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初稿福島記:1997年4月23日、田村更新:2009,2010年
2012年08月全面改訂、2013年07月補訂 

シドニーで仕事を探す方法


シドニーで仕事を探す方法(2)

2.一般的傾向〜「日本」と「日本リテラシー」の市場価値

 日本人が海外で就職・起業する場合、「日本」という価値が最大のスキルであり、キャリアになります。
 いわゆる「日本リテラシー」ですが、「日本語が出来る」「日本に住んだことがある」「日本人の価値観や生活習慣、消費者の意向を深く知っている」「日本の強い産業分野のスキルがある」などです。

 だから日本が不景気になれば海外にいる僕ら在外日本人も影響を受けますし、現に受けています。
 「日本がダメだから海外へ」というのは良く言われるのですが、必ずしもそういうものでもないのです。

かつての王道系パターンの凋落

 日本がまだまだ強かった頃は、日本の各企業は海外展開を図ってましたが(今とは違う意味で)、そこでは日本カルチャーバリバリの会社運営ですし、ゆえに日本語が出来たり、日本カルチャーが分かっていると採用されやすかった。あるいは、肥沃な日本市場に斬り込んでいくための水先案内人としての日本リテラシーの高い人材が好まれました。

 第二に、かつては日本人観光客がオーストラリア観光業を潤わせていましたから、日本語が出来るとこちらのツアリズムやホスピタリティに有利に働きました。

 しかし、どれもこれも「今は昔」になりつつあります。
観光業界など現地の日本人求人環境の変化
 最初にこのページを書いた1997年時点においては、なんといっても一番需要が多いのは観光業界でした。日本で旅行関係の仕事経験があると、ビザのスポンサードも受けやすかったです。しかし、観光業界はオーストラリア人にとっても重要な業種ですので、僕ら(つまり"外国人”)に職場を奪われないように、あれこれ規制を掛ける傾向はあります。たとえば、2001年のビザ改正によって、特定の職種につき資格・経験などの条件を設定し、さらにかなり高額の最低賃金(年収400万やら500万円やら)という高いハードルが設定されてしまいました。このハードルによって、日本人の雇用先であった、観光系の職種はかなり困難になってしまいました。また、観光系の職業経験は、永住権取得において高得点をゲットできる「オーストラリア市場において望まれるスキル」 の中には入ってきませんし、それどころか「来るな」と言わんばかりの低査定をされることもあります。これらの点は、その時々の経済状況、政府や業界の意向によって二転三転しますので、ビザ代行の業者さんなど専門家の方々から最新の状況をお聞きになった方がいいと思います。

 90年代から2000年代にかけてオーストラリアの日本人への求人環境もだいぶ変わってきています。
 以前は、観光業界が大きな雇用先で、地元新聞の求人の「Japanese Speakers」の欄があります。その昔は、日本語力保持者に対する求人広告のほとんどが観光業界絡みでありました。観光ガイド、ドライバーズガイドなど、日本人観光客を相手にする現地オペレーション会社所属のガイドさん、免税店のセールス、現地オペレーション会社のオペレーターやカスタマー・サービスなどです。まれに航空会社の地上係員やCA、クレジットカード会社や海外傷害保険のカスタマーサービス、観光ビデオ編集アシスタント、エアーズロックなど地方の観光窓口担当者、ホテルの日本人担当マネージャーなどの募集も見掛けます。ところが、今現在、新聞の求人サイト(たとえばSMHのMyCareerで"japanese speaker"で検索しても、そもそも大したヒットがないです。
日系企業
 日本企業の現地事務所などが現地採用の事務、経理担当者などを募集していることもありますし、結局は日本人を採用している会社のほとんどが日系企業というのが現実だったりします。日本人を採用している地元企業もありますが、日本企業で働くよりも更に高い英語力が必要な場合が多いようですし、海外就職ビギナーが採用される確率は低いでしょう。

