生活マニュアル上級編
福島記:1997年4月23日作成
田村記:2009,2010年補訂


シドニーで仕事を探す方法

シドニーで仕事を探す方法 (3)




●基本的に過去のキャリアがモノを言う。

 先ほどもチラッと書きましたが、ここは経験者優遇社会です。日本で同じような職種経験があると、チャンスは広がります。ただ、あなたが日本でやってきた仕事と同じような仕事が、シドニーでもあるかどうかがポイントになるでしょう。

 私の場合には、日本でやってきた経験を生かしてできる仕事というものはまるでなかったので、苦労しました。いや、正確にいえばあるんですが、そういう仕事をするためには完璧な英語力が必要なのです。英語ネイティブのオージーと同じ仕事をこなせるだけの英語力があれば、もちろんチャンスはあるのですが、中途半端な英語力で雇ってもらおうとすると難しい。結局、日本語を武器にした仕事しか出来ないし、そうなると過去の経験を生かせる職種はない、という状態でした。

 最初にこのページを書いた1997年時点においては、なんといっても一番需要が多いのは観光業界でした。日本で旅行関係の仕事経験があると、ビザのスポンサードも受けやすかったです。しかし、観光業界はオーストラリア人にとっても重要な業種ですので、私たち(つまり"外国人”)に職場を奪われないように、あれこれ規制を掛ける傾向はあります。たとえば、2001年のビザ改正によって、特定の職種につき資格・経験などの条件を設定し、さらにかなり高額の最低賃金(年収400万やら500万円やら)という高いハードルが設定されてしまいました。このハードルによって、日本人の雇用先であった、観光系の職種はかなり困難になってしまいました。また、観光系の職業経験は、永住権取得において高得点をゲットできる「オーストラリア市場において望まれるスキル」 の中には入ってきませんし、それどころか「来ないで欲しい」と言わんばかりの低査定をされることもあります。反面、2005年から研修生ビザなんてのが新設されたりもしています。これらの点は、その時々の経済状況、政府や業界の意向によって二転三転しますので、ビザ代行の業者さんなど専門家の方々から最新の状況をお聞きになった方がいいと思います。

●未経験者でも入り込めるチャンスがある職種

 じゃあ、英語も中途半端、日本語を武器にしつつ自分の経歴が生かせる仕事がない場合は、どうしたらよいのでしょうか? 絶対コレといったものではありませんが、比較的「未経験者でも入り込めるチャンスがある仕事」というものはあるように思います。

 事務、総務関係の仕事なら、過去の仕事歴を無理矢理こじつけてカバーすることもできます。特に、経理は基本的に世界共通ですから、ある程度日本でかじっていた人なら応用が効きやすいようです。もちろん、こういったデスクワークの仕事を狙うなら、コンピューターくらいきちんと操作できなきゃなりません。こっちの会社のレイアウトはパーテーションで区切られている場合が多く、日本の職場のように隣の人に「ねえ、ちょっとここわからないんだけど、教えて」と聞ける状況ではないので、パソコンがトラブッても自力で修復できるくらいの技術がないと、あとで苦労します。

 人のお世話が好きな人なら、観光ガイドもいいでしょう。最近はガイドもオプショナルツアー等のセールスに荷担させられるので、セールス技術のある人でないとツライかもしれませんが、それなりに需要はあるようです。

●時期とともに変わる雇用状況

 この10年でオーストラリアの日本人への求人環境もだいぶ変わってきたと思います。以前は、観光業界が大きな雇用先で、地元新聞の求人の「Japanese Speakers」の欄があります。その昔は、日本語力保持者に対する求人広告のほとんどが観光業界絡みでありました。観光ガイド、ドライバーズガイドなど、日本人観光客を相手にする現地オペレーション会社所属のガイドさん、免税店のセールス、現地オペレーション会社のオペレーターやカスタマー・サービスなどです。まれに航空会社の地上係員やスチュワーデス(カンタス航空では男女差別用語を避けて「フライト・アテンデント」と呼ぶようになった)、クレジットカード会社や海外傷害保険のカスタマーサービス、観光ビデオ編集アシスタント、エアーズロックなど地方の観光窓口担当者、ホテルの日本人担当マネージャーなどの募集も見掛けます。ところが、今現在、新聞の求人サイト(たとえばSMHのMyCareerで"japanese speaker"で検索しても、そもそも大したヒットがないです。

