日本人」をやめて、「あなた」に戻れ
ESSAY 455/(4) 〜参考文献/勇み足の早トチリ
ESSAY 456/(5) 〜「自然が豊か」ということの本当の意味 
ESSAY 457 / (6)〜赤の他人のあたたかさ
ESSAY 458/(7) 〜ナチュラルな「まっとー」さ〜他者への厚情と冒険心
ESSAY 459/(8) 〜淘汰圧としてのシステム
ESSAY 460/(9) 〜オーストラリアの方が「世界」を近く感じるのはなぜか(1)
ESSAY 461/(10) 〜オーストラリアの方が「世界」を近く感じるのはなぜか(2)
ESSAY 462/(11) 〜日本にいると世界が遮断されるように感じるのはなぜか 〜ぬくぬく”COSY"なガラパゴス
ESSAY 463/(12) 〜経済的理由、精神的理由、そして本能的理由