 日系企業の場合、オーストラリア的なものと日本的なものが交じり合った独特の社風を持っているところが多いようで、それはそれで面白いかと思います(時に、雇用者にとって都合のいい時だけオーストラリア的または日本的な理屈を使い分けている会社もあったりして、たまらんのですが)。また日本語の通じる環境というのは、海外就職ビギナーにとってはやっぱり何となく落ち着くでしょう。

 しかし、同時に日系企業の悪い面が出ている会社もあったりします。端的には「現地採用差別」ですね。日本から来ている人が殿様で、あとは現地採用は原住民扱いという。キッチリ給料は半額とか。日系企業の駐在員の場合、基本的には日本から出張命令に従ってシドニーに転勤しているわけですし、帰国時期も会社の指示を待つしかない。海外に居ながらも日本を見ながら生活していることになるわけで(お子さんの受験とか)、ある意味では気の毒でもあります。来たくて来ているわけでもないし。

 しかし、今は現地の日本企業そのものが減っていますし、この種の話も段々「昔話」になっていくのかもしれません。
日本語教師
 ところで、オーストラリアは日本語を学習している学生が世界一多いことで知られていますが、日本語教師になれるチャンスは限りなく少ないと言っても良いでしょう。一昔前、日本語教師が極端に不足し、「日本語教師なら即座に永住ビザが出た時代」もありました。しかし、今では日本語教師は供給過剰状態です。田舎の学校では、オーストラリアで日本語教師の資格を取得した人なら年契約でワーキングビザをスポンサードしてくれるところもありますが、シドニーなど都会ではまず無理でしょう。資格取得にはオーストラリア政府に認可された学校で1年間のコースを修了しなければなりません。が、無事卒業したところで、日本語以外の専門科目も教えられるという「ダブル・メジャー」の永住ビザ保持者でないと就職は難しいとか言われてました。これは1997年の初稿時点でそうでしたし、その後に状況が好転したという話は寡聞にして聞きません。

 なんか暗い話が続いてますが、オーストラリアで働いている日本人は未だに沢山いるわけです。

 たしかに観光業界での就職は厳しくなっていますが、だからといって業界そのものが消えてなくなるわけではないですし、頑張って働いている人は今も沢山います。日本語教師だってやってる人いるわけだし、需要だって消えて無くなったわけではないのです。ただ一昔前のようにブーム性の「おいしい話」ではなくなっただけです。一般の仕事とさほど変わらないと考えたらいいです。

 ここで問われるのは、あなたは「おいしい話」「楽な抜け道」を探しているのか?、or やりたいことをやろうとしているのか?です。おいしいかおいしくないかといえば、確かに美味しくはなくなっているけど、だからといって「やるな」「不可能」という意味ではないですよ。楽な抜け道ではなくなっただけです。

 このように就職の難易度というのは、その時々のトレンドでコロコロ変わるのですが、しかし、あんまり「○○業界だったら良い」「○○業界はもうダメだ」というカテゴライズして捉えない方が良いとは思います。あなたが人材斡旋会社に勤めていて業界レポートを書くのであれば、この種の一般的傾向というのは大事なことでしょうが、自分ひとりが就職するだけであったら、どこか一つにもぐり込めば良いわけです。たった一つでいいんです。

 さて、以上の説明は「これまでのあらすじ」みたいなものでした。

 問題は「これから」です。しかし、「これから」というのはまだ見えていません。だから「○○業界がいい」とか「○○するといい」という「登攀ルート」が確定しているわけでもないです。てか、そんなルートが誰の目にも分かりやすくなった時点で、もう盛りを越えているということもあるわけです。

 それを前提に、なおも2012年の時点での「これから」を幾つか考えてみます。

日本の強い分野での手に職系

 日本が強い分野でキャリアがあると高評価されます。
 日本で柔道でチャンピオンになれたら世界でもチャンピオンになりやすいという原理です。

 すぐに思いつくのが家電の開発部門、車関係です。特に車関係のメカニックは永住権でもかなり優遇されています。一般に日本人の真面目で優秀な職人芸は高く評価されますから、手に職系が強いです。メカニックでも板金でも塗装でも、あるいは水道配管とか。