 ところで、オーストラリアは日本語を学習している学生が世界一多いことで知られていますが、日本語教師になれるチャンスは限りなくゼロに近い状態といってよいでしょう。これは1997年時点でそうでしたし、今も状況は良くはなってないでしょう。一昔前、日本語教師が極端に不足し、「日本語教師なら即座に永住ビザが出た時代」もありました。しかし、今では日本語教師は供給過剰状態です。田舎の学校では、オーストラリアで日本語教師の資格を取得した人なら年契約でワーキングビザをスポンサードしてくれるところもありますが、シドニーなど都会ではまず無理でしょう。資格取得にはオーストラリア政府に認可された学校で1年間のコースを修了しなければなりません。が、無事卒業したところで、日本語以外の専門科目も教えられるという「ダブル・メジャー」の永住ビザ保持者でないと就職は難しいと言われています。もっとも比較言語学など専門分野についての論文発表されている研究者の方なら、大学での講師のポストはあるかもしれませんが。

 また、通訳・翻訳に関しては、しっかりした技術と能力さえあれば、仕事はあるようです。カジュアルワークとしてなら資格がなくても仕事を貰えることもありますが、本気で通訳・翻訳業をやっていこうとするのなら、オーストラリア政府のNATIという資格を取得された方がよいでしょう。NATI受験準備用の講座が各大学や、TAFEなどにあります。

●日系企業か、地元企業か

 観光業界以外にも、日本企業の現地事務所などが現地採用の事務、経理担当者などを募集していることもあります。結局は日本人を採用している会社のほとんどが日系企業というのが現実です。日本人を採用している地元企業もありますが、日本企業で働くよりも更に高い英語力が必要な場合が多いようですし、海外就職ビギナーが採用される確率は低いでしょう。また、最近では地元企業がアメリカ資本に買収合併されていますので、地元企業といってもマルチナショナル化した巨大組織の一部と化している場合が多いようです。

 さて、皆さんは日系企業と地元企業、どちらをお望みですか?
日系企業の場合、オーストラリア的なものと日本的なものが交じり合った独特の社風を持っているところが多いようで、それはそれで面白いかと思います。(時に、雇用者にとって都合のいい時だけオーストラリア的または日本的な理屈を使い分けている会社もあったりして、たまらんのですが)。また、日本語の通じる環境というのは、海外就職ビギナーにとってはやっぱり何となく落ち着くものです。

 しかし、同時に日系企業のイヤラシサがにじみ出ている会社もあったりします。というのは、日系企業の駐在員の場合、基本的には日本から出張命令に従ってシドニーに転勤しているわけですし、帰国時期も会社の指示を待つしかない。海外に居ながらも、日本を見ながら生活していることになるわけで、ある意味では気の毒な部分もあります。こういう環境をプラスに考えて駐在生活を楽しみながら前向きに仕事しておられる駐在員さんもいる一方で、時々、「現地採用の日本人」に対する優越感と、「気楽な移住者」に対する羨望の混じった複雑な視線を感じることもあります。

 かといって地元企業ならいいかというと、日本式の価値観とは違うものを学べて面白いというメリットはありますが、やっぱり日本人一人だけの環境でやっていくにはそれ相当の英語力も必要だし、なんだかんだで「差別的だな」と感じざるをえないこともあるそうです。

 どこの世界にも100%楽しい会社なんてものは存在しませんから、自分に合った仕事内容あるいは環境を見つけられれば「是幸い」と感謝すべきなのかもしれませんが。

●では、どう考えたらいいのか?

 なんか暗い話が続いてますが、オーストラリアで働いている日本人は未だに沢山いるわけです。たしかに観光業界は、前述のようにビザ的にハードルが高くなったり、そもそもオーストラリアの観光業界や日本の海外旅行の低落傾向もあったりします。しかし、だからといって業界そのものが消えてなくなるわけではないですし、また日本人の労働者側においても旅行業界離れしているという話もあります。代わってIT業界、あるいは会計業界の需要は昔に比べればずっと伸びてきています。あるいは日系のレストラン業界や美容師さんなどのビューティ関係は永住権の取り易さとあいまって増加傾向にあったのですが、オーストラリア移住の項でも書いたように2010年2月のMODL制度廃止によってこれによって永住権近道は無くなりました。しかし、これも逆に言えば今後は永住権獲得者が少なくなるので人材供給は減り、就職はむしろ容易になるかもしれません(ジャパレス需要そのものは一貫して増加しているし、日本人経営ではないジャパレスもかなり増えてきている)。アメックスなどのコールセンターは定番需要だったのですが、昨今の経済情勢でむしろ日本の方が人件費が安くなって。センターが日本に戻っている(どの企業だったかは失念)という皮肉な現象も聞いたことがあります。

 このようにその時点においてトレンドは変わるのですが、しかし、あーんまり「○○業界だったら良い」「○○業界はもうダメだ」というカテゴライズして捉えない方が良いとは思います。あなたが人材斡旋会社に勤めていてレポートを書くのであれば、この種の一般的傾向というのは大事なことでしょうが、自分ひとりが就職するだけであったら、どこか一つにもぐり込めば良いわけです。たった一つでいいんです。

