
| ●基本的に過去のキャリアがモノを言う。 |
私の場合には、日本でやってきた経験を生かしてできる仕事というものはまるでなかったので、苦労しました。いや、正確にいえばあるんですが、そういう仕事をするためには完璧な英語力が必要なのです。英語ネイティブのオージーと同じ仕事をこなせるだけの英語力があれば、もちろんチャンスはあるのですが、中途半端な英語力で雇ってもらおうとすると難しい。結局、日本語を武器にした仕事しか出来ないし、そうなると過去の経験を生かせる職種はない、という状態でした。
最初にこのページを書いた1997年時点においては、なんといっても一番需要が多いのは観光業界でした。日本で旅行関係の仕事経験があると、ビザのスポンサードも受けやすかったです。しかし、観光業界はオーストラリア人にとっても重要な業種ですので、私たち(つまり"外国人”)に職場を奪われないように、あれこれ規制を掛ける傾向はあります。たとえば、2001年のビザ改正によって、特定の職種につき資格・経験などの条件を設定し、さらにかなり高額の最低賃金(年収400万やら500万円やら)という高いハードルが設定されてしまいました。このハードルによって、日本人の雇用先であった、観光系の職種はかなり困難になってしまいました。また、観光系の職業経験は、永住権取得において高得点をゲットできる「オーストラリア市場において望まれるスキル」 の中には入ってきませんし、それどころか「来ないで欲しい」と言わんばかりの低査定をされることもあります。反面、2005年から研修生ビザなんてのが新設されたりもしています。これらの点は、その時々の経済状況、政府や業界の意向によって二転三転しますので、ビザ代行の業者さんなど専門家の方々から最新の状況をお聞きになった方がいいと思います。
| ●未経験者でも入り込めるチャンスがある職種 |
事務、総務関係の仕事なら、過去の仕事歴を無理矢理こじつけてカバーすることもできます。特に、経理は基本的に世界共通ですから、ある程度日本でかじっていた人なら応用が効きやすいようです。もちろん、こういったデスクワークの仕事を狙うなら、コンピューターくらいきちんと操作できなきゃなりません。こっちの会社のレイアウトはパーテーションで区切られている場合が多く、日本の職場のように隣の人に「ねえ、ちょっとここわからないんだけど、教えて」と聞ける状況ではないので、パソコンがトラブッても自力で修復できるくらいの技術がないと、あとで苦労します。
人のお世話が好きな人なら、観光ガイドもいいでしょう。最近はガイドもオプショナルツアー等のセールスに荷担させられるので、セールス技術のある人でないとツライかもしれませんが、それなりに需要はあるようです。
| ●時期とともに変わる雇用状況 |
この10年でオーストラリアの日本人への求人環境もだいぶ変わってきたと思います。以前は、観光業界が大きな雇用先で、地元新聞の求人の「Japanese Speakers」の欄があります。その昔は、日本語力保持者に対する求人広告のほとんどが観光業界絡みでありました。観光ガイド、ドライバーズガイドなど、日本人観光客を相手にする現地オペレーション会社所属のガイドさん、免税店のセールス、現地オペレーション会社のオペレーターやカスタマー・サービスなどです。まれに航空会社の地上係員やスチュワーデス(カンタス航空では男女差別用語を避けて「フライト・アテンデント」と呼ぶようになった)、クレジットカード会社や海外傷害保険のカスタマーサービス、観光ビデオ編集アシスタント、エアーズロックなど地方の観光窓口担当者、ホテルの日本人担当マネージャーなどの募集も見掛けます。ところが、今現在、新聞の求人サイト(たとえばSMHのMyCareerで"japanese speaker"で検索しても、そもそも大したヒットがないです。
ところで、オーストラリアは日本語を学習している学生が世界一多いことで知られていますが、日本語教師になれるチャンスは限りなくゼロに近い状態といってよいでしょう。これは1997年時点でそうでしたし、今も状況は良くはなってないでしょう。一昔前、日本語教師が極端に不足し、「日本語教師なら即座に永住ビザが出た時代」もありました。しかし、今では日本語教師は供給過剰状態です。田舎の学校では、オーストラリアで日本語教師の資格を取得した人なら年契約でワーキングビザをスポンサードしてくれるところもありますが、シドニーなど都会ではまず無理でしょう。資格取得にはオーストラリア政府に認可された学校で1年間のコースを修了しなければなりません。が、無事卒業したところで、日本語以外の専門科目も教えられるという「ダブル・メジャー」の永住ビザ保持者でないと就職は難しいと言われています。もっとも比較言語学など専門分野についての論文発表されている研究者の方なら、大学での講師のポストはあるかもしれませんが。
また、通訳・翻訳に関しては、しっかりした技術と能力さえあれば、仕事はあるようです。カジュアルワークとしてなら資格がなくても仕事を貰えることもありますが、本気で通訳・翻訳業をやっていこうとするのなら、オーストラリア政府のNATIという資格を取得された方がよいでしょう。NATI受験準備用の講座が各大学や、TAFEなどにあります。
| ●日系企業か、地元企業か |
観光業界以外にも、日本企業の現地事務所などが現地採用の事務、経理担当者などを募集していることもあります。結局は日本人を採用している会社のほとんどが日系企業というのが現実です。日本人を採用している地元企業もありますが、日本企業で働くよりも更に高い英語力が必要な場合が多いようですし、海外就職ビギナーが採用される確率は低いでしょう。また、最近では地元企業がアメリカ資本に買収合併されていますので、地元企業といってもマルチナショナル化した巨大組織の一部と化している場合が多いようです。
さて、皆さんは日系企業と地元企業、どちらをお望みですか?