 美容師さんなんかも技術水準が高いです。チャイナタウンなど中国市場で「最新日本髪」と髪型設計(美容院)で言ってるくらいですので、日本というのは一つのブランドであり、僕らが「○○年度のパリコレ」とかいってありがたがっているのと構図は同じです。有利です。

取りあえず注目される(僕がしてる)分野

 今後ますます注目されるのは、日本料理とあと多分アニメ・コミック系でしょう。シドニーの日本料理店は毎週毎週増え続け、2013年07月現在500軒前後に達しています。やっぱり美味しいし、ヘルシーであるというイメージもあるので、広がっているのですね。特に増え続ける中国人が上得意になってくれているのが大きい。ラーメンなんか、本来の「中華そば」という原点から離陸し、世界的には寿司と並ぶれっきとした「日本料理」で通ってますし、流行ってます。

 オーナーやシェフが日本人ではない日本料理屋も、今では普通の存在になってます。そういえば僕がお世話したワーホリさんで、「自分以外全員タイ人」というジャパレスで働いている人も居ました(賄いはタイ料理で、こっちの方が美味くて笑えたという)。それはもう、イタリア人がやっていないイタリア料理屋が日本では普通なのと一緒です。まだそこまではいってないけど、今度そうなっていくでしょう。

 アニメやコミックは、やっぱりこっちにいて分かるけど人気ありますしね。英訳(その他中国語訳、スペイン語訳など)もすごく出てるし、いわゆるオタクカルチャー的なものは、決してメジャー通りになるわけではないけど、世界的に注目する人は注目している。かつてエッセイでラブプラス熱海が(日本よりも)全世界で話題になっていることを紹介しましたが(ESSAY 480/ARによる「熱海ラブプラス現象(まつり)」の日本男子が世界に配信されている件)、今冷静に見て、世界レベルで「群を抜いて強くてユニーク」な分野はココですから。

 もっとも、だからといって、これを基軸にどういう職場を得るか?どうもっていってメシのタネにするかは、まだまだ未知数です。

日本/日本人という素材の素晴らしさ(1) 観光

 「日本」「日本人」のそのままがお金を生むという点です。日本そのもので言えば、ご承知だと思いますが、観光業です。日本の観光資源はとてつもないものを持ってます。それは海外に出たらよく分かります。宝の山だといっていい。今もいろいろ売ってますが、今後もっともっと伸びていい業界でしょう。例えば、「2009年国際観光概観」による各国の外国人客受け入れランキングでいえば、日本は世界34位。2003年あたりに調べた時点では33位だけど、また落ちているという。これって首位フランスの数十分の1です。

 この点、フランスは凄い。なんといっても国民の人口よりも年間の訪問外国人数の方が多い。シドニーもそうだけど、総人口よりは多くはなかったけど、その半分以上の数はやってくる筈です。だから先進国の普通の感覚でいえば、日本だってあと少なくとも10倍は観光で儲けて良いはずだし、フランス並になりたかったらあと100倍以上です。100倍はともかく10倍程度なら十分可能でしょう。てか、観光とブランドというのは、先進国がメインの産業で新興国に食われてしまった後にやる定番の産業分野なんだから、そのくらい出来なければダメでしょ。遠くて島国で「行きにくい」というけど、21世の世界経済の中心になるだろうアジアからしたらむしろ地の利になるのだし。

日本/日本人という素材の素晴らしさ(2) 日本人が選んだモノとサービス

 日本人がその厳しい選択眼で選んできた各種商品は、やっぱり世界最高レベルです。
 それはもう事務用品にせよなんにせよ。ダイソーがシドニーにもやってきて売れてますけど、あれだけの品質をあれだけの安値というのは破格に凄いです。値段よりも質が凄い。3Mのポストイットが500円もするオーストラリアにおいては画期的だし、世界においても画期的。これは何を意味するかといえば、日本で僕らが当たり前に思っている物事や商品は、海外に持って行ったら十分な競争力があるということですね。