 ということは、最初からベクトルを限定しないで、いろいろな機会や出会いを大事にして手数を増やした方が良いのではないでしょか。オーストラリアの経済それ自体についていえば、2008年9月現在、ようやく景気減速のかげりが見えてきたものの、未だ史上最高レベルの就職状況といっていいでしょう。全体に人手不足なわけですし、特に板金などの現業系の熟練労働者は不足しているといわれます。ですので、何も日系とか日本人のコネとかにこだわらなくても良いでしょう。特に手に職のある人。

 今一度、SMHのMyCareerで"japanese speaker"ではなく、単に”Japanese"で検索すると、今度は沢山出てきます。そして、その業種を見ていきますと、金融系であったり、テクニカルサポート、カスタマーサポート、レストラン業界、ビューティセラピスト、実にさまざまだったりします。



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《インデックス》

●トップページ

●ビザの問題をクリアする!

●イチにもニにも英語力!!

●基本的に過去のキャリアがモノを言う。

●未経験者でも入り込めるチャンスがある職種

●時期によって変わる雇用情勢

●日系企業か、地元企業か

●仕事の探し方
(人材紹介会社リスト)

●履歴書、命。
(英文履歴書サンプル)

●面接の心得

●やっぱり、仕事するなら「自分の会社」?
参考:シドニーでの就職・仕事に関するページ

エッセイから〜
オーストラリアで実際日本人が就職できる職種とその給料について(97/6/11)
オージーの仕事観を探る(96/12/1)
下手な英語で仕事するコツ(97/5/29)
ESSAY 278/「外国人労働者」とは我々のこと〜「海外で働く」ということに過剰な幻想を抱かないために(06/10/02)

体験レポート
特別寄稿体験談 (by Kさん)/アルバイト先との給与支払トラブルを労働委員会を通じて解決した実例レポート
日本語教師アシスタント・ボランティア(インターン)

実戦ワーホリ講座
8−1.仕事をしよう(その1) 仕事の効用 
8−2.仕事をしよう(その2) 仕事の探し方 日系〜ジャバレス編
8−3.仕事をしよう(その3) 仕事の探し方(2) 日系その他編、ローカル編
8−4.仕事をしよう(その4) 英文履歴書・実戦例
9−1.ラウンドのススメ(その1) ラウンドとは何か?都会定住との比較
9−2.ラウンドのススメ(その2) ラウンド先での仕事

◆コラム/間違いだらけの留学&ワーホリ生活
 7.ジャパレスで働いても英語が伸びない?
 8.タックスリターンで税金が返ってくる?

さらに関連:オーストラリア移住に関するもの
オーストラリア移住について INDEX
第一の関門:VISA
ビザの原理原則/技術独立移住永住権/頻繁に変わるビザ規定/専門業者さん/その他の永住権/永住権以外の労働できるビザ
第二の関門:生計
ビザ用のスキルと生計用のスキル/「日本人」というスキル/世界のオキテ/オーストラリア仕事探しサイト内リンク
戦略と戦術(その1)
フォーマット設定/欲望のディレクトリ〜永住権だけが全てではない、手段と目的を明瞭に意識すべし
戦略と戦術(その2)  よくある基本パターンと組み合わせ
永住権優先でいくか、ステップアップ方式でいくか/「はじめの一歩」をどうするか/利益衡量/ストレート永住権の場合の具体的戦略/ステップアップ方式の場合の具体的戦略〜意外と使えるワーホリビザ/ダメだった場合〜あなたにとっての「成功」とは何か?/先のことは分からない/

今週の一枚ESSAYより
 「”海外”という選択シリーズ」 過去回INDEX

ESSAY 452/(1) 〜これまで日本に暮していたベタな日本人がいきなり海外移住なんかしちゃっていいの?
ESSAY 453/(2) 〜日本離脱の理由、海外永住の理由
ESSAY 454/(3) 〜「日本人」をやめて、「あなた」に戻れ
ESSAY 455/(4) 〜参考文献/勇み足の早トチリ
ESSAY 456/(5) 〜「自然が豊か」ということの本当の意味 
ESSAY 457 / (6)〜赤の他人のあたたかさ
ESSAY 458/(7) 〜ナチュラルな「まっとー」さ〜他者への厚情と冒険心
ESSAY 459/(8) 〜淘汰圧としてのシステム
ESSAY 460/(9) 〜オーストラリアの方が「世界」を近く感じるのはなぜか(1)
ESSAY 461/(10) 〜オーストラリアの方が「世界」を近く感じるのはなぜか(2)
ESSAY 462/(11) 〜日本にいると世界が遮断されるように感じるのはなぜか 〜ぬくぬく”COSY"なガラパゴス
ESSAY 463/(12) 〜経済的理由、精神的理由、そして本能的理由