日系企業の場合、オーストラリア的なものと日本的なものが交じり合った独特の社風を持っているところが多いようで、それはそれで面白いかと思います。(時に、雇用者にとって都合のいい時だけオーストラリア的または日本的な理屈を使い分けている会社もあったりして、たまらんのですが)。
また、日本語の通じる環境というのは、海外就職ビギナーにとってはやっぱり何となく落ち着くものです。
しかし、同時に日系企業のイヤラシサがにじみ出ている会社もあったりします。というのは、日系企業の駐在員の場合、基本的には日本から出張命令に従ってシドニーに転勤しているわけですし、帰国時期も会社の指示を待つしかない。海外に居ながらも、日本を見ながら生活していることになるわけで、ある意味では気の毒な部分もあります。こういう環境をプラスに考えて駐在生活を楽しみながら前向きに仕事しておられる駐在員さんもいる一方で、時々、「現地採用の日本人」に対する優越感と、「気楽な移住者」に対する羨望の混じった複雑な視線を感じることもあります。
かといって地元企業ならいいかというと、日本式の価値観とは違うものを学べて面白いというメリットはありますが、やっぱり日本人一人だけの環境でやっていくにはそれ相当の英語力も必要だし、なんだかんだで「差別的だな」と感じざるをえないこともあるそうです。
どこの世界にも100%楽しい会社なんてものは存在しませんから、自分に合った仕事内容あるいは環境を見つけられれば「是幸い」と感謝すべきなのかもしれませんが。
| ●では、どう考えたらいいのか? |
なんか暗い話が続いてますが、オーストラリアで働いている日本人は未だに沢山いるわけです。たしかに観光業界は、前述のようにビザ的にハードルが高くなったり、そもそもオーストラリアの観光業界や日本の海外旅行の低落傾向もあったりします。しかし、だからといって業界そのものが消えてなくなるわけではないですし、また日本人の労働者側においても旅行業界離れしているという話もあります。代わってIT業界、あるいは会計業界の需要は昔に比べればずっと伸びてきています。あるいは日系のレストラン業界や美容師さんなどのビューティ関係は永住権の取り易さとあいまって
増加傾向にあるでしょう。あとは、アメックスなどのコールセンターの需要増は近年の傾向だと思います。
このようにその時点においてトレンドは変わるのですが、しかし、あーんまり「○○業界だったら良い」「○○業界はもうダメだ」というカテゴライズして捉えない方が良いとは思います。あなたが人材斡旋会社に勤めていてレポートを書くのであれば、この種の一般的傾向というのは大事なことでしょうが、自分ひとりが就職するだけであったら、どこか一つにもぐり込めば良いわけです。たった一つでいいんです。
ということは、最初からベクトルを限定しないで、いろいろな機会や出会いを大事にして手数を増やした方が良いのではないでしょか。オーストラリアの経済それ自体についていえば、2008年9月現在、ようやく景気減速のかげりが見えてきたものの、未だ史上最高レベルの就職状況といっていいでしょう。全体に人手不足なわけですし、特に板金などの現業系の熟練労働者は不足しているといわれます。ですので、何も日系とか日本人のコネとかにこだわらなくても良いでしょう。特に手に職のある人。
今一度、SMHのMyCareerで"japanese speaker"ではなく、単に”Japanese"で検索すると、今度は沢山出てきます。そして、その業種を見ていきますと、金融系であったり、テクニカルサポート、カスタマーサポート、レストラン業界、ビューティセラピスト、実にさまざまだったりします。
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