 この点を掘り起こしていけば、その種の「資源」については僕らは無尽蔵に持っているわけですから、幾らでもチャンスはあるだろうと思います。今すぐ直ちに具体的に形になっているものは少ないけど、将来性はもの凄いモノがあると僕は思ってます。

日本/日本人という素材の素晴らしさ(3) 日本人という労働力素材

 あとは「日本人」の特性です。真面目、勤勉とか言われますが、僕らが当たり前だと思ってる水準は世界レベルにしてみたらかなり高いです。これは事あるゴトにいってますが、シェア探しでもしてみたらよく分かります。日本人なら入っていいよと言われるケースが多い。部屋を綺麗に使うし、家賃もちゃんと払うし。「そんなの当たり前」だと思うでしょう?それを当たり前だと思っているのが僕らの強さです。これ、意外と盲点だけど、十分に自覚的になった方がいいです。日本で鍛えられた今の自分で十分に潜在的に市場価値はあるということです。

 あとで述べるように海外でやるためには、ビザ+英語力+キャリア&就職(出会い)という幾つものハードルがあります。もうそれぞれが100キロバーベル持ち上げるくらいの努力と幸運を要求されますが、しかし、それらを全てクリアして対等な地平に立ち、「あとは素材の勝負」になったら、もう勝ったも同然(^_^)。こんなクソ真面目な連中、世界にそうそういないですから、エンプロイヤー(雇用主)もニコニコでしょう。

 だから、長い目で見れば、今日本で、あまり金銭的に報われない仕事を、ガミガミ言われながらやっていたとしても、それが「本場日本で修行している」と思ったらいいですよ。そこまで地力がついたら、あとは「売り方」なんです。

 結局、日本人が海外(オーストラリアに限らず)でやっていこうと思ったら、この「売り方」論に収斂されていくと思います。素材も性能も悪くないどころか、かなり良いのだけど、売り方が今ひとつマッチングしないから苦戦しているという、今の日本の家電業界のようなものです。


 次に視点を変えて、ではオーストラリアというのはどういうところか、その経済状況はどうなっているのかについて概略をみます。

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INDEX

1.就職/採用/労働のシステムが日本とは全然違う

2.一般的傾向〜「日本」と「日本リテラシー」の市場価値値

3.オーストラリア独自の特性

4.考え方のフォーマット

5.労働ビザという迷宮

6.攻略方法/英語力/ニワトリタマゴの三位一体

7.求人広告/人材会社/履歴書&面接 英文履歴書サンプル例
参考:シドニーでの就職・仕事に関するページ

エッセイから〜
オーストラリアで実際日本人が就職できる職種とその給料について(97/6/11)
オージーの仕事観を探る(96/12/1)
下手な英語で仕事するコツ(97/5/29)
ESSAY 278/「外国人労働者」とは我々のこと〜「海外で働く」ということに過剰な幻想を抱かないために(06/10/02)

体験レポート
特別寄稿体験談 (by Kさん)/アルバイト先との給与支払トラブルを労働委員会を通じて解決した実例レポート
日本語教師アシスタント・ボランティア(インターン)

実戦ワーホリ講座
8−1.仕事をしよう(その1) 仕事の効用 
8−2.仕事をしよう(その2) 仕事の探し方 日系〜ジャバレス編
8−3.仕事をしよう(その3) 仕事の探し方(2) 日系その他編、ローカル編
8−4.仕事をしよう(その4) 英文履歴書・実戦例
9−1.ラウンドのススメ(その1) ラウンドとは何か?都会定住との比較
9−2.ラウンドのススメ(その2) ラウンド先での仕事

◆コラム/間違いだらけの留学&ワーホリ生活
 7.ジャパレスで働いても英語が伸びない?
 8.タックスリターンで税金が返ってくる?